総合リハビリテーション 39巻8号 (2011年8月)

特集 慢性疼痛へのアプローチ

今月のハイライト
  • 文献概要を表示

 慢性疼痛患者は多く,リハビリテーション(以下,リハ)における頻度の高い病態の一つである.その大部分は腰痛や関節痛であり,腰痛患者の8割は原因不明の「非特異的腰痛」とされ,心理・社会的な要因の関与も指摘されている.そのため,慢性疼痛には包括的かつ集学的な対応が求められている.今回,最新の知見をもとに,慢性疼痛に対する問題点や対応について解説していただいた.

病態と治療 宮崎 東洋
  • 文献概要を表示

はじめに

 国際疼痛学会IASPでは,「pain:an unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage」つまり,「痛み:組織の実質的または潜在的な障害に伴う不快な感覚と情動体験,あるいはこのような障害を言い表す言葉を使って述べられる同様な体験である」と定義している1)

  • 文献概要を表示

はじめに

 慢性疼痛は長期間にわたって持続する痛みである.ではいったいどれくらい持続すれば慢性疼痛と言うのかというと,一般に4か月以上あるいは6か月以上持続する痛みと考えられている.しかし,明確な時間的な区切りがあるわけではない.

 組織の損傷,例えば創傷や炎症が起きると痛みが発生する.それは急性疼痛である.しかし,組織の損傷が何か月も持続している場合は,慢性疼痛なのか,それとも急性疼痛が持続しているのか判断が難しい.アメリカ麻酔学会(ASA)が発表したガイドラインでは,「慢性疼痛は,がんによるものを除き,慢性的な病態に付随するか,あるいは組織損傷の程度から推測される期間や治癒機転の範囲を超えて持続する痛みであり,個人の機能や健康を脅かす状態である」1)と定義している.

 慢性疼痛で最も一般的な痛みは腰痛や頸部痛や膝痛である.これら筋骨格系の疼痛は高齢者の半数以上が程度の差はあれ慢性的に有しているとも言われている.また,神経障害性疼痛も慢性疼痛の一つであり,疼痛の強さや生活への支障や治療の困難度からいうと,より重要である.神経障害性疼痛には糖尿病性末梢神経障害や帯状疱疹後神経痛など末梢性のものから,視床痛など中枢性のものまで広範囲に及ぶ.さらに,慢性疼痛には片頭痛や線維筋痛症など特異的な疾患群も含まれる.

 このように一口に慢性疼痛といってもさまざまな病態が含まれており,慢性疼痛全体に対応するような治療法のEBMやガイドラインの作成はそもそも困難である.だから,慢性疼痛のガイドラインは,それぞれの疾患に対して独自に作られたものが多い.例えば,腰痛治療のガイドライン2,3),三叉神経痛に対するガイドライン4),神経障害性疼痛に対するガイドライン5-7)というように,それぞれ対象とする疾患群に対して作られている.さらに,作成にあたる専門分野によっても異なったガイドラインが作られている.麻酔科学会のガイドライン1),神経治療学会のガイドライン8),心身医学的なガイドライン9)などがそうである.

 ここでは,最近ASAが発表した「慢性疼痛管理実践ガイドライン」1)と国内の2つのガイドライン8,9)を軸に,慢性疼痛アプローチにおけるEBMやガイドラインについて考えてみたい.

薬物療法 松尾 雄一郎
  • 文献概要を表示

慢性疼痛の定義と分類

 Bonicaは1987年に,慢性疼痛を「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を越えて持続する痛み」と定義した.

 慢性疼痛は侵害受容性慢性疼痛,神経障害性慢性疼痛,心因性慢性疼痛に分類される1).侵害受容性慢性疼痛は術後や外傷による炎症や組織損傷などの侵害刺激により起こる侵害受容性疼痛が時間経過とともに慢性化・難治化したものである.神経障害性慢性疼痛は「神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛」もしくは「体性感覚系に対する損傷や疾患によって直接的に引き起こされる疼痛」と定義され,末梢神経系,中枢神経系の障害に基づき生じる.心因性慢性疼痛は感情や情動面に原因があるとされ,典型的なものでは心因的要素の大きい痛みであり,心療内科的治療に委ねることも多い.

  • 文献概要を表示

はじめに

 1992年,慢性難治性疼痛に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)がわが国で保険適用として認められ,1993年より4極リードを用いたsingle channelのItrel 3®,2006年にはdual channelのSynergy Ⅴ®の植込型が導入され,2010年には8極リードを用いたPrime advanced®が出現し,SCSは新しい時代を迎えようとしている.

 われわれは,1990年にExtrel®を用いたSCSを施行して以来,21年間で202例のSCSを行っており,腰下肢痛に対して69例のSCS症例を経験している.腰下肢痛は慢性疼痛のなかでも最も頻度が多く,原因疾患も多彩であり,疼痛管理も困難なことが少なくない.これまでのSCSシステムと新しい時代のSCSシステムを比較しながら,腰下肢痛に対するSCSの適応と手術計画・手技と効果について検討する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 腰痛は,先進諸国の国民の70%以上が生涯のいずれかの時点で経験する1)と言われているほど頻度が高い疾患である.日本における有訴者率では,男性では25~84歳で腰痛が1位,肩こりが2位であり,女性では15~64歳で1位肩こり,2位腰痛,65歳以上で1位腰痛,2位手足の関節痛であった2).このように,腰痛は非常に多くの人々が悩んでいる疾患であり,生活習慣病の一つとも言われている.

 腰痛の定義としては,肋骨縁の下方から下殿部ひだの上方にかけて局在する疼痛,筋緊張,あるいは硬直であり,下肢疼痛を伴う場合と伴わない場合がある3)とされている.また腰痛症(非特異的腰痛)とは,認識できる病因(感染,腫瘍,骨粗鬆症,関節リウマチ,骨折,炎症など)に起因しない腰痛である4,5)

 発症様式は,急性と慢性に分類される.急性腰痛症の90%は6週間以内に回復し,通常,自然治癒するが,2~7%は慢性になる6)と言われている.慢性腰痛症とは,発症から3か月以上継続する腰痛症であり,明らかな神経学的脱落所見を伴わない5)とされており,従来,頻度は高くないとされてきたが,さまざまな疫学調査から,最近は決して少なくないと報告されている4).また慢性腰痛症は,心理・社会的因子の影響を強く受けている症例が少なくない5)ので,なかなか厄介な疾患である.

 運動療法は,腰痛症に対する保存的治療の根幹をなすものであり,国民生活の健康においてきわめて重要な意味をもつ.そこで本稿では慢性腰痛に対する運動療法について記載する.

巻頭言

  • 文献概要を表示

 最近,チンパンジーにも「行為の主体感」(self-agency)があるとの研究報告(京都大学霊長類研究所の兼子峰明氏らによる)が,新聞でも取り上げられ話題となった.「行為の主体感」というのは,ある行為を「自分自身で行っている」,「自分が行為の主体である」という感覚のことで,人が自己概念を形成するうえで重要な要素と考えられており,人間ならではの高度の機能として特徴づけられてきたものである.この「行為の主体感」は,リハビリテーション過程においても深く関わる要素にほかならない.

 近年,精神科リハビリテーション領域においては,リカバリー志向の実践が欧米で広まり,わが国においてもその重要性がクローズアップされてきている.リカバリーとは,症状や障害の消失・軽減ではなく,主観的側面の回復に焦点を当てたものである.それは,疾病や障害を抱えながらも,自尊感情を取り戻し,生活の再構築に向け能動的姿勢に立てるような変化を意味している.

講座 リハビリテーションとNST・第4回

NSTの形態と運営 若林 秀隆
  • 文献概要を表示

はじめに―NSTとは

 栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)とは,臨床栄養管理に関する知識をもった医師,歯科医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,臨床検査技師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,歯科衛生士など多職種で構成される,職種の壁を超えたチームである.1職種でも一定の臨床栄養管理を行うことは可能であるが,多職種で取り組むほうがより質の高い栄養ケアマネジメントを実践できる.NSTの主な役割を表1に示す.

 日本では1970~1980年代には大阪大学医学部附属病院や天理よろず相談所病院に中心静脈栄養の管理が中心の欧米型専属チームのNSTが設立されたが,全国的な普及にまでは至らなかった1).1998年に持ち寄りパーティ方式・兼業兼務システム(potluck party method;PPM)が考案され,鈴鹿中央総合病院に全科型NSTが設立された1).2001年2月,日本静脈経腸栄養学会がNSTプロジェクトを設立した.その後,NST活動が全国の医療機関に認識され,日本静脈経腸栄養学会のNST認定稼働施設は1,400を超えた.

 NSTの稼働施設認定は現在,日本静脈経腸栄養学会,日本病態栄養学会,日本栄養療法推進協議会が行っている.日本静脈経腸栄養学会と日本栄養療法推進協議会のNST稼動施設認定基準を表2,3に示した2,3)

 医師,歯科医師の場合,日本静脈経腸栄養学会や日本外科代謝栄養学会の医師教育セミナーか, total nutrition therapy(TNT)研修会に参加することで,臨床栄養の基本的な知識を習得できる.前者は学会ホームページを参照していただきたい.後者は各地域のアボットジャパンの担当者に相談するとよい.

 NSTの主な活動は回診,検討会,勉強会である.いずれも定期的に実施する.回診と検討会は週1~2回,勉強会は1~2か月に1回程度の施設が多いと思われる.ただし,施設の規模や依頼件数などによって,より多い施設や少ない施設もある.

 NSTで行っている栄養ケアマネジメントの流れを図1に示した.詳細は本講座連載の第2回,第3回を参照して欲しい.

実践講座 脳卒中急性期に活用可能な評価スケール・第4回

  • 文献概要を表示

はじめに

 本稿では脳卒中急性期に活用可能な摂食・嚥下障害および失語症の評価スケールについて述べる.

  • 文献概要を表示

要旨:〔目的〕統合失調症患者のセルフスティグマとセルフエフィカシー,QOLとの関連を明らかにすることを目的に,セルフスティグマ,セルフエフィカシー,QOLおよび被差別体験において各々の関連性について検討を行った.〔対象・方法〕精神科病院に入院する統合失調症患者37名を対象に,Linkスティグマ尺度,一般性セルフエフィカシー尺度,統合失調症患者のためのQOL尺度,差別体験尺度による評価を行い,それぞれの尺度間の関連を評価した.〔結果〕セルフエフィカシーはQOLおよびセルフスティグマと有意な関連を示した.また,差別体験における「肩身の狭い思い」は「社会の偏見」と「生活への影響」に,「社会の偏見」はセルフスティグマに,「生活への影響」はセルフエフィカシーとQOLに関連していた.〔結語〕本結果より,セルフスティグマの高まりがセルフエフィカシーやQOLを低下させると考えられた.また,「肩身の狭い思い」は「社会の偏見」の認知につながり,その結果,セルフスティグマ上昇につながること,「肩身の狭い思い」が生活に悪影響を及ぼし,セルフエフィカシーとQOL低下を引き起こすことが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:〔目的〕遂行機能を反映させた個別のセルフケアの評価法であるself-care rating for dementia, extended(SCR-DE)を作成し,信頼性を検討する.〔SCR-DEの作成〕更衣,入浴,整容,摂食,排泄など個別のセルフケアの各項目には6段階評価を採用した.評価者は信頼できる情報提供者にインタビューを行い,情報収集した.各評価項目の段階ごとに遂行機能障害を反映させた記述を付し,評価者は必要に応じてこれを読み上げて提示するが,最終的な評価は半構造化インタビューの形式で行った.〔対象〕グループホーム2施設に入居中のdementia患者11名を担当している介護福祉士11名であった.〔方法〕1名の患者のグループホームでの生活におけるセルフケアについて,同一の職員1名を対象として,約1か月の期間を置いてSCR-DEを各1回,計2回施行した.1回目と2回目の施行は独立した評価者1と評価者2が担当した.SCR-DEの各下位項目の評価値について重み付けκ係数を,各評価者についてCronbachのα係数を求め,評価者間・評価再評価信頼性と内的整合性を検討した.〔結果〕ほとんどの項目で有意なκ係数が認められ,内的整合性も0.9以上の十分に高い値を示した.〔結語〕SCR-DEは遂行機能を反映させた個別のセルフケアの評価法として信頼性がある.

  • 文献概要を表示

要旨:〔目的〕膝立ち位を用いた運動が,脳卒中片麻痺患者の立位バランスにどのような影響を与えるかを検討した.〔対象〕脳卒中片麻痺患者15名(平均年齢70.4±8.4歳,男性10名,女性5名,右片麻痺4名,左片麻痺11名,平均発症後日数1,171±877日)を対象とした.〔方法〕介入課題として膝立ち運動,対照課題として安静座位を行った.両課題の即時的効果について違いを比較するため,課題実施前後で重心動揺計を用いた立位バランス計測を行った.測定項目は静止立位保持における総軌跡長,ならびにクロステストによる随意的最大重心移動距離とした.〔結果〕膝立ち運動前後では,安静座位前後と比べて麻痺側および非麻痺側の両方向への左右方向重心移動距離が有意に増大した.〔結語〕膝立ち運動は,片麻痺患者の重心移動能力を即時的に改善する効果があることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:〔目的〕本研究では,要介護高齢者の5m最速歩行速度と日常生活活動(ADL)能力との関連について検討した.〔対象・方法〕要介護高齢者103名(男性48名,女性55名,平均年齢78.3±8.7歳)を対象に,5m最速歩行速度を測定し,ADL能力との関連をスピアマンの順位相関係数を用いて,性別に分析した.〔結果〕5m最速歩行速度は,男女ともに今回評価したFunctional Independence Measure Motor Sub Scores(FIM-M),および男性の排泄管理を除くFIM-M下位項目得点と有意な相関が認められた.〔結語〕要介護高齢者の5m歩行速度は,男女を問わず,歩行速度が速いほどADL能力が高いという関係性が示された.

  • 文献概要を表示

要旨:〔目的〕医療提供体制が摂食・嚥下リハビリテーションに及ぼす影響を検討するため,施設完結型と病-病連携両者を行っている当院の脳卒中患者の経口摂取の実態を調査した.〔対象〕2007年度,当院回復期リハビリテーション病棟へ入棟した脳卒中嚥下障害患者160例である.〔方法〕当院急性期病棟からの転棟者(施設完結型群)と他急性期病院からの転院者(病-病連携群)の2群に分け,両群を比較した.〔結果〕発症から回復期リハビリテーション病棟入棟までの日数は,施設完結型群が病-病連携群に比し有意に短く,回復期リハビリテーション病棟入棟時の経口摂取未実施者は,施設完結型群が病-病連携群に比し有意に少なかった.〔結語〕経口摂取が可能であるにもかかわらず経管栄養に依存する患者をなくすためには,急性期病院の専門多職種での摂食・嚥下リハビリテーション体制が必要と思われた.また,施設完結型の医療体制は,患者の機能を短期間で引き出すなど,十分に効率的な摂食・嚥下リハビリテーションを提供することが可能であると考える.

連載 新しいリハビリテーションの取り組み紹介

  • 文献概要を表示

 わが国において認知症の高齢者は年々増加傾向にあるが,明確な治療法は確立しておらず,認知症予防に対する取り組みが推進されている1).音楽は認知症に対して,その多くが介護老人保健施設,特別養護老人ホームなどで,レクリエーションの一つとして用いられてきたが,近年,目的や介入方法を明確にしたさまざまなアクティビティを用いた補完(代替)療法の一つとして利用されるようになってきた2).本稿では,認知症に対する音楽の利用や留意事項について紹介する.

連載 高齢者のさまざまな居宅形態

高齢者向け賃貸住宅 児玉 善郎
  • 文献概要を表示

 わが国の高齢化,長寿化はますます進展しており,今後10年間に高齢者単身・夫婦世帯が約245万世帯増加すると予測されている.自立生活に不安を抱える,介護が必要になるなどの状態になっても安心して住み続けることができる高齢者向け住宅の整備が今よりも増して必要になると思われる.ここでは,わが国における高齢者向け住宅対策のこれまでの経緯と現状を紹介し,今後の高齢者住宅のあり方について考える.

連載 印象に残ったリハビリテーション事例

  • 文献概要を表示

 筆者は嚥下障害の臨床に携わって30年あまりになる.この間さまざまな困難に遭遇したが,当初から,そして現在も悩み続けている古くて新しい問題が,経管栄養である.嚥下障害で経口摂取ができないか不十分な患者さんに対して,安全で,快適で,効率がよく嚥下に有利な栄養法は何か? 嚥下障害を扱ううえで栄養法は避けて通れない問題である.

 経管栄養と言えばまず経鼻経管栄養である.その昔に開発された頃は画期的な医療技術であり,多くの命を救った.きわめて簡便で有用性も高いため,医療現場では不可欠の栄養補給手段であるが,汎用されるが故の弊害も目立ってきた.そこで登場するのが胃瘻である.古くは外科的に作製され,最近はPEGが当たり前となって広く普及している.PEGは長期の栄養管理として優れた方法であり,経鼻経管栄養より嚥下にとって有利である.ただし,問題がないわけではなく,下痢や逆流,イレウス,皮膚トラブルなどとともに,心理的な負担と,「PEGがあるのだから,口から食べなくてもいいだろう」という安易な考えで経口摂取に対する取り組みを放棄してしまう例があることなどが挙げられる.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

  • 文献概要を表示

 1839年,エドガー・アラン・ポー(1809~1849)が30歳の時に発表した『アッシャー館の崩壊』(富士川義之訳,集英社)には,すぐれた芸術的な感性を有する「心気症患者」が描かれている.

 見るからに陰鬱で謎めいた瘴気が立ちこめているアッシャー館の当主ロデリック・アッシャーは,妹が「慢性化した無感情,徐々に進行している人格喪失,一時的にも頻繁に起こるどうやら強硬症らしい症状」という統合失調症を思わせる病に陥ったこともあって,「異様な憂悶」に悩まされていた.過剰なほどの引込み思案で,自らも「精神の錯乱」を訴えるアッシャーからは,「暗黒が,まるで固有の明白な特性ででもあるかのように,1本の絶えることのない陰鬱な放射線となって,精神界と物質界のすべての対象めがけて浴びせられていた」のである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

  • 文献概要を表示

 吃音の原因については,これまでも諸説あったが未だに不明である.かつては,左利きを右利きにする利き手の矯正や,親子関係の危機や不安などが原因だとされていたが,現在は否定されているようだ.

 なるほど「英国王のスピーチ」(監督/トム・フーパー)でも,時の英国王ジョージ6世(コリン・ファース)の吃音の原因を幼少期の利き手の矯正やX脚の矯正,父から愛されなかったという父子関係に求めている.原因はさておき,吃音は喋り込んでいくうちに,自然に改善されていく例が多い.ジョージ6世の場合も結局のところスピーチセラピストのライオネル(ジェフリー・ラッシュ)の指導のもと,喋り込むことで改善に向かう.

お知らせ

第23回ADL評価法FIM講習会

  • 文献概要を表示

 かつてリハビリテーション医療の対象疾患は骨関節系が主流であったが,いつしか脊髄損傷,頭部外傷,脳卒中などの中枢神経系の疾患へと移行していった.ところが,脳という「神経の中枢」はブラックボックスと言われたように,解明された部分は極めてわずかで,大部分は未知の臓器であったことから,中枢神経系のリハビリテーションは科学として成立しにくい時代が続いていた.脳神経外科医,神経内科医,精神科医,リハビリテーション科医などの臨床家,さらに神経科学にかかわる多くの学者達の長年の努力により,ひところに比べれば脳の解明は格段に進んできた.とはいえいまだにブラックボックスであることに変わりはない.

 かつて,多くの臨床家による詳細な神経所見や行動観察,剖検所見などのすり合わせにより,大脳の機能局在論が一世を風靡した時代があった.19世紀の後半のことである.その後100年が経過した20世紀後半にはX線CTが登場し,新たな局面を迎えることになった.さらにMRIやPETなどの新鋭機器が開発され,未知の分野が徐々に解明されつつある.画像診断の進歩により新たな事実が続々と確認されているのである.

--------------------

文献抄録

投稿規定

投稿および著作財産権譲渡承諾書

次号予告

編集後記
  • 文献概要を表示

 先日ある学会で,中途障害者は「過去の自分(元気だった自分)」と「現在の自分(病気の自分)」を比べてくよくよし孤独になる.その元気を取り戻すための第一歩は「自分を客観視する」ことだという話を聞きました.「現在の自分」を「過去の自分」ではなく「現在の他人」と比べてみる.そして「ああなりたい」(「ああはなりたくない」でもいいそうです)と思うことで,将来のビジョンを持つことができ,「未来の自分」に意識が向いていく―.とても印象に残りました.

 ミドルエイジクライシスという言葉があります.日本語では「中年の危機」.人生の折り返しの時期に陥る症状で,焦る,落ち込む,中には昔の恋人と一緒になると言い出して離婚したりする人もいるようです.「老いて行く自分」を認められず「若かった自分」に執着してしまうのでしょう.「前は校正の文字なんて余裕で見えたのに」とぼやいてないで,「ああなりたい」という将来のビジョンを持つべく,周りの素敵な人をよく観察するために老眼鏡を作りに行こう,と中年の危機真っ只中の誕生日,目を細めながら編集後記を書きつつ思った次第です.

基本情報

03869822.39.8.jpg
総合リハビリテーション
39巻8号 (2011年8月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月20日~9月26日
)