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現実の上にたつものを
川上 武
1
1杉並組合病院
pp.41
発行日 1964年9月1日
Published Date 1964/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912358
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制度を変える問題を考えるときは現実の上に立ってみつめなければならない。看護問題で私がみて,第一に考えられるものは,やはり労働条件の現状を直視することだ。もう奉仕による犠牲の押しつけはどこにも通用しない。看護の仕事が,国民医療のなかで非常に大きな比重を占めるものであるにかかわらず,また誇り高い職業であるのに,それにつく看護婦にとって働きやすい職場,魅力ある職場にはなっていないこと。
たとえば,同じ女性の職業として女医の場合,結婚しても仕事をつらぬいて行くが,これは家事労働をホームヘルパーを雇ってもまかなえる給与を取っているからといえる。看護婦も当然,この条件に等しいものが設定されれば,もっと円熟した看護を国民にサービスできるだろう。また潜在看護力を再び生かすことも大いに可能となるのではないか。深夜勤の問題もしかり。このような問題が解決されない限り,いくら専門職として高い教育をして行こうと試みても,教育投資をするだけ損になるのではないか。家事労働を大きく上まわる諸条件がないと,女性の職業として魅力があるにせよ志望者がつづかなくなるのは当然である。
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