Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ポーの『アッシャー館の崩壊』
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.814
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102185
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1839年,エドガー・アラン・ポー(1809~1849)が30歳の時に発表した『アッシャー館の崩壊』(富士川義之訳,集英社)には,すぐれた芸術的な感性を有する「心気症患者」が描かれている.
見るからに陰鬱で謎めいた瘴気が立ちこめているアッシャー館の当主ロデリック・アッシャーは,妹が「慢性化した無感情,徐々に進行している人格喪失,一時的にも頻繁に起こるどうやら強硬症らしい症状」という統合失調症を思わせる病に陥ったこともあって,「異様な憂悶」に悩まされていた.過剰なほどの引込み思案で,自らも「精神の錯乱」を訴えるアッシャーからは,「暗黒が,まるで固有の明白な特性ででもあるかのように,1本の絶えることのない陰鬱な放射線となって,精神界と物質界のすべての対象めがけて浴びせられていた」のである.
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