総合リハビリテーション 48巻10号 (2020年10月)

特集 認知症ケアのプラットフォーム

今月のハイライト
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 認知症ケアは,認知症リハビリテーションを実施するうえでも必要不可欠なツールの一つとなっています.さる2019年6月に「認知症施策推進大綱」が取りまとめられ,医療・介護・福祉の分野において認知症リハビリテーションとともに認知症ケアのより一層の充実が求められています.そこで,本特集では,「認知症ケアのプラットフォーム」として,パーソン・センタード・ケア,バリデーション,STrAtegies for RelaTives(START)プログラム,認知症カフェ,さらにはDementia Friendly Communityを取り上げ,それぞれ第一線でご活躍されている先生方に解説していただきました.

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はじめに

 パーソン・センタード・ケア(Person-centred care)の-centredの辞書的な意味は「having the thing mentioned as the most important feature or centre of attention(最も重要な機能または注意の中心として言及された物事がある)」1)であり,パーソン・センタード・ケアを直訳すると「人(person)を重要視するケア」である.-centredという概念は,認知症ケアのみならず,保健・医療・福祉領域で,支持されるようになっており,patient-centred2),client-centred3)などが提唱されている.また,世界保健機関は,people-centred4)な医療サービスを包括的な枠組みとして推奨している.日本の認知症施策推進大綱においても「認知症の人本人の視点に立った」認知症バリアフリーの推進が謳われている5)

 このように医療・保健・福祉サービスが中心に据えている当事者(patient,client,people,person)本位の標榜は,サービスの自己決定,その人の嗜好に合ったサービスの提供を示している場合が多い.本稿ではパーソン・センタード・ケアの概念について概観したうえで,その思想が目指すことや実践について説明する.

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はじめに

 認知機能の病的な低下だけでなく,それにより社会生活に支障を来した状態が認知症であるにもかかわらず,認知機能の低下や精神症状ばかりが着目され,認知症高齢者の生活上の問題が見落とされがちな対応を目にすることがある.現時点で多くの認知症の原因疾患に対する根治療法がないからこそ,生活の困りごとをいかに解決していくかが大切であり,そこで重要になるのが認知症の人とのコミュニケーションである1).近年は,特別養護老人ホームや介護老人保健施設だけでなく,介護付き有料老人ホームなどの高齢者向け住まいや在宅で生活する認知症高齢者も増えている.そのため,通院や通所,訪問系サービスの利用場面など,さまざまな場面で認知症高齢者のコミュニケーションや関係性構築がわれわれに求められる.

 認知症高齢者のケアには介護者の主観的な判断が数多く含まれ,個人の経験として内在化されやすい2)が,ケアにおける不確かで暖味な感覚にこそ,重要なケアの根拠が含まれているとの指摘もある3).一方で,優れたコミュニケーションスキルで対象者との関係性を構築することに長けた介護者であったとしても,安全性が考慮されていなければ本末転倒である.以上より本稿では,まず認知症高齢者との代表的なコミュニケーション法であるバリデーションとユマニチュードについて紹介する.次に,介護者の主観的な判断を可視化することの重要性について言及する.さらに,これらの方法を活用することの意義を安全管理の観点から解説し,実践への提言を行う.

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認知症家族介護者の介護負担と心理状態

 厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)では,介護者支援を中心施策の1つに定め,心理的ケアも含めた包括的な支援が必要としている1).認知症介護に携わる家族介護者(以下,家族介護者)は,認知症患者の認知機能・生活機能低下への支援,Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)への対応,患者の失われていく機能への悲哀,家族内の役割変化とそれをめぐる不和,家族介護者自身の余暇や社会的つながりの減少,などにより,心理・身体的に大きな負荷を経験する.

 家族介護者の抑うつ・不安の有病率は30〜50%と報告されており2-4),家族介護者の心理状態の悪化は,虐待や,患者の施設入所が早まりと関係する.介護者への心理社会的支援によって施設入所を遅らせることができることも示されている5)

認知症カフェの役割 武地 一
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はじめに

 認知症ケアの拠点として認知症カフェが全国に増加しており,2018年度時点で全国7,000か所を超えた(図1).単純計算すると,人口2万人に1つのカフェがあることになる.認知症カフェが認知症ケアのプラットフォームとしてどのような意味合いをもっているか検討する前に,認知症という疾患を見直しておくことが重要であろう.

 認知症には多くの疾患が含まれるが,その6〜7割はアルツハイマー型認知症であるとされる.物忘れ外来などの早期診断の場では,それに加えて,軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)と診断される患者も多い.MCIの段階で既にアルツハイマー型認知症が始まっていると考えられる場合も多く,MCI due to Alzheimer's Disease(AD)と診断される.

 MCIの段階では一般的に,手段的日常生活活動(instrumental activities of daily livings;IADL)も大部分は保たれているとされており,近時記憶障害などの認知機能低下が一部に年齢相当を超えて認められる状態である.しかし,MCIの時期から本人や周囲の家族の喪失感や本人と家族のあいだの心理的軋轢が始まり,認知症とともに歩む道のりはそのあと5年,10年,15年と続く.

 認知症のうち2割程度は脳血管性認知症であり,その場合は,新規の脳梗塞を発症することによって階段状に病気が悪化していくとされるが,脳血管性認知症の背景には動脈硬化や心房細動などの慢性疾患であったり,アルツハイマー型認知症との混合性であったりすることも多く,アルツハイマー型認知症などの変性疾患による場合も,脳血管性認知症の場合も慢性進行性疾患といえる.

 では,そのような慢性進行性疾患においてリハビリテーションはどのようなかかわりが可能なのであろうか? 認知症の薬物療法としては,アルツハイマー型認知症に対してコリンエステラーゼ阻害薬などの進行を緩やかにする薬剤が使用されている.根本治療薬の開発もワクチン治療の可能性を示す論文などをきっかけに20年にわたり原因物質であるアミロイドβやリン酸化タウをターゲットとした薬剤の開発が行われてきたが,現時点で市販されている根本治療薬はない.一方で,非薬物療法として音楽療法,回想法,運動療法などが試みられ一定の効果を示しているが,補助的な活用にとどまっている.

 また,認知症施策推進大綱で「共生と予防」と謳われているように,予防,すなわち,その1つとして認知症発症のリスクを減らすことについても試みが行われており,運動,脳トレ,栄養指導,生活習慣病管理を一体的に行うことやライフスタイルの効果が検討されているが,まだエビデンスを蓄積しようとしている段階である.そのような状況の中,認知症カフェはどのような役割を果たすのであろうか? リハビリテーションという視点で考えたとき,認知症カフェは保たれている能力を生かすことや生活の再構築という点に寄与することが期待される.その際にセラピストと本人という枠組みだけではなく,認知症カフェのもつ地域の拠点という性格や,本人だけでなく,家族や地域の人々のエンパワメントも通じたかかわりを念頭に置くことが重要である.なぜなら,認知症という疾患は記憶力の低下や意欲の低下を伴いやすく,一方で,パーソン・センタード・ケアでも示される周囲のかかわりが本人の生活の質(quality of life;QOL)にもたらす影響が大きいからである.認知症の発症頻度を考えたとき,誰もが認知症になる可能性があり,認知症への備えをしっかりと行っている社会をそれぞれの人が構築していくことが大切である.

Dementia Friendly Community 粟田 主一
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はじめに

 Dementia Friendly Communityとは,認知症に対する偏見や差別をなくし,「Living well with dementia」を可能とする社会である.

 Dementia Friendly Communityは,日本語では「認知症にやさしい社会」と訳される場合が多い.しかし,徳田雄人氏はこれを「認知症フレンドリー社会」と訳し,その意味を以下のように明快に説明している.「ここで使われているフレンドリーというのは,ユーザーフレンドリーという言葉のように,○○にとって使いやすいとか○○に適応しているという本来の意味」であり,「認知症があっても,日常生活や社会生活が不自由なく送れるような地域や社会というのが,本来のニュアンス」である.「やさしさの問題ではなく,どのような人の利用を想定しているのかという設計プロセスの問題」であり,「行政サービスであれば,認知症や障害があっても,等しく受ける権利があるというアクセシビリティの問題」である1).また,同氏は,「認知症対処社会」と「認知症フレンドリー社会」を対比させ,前者の基本理念は「社会的負荷の軽減」であるのに対し,後者の基本理念は「誰もが普通に暮らせる社会の設計」であること,前者の成果指標が「事件・事故・問題行動の減少,介護負担の軽減」であるのに対し,後者の成果指標は「認知症の人の生活の質(quality of life;QOL),社会環境のフレンドリー度,認知症の人の声の反映度」であるとしている2)

 一方,Living Well with Dementiaは,2009年に公表された英国の認知症国家戦略の表題に掲げられたスローガン3)であるが,今日では英国にとどまらず,その理念の下に多様な活動が世界規模で展開されている4-6).日本語では,「認知症とともによりよく生きる」,「認知症とともによき人生を生きる」,「認知症とともに幸福に生きる」と訳されることが多い.いずれの訳も誤りではないであろう.しかし,重要なことは,その背景に,認知症であることによって,偏見と差別に直面し,普通に暮らすことが阻まれてきたという当事者の深刻な体験がある.そして,当事者らが偏見と差別の克服をめざして,自分自身の体験を語る活動を開始し,それがその後の世界の認知症施策に重大なインパクトを与えたという事実があることを忘れてはならない.

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 リハビリテーション療法士による治療の恩恵を受けることができない地域は,わが国にはほとんどなくなった.小さな離島で活躍する療法士の報道などを目にすると,頼もしく感じるものである.では,リハビリテーション科専門医は,日本全国で行われている,すべてのリハビリテーション医療にかかわることができているだろうか.古典的な医療モデルで考えれば,専門医の直接的なかかわりがある患者のほうが多数とはいえないのが現実である.

 小生がリハビリテーション科専門医の認定を受けたのは2005年.内科医として研修途中に転向したので,ようやく自身の居場所を得たような気分だった.専門医としての仕事は,その冥利に尽きるという表現がうってつけで,患者とその家族が笑顔になっていく過程にチーム医療で寄り添える喜びを味わった.ところがリハビリテーション科を標榜していながら専門医不在の病院が多数存在すること,さらに,一病院どころか地域全体に専門医が不在というところまであることを知るようになると,そのような地域へも専門医が貢献できる方法はないのかと思案するようになっていった.

入門講座 転倒リスクアセスメントと予防・4

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はじめに

 最近は新築住宅のバリアフリー化が進む一方で,高齢者が長年居住する住宅についてはおおむね未整備のままである.特に転倒リスクが高い後期高齢者の住宅ではその傾向が強い.在宅生活を送る,また自宅退院する高齢者の健康寿命延伸に向けて,住環境の安全性向上は重要な生活支援である.本稿では,住宅での転倒予防を支援するうえで各専門職が備えておきたい住環境整備の基礎知識をご紹介する.

実践講座 がんのリハビリテーション—診療ガイドラインをどう活用するか・8

進行がん・末期がん 宮田 知恵子
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はじめに

 進行がんは,がんの局所進展の程度が大きい,あるいは,リンパ節転移や遠隔転移を来した状態のがんであり,末期がんは,死期が迫っている病期にあるがんを示す.近年,がん治療や技術の進歩により進行がんに対する治療選択の幅が広がり,療養場所やリハビリテーション治療ニーズにも変化がみられている.したがって,「がんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版(以下,改訂GL)」1)では,初版にて「在宅進行がん・末期がん」としてまとめられた章が「進行がん・末期がん」と変更されてまとめられている.

実践講座 運動器外傷の画像診断・2

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はじめに

 非荷重肢である上肢の骨折の主な治療目的は,早期の可動域訓練により日常生活動作(activities of daily living;ADL)の獲得を早めることである.そのためには,単純X線,コンピュータ断層撮影(computed tomography;CT),核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI),エコーなど複数の画像検査を組み合わせて正確に骨折の状態を把握することが重要である.それにより適切な治療計画を立てることが可能になると考える.

 一方,小児の骨の単純X線写真では,成人と異なり軟骨部分が多く,骨折の病態を把握することが困難な症例を経験する.しかし,診断や治療の遅れは高度な変形や,重大な機能障害をもたらす可能性がある.本稿では受傷頻度の高い上肢骨折と,見逃してはいけない小児の肘関節周囲骨折について概説する.

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要旨 【背景】主観的(quality of life;QOL)は心理的側面を評価したものであり,対象者の性格の影響を受けると考えられる.また,高齢者の社会参加も性格の影響を受けると考えられる.本研究は予備的研究として,地域在住高齢者の性格が主観的QOLに及ぼす影響の有無,および社会参加との関連性を明らかにすることとした.【対象】地域在住高齢者20名とした.【方法】Philadelphia Geriatric Center(PGC)モラールスケールと社会参加として役割,地域活動,趣味活動の有無を聴取した.性格特性は日本語版Ten Item Personality Inventory(TIPI-J)にて評価した.【結果】PGCモラールスケールとTIPI-Jの外向性に有意な相関関係が認められ(r=0.47),役割,地域活動,趣味活動の有無において効果量小であった(d=0.36,0.47,0.39).役割はTIPI-Jの外向性(d=0.84)と開放性(d=0.95),地域活動と趣味活動は開放性(d=0.88,0.87)において効果量が大きかった.【結語】性格は主観的QOLおよび社会参加に影響を及ぼすことが示唆された.

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要旨 【目的】失語症者に対する発話の集中訓練である(constraint-induced aphasia therapy;CIAT)は,欧米では盛んに報告されているが,本邦での報告は多くない.そこで今回,筆者らは,Johnsonらの報告を参考に日本版CIATを作成し,慢性期運動性失語症患者6名に対して実施した.【方法】訓練は,1日3時間を15日間実施し,難易度調整した5つの言語訓練をすべて個別に実施した.訓練中,代替コミュニケーションは制限し,発話の使用を促した.評価は,日常生活での発話の使用状況を評価する質問紙verbal activity log(VAL)とWestern Aphasia Battery(WAB)失語症検査失語症指数を用いた.【結果】治療後のVALのスコアに顕著な増加を認め,日常生活での発話の使用状況に改善を認めた.また,WAB失語症検査失語症指数は,一定の改善を認めた.【結論】今回の少数例での検討では,筆者らが作成した日本版CIATが日常会話に改善をもたらす可能性があることが示唆された.

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要旨 Functional Independence Measure(FIM)の運動項目(motor FIM;mFIM),FIMの認知項目(cognitive FIM;cFIM),年齢によって層別化した群における実績指数を明らかにする.【対象と方法】対象は,回復期リハビリテーション病棟を退院した脳卒中患者1,336例.方法は,mFIMを7群,cFIMを5群.年齢を4群に層別化して,各群の実績指数を求めた.【結果】実績指数の算出において患者除外ができないmFIM 21〜75点,cFIM 25〜35点,79歳以下の群は,いずれも実績指数が37以上あった.患者除外が可能な群でも,mFIMが18〜20点とcFIMが20〜24点では実績指数が37以上あり,mFIM 15〜17点と76〜80点,cFIM 10〜19点では実績指数が27以上あった.【結論】患者除外が可能な群であっても,実績指数が37以上や27以上の群が存在した.

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41歳で脳梗塞を発症した当事者の感覚とは

 「脳コワさん」とは耳慣れない言葉であるが,「脳がこわれた人」の略で,もともとは著者の奥さんの造語だという.

 『「脳コワさん」支援ガイド』(医学書院)の著者である鈴木大介氏は「社会派」のルポライターで,『家のない少女たち——10代家出少女18人の壮絶な性と生』(宝島SUGOI文庫,2010年),『最貧困女子』(幻冬舎新書,2014年),『老人喰い——高齢者を狙う詐欺の正体』(ちくま新書,2015年)など,「社会的弱者」を守る著書を若くして10冊近く出していた.しかし,過労のためか2015年に41歳で右脳の脳梗塞を発症.幸い麻痺は軽く,すぐに歩行でき,左手の麻痺も間もなく回復したが,左半側空間無視をはじめとする多彩な高次脳機能障害に大いに苦しむことになる.

集中講座 評価法の使い方 シリーズ1 総論⑨・第10回

QOL 田島 明子
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 QOLは「quality of life」の略であり一般的に「生活の質」,「人生の質」などと理解されているが,日本のリハビリテーション医療で注目されるようになった大きな背景要因は時代的に捉えて何点かある.1点めは,1948年に世界保健機関(World Health Organization;WHO)がWHO憲章前文に示したQOL構造の基盤となる多要素・多次元的な健康定義である.

 その後1998年には健康定義に「spirituality」を加えることの提案があったり,1995年にはWHOQOLとしてQOLの定義も示されたりしているが,2001年に発表された国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health;ICF)の「Functioning:生活機能」との概念的な整合性があり,QOLの多要素・多次元性が確定的なものとして普及したと考える.

連載 ユニバーサルデザイン・第6回

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緊急時対応に向けたまちの指針の構築の重要性

 筆者は,2018年度から岐阜県高山市の「高山市誰にもやさしいまちづくり推進会議」の会長を務めている.その推進指針ではユニバーサルデザインの7原則に基づき,まちづくりの視座をさらに4つにまとめている.4つの視座とは,「簡単」,「安全」,「快適」,「自由」である.筆者は永らく都市開発・地域開発も専門にしながらユニバーサルデザインの推進にかかわっている.

 そこでまず大切な点は,生活者の価値観を大切にしながらユニバーサルデザインの方向性を指針としてまとめて,地方自治体が生活者と共有化することである.高山市では,地震・台風などの一般的自然災害とともに,雪の影響や寒冷傾向など,厳しい気候面も指針で考慮する必要がある.また日本有数の観光地であり,テンポラリーに訪問した外国人を含む観光客も考慮した災害などの緊急時対応を指針で考える必要である.しかも,市町村の合併で東京都23区よりも広い市となっている.高山市は多様な緊急時対応を考慮すべき自治体になっている.

連載 クラウド・IT時代のリハビリテーション診療・第3回

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 わが国は世界トップの高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)であり,急速なスピードで超高齢社会に至っている.特に首都圏では,1947〜1949(昭和22〜24)年ごろの第一次ベビーブームに生まれたいわゆる団塊の世代が高齢者となり,急激な高齢者増加への医療と社会的対応が求められている.

 一方,地域における医療・介護,社会資源には限りがあるため,病院機能分化が加速するなか,計画期間内に医療を集約化し,病院,施設や在宅生活の場を含め多施設間で医療情報を共有化し連携する仕組みづくりは喫緊の課題である.

Sweer Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1912年にトーマス・マンが発表した『ヴェニスに死す』(高橋義孝訳,新潮社)は,コレラ流行時に行政当局がとった不適切な対応のために主人公が亡くなるという話でもある.

 数年前にガンジス川の三角州の暑熱の湿地帯に発生したコレラが次第に蔓延し,全インドを持続的かつ猛烈に荒れ狂った挙句,東は中国,西はアフガニスタン,イランへと及び,パレルモやナポリなど地中海の港にもほぼ同時に姿を現わした.それでも北イタリアは安全だったが,今年の5月中旬にはヴェニスでも水夫と野菜売りの女性の憔悴しきって黒ずんだ死体の中に,コレラ菌が発見されたのである.

Sweer Spot 映画に見るリハビリテーション

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 近年,学校の部活動が「ブラック部活」と形容されるほどに問題視されている.生徒,教員の心身を疲弊させ,追い詰め,時には,自死という悲劇さえ招いているからだ.一方,映画が描く部活は,概して生徒たちの成長譚.部活に宿る教育力や人格形成機能を讃える.これもまた多くの人々の部活の記憶,換言すれば<心の真実>と重なる.

 「のぼる小寺さん」(監督/古厩智之)は,大学の教職課程などで学びの対象となるヴィゴツキーの<発達の最近接領域>の理論を想起させるという点で出色.<自分一人でできること>と<自分一人でできないこと>の間に,一定の助けがあればできる領域がある.それが,現下の発達水準に対して「明日の発達水準」として喩えられる<発達の最近接領域>.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 本誌47巻9号のSweet Spotで二通先生も取り上げてくださっている,「ぼけますから、よろしくお願いします。」.認知症の母を高齢の父が介護するという構図は義両親の姿と重なることもあり,これまで何となく観ることを躊躇していました.今月の特集を編集しつつ,ついにこのほど鑑賞しました.映画の中では,認知症になった母親の苦悩が映し出されています.「私はいないほうがいいんだ」,「もう死にたい」と泣き,うめく母親の姿はやはり過酷で,身につまされます.認知症になって一番傷ついているのは本人であると改めて認識させられます.

 本特集では「認知症ケアのプラットフォーム」として,「パーソン・センタード・ケア」,「バリデーションとユマニチュード」,「STARTプログラム」,「認知症カフェ」,「Dementia Friendly Community」を取り上げ,解説をしていただきました.編集作業をしながら,認知症の家族と接するということについて,すごく勉強をさせていただきました.そして,ずっと気になっていた映画も観ることができました.役得です.ありがとうございます.

基本情報

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総合リハビリテーション
48巻10号 (2020年10月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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