Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
フローベールの『ボヴァリー夫人』―障害と治療
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.1000
発行日 1998年10月10日
Published Date 1998/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108787
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1856年に発表されたフローベールの『ボヴァリー夫人』(伊吹武彦訳,河出書房)には,「鰐足」の男が手術される場面がある.この小説の舞台は,ヨンヴィルというフランスの片田舎の村であるが,最新の鰐足治療法を知った村の有力者オメーは,わが村でもこの手術を行わなければ時勢に遅れると考えたのである.
オメーは早速,村の開業医であるシャルル・ボヴァリーを説得するとともに,宿屋の下男イポリットに手術を受けるように説き伏せた.イポリットの足は「馬蹄足に内翻足が少しまじったもの,あるいは軽度の内翻足に馬蹄足の症状がいちじるしいもの」だったのである.「まったく親切でいうことなんだぞ!(中略)おまえがなんとがんばっても,腰の動揺はおまえの仕事の大変な妨げにちがいないのだ」.
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