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はじめに
複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)をはじめとする慢性疼痛の診療においては,薬物療法,神経ブロック,リハビリテーション,心理的アプローチなどを含めた「集学的治療(multidisciplinary treatment)」の重要性が指摘されている1).いずれの治療も向かう目標は共通しており,患者の日常生活機能(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)の向上,とされる.逆にいえば,慢性疼痛診療では,痛みの除去は第一目標にはされない.慢性疼痛では,その器質的要因が明確には特定されないことも多く,特定されたとしても痛みの完全な除去を目指すことが難しい場合も多い.そのため,痛みの除去を第一目標にすると行き詰まりを生じやすく,患者の痛みへの過度なとらわれを生みかねないのである.
2021年6月に発行された「慢性疼痛診療ガイドライン」1)では,推奨度・エビデンスレベルの比較的高い(2B:行うことを弱く推奨する)心理的アプローチとして,「認知行動療法(cognitive behavioral therapy)」,「マインドフルネス(mindfulness)」,「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy;ACT)」が挙げられている.これらの心理的アプローチは一般に,痛みの遷延化にかかわる患者の「認知(物事の捉え方)・行動」のパターンや機能に焦点をあて,それによる悪循環を好循環につなげるのに有用である.ACT(アクト)は,第三世代の認知・行動療法とも呼ばれるが,その特徴として,「慢性疼痛診療における治療文脈(方向性)の設定」にも大いに役立つと考えている.本稿では,そうしたACTの特徴に焦点を当てつつ,名古屋市立大学病院(以下,当院)いたみセンターでの実践について触れる.
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