書評
村田和香 著「“私らしさ”を支えるための高齢期作業療法—10の戦略」
齋藤 佑樹
1
1仙台青葉学院短期大学作業療法学
pp.1228
発行日 2017年12月10日
Published Date 2017/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201170
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本書は高齢期の作業療法に精通した村田和香氏が,25名の作業療法士とその担当した高齢者28名に対し行ったインタビューと観察記録をまとめ分析したものである.
本書のテーマは“臨床の知”である.臨床の知とは,直感と経験と類推から成り立つ知であり,仮説と演繹的推理と実証の反復から成り立つ“科学の知”と並び,臨床を支える上で重要な知である.科学の知は,抽象的な普遍性によって,分析的に因果律に従う現実にかかわり,それを操作的に対象化するが,対して臨床の知は,個々の状況を重視して深層の現実にかかわり,対象者が示す隠された意味を,相互交流的に読み取り捉える働きをするものである.それ故に臨床の知は一般化し,言語化することが難しいとされている.
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