総合リハビリテーション 49巻10号 (2021年10月)

特集 複合性局所疼痛症候群とリハビリテーション

今月のハイライト
  • 文献概要を表示

 外傷や手術後に四肢の激しい疼痛や腫脹を生じることは,反射性交感神経性ジストロフィーや肩手症候群として知られており,近年,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)として名称が統一されました.CRPSの原因は不明で,早期診断と治療が重要ですが,CRPSを疑う状況が発生すれば,投薬や神経ブロック,リハビリテーションなどの集学的治療を開始すべきとされています.本特集では,CRPSのリハビリテーションにかかわるさまざまな専門家に,その現状と課題を解説していただきました.

  • 文献概要を表示

はじめに

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)の原因は未だ不明で,組織の損傷が治癒したにもかかわらず,疼痛が遷延するもので,一つの疾患というよりはむしろ病態として捉えることが望ましい.複数の誘因が関与している場合が多く,またそこから予想される程度や範囲を超えた症状を示すこともしばしば経験する.個々の症例に対して,早期診断と集学的な治療が重要と報告されている1)

 CRPSという用語は,1994年に国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain;IASP)で示された.この症候群は以前,反射性交感神経性ジストロフィーとして知られていたCRPSタイプ1と,カウザルギーとして知られていたCRPSタイプ2に分けられていた.どちらのタイプも通常は外傷後などに発症するが,重要な相違点は,明確な神経損傷がタイプ2に存在し,タイプ1には存在しない点である2).ただし,この2つのタイプを区別することは,臨床的意義が乏しいと考えられている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 2018年に世界保健機関(World Health Organization;WHO)は30年ぶりに疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;ICD)を改訂しICD-11として公表した.この改訂に伴い,慢性痛の新分類が作られ7つのカテゴリーに分けられた.そのうちの1つが,外傷や医療行為を契機に生じた痛み(post-traumatic post-surgical chronic pain)である1).外傷や医療行為を契機に生じた痛みには,外傷性頸部症候群,低脳脊随圧症候群,(乳腺,腰椎,開胸手術など)術後遷延痛,血管穿刺後遷延痛,四肢切断後の断端部痛や幻肢痛などが含まれる.

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)は,慢性一次性疼痛症候群の一つに挙げられているが,「外傷の既往があるか,不動化の原因がある」ことが前提となっており,分類上は慢性二次性疼痛症候群の「外傷や医療行為を契機に生じた痛み」に入る場合が多い.ICD-11の慢性痛分類において,「外傷や医療行為を契機に生じた痛み」が1つのカテゴリーとして扱われている理由は定かでないが,痛みが続く要因として「他者の落ち度によるのではないか」という思いや補償問題などが関係し,改善しにくいことと関連している可能性も考えられる.本稿では医療者が戸惑うことの多い「外傷や医療行為を契機に生じた痛み」を有する患者に対してリハビリテーション治療を行ううえで考慮すべき点や注意点などについて解説する.

ハイブリッド型運動療法 森岡 周
  • 文献概要を表示

はじめに

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)とは,外傷や神経損傷の後に痛みが遷延する症候群のことである.CRPSにおいては,痛みのみならず関節可動域制限,筋力低下,協調運動障害,知覚異常など,身体機能障害が認められる特徴がある.身体機能障害は復職を妨げる重大な因子1)であることから,疼痛緩和のみならず,身体機能の改善を目的としたリハビリテーション医療を展開することは重要である.

 米国CRPSガイドライン第4版2)では,理学療法や作業療法を中心とした臨床介入はCRPS治療のファーストラインと考えられている.その目的は,異常な運動パターンや中枢感作の是正,患者教育,痛みや運動恐怖心に対するマネジメントとされている.現在では,運動療法や身体活動を向上させる課題は,CRPS治療において最優先すべき手段と認識されている.

 一方,CRPS患者において,患側空間への気づきの低下3)や患肢の身体イメージ障害が報告4)されている.こうした障害と疼痛には関係がみられる5,6)ことから,単純な運動療法のみでは効果が得られにくい.ゆえに,病態の特徴に応じたハイブリッド型の運動療法を展開する必要がある.本稿では,CRPSに対して,なぜハイブリッド型運動療法を適応すべきなのかを病態メカニズムから概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)をはじめとする慢性疼痛の診療においては,薬物療法,神経ブロック,リハビリテーション,心理的アプローチなどを含めた「集学的治療(multidisciplinary treatment)」の重要性が指摘されている1).いずれの治療も向かう目標は共通しており,患者の日常生活機能(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)の向上,とされる.逆にいえば,慢性疼痛診療では,痛みの除去は第一目標にはされない.慢性疼痛では,その器質的要因が明確には特定されないことも多く,特定されたとしても痛みの完全な除去を目指すことが難しい場合も多い.そのため,痛みの除去を第一目標にすると行き詰まりを生じやすく,患者の痛みへの過度なとらわれを生みかねないのである.

 2021年6月に発行された「慢性疼痛診療ガイドライン」1)では,推奨度・エビデンスレベルの比較的高い(2B:行うことを弱く推奨する)心理的アプローチとして,「認知行動療法(cognitive behavioral therapy)」,「マインドフルネス(mindfulness)」,「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy;ACT)」が挙げられている.これらの心理的アプローチは一般に,痛みの遷延化にかかわる患者の「認知(物事の捉え方)・行動」のパターンや機能に焦点をあて,それによる悪循環を好循環につなげるのに有用である.ACT(アクト)は,第三世代の認知・行動療法とも呼ばれるが,その特徴として,「慢性疼痛診療における治療文脈(方向性)の設定」にも大いに役立つと考えている.本稿では,そうしたACTの特徴に焦点を当てつつ,名古屋市立大学病院(以下,当院)いたみセンターでの実践について触れる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 「複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome;CRPS)をはじめとした難治性疼痛患者に対し,なぜ治療が必要なのか」という一見,当然な問いは,患者へのかかわり方を考えるうえで本質的な提題である.その解は,治療者の専門性や経験などにより異なるかもしれず,冒頭でまとめておきたい.

 CRPSとは,器質的異常(筋萎縮,関節可動域制限,骨萎縮,皮膚萎縮,皮膚温変化)を呈すだけでなく,うつ状態や不眠など精神障害や生活上のストレスと対峙する環境問題など複雑な病因を伴う多因子性障害である.加えて,原因究明が困難で難治性,重症化しやすいなどの特徴から難治性疼痛とされる.そのため,どの障害に焦点を当てた治療を行うかは診療科の専門性が関与し,重症度の見立てが異なれば治療の必要性や意義の捉え方に違いが生まれることもある.

 中等度以上の慢性痛を有しても,本人が痛みに特段困っていないため治療を求めない人がいることは知られている1).一方,同程度の痛みであっても自らの痛みを病として問題視したり,痛みの原因を不安視し,苦悩を強め複数の医療機関への受診を繰り返す人もいる.治療者側の視点では,痛みの存在だけでなく,身体機能や精神機能の障害がより強い場合に治療の必要性を感じる.つまり,患者が受診した際,治療者に期待する何らかのニーズが存在するわけだが,“患者のニーズ”と“治療者が提供したいこと,提供できること”は必ずしも一致せず,両者に乖離が生じることも少なくない.「痛みの原因を知りたい」,「痛みを治したい」という患者のニーズに十分には応えられない場合,「痛みはあるが充実した生活を送れるようになった」という回復像を治療者から提示し,両者の乖離への擦り合わせが必要となる.その際,CRPS患者の重症化に関与する精神障害や環境問題の是正など精神医療が重要な役割を担う.本稿では,難治性疼痛患者に対する精神科病院における集学的治療の取り組みについて紹介する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 1985年英国のBaker博士は経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;TMS)を開発し,非侵襲的に大脳刺激ができることを示した1).その発明は脳機能の解明,中枢神経系の障害の評価に用いられ,日本においても検査機器として保険適用となっている.また反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)が2000年ごろに登場し,さまざまな神経疾患の治療に応用され有効性が報告されている2).米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)が2008年,2013年にrTMS2機種に対し,うつ病治療の認可を行い,その後も同様の機器に認可をしている.日本においては,うつ病治療器として米国製NeuroStarが2017年9月に承認され,2019年6月に保険償還されたが,保険点数が低いのと,施設基準が厳しいため,治療がまったく広がっていない状況である.一方,米国では,累積20万人を超えるうつ病患者がrTMS治療を受けたとされている.

 rTMSの副作用としては痙攣発作が代表的であるが,実際にrTMSによって痙攣発作を引き起こす危険性は非常に低い3).刺激条件にもよるが,てんかんの患者にrTMSを施行しても痙攣発作を起こすことは稀である.われわれは安静時運動閾値の100%以下でしか刺激していないので,400例以上施行して,まだけいれん発作を起こしたことがない.頭部に金属が入っている患者,心臓ペースメーカーが入っている患者,妊婦,小児,失神を繰り返す患者,脳神経外科処置を受けたことのある患者などに対しては禁忌または注意が必要である.2001年にWassermannら3)が安全性のガイドラインを出版し,2009年にRossiら4)が改訂を行ったが,世界的にもrTMSの安全性の高さ,重大な有害事象がないことが証明されつつあると考えられる.この安全性に関するガイドラインに沿った使用が望ましい.

 一次運動野電気刺激療法(electrical motor cortex stimulation;EMCS)は1990年に日本で見出されて世界に広まった治療法である5).その有効性は約50%とされているが,大規模二重盲検試験などは存在しない6).その除痛のメカニズムは完全には明らかにされていないが,一次運動野を刺激することで視床,帯状回,前頭葉眼窩面,脳幹などが賦活化されて,疼痛閾値を上げて,また疼痛の情動面に作用して,包括的に除痛するのでないかと機能的画像研究で考察されている7).EMCSの非侵襲的手法がrTMSとわれわれは考えている.神経障害性疼痛(neuropathic pain;NP)に対しては,欧州において,deepTMS,NexstimがCEマークを取得しており,欧州からのガイドラインでは,疼痛治療としての高頻度rTMSはレベルAとされている2).しかし効果は一時的であり,responder割合は20〜50%である.Responderの患者を特定し,繰り返しrTMSすれば非侵襲な治療となり得る.われわれは,在宅で簡便にrTMSを繰り返すシステムの開発を行い,2015年12月〜2017年3月に医師主導治験を施行したので後述する.

 米国では,麻薬乱用を減らすためにrTMSに対する期待が高まっている.Leungら8)はNPなどに対する有効性を後方視的に検討し,大変有用であると報告している.

 日本では,EMCSが始まった1990年代は,NPの治療薬がなく,医師から「あなたの疼痛に出せる薬はありません」という説明がよくなされていた.それに対して,患者は絶望感に打ちひしがれていた.なかには痛みに苛まれて自殺をされた方もいた.しかし1999年に完全埋め込み型脊髄刺激療法が保険適用となり,2010年にNPを適応とするプレガバリンが発売されてから,後を追うように,トラマドール,デュロキセチン,ミロガバリンなどの薬が発売または適応拡大されて,NP患者にとって,治療の選択肢が増えた.最近もNP患者はいるが,それらの薬の発売前と比べると痛みの程度は明らかに軽くなっている.

  • 文献概要を表示

 昨年春以降,コロナ禍で,屋内での三密を避けるため,にわかにアウトドアアクティビティが人気を集めている.なかでも最も手軽で安上がりなのは何と言っても「ウォーキング」=「散歩」ではないだろうか.かく言う自分にも,昨年春以降,週末に多摩川沿いを4〜5km上流まで歩き,電車で帰ってくる,という習慣ができつつある.土手に広がるグラウンドの試合の様子や流れる川面を眺め歩くうちに,いつの間にか日ごろのストレスが消えているのに気がつく.

 NHKのTV番組で養老孟司先生は,コロナ禍で外出できないことによるストレスについてこう語っておられた.「脳内の報酬系であるドパミン回路は,脳が報酬を受けると喜んでドパミンを出すが,ドパミン回路は予定通りの報酬が入ってきても活性化しない.報酬予測誤差と言ってこれくらいの報酬が入ってくれば活性化されるというその予測がずれることでさらに活性が大きくなる.じっとしているのは当然のことしか起こらないから報酬系が活性化されない.そのため外出できないとストレスが溜まってくる」のだそうだ.報酬系には2種類あり,まずはドパミン回路が関係する,動物に備わった習性である「新しいものを追いかける」という「More」が根本にある報酬系だ.そうでない報酬系としてセロトニン回路やオキシトシン回路があり,英語で言う「Here & Now(今・ここ)」と言ったものから受けるおだやかな快楽の経路である.この2つの系の例として恋愛を挙げ,最初は非常にドパミンが働くがそれが日常に収まっていくためにセロトニンやオキシトシンの「Here & Now」に切り替わっていく,というものである.

入門講座 どう選ぶ? 介護保険のリハビリテーション・機能訓練・3

通所介護(デイサービス) 森 剛士
  • 文献概要を表示

はじめに

 介護保険が始まって20年が経過した.筆者は生活期に入った要介護高齢者の生活を支えるために,2000年に慢性期リハビリテーション専門のクリニックに併設する形で通所リハビリテーションセンターを開設した.そしてこの20年の間に通所介護(デイサービスは通所介護の通称.以下,デイサービス,図1),訪問介護,居宅支援介護事業所など,介護サービスのなかでも在宅サービスと呼ばれるものを中心に運営してきた.特に自立支援に特化したデイサービスは全国に約63か所運営している.

 本稿の目的は「患者さんが初めて介護保険のサービスを利用する際に,主に医療者が,リハビリテーションについて適切にアドバイスできるようになること」である.「どのような患者さんに利用を勧めるか」,「医療との連携の具体的な方法」などに主眼を置いて解説する.

実践講座 医療機関における治療と仕事の両立支援・3

  • 文献概要を表示

はじめに

 われわれ労働者は,普段は職場との間で交わした労働契約に基づいて働いており,プライベートとのバランスを取りながら生活している.しかし,子育てでも介護でも病気でも,それまでとは違った状況に置かれたとき,時間的にも経済的にも精神的にもそのバランスを保つことが難しくなることがある.治療と仕事の両立支援とは,疾病やケガに対する治療を受けながら,あるいはそれに伴う障害や副作用を抱えながらも,患者に就労継続の希望があれば,それが可能となるように支援していくことである.

 労働者がいったん患者になると,医療機関との間では同意に基づいた治療を受けることになる.つまり患者(=労働者)を中心に医療機関と職場とでトライアングルが形成されるが,医療機関と職場をつなぐものは診断書しかない.そのため患者自身が病状を正確に理解し,職場に的確に説明することができなければ,職場としても就労可否の判断は難しく,安全配慮義務があるため復職の決定を躊躇せざるを得なくなる(図1).

 両立支援の原則は,私傷病である疾病にかかわるものであることから,労働者自身の申し出に基づいて職場も医療機関も前向きに取り組むというものである.しかし一般論では理解できたとしても,例えばがんを告知された患者が冷静にこうした判断や手続きを行っていくことができるだろうか.不確実性を伴う治療経過の理解は難しく,しかも伝える相手の職場側も医療知識が十分あるわけではない.産業医や産業保健スタッフが常駐している大企業ではこうした情報共有も可能と思われるが,本邦にある企業の99.7%は中小企業であり,全労働者の約6割が産業医の選任義務のない従業員数50名未満の事業場で働いている.

 こうした罹患労働者にとって一緒に考え,情報を整理し,時に心の支えともなってくれる支援者は非常に心強いものである.医療機関の両立支援コーディネーターは治療早期から仕事との両立を見据えてかかわる,まさに伴走型支援をイメージしたものである.

  • 文献概要を表示

要旨 【背景】手指屈筋腱腱鞘炎は,A1 pulley部の炎症と狭窄による腱の滑走障害が原因となる.A1 pulleyストレッチは屈筋腱の掌側への浮き上がりを利用して腱鞘を拡げる治療法だが,これまで報告は少なく適応や有用性は不明であった.そこで,健常者,腱鞘炎患者に対して評価・施行したので,その結果を報告する.【対象】健常者40名80手238指,患者28例32手41指.【方法】健常者に対して近位指節間関節(proximal interphalangeal joint;PIP関節)屈曲位,中手指節関節(metacarpophalangeal joint;MP関節)屈曲位,PIP/MP屈曲位で腱鞘断面縦径・横径,掌側板断面縦径と断面積をエコー下で計測比較し有効性の高い肢位を検討した.その結果から,患者に対してA1 pulleyストレッチを施行した.【結果】健常者での結果は,MP関節屈曲位での負荷が最も有効性が高い肢位であった.次に患者の結果は,中期の症例では,弾発現象の軽減,疼痛やPIP関節可動域の改善が有意に得られたが,重症化した症例では有意に改善しなかった.【結語】A1 pulleyストレッチは屈筋腱腱鞘炎に対して有効な治療の選択の1つとなり,特に侵襲的治療を望まない中期までの症例に対しては試みるべきと考える.

集中講座 評価法の使い方 シリーズ2 各論(疾患別篇)⑩・第22回

神経発達症 橋本 圭司
  • 文献概要を表示

 「発達障害」の概念は時代とともに変化しており,国内では主に重度の知的障害や肢体不自由を合併した重症心身障害児を指して用いられた時期もあった.しかし近年の「発達障害」は,「神経発達症」と呼び方が変わり,世界的動向にならって自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD,コミュニケーションが苦手,こだわりが強い),注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD,不注意,落ち着きがない),限局性学習症(specific learning disorder;SLD,読み書きが苦手,計算が苦手),発達性協調運動症(developmental coordination Disorder;DCD,不器用,運動が苦手)など,知的障害から独立した高次脳機能障害や運動機能障害へとシフトした1)

 米国精神医学会が2013年に改訂したDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth edition(DSM-5)では,従来の発達障害(developmental disorders)はneurodevelopmental disordersとされたが,その訳語として,さまざまな議論の末に「神経発達症」が採用されることになった.本稿では,神経発達症の診断までには至らずとも,発達の特性を評価する発達検査・知能検査,乳幼児期の発達遅滞のスクリーニング法や神経発達症のサインなどについて解説する.

連載 新専門医制度における研修プログラム・第3回

  • 文献概要を表示

広島大学病院における専攻医の採用状況

 広島大学病院リハビリテーション科研修プログラムは,新専門医制度における,広島県で唯一のリハビリテーション研修プログラムである.

 2018年度の新専門医制度スタートから,専攻医の募集・採用を行っている.2018年度には2名,2019年度には4名,2020年度には3名,2021年度には3名(研修カリキュラム制1名を含む),合計で12名の専攻医を採用している(表1).新専門医制度がスタートする以前は,医局員が10名にも満たなかったが,現在はその倍以上の専攻医が加わったことになる.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

  • 文献概要を表示

 大正5年に森鷗外が発表した『渋江抽斎』(旺文社)には,抽斎の妻・五百が脳卒中で倒れた時の様子が描かれている.

 抽斎が亡くなって26年目の明治17年2月10日,69歳の五百は,昼食に蕎麦を食した後,午後3時ごろ煙草を買いに出かけて帰宅してからは,自室で書見をしていた息子・保の背後に立って話をはじめた.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

  • 文献概要を表示

 「誰もが通ってきたのに,まだ誰も見たことのなかった,青春リアリティ映画」と謳う「14歳の栞」(監督/竹林亮)は,とある中学校の3学期,「2年6組」35人全員を被写体とするドキュメンタリー.小学校教員20年,中学校教員15年の実務経験のある筆者にとっては,不可能を可能にした奇跡の一作であり,驚愕するしかない.

 生徒の顔と発言を収録・公開するにあたり,本人,家族,教職員らの許可に加え,教育委員会などにもお伺いを立てたはず.通常であれば,この段階で頓挫する.さらに,上映館では鑑賞者全員に「この映画に登場する生徒たちは,これからもそれぞれの人生を歩んでいきます.SNS等を通じての,個人に対するプライバシーの侵害や,ネガティブな感想,誹謗中傷を発言することはご遠慮ください」という文書が配布された.生徒を守る手立てとして理解できる.となれば,筆者もまた,注意を払わねばならない.個別事例にスポットを当てることを避け,全体を俯瞰したうえで,概括化に注力すべきとの判断に至る.

  • 文献概要を表示

 賢明な理学療法士(以下,PT)の方々は,運動機能のみの対処だけで済むわけではなく,認知機能や精神状態がすべてのヒトの活動に関係し,自ずとアプローチに影響することは実感しているだろう.しかし,世間からPTは認知機能の把握が弱いと指摘されることがあったり,PT自身も取り扱う領域ではないとして,不勉強を棚あげしてしまう人も少なくないようである.そのようななかで,本書は,この領域に少し不安を抱いている若手や,チームワークが求められているのに知らんぷりしているベテラン諸兄に,あえて他職種からそっと手渡しでお勧めしてほしい,そんな一冊である.

 編集は森田秋子氏と後藤伸介氏.控えめに紹介しているが,所属法人の要職に就かれているのはもちろんのこと,永らく回復期リハビリテーション病棟協会などで活躍され業界をリードしてきた重鎮である.きっと,両氏はチームアプローチの先行きとPTの行く末を,心配してくださったに違いない.

  • 文献概要を表示

 本書は整形外科的疾患,脳神経疾患,内部疾患,生活習慣病などのうち,理学療法士が臨床でよく担当する疾患や病態を厳選し,実際の臨床現場でのリハビリテーション医療に生かすための薬剤の知識の理解に焦点を絞って解説している.

 病態ごとに具体的な症例を提示し,その一般的な特徴から,理学療法を施行するにあたっての医師からのリクエスト,そして,理学療法を行うにあたっての薬剤の注意点と効果的な進め方を,医師と理学療法士のそれぞれの視点から説明しており,全ての理学療法士にとって参考になる.また,全項目に共通して,多職種間で行われる臨床上でのやりとりがイラストを交えて記載されており大変読みやすく,その内容も医師から理学療法士へのサイン,問いかけ,助言,心の声など多彩に表現されており臨場感が感じられる.また,処方された薬剤がいつまで使われるか,病期による病態や症状の変化による薬剤の調整,理学療法中の事故を防ぐための中止基準やリスクマネジメント,そして理学療法上のポイントがわかりやすく記載されている.定評のある薬剤の専門書は詳細な解説が魅力ではあるが,理学療法士にとっては難解なものもある.しかし,本書はあくまで理学療法士の視点に立った内容となっており,このような形態の本は今までなかったと思われ,楽しみながら学習することができるのも魅力である.

  • 文献概要を表示

 「手術と術後リハビリテーションは一体であるべき」との北の大地,北海道の強い意志を感じ取れる一冊です.

 本書の構成は総論と各論に分かれています.総論では手術後リハビリテーションで必要な各種評価法,画像の読影法,麻酔の詳細,臨床検査の診かた,そして生物心理社会的因子としての心因性にまで及ぶ内容が網羅されています.各論では,各専門領域の第一線で活躍中のセラピストの先生方が,部位ごとの疾患の特徴と手術の内容,そして術後リハビリテーションを行う際に必要な基礎知識から実践までをわかりやすく解説しています.部位に特化せず,全身にわたって,整形外科で馴染み深い疾患を取り扱った書籍は今まで,あまり目にしたことはありません.

  • 文献概要を表示

 本書は,2019年に出版された「はじめてでも簡単! 3Dプリンタで自助具を作ろう」の続編である.前書は,3Dプリンタの概要やその操作法,自分で3Dデータをモデリングするための方法に焦点を当てたものだった.それを補完する本書は,「まずはひとつ3Dプリントして使ってみよう」というコンセプトのもと,多数の自助具サンプルが掲載されたカタログになっている.ページをめくるごとに,カラフルなアイテムの写真が目に飛び込んでくる.既存物に取り付けられたり,実際に手に持たれたりしている写真からは,これらの自助具が本当に暮らしのなかで使われ,日々生き生きとしている事実が伝わってくる.

 第2部「暮らしの道具カタログ」に掲載されている自助具の種類はなんと206にのぼる.「食事」「移動」「家事」「整容・更衣」「コミュニケーション」「アクティビティ」「訓練用具」「その他」と分類され,具体的な生活シーンがイメージしやすい.この本のハイライトは,サンプルが気に入れば,QRコードからデータをダウンロードして実際に3Dプリンタで出してみることができる点だ.本書に紹介された方法で,一度セットアップができてしまえば,3Dプリントをはじめるまでに5分もかからない.もちろん,データは事前にすべて筆者らが3Dプリントして検証してある.続く第3部「暮らしの道具活用事例集」は「もの」よりもむしろ当事者起点のアイディアと,課題解決のほうに焦点が当てられている.道具の説明も「片手で紙パックドリンクのふたを開けるための道具」や「ベッド上で自分で寝返りができるようになるための道具」など,目的が具体的だ.製作で考慮した点や,結果として活動や行為がどう変化したかなど,より「人」に着目した記録も残されている.

お知らせ

CRASEEDセミナー

--------------------

目次

文献抄録

次号予告

編集後記
  • 文献概要を表示

 「老人の日」—2001年の老人福祉法改正によって9月15日を「老人の日」,21日までの1週間「老人週間」と定められました.ハッピーマンデー制度で2003年から敬老の日が9月の第3月曜日になったことは知っていましたが,それより前に老人の日は制定されていたことを恥ずかしながら全く知りませんでした.

 厚労省によると,15日までに100歳以上になる人は全国で8万6510人超,国内(世界)最高齢は118歳の女性だそうです.118歳ということは1903年(明治36年)生まれ,祖父と同い年です.小学生のころその祖父の喜寿のお祝いがありました.ちょっと変わった風習? があって,子供たちが玄関先で「喜寿です」と声をかけると,「おめでとう」と「ご祝儀(お小遣い)」をくれます.ちょうどハロウィンのような感じでしょうか.大昔のこと,詳しいことはわかりませんし,記憶もあいまいですが,町中の家をみんなで回ったことと,「ざる」一杯の臨時収入(小銭)がものすごく嬉しかったことだけはよく覚えています.そのころの祖父はもう十分にお爺ちゃんでした.その同級生がご存命とは.なんだかとても感慨深いです.

基本情報

03869822.49.10.jpg
総合リハビリテーション
49巻10号 (2021年10月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

文献閲覧数ランキング(
10月18日~10月24日
)