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はじめに
社会生活能力は日常生活能力とは異なった能力であり,環境や人的支援の有無などにより影響を受ける.そのため,リハビリテーションでは,これらの能力を別々に評価することが必要となる.学齢期の肢体不自由児にとって,社会生活の主な場は学校である.したがって,学齢期の肢体不自由児のリハビリテーションでは,移動,身体の運動耐性,学習,コミュニケーション,認知・行動,授業参加など,学校生活への適応に関する能力障害を評価しなければならない.そして,学校教育の環境を検討したうえで,教育とリハビリテーションが協調していくことが大切である.
しかし,学校教育と医学的リハビリテーションの連携は不十分な状態が続いている1).能力障害に関する評価では,教育と医学的リハビリテーションの両者に共有のADL評価表すら存在していない.この原因として,医学的リハビリテーションの側では,超早期療育や早期療育における神経発達学的プログラムが重視されており,乳幼児期への対応が中心であったことが考えられる.また,教育の側では,特殊教育の教育課程として養護・訓練が発展してきており,障害児教育の立場から教育方法や教育評価などを重視してきたことがあげられる1-3).さらに,プライバシー保護のために,医学的リハビリテーションと教育との相互の情報交換が円滑に進まないという制約があった.
筆者らは,横浜市養護教育総合センターと協力して,1984年から一般校の肢体不自由児を対象としたリハビリテーション医学検診を実施してきた.リハビリテーション医学検診では筆者らが開発した学校生活への適応評価表(School Life Adaptation Inventory;SLAI)を用い,担任教師に対して,学校生活における能力障害の評価を依頼してきた4-6).1996年度にはSLAIを教育側と協議して改訂し,「できない」や「障害がある」などの負の表現をできるだけ少なくして,教師が評価しやすい内容にした(補表).
本報告では,一般校の肢体不自由児に対するSLAI(改訂版)の評価について,再現性と妥当性を検定した.さらに,教育と医学的リハビリテーションの間の情報の共有にとって,SLAIが有用であるかどうかを検討した.
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