総合リハビリテーション 26巻10号 (1998年10月)

特集 社会リハビリテーションの実践

今月のハイライト
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 医学的,職業的リハビリテーションに比べ,社会リハビリテーションは範囲も広く,その定義も暖昧な時期もありましたが,最近では社会リハビリテーションの概念も確立されてきています.今回は「社会リハビリテーションの実践」として,その定義である「障害者が社会生活力を高める」ために,専門的技術援助の方法や,活用できる諸サービスを取り上げることにしました.

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はじめに

 総合リハビリテーションは,リハビリテーションにおけるアプローチの方法である.複合的なリハビリテーションニーズを有する対象者に対して,リハビリテーションの各分野の専門職者が総合的に行うアプローチの方法であり,このようなアプローチがリハビリテーションの実践においてきわめて有効であることから,その重要性が認識されてきた.

 総合リハビリテーションを構成する主要分野として,医学的リハビリテーション,教育リハビリテーション,職業リハビリテーション,社会リハビリテーションがあげられる.社会リハビリテーションの概念の変遷,定義実施方法,プログラム等をまとめることにより,社会リハビリテーションへの理解が高められ,実践が促進されることを期待したい.

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はじめに

 名古屋市総合リハビリテーションセンター(以下,リハビリテーションセンターと略)は,平成元年に開設以来,多くの障害者に治療・訓練を実施し,地域生活に戻してきた.しかし,地域に十分な支援体制がないために,機能維持,活動性の維持,人的交流を求めてセンターに通い続ける人も多く,また現状の生活への満足度も低いなど,リハビリテーションセンター退所後のアフターケアの問題がクローズアップされてきた.

 平成7年に実施された名古屋市身体障害者実態調査をもとに,脳血管障害者の青壮年層(18~64歳の稼働年齢)の生活実態とニーズを把握した結果1),地域の拠点で社会参加が阻害されている障害者を援助することの必要性が明らかになったので,同年12月,国で策定された障害者プランのなかの『市町村障害者生活支援事業』(以下,生活支援事業と略)を実施することを提案した.

 平成8年には,保健福祉サービスを障害者一人一人のニーズに合わせて的確に提供するためのガイドラインとなる『身体障害者ケアガイドライン試行事業』を厚生省の委託を受けて,全国5か所の内のひとつとして実施した.この研究結果を「障害者の地域生活を支援するケアマネジメント」2)にまとめた.

 さらに平成9年には,全国の生活支援事業実施機関にアンケート調査を行い,その実態と課題を報告3)した.

 以上の調査および実践から,障害者の地域生活を支援するあり方と課題を考えたい.

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はじめに

 最近の傾向として,急性期を扱う病院での在院日数が短期化し,十分なリハビリテーションを受けないまま退院して身体障害者更生施設に入所してくるケースが増えている.障害者に対する福祉が施設福祉から在宅福祉に重点が置かれるようになり,社会生活力を高めることを目的とした社会リハビリテーションが注目され,施設でのリハビリテーションも社会生活技術訓練に重要を置くことが必要とされる1)

 われわれの施設では,慢性期の医学的リハビリテーションに加え,個々のニーズに応じた生活適応訓練を実施し,何らかの自立を目指した総合的なリハビリテーションサービスを提供している.ここでは,当園で行っているリハビリテーションのうち,生活適応訓練を中心に紹介し,リハビリテーションチームにおける各職種の社会リハビリテーションとの関わり,身体障害者更生施設が果たすべき役割について触れ,医師,看護婦,理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語療法士(ST)など主に医学的リハビリテーションを担う職種の人達が,今後,社会リハビリテーションを理解し,関わっていくための一助としたい.

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はじめに―米国の自立生活運動

 この運動の誕生は「自立生活の父」と称されるエド・ロバーツがカリフォルニア大学バークレー校に入学した1962年とされる.14歳の時にポリオとなり,首から下がすべて麻痺し,呼吸器付きの電動車いすを利用していた.その重い障害のために受け入れてくれるアパートもなく,キャンパス内にある病院から通院していた.が,病院は生活の場とはならず,管理,保護されるだけということに気付かされた.当時のアメリカは,1964年に公民権法が制定され,権利を獲得するための黒人運動や女性運動が盛んな時期だった.障害のある学生もこれらの運動の影響を受け,1970年,バークレー校で「身体障害者学生プログラム」が開始された.これは,重い障害があっても地域で学生生活が送れるよう,介助や住宅などの必要な援助を障害をもつ学生に提供するものだった.

 1972年,キャンパス内で得られた介助や住宅などのサービスが使えなくなることから,同じ障害をもつ仲間と話し合い,家族や友人の協力も得て,地域の中に自立生活(Independent Living;IL)センターを創ることになった.これが自立生活運動の始まりである.

 彼らが掲げた思想は次の4つのものである.

 ①障害者は「収容施設」ではなく,「地域」で生活するべきである.

 ②障害者は,治療を受けるべき患者でもなく,保護される子供でも,崇拝されるものでもない.

 ③障害者は援助を管理すべき立場にある.

 ④障害者は「障害」そのものよりも社会の「偏見」の犠牲者になっている.

 この自立生活運動は,社会運動にとどまらず,従来の医療モデルやリハビリテーションモデルも変更させたという.すなわち,サービスを管理するのは障害者自身であり,問題の解決は医療やリハビリテーションの専門家の介入ではなく,ピア・カウンセリングによる援助や環境の変更によってなされ,サービスの目標はActivities of Daily Living;ADLを高めることや職業につくことではなく,自立生活であるという自立生活モデルである.

 このモデルでは「障害者が他の人間の手助けをより多く必要としている事実があっても,その障害者がより依存的であることには必ずしもならない.人の助けを借りて15分かかって衣服を着,仕事に出かけられる人間は,自分で服を着るのに2時間かかるため家にいるほかない人間より自立しているといえる」のである.この,自分のやりたいことを実行するために,障害ゆえにできない事については援助の手段として使うという自立観は,自立生活モデルの中心的な考え方である.

所得保障と財産管理 小國 英夫
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日本の障害者の所得保障の概況

 日本の障害者数については推計値でしか示されていないが,平成10年版の厚生白書によると,身体障害者は285万6千人,知的障害者は30万1千人,精神障害者は217万人である.これ以外に18歳未満の身体障害児が9万2千人,知的障害児が9万6千人で障害者は全部で532万7千人,障害児が18万8千人とされている.

 本論においては特に断りがない限り18歳以上の障害者に関して考察していく.

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 今年の日本リハビリテーション医学会のパネリストとして「脳卒中病棟(Stroke Unit)におけるリハビリテーション医の役割」を報告した.リハビリテーション医の役割として全身管理と早期リハビリテーションの2つについては自験データに基づいて述べたが,3番目にチームリーダーとしての役割を加えるのに少し躊躇した.臨床経験からその重要性は明らかだが,それを示せる自験データがなかったからである.しかし,重要なことがすべて実証的に示せるわけではないと考え,リーダーシップの重要性を述べた.

 多数例を対象に実証的データで示す科学的方法では,評価尺度にのりづらいものや個別性がしばしば犠牲になる.それに対し,芸術の世界では,客観的評価尺度はなくとも多くの人が認める(感じる?)“価値”が「この1枚の絵」にあるか否かで評価される.医師に求められるリーダーシップは,客観的には評価しづらいが,よきリーダーは多くの人に支持されるし,そのリーダーの個性に大きく依存しているので,科学的方法の対象というより芸術の対象に近いと思う.おそらく数多くの観察(鑑賞?)をしたほうが目は肥えてくるであろうし,自分なりに評論・模倣しているうちに多少は“より価値あるもの”に近づけると思える.

講座 老化と心身機能

4.老化と精神・心理機能 三村 將
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はじめに

 本論の目的は老化によって生じる精神・心理機能の変化について述べることである.「老化」という用語はagingの訳であり,「加齢」と同義に用いられることも多いが,ここではこの両者は区別する立場をとる.すなわち,加齢とは文字どおり「年齢を重ねる」,「歳をとる」という,実年齢に即した概念であるのに対して,老化は今堀1)の考えに従って「加齢に伴う生理的機能の低下」とする.したがって,老化は実年齢と深く関わっている現象ではあるが,必ずしも加齢に比例するわけではなく,年齢だけからその機能低下の程度を正しく判断できるわけではない.

 人の精神・心理機能や,その基盤となる脳のはたらきの老化に関しては,これをいかなる人も避けて通れない生理的老化と,特定の人のみに生じる病的老化とに分けることができる.両者をはっきり区別することは困難であるが,病的老化の代表的な状態がアルツハイマー型痴呆を代表とする脳の変性疾患である.

 ここでは主に生理的な老化の現象を扱うこととする.生理的老化に伴って精神・心理機能はどのように変化するのであろうか.一般に,歳をとれば,知能や記憶は悪くなると思われている.しかし,はたして本当にそうであろうか.また,ひとくちに知能や記憶と言っても,加齢に伴って減衰しやすい機能とそうでない機能とがあると思われる.どのような機能が加齢の影響を受けやすいのであろうか.本論ではこれらの問題に関して,現時点で主に神経心理学的知見からわかっていることを取り上げる.最後に,最近むしろ加齢によっても低下しない認知機能が注目されてきており,高齢においてもこの種の能力を発達させていこうとする生涯発達の心理学の立場が研究されてきている.この点について簡単に触れることとする.

実践講座 リハビリテーション診察法

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はじめに

 本稿執筆において以下の2点に留意した.

 第1に,診断とは所見の取り方を知っているだけでは不十分で,その解釈ができることが大切であることに留意した.リハビリテーションにおいては,患者の呈する障害を医学的(本稿では神経学的)に分析し,治療へ結びつけていく必要がある.そのためには,運動制御機構を理解し,各神経徴候が示す運動学的な意味まで洞察が及ぶようになることが望ましい.したがって,本稿では神経所見の理解に重点を置き説明した.

 第2に,リハビリテーション医学における神経・筋系の診察手順では,患者の能力低下の評価から細部の診察に移ることが必要であることに留意した.この際,神経・筋系の診察とともに,障害を助長する神経・筋以外の修飾因子を見落とさないような診察手順となるよう配慮した.

ナースのためのリハビリテーション講座

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はじめに

 わが国における訪問看護の歴史は1983年の老人保健法にて保健婦の訪問する訪問指導事業の制定に遡るが,1984年からは訪問看護が診療報酬の対象となったことが始まりと言えよう.

 訪問看護は,何らかの病気や障害を持つ人々に,看護の有資格者が,それらの人々の生活の場に出向いて行う専門的サービスとして医療保険上に位置づけられたのである.さらに1992年4月には,老人訪問看護制度が創設され,1994年10月から対象者の年齢を問わず訪問看護が提供できるようになった.現在は病院・診療所から,また訪問看護ステーションからの訪問看護が可能となっている.

 訪問看護ステーションは1993年には300か所程度であったが,毎年その数を増やし,1996年には1,374か所,1998年5月には2,720か所へと推移し,なお新設のステーションが急増中である(表1).それでもゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)にて掲げられた5,000か所の整備目標には,まだ到達していない.しかし,訪問延べ件数は増加の一途をたどり,1996年には4,269,735件に及び,在宅ケアにおける医療サービスの中心を担っていると言ってよい状況である.

 対象者により医療的ハイテクケア,ターミナルケア,精神障害ケア,リハビリテーション的ケア,身体介護的ケアに分類される傾向にあるが,訪問看護統計調査によれば,その業務内容は23種に分類され,上位から病状観察,本人の療養指導,日常生活の介助,家族の介護指導となり,リハビリテーションは次の上位から5番目にランクされている(表2).すなわち訪問看護は在宅障害者の自立支援・機能維持に大きく係わっていると言えるのである.しかし,リハビリテーションの専門職である理学療法士(PT),作業療法士(OT)の訪問看護ステーションにおける活動は活発であるとは言えない.

 1997年6月の職種別にみた従事者数では,総数12,357人中,PT465人,OT183人であり,常勤者では6,336人中,PT76人,OT35人となり,常勤換算でPT150.2人,OT74.1人となっている.事業者数が2,048か所であり,1事業者の常勤換算でPTは0.073人,OTは0.036人でしかない.訪問看護ステーション14か所にPT1人,28か所にOT1人ということになる(表3).したがって訪問活動における主体は看護婦であり,看護婦がリハビリテーション的ケアを担っているのが現実と言える.

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はじめに

 嚥下圧測定は,咽頭や食道における内圧測定を行うもので,静止圧,収縮力,収縮時間などを知ることができる.臨床的には,咽頭や食道における食塊の推進力を定量的に評価することができると同時に,上部および下部食道括約筋の弛緩不全や閉鎖不全の評価などに有用とされている1-4)

 嚥下障害の評価における嚥下圧測定は,ビデオX線透視検査(videofluoroscopic examination of swallowing;以下,VF検査)や筋電図などでは得ることのできない筋力の低下や筋トーヌスの異常,収縮のタイミングの異常によって生ずる嚥下動態の異常を圧の観点から評価できる点で有用性の高い検査である.しかし,機器が高価なこと,手順が煩雑なこと,臨床での有用性が知られていないことなどから,一般の臨床で広く普及するには至っていない.

 嚥下圧測定が一般の臨床で行われていない現状では,障害によってどの程度嚥下圧が低下するか不明である.特に,リハビリテーションで扱うことの多い脳卒中後の嚥下障害者における嚥下圧のデータは乏しい.

 今回,筆者らは,Synetics Medical社の消化管内圧測定装置を用いて,脳卒中後の嚥下障害者に嚥下圧測定を試みたので報告する.

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はじめに

 社会生活能力は日常生活能力とは異なった能力であり,環境や人的支援の有無などにより影響を受ける.そのため,リハビリテーションでは,これらの能力を別々に評価することが必要となる.学齢期の肢体不自由児にとって,社会生活の主な場は学校である.したがって,学齢期の肢体不自由児のリハビリテーションでは,移動,身体の運動耐性,学習,コミュニケーション,認知・行動,授業参加など,学校生活への適応に関する能力障害を評価しなければならない.そして,学校教育の環境を検討したうえで,教育とリハビリテーションが協調していくことが大切である.

 しかし,学校教育と医学的リハビリテーションの連携は不十分な状態が続いている1).能力障害に関する評価では,教育と医学的リハビリテーションの両者に共有のADL評価表すら存在していない.この原因として,医学的リハビリテーションの側では,超早期療育や早期療育における神経発達学的プログラムが重視されており,乳幼児期への対応が中心であったことが考えられる.また,教育の側では,特殊教育の教育課程として養護・訓練が発展してきており,障害児教育の立場から教育方法や教育評価などを重視してきたことがあげられる1-3).さらに,プライバシー保護のために,医学的リハビリテーションと教育との相互の情報交換が円滑に進まないという制約があった.

 筆者らは,横浜市養護教育総合センターと協力して,1984年から一般校の肢体不自由児を対象としたリハビリテーション医学検診を実施してきた.リハビリテーション医学検診では筆者らが開発した学校生活への適応評価表(School Life Adaptation Inventory;SLAI)を用い,担任教師に対して,学校生活における能力障害の評価を依頼してきた4-6).1996年度にはSLAIを教育側と協議して改訂し,「できない」や「障害がある」などの負の表現をできるだけ少なくして,教師が評価しやすい内容にした(補表).

 本報告では,一般校の肢体不自由児に対するSLAI(改訂版)の評価について,再現性と妥当性を検定した.さらに,教育と医学的リハビリテーションの間の情報の共有にとって,SLAIが有用であるかどうかを検討した.

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はじめに

 WHOの国際障害分類(ICIDH)によると,社会的不利は「機能障害あるいは能力低下の結果としてその個人に生じた不利益であって,その個人にとって(年齢,性,社会・文化的諸因子からみて)正常な役割を果たすことを制限あるいは妨げるものである」と定義されている1,2).運動機能障害者のリハビリテーション・ゴールは,しばしば,自立した生産的な一員として地域社会(community)に再統合されながら,さまざまな社会的活動に復帰すること3)であり,社会的不利を改善することが主要な目標のひとつであるとされる.したがって,リハビリテーションの結果(outcome)の測定やプログラムの評価には,社会的不利の程度を記述する方法が必要であるが,わが国において普遍的な評価法はまだ十分に確立されていない.

 Craig Handicap Assessment and Reporting Technique(以下,CHARTと略)3,4)は,Whiteneckらによって開発された簡便で客観的な社会的不利の測定法である.この測定法は,米国ではCommunity Integration Questionnaire(CIQ)などとともに標準的な社会的不利の評価法として位置づけられており5),脊髄損傷患者や脳卒中患者に対する信頼性や妥当性が確認され,社会的不利の測定法として有用であることが報告されている6,7)

 そこで今回,われわれはCHARTを原文に忠実に日本語訳し,わが国の脳卒中患者に応用するために以下の予備的検討を行ったので,CHARTの概要とともに紹介する.

 なお,予備的研究の目的は,(1)CHARTを用いて在宅生活を送っている脳卒中患者の社会的不利の概要を明らかにすること,(2)退院時の機能障害や能力低下の程度と退院後の社会的不利との関係について検討すること,の2点である.

一頁講座 脳卒中の装具

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特徴

 簡易短下肢装具「トウ・アップ装具」(図1,2)の最も大きな特徴は,市販の常用靴をそのまま使用することが可能であるという点にある.この装具は装着が簡単であるのみならず,発症前に愛用していた靴が再び履けるという心理的効果も大きい.

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はじめに

 1995年12月に策定された「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略」において,7つの視点の第一である「地域で共に生活するために」が,またその中に「介護等のサービスの充実」があげられた.高齢者を対象とする介護保険制度が検討されているなかで,身体障害者福祉審議会は1996年6月に,厚生大臣に対して「介護保険制度の創設に際して」の意見具申をした.

 その内容は,障害者施策のうち,介護ニーズへの対応について介護保険制度との関連において,「①障害者施策が公の責任として公費で実施すべきとの関係者の認識が強い,②身体障害者以外の障害者施策が一元的に市町村で行われていない,③障害者の介護サービスの内容は高齢者に比べて多様であり,これに対応したサービス類型を確立するには十分な検討が必要である,④保険移行に当たっては,障害者の介護サービスをはじめとして現行施策との調整が必要である」等により,障害者の介護については当面,従来通りの公費負担により実施し,障害者プランによって介護サービス等のより良い提供体制を整備することが望ましいとした.

 このような意見具申が出されたことにより,高齢者と比較して遜色のないサービスを提供するための方法として,障害者を対象とするケアマネジメントの検討が行われている.

脳血管障害 True or False

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 脳障害患者の着衣活動は重要なADLの一つでもあり,種々の研究がなされている.脳障害患者における着衣の障害に関する論文は19世紀後半からみられるが,着衣失行として記載したのは,おそらくBrain1)が最初であると思われる.しかし,Brainの報告は,構成失行や視空間認知などに関する記載にやや不十分な面があり,着衣失行の独立性の基盤は必ずしも十分とは言えないと思われる.

 着衣失行は,日常の着衣動作の自動的で自然な能力が失われ,衣服の上下,表裏,左右などと自己身体の関係に混乱が起こり,衣服を身につけることができなくなる状態2)と解釈されるが,その独自性に関しては現在でもさまざまな見解がある.

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A1:40歳以上の身体障害者手帳所持者については,他の要介護者と同様の基準で介護保険の給付対象になれます.

 現状の法制度では,身体障害者福祉法や児童福祉法などには他法優先の原則があり,相互扶助の保険制度である「公的介護保険制度」にあっては,医療保険と同様に,これを優先して適用することになっています.したがって,身体障害者手帳所持者でも介護保険の給付対象者であれば保険サービスが優先されます.しかしその一方で,身体障害者福祉法(対象は身体障害者手帳所持者)や児童福祉法も存在していますので,介護保険には含まれない身体障害者福祉法などによる固有のサービスについては(たとえば義肢の給付など),少なくとも現状の水準を維持することが必要になります.このため,身体障害者手帳所持者は介護保険からのサービスを優先的に受けると同時に,その給付対象にはなっていない身体障害者福祉法による既存のサービスを受けることができます(図).

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1856年に発表されたフローベールの『ボヴァリー夫人』(伊吹武彦訳,河出書房)には,「鰐足」の男が手術される場面がある.この小説の舞台は,ヨンヴィルというフランスの片田舎の村であるが,最新の鰐足治療法を知った村の有力者オメーは,わが村でもこの手術を行わなければ時勢に遅れると考えたのである.

 オメーは早速,村の開業医であるシャルル・ボヴァリーを説得するとともに,宿屋の下男イポリットに手術を受けるように説き伏せた.イポリットの足は「馬蹄足に内翻足が少しまじったもの,あるいは軽度の内翻足に馬蹄足の症状がいちじるしいもの」だったのである.「まったく親切でいうことなんだぞ!(中略)おまえがなんとがんばっても,腰の動揺はおまえの仕事の大変な妨げにちがいないのだ」.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 戦争にもよくわかる戦争とよくわからない戦争がある.ベトナム戦争なんかは善玉悪玉の認知はもちろん,子どもにもその“物語”は理解できた.第二次世界大戦は言うに及ばずだ.しかし,ユーゴ紛争となるとこれはもうほとんど理解不能だろう.

 7つの国境,6つの共和国,5つの民族,4つの言葉,3つの宗教,2つの文字,1つの国家として数え唄のごとく表現されていたユーゴも5国に分解,チトー,パルチザン,自主管理社会主義という言葉もいまや懐かしい.

学会印象記

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 弘前大学脳神経疾患研究施設リハビリテーション部門教授福田道隆会長のもと,第35回日本リハビリテーション医学会学術集会が平成10年5月28日から30日までの3日間,青森市で行われた.学会は3会場に分かれていたがそれぞれ近接しており,また3日間とも晴天にも恵まれ,歩いて各会場を見て回ることができた.学会は一般演題612題,会長講演,招待講演4題,シンポジウム2題,パネルディスカッション3題,セミナー11題など盛りだくさんのプログラムであった.全国規模の学会は会場が多く興味のある講演が重なってしまうことが多いのは残念だ.

 今回のメインテーマは「21世紀におけるリハビリテーション医療の位置づけ」であり,21世紀におけるリハビリテーション医療の重要性とその発展,充実を期待しているテーマと思われる

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 この本は今の時代が求めている本である.そう断言できる時代背景を考えてみる.まず,臨床現場へのEBM(Evidence-based Medicine)という概念の普及である.高齢化社会に伴う医療費の高騰とともに,医療費の支払い側や医療を受ける側から,医療の内容に対して厳しい目が注がれるようになってきている.腰痛の治療に対しても例外ではない.腰痛の治療や腰痛による職場の欠勤に伴うコストは,医療のみならず製造コストの面からも無視できないほどになってきているからである.

 EBMの観点からみると,腰痛の保存療法には,科学的有効性が立証された手技はほとんどないと言われ,現在,再評価の動きが急ピッチで進められている.こうしたなかで,腰痛治療が成功する鍵は,患者さんの抱いている不安や恐怖を除去することと教育であるということが明らかにされつつある.

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 リウマチとのつきあい方全てがわかる本

 物理療法は,物理的エネルギーを治療に用いる療法です,その効果は2つに分けて考えられます.一つは物理的エネルギーの直接的効果で,温めて血液循環を良くし筋の過緊張を緩めることや関節を動かして関節機能を維持するなどです.他の一つは,体全体の働きを高める効果です.その人の体が,本来持っている治癒力,適応力などと呼ばれる力をよりよく発揮できる状態にすることです.体の内側から改善の可能性を大きくしようということです.慢性関節リウマチは,未だ治療法が解決していません.患者さんの生活全体を通じて改善の可能性を大きくすることが大切です.その点で本書はリウマチ治療の大きな力になります.

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 1980年代末に彗星のように登場した石川誠医師率いる近森リハビリテーション病院(高知市)は,今や都市型リハビリテーションと地域リハビリテーションの一大メッカとなっている.本書はそれ(正確に言えば,本院,老人保健施設,訪問看護ステーション等を加えた「近森グループ」)への密着取材に基づく迫真のルポルタージュである.

 石川医師自身の「自分史」とも言える長い序文に続く本文は,次の7章から構成されている,第1章「近森リハビリテーション病院」,第2章「近森のリハビリテーション看護」,等3章「近森はどう変わったか」,第4章「リハビリテーション・システム」,第5章「石川組の面々」,第6章「地域リハビリテーションの課題」,第7章「近森会から学ぶもの」.この部分の著者河本のぞみ氏は,ベテランの作業療法士兼高名なパントマイム・パフォーマーだそうである.

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文献抄録

編集後記
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・いつ梅雨が終わり,いつ夏が来たのかはっきりしないまま秋雨に降り込められ季節感の薄い日が多かったが,時計は時を刻み暦は日々を刻んでまた歳をとる.今年の夏休みは母親の術後の看病で数日間病院に泊まり込むはめになり深刻な病院事情を思いも寄らず体験することになった.付き添いは廃止されたものの「患者の精神的安静のために」という覚書を一筆とられいわば看護の実質的な補助を家族が肩代わりする,ICU替わりに特別室が使われる,食事は一部有料になっても相変わらず冷たくて不味い…….

基本情報

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総合リハビリテーション
26巻10号 (1998年10月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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