書評
植村研一 著「高次脳機能がよくわかる—脳のしくみとそのみかた」
松井 秀樹
1
1岡山大大学院医歯薬学総合研究科細胞生理学
pp.1247
発行日 2017年12月10日
Published Date 2017/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201175
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優れた大脳生理学者であり,かつ脳神経外科医でもある著者によって,簡潔にかつわかりやすくまとめられた高次脳機能の解説書である.大脳生理学や脳科学を学ぼうとする医学・医療系の学生だけでなく,既に臨床現場で働いている医師や医療従事者が手にしても役に立つ,非常に優れた内容である.そればかりか,脳に関心のある一般の人々や患者さん,そのご家族など専門的な知識がない人達が読んでもわかりやすく,かつ読み物としても面白く解説されている.
本書の最もユニークな点は,大脳半球の機能の解説において,前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉といった従来の分類ではなく,「知」「情」「意」を司る脳の区分という考え方を取っている点である.その結果,外界から情報を取り入れ処理する感覚統合脳(知),その情報を演算して外部出力する表出脳(意),辺縁系(情)に働きをまとめることができているので,非常に理解しやすい.さらにはそれらの異常によって起こる疾患やその症状の解説が納得できる内容となっている.また,表出脳の働きにおいては,最新の知見を盛り込み,運動前野ならびに補足運動野の働きが整然とわかりやすく解説されている点が強く印象に残った.
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