巻頭言
Self-agency(行為の主体感)の回復
小川 一夫
1
1東京都立精神保健福祉センター
pp.731
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102158
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最近,チンパンジーにも「行為の主体感」(self-agency)があるとの研究報告(京都大学霊長類研究所の兼子峰明氏らによる)が,新聞でも取り上げられ話題となった.「行為の主体感」というのは,ある行為を「自分自身で行っている」,「自分が行為の主体である」という感覚のことで,人が自己概念を形成するうえで重要な要素と考えられており,人間ならではの高度の機能として特徴づけられてきたものである.この「行為の主体感」は,リハビリテーション過程においても深く関わる要素にほかならない.
近年,精神科リハビリテーション領域においては,リカバリー志向の実践が欧米で広まり,わが国においてもその重要性がクローズアップされてきている.リカバリーとは,症状や障害の消失・軽減ではなく,主観的側面の回復に焦点を当てたものである.それは,疾病や障害を抱えながらも,自尊感情を取り戻し,生活の再構築に向け能動的姿勢に立てるような変化を意味している.
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