書評
川平和美・下堂薗恵・野間知一 著「片麻痺回復のための運動療法[DVD付]—促通反復療法「川平法」の理論と実際(第3版)」
岩瀬 義昭
1,2
1北海道医療大作業療法学
2鹿児島大学
pp.1255
発行日 2017年12月10日
Published Date 2017/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201177
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脳卒中による障害は,運動麻痺や感覚障害,高次脳機能障害などさまざまなものがある.とりわけ片側の運動麻痺は,中枢性神経麻痺の特徴が大きく現れる.単に力が弱まるのではなく,変な力が入り硬く痛くなる,動作をするのに余分な関節が一緒に動く,体の各部分の位置関係がおかしくなる,などである.そのため,中枢性運動麻痺は生活の遂行に大きく影響する.日常生活活動では,朝夕の寝起きから洗顔・歯磨き,食事やトイレ動作,入浴などさまざまな活動の遂行に影響する.それは運動・動作の問題だけでなく,「実行することに時間がかかる」「終わった途端に疲れ切ってしまい,次にやりたい事に取りかかる気持ちが薄れた」など生活の質にも影響している.さらに,職業や学業生活,家庭生活などの生活関連活動にも影響を与える.そのため,罹患された方は,おのれの運動障害を何とか回復させて欲しい,そして社会や家庭に復帰させて欲しいと医療従事者に切望する.
一方,医療従事者,特にリハビリテーション医療に従事する者は,その患者さんの声に何とか応えたいと感じているであろう.しかし,神経解剖・生理学を養成課程で学んだわれわれ療法士をはじめとするリハビリテーション医療従事者は,脳を含む神経系の損傷は治癒に限界があると考えてきた.
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