総合リハビリテーション 48巻11号 (2020年11月)

特集 ハイリスク児とリハビリテーション

今月のハイライト
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 近年,生物学的・医学的あるいは社会的要因によって生ずる,急性あるいは慢性的な疾患,成長発達上の障害や遅れなどの予後不良のリスクのある新生児(ハイリスク児)の割合が増加している.ハイリスク児の多くは新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)に入院し治療やケアが必要となる.周産期医療の進歩により,早産児の救命率は上昇傾向にあり,特に妊娠28週未満の早産児でそれは顕著である.またハイリスク児の多くがNICU を生存退院し,年月を経て年長者は成人となってきている.リハビリテーションの現場でも,ハイリスク児に対応する場面が増えている.本特集では,ハイリスク児にかかわるさまざまな分野の専門家に,その現状と課題を解説していただいた.

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はじめに

 近年,ライフスタイルの変化とともに晩婚化が進み高齢妊娠の割合が増加している.また医療の進歩に伴い生殖補助医療による多胎妊娠の割合は増加し,合併症をもつ女性が妊娠できる機会が増えてきている.このような症例では妊娠に伴うリスクが高くなり,その結果生まれてくる新生児もハイリスクとなる可能性が高くなる.新生児医療の発展はめざましく,早産児の救命率は上昇傾向にあり,特に妊娠28週未満の超早産児でそれは顕著である.

 しかし救命率上昇の一方で,早産児や低出生体重児では長期的な神経学的障害を合併する割合が高いことが知られており,低出生体重児のintact survival(後遺症なき生存)と思われたなかにも,高次脳機能障害児が少なくないことがわかってきた.

 その原因の1つとして新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)での過剰なストレスによることが脳科学研究から示され,intact survivalを目標にディベロップメンタルケアという概念が導入され,ここ数年で広まりをみせている1)

 このような背景から,新生児に関連するリハビリテーションの必要性は今後さらに増していくと考えられる.

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はじめに

 ハイリスク児に対する適切なフォローアップ・早期療育介入の実践においては,何らかの評価指標を用いた介入要否の判断が重要となる.特に療育やリハビリテーション医療の分野において,その介入指標として主に神経学的成熟度評価や運動・行動評価が用いられている.代表的な評価方法として,Hammersmith Neonatal Neurological Examination(HNNE),Hammersmith Infant Neurological Examination(HINE),Prechtlのgeneral movements(GMs)観察法,Brazelton新生児行動評価法(Neonatal Behavioral Assessment Scale;NBAS)がある.本稿では,これらの評価方法の特性を解説する.また,それぞれの評価方法に関する近年の研究や知見を紹介し,ハイリスク児の評価において大切な視点について述べる.

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はじめに

 ハイリスク児とは,発育・発達過程において何らかの問題が生じる可能性があり,経過観察や必要に応じた発達支援が必要になる児のことをさすとされている.近年,わが国における出生数は減少しているが,周産期および新生児医療の進歩に伴う救命率の上昇により,ハイリスク児の数は増加している.その生命予後の良さは世界最高水準で,超低出生体重児の80%以上が生存可能1)となっている一方,脳性麻痺以外に神経発達症や限局性学習症も高頻度に生ずることも明らかとなっている.それらの問題は成長とともに顕在化し,発生そのものを防ぐことは容易ではないが,早期から介入を開始し長期にフォローアップすることで,障害の程度を軽減できるといわれている1)

 国立成育医療研究センター(以下,当センター)は,リスクの高い母体や胎児,新生児に対する高度な医療を提供している総合周産期母子医療センターである.新生児集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU),growing care unit(GCU)合わせて39床を有しており,早産・低出生体重児をはじめとして,人工呼吸管理や各種の外科手術が必要な児など,年間約370件の入院がある(表1)2).そのほかにも,低酸素性虚血性脳症,脊髄髄膜瘤,染色体異常など,さまざまなハイリスク新生児が入室し集中治療・管理が行われるなかで,早期からのリハビリテーション介入も行っている(図1).NICU入院中から外来,在宅や地域へのリハビリテーション移行を含めた当センターの取り組みを紹介する.

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はじめに

 乳幼児期における睡眠は,単に脳を休ませるものではなく,発達途上の脳が成熟するために必要な神経生理学的活動である1).乳幼児の適切な睡眠を理解することは,子供の健康な心身の発達と家族の精神衛生をサポートするために非常に重要である.

 本稿では総論として胎児期からの発達過程における睡眠の変化,さらに初期発達における睡眠の意義について,各論では臨床的な立場から,乳幼児の慢性不眠障害とハイリスク児(神経発達症)の睡眠障害について述べる.

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はじめに

 小児医療・小児保健の進歩により,事故による不慮の死亡も含め,近年亡くなる小児の数は減少している.

 新生児集中治療室(neonatal intensive care unit; NICU)に入院し,治療やケアが必要であったハイリスク新生児も,思春期,成人期まで生存することが期待できるようになり,慢性疾患や障害をもっていても,その子が,その子らしく生きていくために,多職種で支援し,合理的配慮を行える社会の構築が求められている.

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 川崎の障害者支援施設に赴任してあっという間に15年以上になりました.れいんぼう川崎は,生活施設(生活介護事業と施設入所支援)をベースに,総合相談・短期入所・通所(自立訓練事業)・訪問(川崎市単独事業=在宅リハビリテーション事業)を行う多機能型の拠点です.1996年の開設当時,全国的にもかなり珍しい施設でした.福祉職とリハビリテーション専門職がチームを組み,リハビリテーション医の管理のもと,障害者の生活上の目標の実現のために協働しています.出前研修やパラスポーツ普及活動なども行っています.

 支援はリハビリテーションとケアと医療の技術を総動員して行います.支援チームの中心は福祉職です.障害のある人とともに目標を設定し,計画を共有し,進捗状況を調整する前面に立つのは福祉職で,医療職はそれを側面から支えます.これは,生活期のリハビリテーションを進めるにあたり効果的な構造である,とひしひしと感じています.病院の中では患者として治してもらうという心持ちであった方が,自分の人生をどうしていくのか自分で考えるという生活者としての心持ちに至っていくときに,福祉職は大いに力を発揮します.人生の途中で大きな障害を負ったとき,機能や心身構造,失ったものに目をうばわれるのは当然で,他者からみれば非現実的ともとれる目標にとらわれる姿はよくみられます.そこに寄り添い,葛藤を聞き取り,強みや新しい生き方に目を向けるきっかけとなる活動を提示する引き出しを福祉職は多くもっています.治療者という役割を期待させないところが彼らの強みです.そして,福祉職は訓練室での機能や能力の向上を生活上のどこに生かすのか,についてシビアで現実的な目を向けています.医療職は予後を見極めるとともに,新しい生き方に照らして何を達成すべきかきっちりと整理し,そこに注力して専門技術を提供します.福祉職と医療職がフラットな関係で,お互いの専門性を尊重したきめ細かい連携をとることが非常に重要と考えています.

入門講座 3Dプリンタを使ってみよう!・1【新連載】

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はじめに

 Three dimensional printer(3Dプリンタ)は,成形型を用いずに単品または少数のモデルが製作できる,形状の異なる複数のモデルを一度に短時間で製作できる,そして製作自体は個人の技術力に依存しないなどの特徴を持つことから,ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)のツールとして,1990年ごろより産業用として利用されてきた.ラピッドプロトタイピングとは,試作品をより速く製造するための技術である.つまり従来の3Dプリンタは,デザインの実体化や形状確認用の試作という用途が主流であった.

 一方でinformation and communication technology(ICT)の発展は,モノや情報と個人との関係性において,われわれの生活にさまざまな変革を与えてきた.モノづくりにおいては,デジタルファブリケーション1)とよばれる大きなインパクトを生み出した.デジタルファブリケーションとは,「デジタルデータからさまざまな物質(フィジカル)へ,またさまざまな物質(フィジカル)をデジタルデータへ,自由に相互互換するための技術の総称」2)といわれており,そのなかで3Dプリンタは,デジタルファブリケーションを実現する技術の1つとされている.そして情報のみならず,実体を作り出すモノづくりとつながることにより,個人の個別ニーズや嗜好とより近い関係性をもつことができるようになることを示唆している.

 よって,3Dプリンティング技術は,福祉用具や各種支援機器・道具に求められる“多様な個別性に対応する”という課題に対処できる可能性をもつ.すでに3Dプリンタを活用したさまざまな取り組み事例は国内外問わず紹介され3),リハビリテーション関連機関や特別支援教育での教材製作などの取り組み事例が報告されている4-6).今後も3Dプリンティング技術の活用範囲は,ますます広がっていくことが期待される.

 そこで本稿では,3Dプリンタの特徴と種類,3Dデータ作成から出力までの流れ,そして福祉用具や支援機器の適合相談場面などの支援技術サービスにおいて期待される,3Dプリンティング技術について概説する.

実践講座 運動器外傷の画像診断・3

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はじめに

 骨粗鬆症治療薬としてのビスフォスフォネート製剤の登場以降,大腿骨近位部骨折発生の抑制は認められるが,80歳台後半から90歳台にかけての患者数の増加は,依然増加傾向にある1).また,軽微な外傷を契機とする非定型大腿骨骨折も,認知度の高まりにより完全骨折のみならず,不全骨折の段階で診断されることも増えてきている2)

 大腿骨近位部骨折,非定型大腿骨骨折は,寝たきりの原因になるばかりではなく,受傷後の生命予後も短縮させるため,大きな社会問題となっている3).急性期医療,それに続く回復期リハビリテーション医療の主要対象疾患であるといえる.

 大腿骨近位部骨折の治療選択は,画像診断における骨折のタイプや全身状態を考慮して決定されている.画像診断は骨折の診断のみならず,治療経過中の判断においても重要であり,リハビリテーションを進めていくうえで欠かすことはできない.本稿では,外傷初期および治療経過中の画像診断の要点を概説する.

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要旨 【背景】右下腿切断者は,自動車運転のアクセルやブレーキ操作に支障が生じることが考えられるが,運転再開に至る経過や有用な支援方法は明らかになっていない.そこで,入院中に自動車運転再開を支援した右下腿切断者の経験について報告する.【対象】東京都リハビリテーション病院に入院し,入院中に自動車運転再開を希望した右下腿切断者3名.【方法】すべての症例に対して入院中にドライビングシミュレーターを使用して運転の操作能力を評価し,実用性の高い運転方法を検討した.また,退院後の自動車運転再開に至る手順を説明した.さらに,運転再開後の経過について聴取した.【結果】同じ右下腿切断者であっても,入院中の身体機能に応じた実用性の高い運転方法は異なっていた.退院後の運転方法は,入院中に検討した運転方法と一致していた.【結語】右下腿切断者の運転再開において,入院中の身体機能に応じた実用性の高い運転方法を提示することは,交通社会への円滑な復帰の一助となる可能性が示された.

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要旨 【目的】嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing;VF)および嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing;VE)の実施状況に関する調査を行った.【方法】日本言語聴覚士協会公式ホームページにて公開されている施設検索に掲載され,摂食嚥下障害に対応している医療系施設3,412施設を対象に,郵送にて無記名アンケート調査を実施した.【結果】回答が得られた1,524施設(回収率44.7%)のうち,摂食嚥下リハビリテーションを実施していると回答した医療系施設1,473施設(96.7%)を分析対象とした.摂食機能療法を算定せずに摂食嚥下リハビリテーションを実施する場合があると回答した施設は1,127施設(76.5%).VF・VEを導入している施設はそれぞれ1,065施設(72.3%),837施設(56.8%)で,どちらも導入していない施設が233施設(15.8%)であった.また,摂食嚥下リハビリテーションの依頼のあった症例への画像検査の実施率の中央値はVF・VEともに10%であることが明らかとなった.【結語】既存の報告と比較するとVF・VEの導入は進んでいる可能性が示唆されたが,実施状況には施設によって大きな差が認められた.

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要旨 【目的】本研究の目的は,熱傷患者における転帰別の患者特性および日常生活活動(activities of daily living;ADL)の差異を検証することである.【方法】対象は熱傷患者29例とした.患者特性は年齢,受傷原因,熱傷の重症度,熱傷治療の内容,理学療法開始病日,理学療法介入日数,在院日数,理学療法提供量,Functional Independence Measure運動項目(motor FIM)を後方視的に調査し,転帰別に比較した.【結果】受傷原因は火炎熱傷が69.0%(20例)と最も多く,自殺企図は27.6%(8例)であった.転帰は退院8例,転院21例であり,自殺企図例はすべて転院であった.転帰別の比較では,1日あたりの理学療法単位数とPrognostic Burn Index(PBI),最終時motor FIMに有意差を認めた.【結語】転帰には受傷原因やPBIが影響し,転帰の好転には理学療法の提供量の増加や心理的サポートが重要であることが示唆された.

集中講座 評価法の使い方 シリーズ1 総論⑩・第11回

社会参加・就労 倉兼 明香 , 高岡 徹
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社会参加

 社会参加とは,先行研究の中でさまざまな定義が示されてきている1)が,統一されたものではなく,日本リハビリテーション医学会においては,『社会参加』を『社会での活動』として捉えるようにしている.国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)に当てはめて考えると,社会参加は,活動と参加の領域を構成する要素に相当し,特に『生活・人生場面への関わり』という観点を含む.具体的には,家庭生活から地域・社会生活,対人関係,教育,雇用,経済,余暇,宗教,政治活動などさまざまで複雑な活動であり,その活動場面へかかわることが社会参加と捉えられるが,これらを網羅し,統一的に評価することは簡単なことではない.また,ライフステージによって属する社会や役割の変化があり,疾患によっては参加制約の生じる状況などに違いがあることから,社会参加の評価法は,所属集団や疾患別に開発される傾向がある.評価する対象の特徴によって適切な評価法を選択する必要がある.

 今回は疾患別に社会参加の評価法について調査することとし,リハビリテーション分野でかかわりの多い脳卒中,外傷性脳損傷,脊髄損傷,脳性麻痺の4疾患を対象とした.

連載 ユニバーサルデザイン・第7回

観光のユニバーサルデザイン 西山 敏樹
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伝統的な建造物,自然環境とユニバーサルデザイン

 生活に彩りを添えるものに観光があり,われわれ生活者はしばしば旅行に出る.この愉しさは,あらゆる人々が享受すべきものである.最近では,高齢者や障がい者,外国人,さらには小さい子供とその親などを意識した旅行のメニューも用意されている.まさに,観光のユニバーサルデザイン推進が進められている.

 前回に続くが,筆者は岐阜県高山市の「高山市誰にもやさしいまちづくり推進会議」の会長を務めている.この推進会議では,「一大観光都市+生活都市」のユニバーサルデザイン推進を検討する大変貴重な経験をさせていただいている.この議論に基づき観光分野の改善のポイントを解説する.

連載 クラウド・IT時代のリハビリテーション診療・第4回

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 Information and communication technology(ICT)による遠隔診療は,1997年厚生省健康政策局長通知があり,2015年8月には,へき地・離島や難病患者などで患者側の要請に基づき,直接の対面診療と適切に組み合わせて差し支えないこととされた.その後,2017年の厚生労働省医局長通知では,直接の対面診療が患者側の理由により行われなくとも,当事者が医師および患者本人であることが確認できる限り,ICTを組み合わせた「遠隔診療」について,医師法第20条(無診察診療の禁止)などに抵触しないとされた.

 2018年度の診療報酬改定により,一定の要件を満たすことを前提に,対面診療と組み合わせた「オンライン診療」の診療報酬が認められ,在宅リハビリテーションへの適応の可能性が拡大した.さらに,2020年度の診療報酬改定では,オンライン診療の実施方法と対象疾患についての要件の緩和が行われた.昨今の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う時限措置としてさらに要件の拡大があり,今後この医療の役割はますます重要になってくると思われる.

連載 リハビリテーション関連職種のキャリアサポート・第1回【新連載】

義肢装具士における実践 野坂 利也
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 公益法人日本義肢装具士協会(以下,本協会)は,義肢装具士の職能団体として1993年に設立し,現在の正会員数は2386名(2020年4月1日),組織は図1に示すとおりである.

Sweer Spot 文学に見るリハビリテーション

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 大正12年は島崎藤村が「脳溢血」に倒れた年である.この年の正月3日,数えで52歳になったばかりの藤村は,東京・飯倉片町の自宅で脳卒中の発作に襲われたのである.

 しかし,『藤村全集第17巻』(筑摩書房)によれば,藤村は脳卒中発作から1か月余りたった2月7日,信州・馬籠の原一平に宛てた書簡に,「先頃はわざわざ御見まい下さいまして御厚志辱く,おかげにて医師より短き入浴を試みよと勧めらるるほどの快方に向いました」と書いている.

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 自己教育の道へと自身を連れ出す主体性の確立は,筆者が考える教育の目標概念の一つである.とりわけ青年期であれば,働きながら学ぶという形態が自己教育に相応しい.

 これを体現しているのが,ドキュメンタリー「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」(監督/平良いずみ)の主人公,坂本菜の花.石川県の中学校でいじめに遭った彼女は,沖縄に渡り,沖縄料理屋でアルバイトをしながらフリースクール・珊瑚舎スコーレ高等部に通う.夜は教育機会を奪われていた高齢者が通う夜間中学にもなるユニークな学校だ.いきおい若者世代に加え,沖縄の歴史を体に刻んだおじい・おばあたちとも交流することになる.

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 このたび,田中栄先生のご編集による『整形外科レジデントマニュアル 第2版』が医学書院より上梓された.本書は東大整形外科学教室の先生方が中心となって初期および後期研修医を対象に,整形外科診療の基本をまとめられたものである.通読して感じた本書の特徴は,決して疾患の羅列ではなく,目の前の患者さんの症状をどのように捉え,どのように診断し,治療法を選択していくかといった考える過程が極めてわかりやすく記載されている点である.加えて,整形外科の教科書には載っていないが日常診療ではとても重要なこと,例えば他科へのコンサルトやカンファランスでの発表の仕方なども詳しく書かれている.これから整形外科を学ぶ若いレジデントにとって,本書は診断・治療の考え方を養える指南書であると同時に「即役立つ」書籍である.

 まず総論が素晴らしい.「整復」「初期固定」「抗菌薬の使いかた」などの基本に加えて,日常診療で研修医が直面するであろうさまざまな問題に対するプラクティカルな対処法が多く盛り込まれている.「注射法(関節穿刺,関節内注射,トリガー注射,ブロック注射)+処方例」では具体的な針の刺し方や薬品の種類・使用量がわかりやすく書かれているし,「術前の評価,他科コンサルト,周術期に中止すべき薬剤」「文献の使いかた・調べかた/カンファランスでのプレゼンテーション」「術後疼痛管理」「小児の診かた」「心構え」などは,上述したように教科書には載っていない,しかし日々の診療では必要な知識である.

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 あまたある高次脳機能障害の中でも「認知症」ほど,その理解と対応に難渋するものはないというのが評者の正直な印象です.これまでの評者のグループが行ってきた研究でも,対象の選択基準には重度な「認知症がないこと」とする場合がほとんどで,真正面からこの課題に向き合ってきたわけではありません.しかしながら,本書の編著者が述べているように高齢化社会の進むわが国では,「認知症に対する治療法の開発や社会の環境整備が喫緊の課題である」という認識は多くの関係者が共有していることと思います.

 このような切実な危機感を背景として,今村徹先生,能登真一先生によって本書が上梓されたことは大きな喜びであり福音というべきものです.本書は,第1章「認知症の基礎知識」,第2章「リハビリテーション評価」,第3章「リハビリテーションアプローチ」,そして第4章「QOLが向上した症例紹介」から構成されています.例えば,第1章では「認知症とは」の項で,一般人が陥りやすい認識である「ぼけ」=認知症ではないことが明確に定義され,続く「認知症の診断」の項では,症状,病因,障害の診断について平易に解説されています.第2章では評価について詳説されており,「評価の枠組み」の項では,認知機能面の評価と行動面の評価に大きく分けられることが指摘され,評者のような初学者にとってもわかりやすいフレームが示されています.第3章では治療アプローチについてまとめられており,特に「非薬物療法とそのエビデンス」は,認知リハビリテーション,学習療法,運動療法,言語リハビリテーションについて具体的な手続きの紹介を交えて示されています.「運動療法(筋力トレーニング,有酸素運動)」の項では行動変容を基盤とした方法が紹介されていて,評者は理学療法士ということもあり大変興味深く読ませてもらいました.第4章の症例紹介では,アルツハイマー病,脳血管性認知症,レビー小体型認知症が例示されています.これ以外に,本書の随所にちりばめられた物盗られ妄想,ユマニチュードなどといった「column」も,わかりやすいイラストと相まって読者の理解を助けるものと思います.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 コロナ禍の中,弊誌の編集会議も4月からWebでの開催となっています.緊急事態宣言の発令を受け,急遽手探りで始めたWeb会議,最初はなかなか要領を得ず,先生方には大いにご迷惑をおかけしました.いまだなかなか慣れないWeb会議ですが,よいこともあります.何といってもお忙しい先生方の移動や宿泊など時間的なロスをカットできることが一番のメリット.資料もWeb上で共有することでぺーパーレスにつながります.一方,デメリットは何といってもWeb会議では雑談が難しいということではないでしょうか.雑談は貴重な情報交換の場となり,雑談の中から面白いアイデアが生まれることもあります.

 さて,秋の学会シーズンです.春にひきつづき多くの学会がWeb開催やハイブリッド開催となっています.会場費や人件費などのコスト削減や,海外など遠方からの参加のハードルが低くなるなどWeb開催のメリットが注目されています.でもやっぱり参加者同士の交流の場という貴重な機会をもてることは現地開催ならではのことではないでしょうか.そして食欲の秋,開催地のご当地グルメを堪能できることも忘れてはいけない重要なメリットです.

基本情報

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総合リハビリテーション
48巻11号 (2020年11月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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