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がん化学療法による骨髄抑制は,ほとんどの抗悪性腫瘍薬で出現する副作用である.とくに好中球減少は,生体防御機構を低下させ重症の感染症を引き起こす重篤な副作用である.腫瘍縮小効果がみられても感染症で生命の危機に陥ることがないように,化学療法を受ける患者は,易感染状態においても感染症を起こさず,また発症をしても重篤化させないことが重要である.これには,医療者の観察・治療とともに,患者自身のセルフケアが感染予防の鍵となるため,われわれ看護師はがん化学療法を受ける患者とその家族に対し,適切なセルフケア支援をする必要がある.本稿では,患者が感染予防のセルフケアを行なうために必要な知識と具体的な支援方法を紹介する.
A 好中球減少の頻度と現れ方
好中球減少は,主要な抗悪性腫瘍薬のほとんどに出現する.そのなかでとくに白血球・好中球減少の頻度が高い抗がん剤を表1にまとめた.がん化学療法は,治療を繰り返すごとに好中球減少の開始時期は早く,最低値は低く,好中球減少期間は長期化する傾向にある1).そして好中球減少期間と回復期間は,投与方法・投与量,患者の全身状態,前治療歴などの影響を受けるためプロトコールや薬剤によって異なる.近年G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤が使用されるようになってからは,好中球減少期間が短縮したが,好中球1000/mm3以下に減少するに従って感染の罹患期間や感染のエピソードが増し,好中球500/mm3未満の期間が長くなると敗血症などの重篤感染症の頻度が増加する2).このような重度の感染症が起こると,患者は生命の危機への不安を感じ,病気に立ち向かう気力は低下しやすい.さらに高度の好中球減少が起こった場合には,食事や行動範囲などに制限が必要となり,社会生活にも影響を及ぼす.
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