総合リハビリテーション 45巻12号 (2017年12月)

特集 被災地の復興と障害

今月のハイライト
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 阪神・淡路大震災から23年近く,東日本大震災から6年半,熊本地震から1年半が経過しました.この間,災害医学は日本において確実に進歩してきましたが,被災,避難生活,復興という流れが障害者を含む被災者にどのように影響し,それに対しどのように介入すべきかが十分に明らかになっていません.本特集では,大規模災害直後やその後の復興過程においてサポート活動をされた方を中心に,災害時の災害弱者への対応,災害に伴って新たに生じる障害,について解説していただきました.

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はじめに

 地震や火山の噴火など,わが国では歴史的に自然災害が繰り返し発生している.また近年,集中豪雨による水害も多く発生しているので,常日ごろからの災害に対する準備が必要である.さらに,社会や生活基盤が高度化しても東京や大阪のように人口が集中すると,かえって災害に対して脆弱な社会となってしまうので,いったん発災すると甚大な人的・物的被害を被る危険性が高いことも常に認識しておかなければならない.

 さて,災害時に特に配慮を要し支援が必要な高齢者,障がい者,乳幼児,妊婦などは災害時要配慮者と呼ばれる1).肢体不自由,聴覚・視覚不自由,内部障がい(心,呼吸,膀胱,小腸,肝)などが含まれる身体障がい者は,全国で393万7千人が登録されている2)が,本稿では特にこの身体障がい者への災害時対応を記載する.

 一般に,災害時の「避難」という用語には,「災害の発生前後に危険を避けること」と「その後自宅などに帰ることができずに避難所などで生活すること」の両方の意味をもつが,前者は緊急避難行動(evacuation),後者は避難生活(sheltering)と区別3)されて,それぞれへの対応は異なる.そこで,身体障がい者にはどのような危険があり,また,その危険に対して支援者がどのように対応するべきかを緊急避難行動(evacuation)と避難生活(sheltering)に分けて述べる.

障害児と災害 田中 総一郎
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はじめに

 2011年の東日本震災では,全国で15,894人の死者,2,546人の行方不明者(2017年9月8日現在,警視庁調べ)の方が犠牲になられた.また,避難者数はいまだに84,364人に及ぶ(2017年9月14日現在).被災3県(岩手県・宮城県・福島県)の死亡率は一般の0.8%に対して,障害者手帳所持者は約2倍の1.5%に上る(2012年9月24日付,河北新報).宮城県では障害者手帳をもつ1,103人が犠牲となったが,肢体不自由は約半分の519人,視覚障害・聴覚障害・その他を合わせると9割が身体障害手帳を有する方であった.この数字は,身体に障害のある方を津波被害から守る方策が機能しなかったことを物語っている.

 石巻市に住む高校2年生のKくんも犠牲になった.難治性のてんかんから寝たきりとなり,在宅人工呼吸器と酸素療法を受けながら支援学校へ通っていた.当時,彼は海岸から1kmほどの自宅にいたが,押し寄せる津波が平屋建ての自宅を飲み込んだ.彼は体重44Kg,身長155cmの体格であり,人工呼吸器と酸素吸入器を一緒にもって避難するためには,本人を抱っこする人と,医療機器を運ぶ人,合わせて最低でも大人2人の援助が必要であった.

 災害時に障害児者を守るためには,① 自力では避難できない要援護者の避難をどのように支援するか,② 避難したのち生命に直結する医療機器の電源や薬剤をどのように確保し供給できるか,そして,安全に過ごせる場所を確保できるか,③ 平時からの防災対策をどのように普及させるかの3点が重要である.

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はじめに

 阪神・淡路大震災が発生してから22年が経過した.その後も大規模災害は発生している.東日本大震災では津波による被害と原発事故による被害が重なって,阪神・淡路大震災と異なる被害状況を呈したことは記憶に新しい.阪神・淡路大震災は,都市直下型地震であり,津波による被害はなく,建物の倒壊や火災,土砂崩れによる被害が目立った.注目すべきことは,障害者・高齢者の心身への被害が甚大であったことであり,仮設住宅でも居住空間が狭いなどの問題から,震災前は自立していた排泄動作が介助になってしまった1)などの問題が発生した.当時の神戸大学医学部保健学科に所属する教員らは,災害の復興に携わりつつ,在宅高齢者の身体状況を調査した.その結果を回顧しつつ,被災者支援のあり方について提言したい.

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はじめに

 2011年3月11日,東日本大震災が発生し,地震と津波により甚大な被害をもたらした.さらに福島では,福島第一原発事故が発生し,20km圏内の住人は避難を余儀なくされた.大震災により避難した住人たちは県内外に散らばり,大震災後6年以上経過した時点でも避難している人たちが5万人以上(県外:34,870人,県内19,696人)存在する.そして,まだ仮設住宅に住んでいる人々も少なくない(図1).本研究の目的は,3.11東日本大震災後仮設住宅に住む高齢避難者の運動機能を含めた状態を知ること,そして運動教室の効果について明らかにすることである.なお,本論文の詳細は文献1と2に記載されている.

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はじめに

 災害は被災者に大きな心理社会的な影響を及ぼす.被災住民の間では長期に渡って抑うつや心的外傷後ストレス反応を呈する人が増えることから,被災者を支援する医療保健福祉領域の従事者は,被災者の心理状態を理解・把握し,有効なケアを提供できることが望ましい.

 障害者は,外国人,乳幼児,妊婦などとともに,災害から守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する災害時要援護者と位置づけられるが,これらの集団は災害後の心理社会的影響の面でも特に配慮が必要であることが示唆される.災害時要援護者は急性期から多くの困難を抱え,復興期には取り残されがちとなる.心身ともに慢性的な問題を抱えやすく,包括的な支援が必要となる.障害者自身や障害者を取り巻く人々やコミュニティの間で,発災直後の避難やその後の避難生活,復旧,復興の過程で障害者が抱えがちな困難,心理的ストレスや精神面への影響に関する知識が広まり,配慮がなされる機会が増えることが望まれる.

 一方,障害者の介護や支援に当たる人は,災害後特に,肉体的,精神的にも過酷になりがちなことが示唆され,支援者は支援を提供しつつ自らの健康状態を維持することが重要となる.

 介護,支援の職場では,平時から組織的にメンタルヘルス対策を充実させ,災害時にセルフケアを行いやすい環境を整備しておくことが重要である.

 障害者の災害後のメンタルヘルスへの影響に関する実態については不明のところが大きいが,本稿では,災害の障害者への心理社会的影響に関しての知見を概観し,被災地域で障害者の医療,介護,支援にあたる者が気を付けるべきことを概説する.

巻頭言

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 今から20数年前,私はまだ大学院生であり工学部の研究室にて工場の自動操業のための画像処理に関する研究をしていた.しかしこのころ,本来の研究テーマとは別に福祉用具に関する調査にかかわる機会があり,リハビリテーションや福祉の分野を全く知らない私にとっての大きな転換期となった.当初は,障害は治らない怪我の後遺症であり,福祉用具はそれを補うものというイメージしかもっていなかったが,この調査を通して「パーソナルコンピュータ(PC)は,障害者の有効な道具になるのではないだろうか」と考えるようになった.私は日常的にPCに向かって研究をしており,自分ではできないシミュレーションなどの計算をプログラミングし,結果はワープロでまとめ,電子メールを使ったやり取りもしていた.工場の自動操業も重要なテーマであるが,私が日常的に行っているようなことがもっと普及すれば,PCは身体に障害があり,何かの作業をすることに制限のある人の不便を解消するだけでなく,不可能を可能に変える道具になると思うようになった.その後,上田敏先生の著書を読むなかで「全人間的復権」という考え方に出会い共感し,自分の思考が整理されてきた.

 それから,社会では情報通信技術は大きく進化し生活の中に溶け込んだ.福祉用具である電動車椅子や義手・義足などでは,外観的にはわかりにくいが制御機構や調整機能が改善した.さらに,代替筆記具や会話補助などのコミュニケーション機器ではそれ以上の大きな変化が生じている.従来は,専用の筐体に組み込まれた特別な装置として福祉用具を作り上げていたが,今日では,PCやタブレット,スマートフォンにアプリケーションソフトをインストールするだけで,同等の機能が実現できる.これは,新しいモノをゼロからつくるだけでなく,日常利用するモノをうまく活用しているともいえるが,福祉用具でなくても工夫や調整することで,障害があっても利用を継続できると捉えることもできる.車椅子でも義手・義足でもコミュニケーション機器でもソフトウェアによる調整でそれを利用する人により適合し,活動・参加の可能性を拡大するのであれば,これらはまさにリハビリテーションであるのではないだろうか.言い換えるならば,何らかのモノを使い続けるためには調整が必要である.そして,自ら調整をできる場合はそれでよいが,できない場合にはその支援が必要で,モノとサービス,すなわち物的支援と人的支援の両者が一体となったとき,真のリハビリテーションを実現するのであろう.

入門講座 栄養指標の見方・使い方・3

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はじめに

 リハビリテーションの対象となる高齢者には,低栄養を認めることが多い.低栄養の診断・評価を行わずに積極的なリハビリテーションを実施すると,かえって機能低下を来す可能性がある.また,低栄養と同様にサルコペニアも認めることが多い.リハビリテーションの対象となる高齢者では,加齢による原発性サルコペニアのみならず,活動・疾患・栄養による二次性サルコペニアを呈している可能性が高い.サルコペニアの治療においては,リハビリテーションや運動のみならず適切な栄養管理の併用が必須である.上記から,リハビリテーションを実施する前段階で,低栄養とサルコペニアについて適切なアセスメントを行うことが求められる.本稿では,低栄養とサルコペニアの診断・評価に必要な項目について概説する.

実践講座 乳幼児健診・2

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はじめに

 乳幼児健康診査(健診)は大きく「個人健診」と「集団健診」に分けられる.集団健診の場合は保健管理センターなどで無料で受けることができるが,個人健診の場合でも,市区町村によっては,無料券などを配布しており,指定された病院であれば,無料で健診を受けることができる場合もある.今回は,主にアタッチメントに重要な時期である,乳児健診におけるポイント(主に発達面)をデンバーⅡ発達判定法を参考に,各月齢(3〜4か月健診,6〜7か月健診,9〜10か月健診)のアセスメントに基づいて紹介する.

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要旨 【目的】つばさクリニックでは2013年7月から,DVDを利用して,運動強度2 metabolic equivalents(METs)程度に設定したレジスタンストレーニング(音楽やリズムにあわせて行うミュージックエクササイズ)を透析中に導入している.この低強度の運動を継続することで透析患者の骨格筋量や運動能力がどのように変化したかを検討した.【対象と方法】1回の透析につき20分の運動を週に2回,1年間にわたって継続できた61例の透析患者を運動群とし,非運動群29例とで骨格筋量と下肢筋肉量の変化をレトロスペクティブに比較した.次いで1回の運動時間を40分に延長し,6か月間運動を継続できた35例で運動能力の変化を検討した.【結果】運動群では骨格筋量が23.7±4.5kgから24.1±4.3kgに有意(p<0.05)に増加したが,非運動群ではわずかに低下する傾向にあった.運動能力としての30秒椅子立ち上がりテスト(30-second chair stand test;CS30)は12.3±4.2回から15.0±5.6回に有意(p<0.01)に増加し,6m歩行時間は4.9±2.2秒から4.4±1.6秒に有意(p<0.01)に短縮した.【結語】透析中の運動療法は2 METs程度の低運動強度であっても,レジスタンストレーニングを確実に1透析あたり20〜40分間で週2回の実施を継続すれば,透析患者の骨格筋量は増大して運動能力は向上するものと考えられた.

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要旨 【目的】心疾患発症後の職場復帰に関して,仕事の作業強度と運動耐容能を評価し,退院3か月後の復職状況とメンタルヘルスの変化を調べた.【対象・方法】2014年9月〜2015年11月の間に,産業医科大学病院循環器内科に心疾患で入院し,急性期心臓リハビリテーションを受けた心疾患患者235名のうち,本研究の参加に同意した16名を対象とした.入院時には患者背景,身体機能,入院前就労状況,仕事の作業強度,メンタルヘルスの評価を,退院3か月後には,復職・失職状況,退院から復職までの期間,復職後の作業内容の変更の有無を自記式調査紙により確認した.急遽退院となった1名を除き,3か月後の質問紙に回答した10名を有効対象者とした.【結果】入院中に測定した運動耐容能が入院前の作業強度よりも高い8名は,すべて退院後3か月間で入院前の職場に復職した.そのうち1名は発症前より作業強度を軽減,2名は作業時間を短縮しての復職であった.運動耐容能が作業強度よりも低い2名は,いずれも退院後失職し,不安の点数が増加した.【結語】低運動耐容能患者は,作業強度を目標とした運動耐容能の向上を図る,あるいは作業内容の調整を職場に働きかける必要がある.

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要旨 【目的】医療の進歩とともに全国的に在宅生活を送る重症児が増加し,地域における在宅支援の整備が急務であると訴えられてきた.しかし,地域で支えるための在宅専門の医師など必要な社会資源はいまだに少ないのが現状である.小児領域の在宅リハビリテーションも同様に必要性は訴えられているが発展拡大に乏しい.そこで実際の供給体制を明らかにすべく,小児領域のリハビリテーションを行っている訪問看護の事業所数とリハビリテーションスタッフ数の調査を行うとともに,リハビリテーションを行っていくことの課題を明らかにすることとした.【対象】2013年2月1日時点で岡山県訪問看護ステーション連絡協議会に登録されている訪問看護ステーション117施設に対し調査を行った.【方法】調査方法は定量調査で記入方法は無記名自記式とし,郵送調査で行った.【結果】今回の研究結果から,以下の3つの課題,① 事業所の少なさとマンパワー不足の問題,② 在宅リハビリテーションの認知度の低さ,③ 経験・教育・情報共有の場の少なさ,が明らかになった.また,経験・教育が不足しているという共通点と,小児在宅開始に前向きな施設も多いという意外な点も挙がった.【結語】課題を可視化することによって,地域で可能な取り組みを実施していく必要性が明快になった.地域資源が増え,小児領域へもっと目が向けられるようになると,不安を抱えて退院する子供とその家族の安心感も増し,そこから始まる家族の“望む生活”に向け,専門職としての視点から一緒に考えていくことができる.そのために,地域でできる取り組みを絶やさず継続させていくことが大切であると考える.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 惑星の運動に関するケプラーの法則で有名なヨハネス・ケプラー(1571〜1630)が1609年に書いた『夢』(渡辺正雄・榎本恵美子訳『ケプラーの夢』,講談社)の冒頭部分には,ケプラー自身を思わせる主人公が母親と対話する場面があるが,それはケプラーの母親が魔女として告発される契機ともなった不可思議な対話である.

 この作品には,デンマークのティコ・ブラーエのもとで天文学を学んで帰国した主人公ドゥラコトゥスを,母親が喜んで迎えたとして,「私が天文学を勉強してきたことは母をこの上なく喜ばせた.そして,私のいうことと母の知っていることを比べては,もうたった今死んでもいいと叫ぶのだった」という記述がある.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 近年の障害観の変革,すなわち,障害がありながらも生きる人間を肯定的に捉える思考,治らなくても人生の質が上がることが可能であるという視座,医療モデルと社会モデルの統合を志向する動きは,1990年代以降の障害者映画のテーマ設定と軌を一にしている.障害を個人の問題として,専門職が個別的に治療するというテーマは後景に退き,環境や社会のあり方,本人や周囲の者の価値観や内面形成のあり方を問う作品が主流になった.疾病・障害の治療そのものに焦点を絞った作品として筆者が想起できるのは,「レナードの朝」(1991),「ロレンツォのオイル」(1992)にとどまる.それゆえ,期せずして希少難病・芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase;AADC)欠損症の治癒過程を80分のドキュメンタリーとして描出した「奇跡の子どもたち」(監督/稲塚秀孝)は異色作なのであり,テーマ,内容の先駆性において刮目に値する.

 稲塚がAADC欠損症患者の父親・山田直樹(ジャーナリスト)から取材・撮影の依頼を受けたのは2006年初秋のこと.依頼の主旨は,日本には3例のみで治療法も見つかっていない,ついては,この病気の存在を世に広め,治療法の開発につなげたいというものであった.かくして,2007年から撮影が始まる.

私の3冊

私の3冊 松井 健太

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 本書は高齢期の作業療法に精通した村田和香氏が,25名の作業療法士とその担当した高齢者28名に対し行ったインタビューと観察記録をまとめ分析したものである.

 本書のテーマは“臨床の知”である.臨床の知とは,直感と経験と類推から成り立つ知であり,仮説と演繹的推理と実証の反復から成り立つ“科学の知”と並び,臨床を支える上で重要な知である.科学の知は,抽象的な普遍性によって,分析的に因果律に従う現実にかかわり,それを操作的に対象化するが,対して臨床の知は,個々の状況を重視して深層の現実にかかわり,対象者が示す隠された意味を,相互交流的に読み取り捉える働きをするものである.それ故に臨床の知は一般化し,言語化することが難しいとされている.

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 優れた大脳生理学者であり,かつ脳神経外科医でもある著者によって,簡潔にかつわかりやすくまとめられた高次脳機能の解説書である.大脳生理学や脳科学を学ぼうとする医学・医療系の学生だけでなく,既に臨床現場で働いている医師や医療従事者が手にしても役に立つ,非常に優れた内容である.そればかりか,脳に関心のある一般の人々や患者さん,そのご家族など専門的な知識がない人達が読んでもわかりやすく,かつ読み物としても面白く解説されている.

 本書の最もユニークな点は,大脳半球の機能の解説において,前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉といった従来の分類ではなく,「知」「情」「意」を司る脳の区分という考え方を取っている点である.その結果,外界から情報を取り入れ処理する感覚統合脳(知),その情報を演算して外部出力する表出脳(意),辺縁系(情)に働きをまとめることができているので,非常に理解しやすい.さらにはそれらの異常によって起こる疾患やその症状の解説が納得できる内容となっている.また,表出脳の働きにおいては,最新の知見を盛り込み,運動前野ならびに補足運動野の働きが整然とわかりやすく解説されている点が強く印象に残った.

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 脳卒中による障害は,運動麻痺や感覚障害,高次脳機能障害などさまざまなものがある.とりわけ片側の運動麻痺は,中枢性神経麻痺の特徴が大きく現れる.単に力が弱まるのではなく,変な力が入り硬く痛くなる,動作をするのに余分な関節が一緒に動く,体の各部分の位置関係がおかしくなる,などである.そのため,中枢性運動麻痺は生活の遂行に大きく影響する.日常生活活動では,朝夕の寝起きから洗顔・歯磨き,食事やトイレ動作,入浴などさまざまな活動の遂行に影響する.それは運動・動作の問題だけでなく,「実行することに時間がかかる」「終わった途端に疲れ切ってしまい,次にやりたい事に取りかかる気持ちが薄れた」など生活の質にも影響している.さらに,職業や学業生活,家庭生活などの生活関連活動にも影響を与える.そのため,罹患された方は,おのれの運動障害を何とか回復させて欲しい,そして社会や家庭に復帰させて欲しいと医療従事者に切望する.

 一方,医療従事者,特にリハビリテーション医療に従事する者は,その患者さんの声に何とか応えたいと感じているであろう.しかし,神経解剖・生理学を養成課程で学んだわれわれ療法士をはじめとするリハビリテーション医療従事者は,脳を含む神経系の損傷は治癒に限界があると考えてきた.

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文献抄録

次号予告

編集後記
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 「○○さん家は娘さん家族が戻ってきて同居しとるんだよ」など,たまに帰省すると母からご近所情報を伝えられます.この間は散歩につきあわされて「ここは今空家」,「ここは今は夫婦二人暮らし」,「ここは息子が独身で一緒に住んどるんや」,「ここのおばあちゃんはこの間ころんで足を折って入院中」……と,1件1件最新情報をインプットされました.「さすが田舎,おそるべし」です.

 2015年に仙台市で開催された国連防災世界会議で提言された「インクルーシブ防災」が注目されました.これは障害者,高齢者などあらゆる人の命を支える防災の考え方のことです.特集の中でも述べられていますが,東日本大震災では,岩手県,宮城県,福島県における障害のある人の死亡率は,全住民の死亡率の2倍に上ります.「インクルーシブ防災」の実現のために一番大切なことはコミュニティづくり,いいかえれば日ごろからの地域のかかわりです.ありがたいことに母は「(川)さん家はおばあちゃん一人暮らしだし,娘さんたちも薄情だでめったに帰って来ん」とご近所さんに把握されているようです.年末は帰省してご近所さんにごあいさつしなければ.

基本情報

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総合リハビリテーション
45巻12号 (2017年12月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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