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はじめに
われわれ労働者は,普段は職場との間で交わした労働契約に基づいて働いており,プライベートとのバランスを取りながら生活している.しかし,子育てでも介護でも病気でも,それまでとは違った状況に置かれたとき,時間的にも経済的にも精神的にもそのバランスを保つことが難しくなることがある.治療と仕事の両立支援とは,疾病やケガに対する治療を受けながら,あるいはそれに伴う障害や副作用を抱えながらも,患者に就労継続の希望があれば,それが可能となるように支援していくことである.
労働者がいったん患者になると,医療機関との間では同意に基づいた治療を受けることになる.つまり患者(=労働者)を中心に医療機関と職場とでトライアングルが形成されるが,医療機関と職場をつなぐものは診断書しかない.そのため患者自身が病状を正確に理解し,職場に的確に説明することができなければ,職場としても就労可否の判断は難しく,安全配慮義務があるため復職の決定を躊躇せざるを得なくなる(図1).
両立支援の原則は,私傷病である疾病にかかわるものであることから,労働者自身の申し出に基づいて職場も医療機関も前向きに取り組むというものである.しかし一般論では理解できたとしても,例えばがんを告知された患者が冷静にこうした判断や手続きを行っていくことができるだろうか.不確実性を伴う治療経過の理解は難しく,しかも伝える相手の職場側も医療知識が十分あるわけではない.産業医や産業保健スタッフが常駐している大企業ではこうした情報共有も可能と思われるが,本邦にある企業の99.7%は中小企業であり,全労働者の約6割が産業医の選任義務のない従業員数50名未満の事業場で働いている.
こうした罹患労働者にとって一緒に考え,情報を整理し,時に心の支えともなってくれる支援者は非常に心強いものである.医療機関の両立支援コーディネーターは治療早期から仕事との両立を見据えてかかわる,まさに伴走型支援をイメージしたものである.
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