臨床泌尿器科 22巻13号 (1968年12月)

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 近年,交通の輻輳と産業の殷盛,各種スポーツの発達に伴い,不慮の事故による外傷が社会問題化するようになり,災害外科が重要視されつつあるが,泌尿器科領域における外傷についても,必然的に深い関心が示されるようになつてきている。

 われわれは本邦における尿路外傷の現況を知るため,全国の大学および一部の主要総合病院を煩わし,アンケートにより,昭和39年1月より同41年12月までの3年間における,医療行為によるものを除いた尿路外傷患者について,調査を行なつた結果に基づき,統計的観察を行なつたのでここに報告する。

 本調査に当り,各大学,主要総合病院69機関の御協力を得て貴重な資料を頂いた。

 末尾に記して感謝の意を表する。

外傷と血尿 加藤 篤二 , 友吉 唯夫
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 外傷と血尿とを関係づけて総論的に述べることは,一見容易なようでむずかしいことである。泌尿器科的見地よりみるとき,外傷には尿路性器外傷と尿路性器外の外傷とがあり,血尿にも外傷のほかに非外傷性の原因がいろいろ存在し,また単に血尿といっても,真の血尿とまぎらわしい血色素尿やミオグロビン尿がある。また,外傷の部位によっても出血の様態が異なることも考慮すれば,問題は更に複雑となる。そこで,外傷と血尿とのあいだには,下の第1表のような関係が考えられるので,いちおうこの線に沿って論述を進めてみたい。

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はじめに

 外傷に起因する排尿障害の臨床像は様々であるが,成因別には排尿に直接関与する(腎)・膀胱・尿路損傷に由来するものと,排尿に関与する中枢および末梢神経支配の障害に起因するものとに分けられる。後者に由来する排尿障害が神経因性膀胱(障害) neurogenic disorders or urinary bladder,(neurogenic bladder)と総称され)臨床的には脊髄損傷に伴うことが多いので脊髄膀胱cord bladderで代表される。この神経因性膀胱の臨床像は神経障害の部位,程度,経過年月とこれに伴う尿路合併症などにより複雑多岐にわたる臨床症状を示すので,臨床像の分類把握は実際の症例では容易でなく,神経因子以外の排尿障害をきたす器質的疾患との鑑別診断はもとより,治療の立場からも尿路管理に困難があり,かつまた極めて難解な諸問題をも蔵している。ここでは泌尿器科の立場からの解説は他にゆずるとして1〜7),脳神経外科医の立場から主に外傷に起因する神経因性膀胱について述べよう。

外傷と腎機能 山村 秀夫 , 浅原 広澄
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はじめに

 外傷や手術などの侵襲により急速に腎の排泄機能障害を起こす症候群がある。これ等は原因により,Crush syndrome, Traumatic uremia, Surgicaloliguria, Shock kidney, Hemoglobinuric nephro-sis, Toxic nephrosis, Burn nephritis等,様々な名称があり,病理学的にはLower-nephron ne-phrosisまたはAcute tubular necrosisが最も一般的な呼び方とされている。これらの疾患は原因によつて組織学的病変も多少異なるが,臨床的に共通の経過をとり,また診断,治療が同様に扱えることから臨床的な症候群として,急性腎不全(Acute renal failure)と呼ばれている1)2)。ただし,これを広い意味にとると,腎自体の疾患およびその他の原因による急性の腎不全が含まれる。

 ここでは外傷後および術後急性腎不全の原因,腎機能の変化による臨床経過および診断を中心にのべ,最後に治療と予防について,簡単にふれる。

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Ⅰ.尿路感染の誘因

 尿路感染の誘因として,次の3項目があげられる1)

(1)尿のstasisおよび尿路のobstruction:尿路外傷の場合,そこに血腫形成,尿浸潤などがおこり,stasisあるいはobstructionを起こし,尿路感染症の誘因となる。また,他の尿路系以外の臓器,例えば,腹腔内臓器の損傷により血腫ができ,尿路を圧迫した時もこのcategoryに入り,尿路感染を惹起する可能性がある。あるいは,脊髄損傷によるいわゆる"神経因性膀胱"により尿のstasisがおこり,感染の誘因となるのもこの例である。

尿路外傷と救急処置 高井 修道
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 近年我が国における尿路外傷も交通事故によるものが多くなり,その数も著しく多くなつてきた。尿路外傷の大部分のものは皮下損傷で,主としてし腎臓と尿道に起こる。膀胱は比較的まれで尿管は外傷を受けることはまれである。

 尿路外傷の際の救急処置の如何は予後を決定する重大な因子であるのみならず,時には生命に影響を及ぼすので,極めて慎重に適切に行なわねばならない。ところが現実には外傷の救急処置は必ずしも泌尿器科専門医のいるところで行なわれないので,適切な救急処置が行なわれず,その後の治療に重大な支障をきたしている。

 ここではとくに腎臓,尿道,膀胱の外傷の際の救急処置について総論的事項を述べることにする。

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 腎外傷に際しては,腎損傷の程度により観血的治療法の適応が問題となる。

 腎損傷の程度がひどければ観血的療法が急がれなければならず,損傷の程度があまりひどくなければ非観血的に経過を観察していてよいこともあり,損傷の程度が軽微であれば保存的療法で完全に治癒する。

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 近年,交通災害の増加によつて尿路が損傷を受ける場合が非常にふえてきている。この際,外傷の程度や損傷部位および尿路以外の重要臓器の副損傷の有無などを正確に把握することが,次に起こるべきショックの治療の重要な手段となる。

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 腎臓は2つ(1対)ある。従つて,外傷で一側の腎が破裂したならば直ちに腎剔除を行なうべきであり,またこれが最も安全な対策であると述べる臨床医がかなり多い。また,一方,腎は実質性臓器で治癒傾向が大であるから,かなりの損傷も対症療法で処理することができると対照的な見解を述べている向きも少なくはない。このような見解の相違を統一し,臨床の実際に当り,直ちに指針として用いられる決定的な見解を述べることが本稿の責であろうと考えられる。

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 腎皮下損傷の後遺症はさほど多いものとはいえない。しかし周知のように近時交通,スポーツ,工場災害などの頻発に伴つて腎外傷の症例も漸次増加し,さらにショック,感染に対する最近の治療法の目ざましい進歩のお蔭で高度腎傷害に際してもまず保存的な治療が行なわれる趨勢にある。このような理由で後遺症は今後ますます増加するものと考えられる。また後遺症はその鍾類,症状が多種多様で,軽症の場合は全く治療の対象とならないものも少なくないが,中には外科的治療によつて始めて治療の目的が達せられるような重大なものをも含んでいる。このような観点から腎皮下損傷の後遺症は腎外傷を論ずる上に極めて重要な命題ということができる。

Ⅲ尿管の外傷および損傷

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はじめに

 婦人性器と尿路系はとくに骨盤内で近接して位置しており,両者は形態的にも機能的にもお互いに影響を与える関係にある。

 産婦人科手術は主に骨盤内で行なわれるので尿路ことに尿管,膀胱や時には尿道に損傷を与えることがある。

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Ⅰ.尿管腟瘻発生の2様式

 尿管瘻は,尿管の損傷の結果として発生する。その原因は専ら手術によるものと考えてよい。りくつとしては,外傷による損傷もありうるが,このときの尿管損傷は下腹部の重大な損傷の部分的現象であるから問題にはならない。

 尿管損傷は骨盤内手術で起こることが多いので,婦人科手術後に,尿管瘻の頻度がもつとも高い。

尿管瘻の形成手術とその適応 岡 直友
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Ⅰ.尿管瘻の分類

 尿管瘻はWinsbury-Whiteによれば,1)尿管腟瘻,2)尿管皮膚瘻,3)尿管—膀胱—腟(—直腸)瘻,4)尿管子宮瘻,5)尿管腸瘻に分類される。これらはあるいは先天的奇形として,あるいは外傷や後腹膜ないし骨盤腟の手術により,あるいは炎症性または癌性の浸潤・崩壊によつて起こる。先天的奇形としてみられる尿管瘻には更に尿管開口異常として女子外陰部に開口した尿管に由来するものがみられる。そのような奇形では,尿管の手術的分離(dissection)は容易であるが,術後性あるいは炎症性の尿管瘻になると尿管周囲の炎症性浸潤や瘢痕による異常な組織硬化や癒着をみるものが少なくなく,尿管の分離に難渋することもしばしばである。ことに炎症性の汚染や組織壊死が加わつているときは,形成手術に適切な健康部尿管を瘻孔の近接部では得られないことすらある。

 複雑な尿瘻として,私は18歳の女子で,鵞卵大の腟結石による軟部の侵蝕のため尿管—膀胱—腟瘻をきたした例を経験したが,本例ではその側の腎に著明な発育不全があり,腎保存の意義を認めなかつたので腎尿管全摘出と膀胱壁の縫合を行なつた。また,腸閉塞に継発した尿管—小腸—腟—皮膚瘻をきたした32歳の女子に対して,外科の協力のもとに,創底を廓清して小腸の端々吻合と,尿管患部の切除ならびにその端々吻合を行なつた症例を経験している。

尿管狭窄の原因と診断 佐藤 昭太郎
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 本稿は特集「尿路の外傷と損傷」の1つとして依頼されたものであるので,これに直接関連した尿管狭窄とすると,範囲がかなり限定されてくる。しかし,実際に患者を診る場合,尿管狭窄にあつては,外傷および損傷の時点からかなり時日を経過してからであつて,直ちにこの原因的要素が明らかであるとは限らない。尿管狭窄に関する広い知識が要求されるものであるので,ここでは特に外傷および損傷後の尿管狭窄とせず,鑑別診断の意味も含めて,広く尿管通過障害の原因と診断について述べて行きたい。

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はじめに

 尿管狭窄は,腎より排泄される尿の通過障害をきたすために,1)水腎症,2)腎盂腎炎,3)腎性高血圧等の人体に対する重大な疾患を合併する。しかも,狭窄が,両側性にみられる時は,その影響は大きい。

 狭窄の部位によつて,次の3つに分類される。1)腎盂尿管接合部(Uretero-pelvic junction),2)尿管中央部(Body of Ureter),3)尿管膀胱接合部(Uretero-vesical junction)の狭窄である(Creevy1)1957, Edelbrock2)1955)。このうち,狭窄の最も多くみられる部位は,尿管膀胱接合部,腎盂尿管接合部であり,尿管中央部は比較的少ない(Campbell3)1954)。

Ⅳ膀胱の外傷および損傷

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 膀胱が外力により損傷を受ける場合,切創や鋭創など皮膚や筋層の外傷と同時におこる開放性損傷と,それらを伴わずに膀胱だけにおこる皮下損傷とあり,ふつう後者を膀胱破裂という。なおこれら以外に穿孔や瘻形成などの語も用いられ,これらの用語の使用法はやや混乱しており,この点についてはわたくしが以前詳論したことがある1)

 ここでは以下常識的意味での破裂について述べることにする。

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Ⅰ.TURの器械

 経尿道的切除術Trans Urethral Resection (以下TUR)は米国で開発された泌尿器科領域において欠かすことのできない手術操作である。本邦ではこの技術が本格的に導入されて以来,未だ10年にみたないが漸次普及され,現在ではその価値が広く認められ,数多い泌尿器科医によつてこの手術が行なわれている。

 TURは器械の操作による手術であるから,術者の技術的な熟達はもちろんのことであるが器械の性能がよくなれば満足な手術はなし得ない。

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はじめに

 婦人性器と尿路系は骨盤内において相互に近接しており,性器腫瘍を始めとして妊娠・分娩・骨盤内炎症・骨盤内手術および骨盤部放射線療法に際しても種々の尿路障害がみられることは周知である。このうち尿瘻は特に間断なき尿漏出によりはなはだしく患者を苦しめるとともに,その発生原因の多くは手術その他の医療処置に求められることが多く,しかも治療に困難を極める場合の多いことでもつて医師にとつても嫌な疾患である。尿瘻には尿道腟瘻,膀胱腟瘻,子宮頸膀胱腟瘻,子宮体膀胱腟瘻,膀胱腸瘻,腹壁膀胱瘻,尿管腟瘻,尿管子宮頸瘻,尿嚢瘻等の種々の型が挙げられる。我々産科婦人科領域で経験することの多いのは膀胱腟瘻および尿管腟瘻である。本稿においては婦人の膀胱瘻の発生原因と予防処置について具体的に述べて行きたい。

膀胱瘻の形成手術 町田 豊平
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はじめに

 膀胱はその解剖学的関係から他の骨盤部臓器と連絡した尿瘻を形成し易い。その殆どが骨盤手術や処置による外傷—特に産婦人科疾患に起因する。これらの,膀胱と通じた異常な尿導管は,その成因,位置的関係および発生時期の経過によつてさまざまな病相をみせる。しかし,いつたん発生した膀胱瘻は姑息的治療では治癒し難く,多くは根治的膀胱瘻閉鎖術(膀胱形成手術)が必要となる。

 膀胱瘻のなかでよく遭遇するのは膀胱腟瘻で,稀に膀胱子宮頸管瘻や膀胱(直)腸瘻もみられるが,手術方針は基本的に似通つており膀胱瘻の形成手術を中心にのべたい。

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Ⅰ.膀胱機能不全の要因

 膀胱の生理的機能はいうまでもなく尿の貯留と排尿収縮の2つである。このような膀胱機能を直接あるいは間接的に障害し膀胱機能不全を起こさせるような外科的要因および附帯要因は次のようなものが挙げられる。

膀胱尿管逆流の発生と診断 川井 博
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はじめに

 膀胱尿管逆流現象(以下VURと略)は膀胱内容が尿管ないし腎盂内に逆流する状態をいうわけであるが,この現象は既に1893年Pozziが手術時に損傷した尿管断端から膀胱尿の逆流することを報告した当時から知られていた。その後Voelcker,Lichtenberg(1906)あるいはBarley(1912)等によりX線学的に膀胱尿の逆流が確認されるようになつて一般にも注目されることになつた。以来この事象に対する研究は実験的にも臨床的にも多数報告されており,本邦においても既に20年前に堀尾により詳細な臨床研究が行なわれている。しかし最近再びこの問題が一般の関心をひくようになつたことは,VURが従来考えられていたよりも腎機能に与える影響,あるいは慢性腎盂腎炎の原因として重大な意義をもつことが明らかになつてきたためである。特に尿路損傷に伴つて見られる慢性尿路感染症の原因や持続にはVURの関係する所が大きいと考えられる。

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Ⅰ.VUR治療法の分類

 正常には膀胱尿の尿管内逆流vesicoureteral re-flux(以下VURと略記)は,膀胱尿管接合部(以下接合部と略記)の特殊な構造と生理的機能によつて防止されている。

 VURの病因は極めて複雑多彩で,ほとんど総ての尿路疾患が直接あるいは間接に接合部の器質的・機能的障害から—適性あるいは永続性のVURをもたらす可能性があるが,1.尿路感染,2.下部尿路通過障害,3.下部尿路の神経支配障害(神経因性膀胱),4.接合部の先天性異常(いわゆるprimary reflux)および,5.接合部の損傷に大別される。

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 膀胱結石は上部尿路結石の戦後の著明な増加とは反対に減少の一途をたどつている。従つてこれに含まれる膀胱異物結石の中で手術に関係のあるものはごく小数例となつている。しかしながら一面本症には"The plaintiff has the burden of proof."という言葉があるとおりに術者の一瞬の不注意が原因となつている症例もあり,膀胱異物結石症例が少ない程また全然無いことの方が医師にとつても望ましいものである。

Ⅴ尿道の外傷

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はじめに

 尿道外傷は解剖学的関係から男子に圧倒的に多く,女子では稀に産科婦人科の経腟的手術時損傷として見られるに過ぎない。男子尿道外傷は主として外からの鈍力によつて発生するが,時には経尿道的操作によることもある。損傷の程度としては極く軽度な挫傷から裂傷,高度なものには骨盤骨折を伴う破裂離断にいたるまで種々で,概して近位尿道の損傷の方が重篤である。損傷の部位も尿道膜様部membranous portionより近位の後部尿道損傷,尿道球部bulbの損傷および尿道陰茎部penile portion損傷の3型に大別される。

 尿道損傷に伴う出血には損傷部位より尿道内腔を経て外尿道口より外出血として現れるものと,内部に血腫を形成することがあり,両者が合併して見られるのが普通であるが,損傷の部位によつて発現の様相を異にする。出血の程度も軽微な場合から失血性ショックをひきおこすような重篤なものまで変動が多い。ここでは損傷の型とそれによる出血の特徴を中心として述べる。

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Ⅰ.尿道外傷とその分類

 尿道の部位的名称にはいろいろのわけかたがあるが,ここでは尿道の外傷性損傷の部位を3つに分類してのべたい。後部尿道には前立腺部尿道も当然ふくまれるが,前立腺部尿道だけの外傷性損傷は少なくかつ膀胱外傷とも重複する点が多いので本章では後部尿道としては尿道膜様部,前部尿道に尿道球部および振子部と分類した。

尿道外傷の部位{尿道膜様部損傷>後部尿道 尿道球部損傷 尿道振子部損傷>前部尿道

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はじめに

 天井知らずの自動車事故の激増により,泌尿器科領域の外傷も次第に増加してきた。交通事故による尿道外傷は,骨盤骨折を伴うもので,多くは前立腺部の完全尿道破裂で非常に手こずるものである。さぞかし,治療や後遺症に困惑している医師も多いと思う。大学病院,大病院では,新鮮外傷は増加しない。時に尿道狭窄,尿瘻患者が紹介されて来院するくらいである。すなわち,第一線病院で,尿道外傷の多くは処置されていることになる。その病院の処置によつて,患者の予後が左右され,極端にいえば,運命が決定される。尿道狭窄のために,青年が,永久的膀胱瘻を設置されているのを,幾度か見た。一度処置を誤ると,その後遺症たる尿道狭窄,尿瘻等の治療は誠に困難で,患者の社会的生命を奪うことすら多々ある,第一線医師の処置が後々まで,尾をひくのである。かかる外傷を扱う医師は,泌尿器科専門技術を充分修得した者に限られる筈であるが,実情はそうでなく,専門的技術に乏しい医師によつて,処置されていることが多い。

 尿道外傷の患者が運び込まれたらどうするか。

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 近年,交通事故ならびに産業の発達に伴う作業中の事故の増加により,尿道破裂の発生頻度が高くなり,これに対する処置や手術が適切を欠くために,後遺症としての尿道狭窄および尿道瘻,特に外傷性尿道狭窄症例にしばしば遭遇するが,その形成手術は必ずしも容易でない。ときには広汎な尿道閉塞や高度の尿感染合併のために難渋することもあり,また術後再発例も少なくない。

 筆者らは形成手術として主にpull-through operation (以下尿道牽引手術と略称)を行なつているので,本稿ではこれを中心として記述するとともに,陳旧性尿道外傷手術に関する問題点にも触れたいと思う。

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はじめに

 高度尿道損傷時に行なわれる尿路変更術には一時的なものと永久的なものとがある。一時的なものは受傷後に創傷が治癒するまで,あるいは尿道再建術後の尿による創汚染を避けるために行なわれ,いずれは尿流を本来の尿道に戻さなければならない。永久的尿流変更は尿道の再建がいかなる手段をもつてしても不可能の場合や,萎縮膀胱,難治性膀胱周囲膿瘍,腹壁欠損などのため膀胱を使用しえない場合にはじめて適応となる。

 われわれの昭和41年までの15年間の統計では114例に尿路変更手術が行なわれたが,そのうちわずか5例(4.4%)が尿道損傷に対して行なわれたものである。しかし,われわれの基本方針は不自然な尿路変更よりも自然な尿路を再建することであり,高度の尿道損傷に対しても性急に永久的尿路変更を行なうことなく尿道の再建に努力し,成果をあげている。従つて,尿道損傷に対する尿路変更の経験に乏しいことをお断りしておく。ここではまず症例を説明し,ついで高度尿道損傷の場合のわれわれの治療方針および尿路変更術についてのべてみたい。

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 尿道外傷は最近盛々増加する傾向にあるが,適当な治療が行なわれないと後年難治の後遺症に苦しめられることになる。その中で最も問題になるのは尿道狭窄であるが,その他に尿浸潤,尿道瘻,尿路感染症,尿路結石,インポテンツ,時には男性不妊等もみられる。これらの多くは損傷直後に正しい診断が下され,正しい治療法が行なわれれば防ぎ得るものである。すなわち,かかる後遺症の予防法とは,損傷直後の正しい診断と適切な処置に他ならないのである。泌尿性器外傷は一般の外傷に比しまれであつて,かつ一般外傷を取扱う最前線の病院に泌尿器科専門医のいないことが多く,腎外傷などは多く一般外科医により処置されているが,尿道外傷についてはその場で適切な処置をとられることなく,後になつて泌尿器科専門医へ廻されることが多い。このことは事故による教室最近の尿道外傷22例をみても受傷後3日以内に来診したものは7例にすぎない。このため我々は尿道外傷そのものより,その後遺症の治療を行なうことが多くなつている。

 この他医療過誤に基く広義の尿道外傷による後遺症をみる機会も決して少なくない。本論文においては,主としていわゆる尿道外傷の後遺症について述べるが,1, 2医療過誤による症例をも引用して解説したい。

Ⅵ尿路の放射線損傷

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 上腹部ことに腎を含む後腹膜の悪性腫瘍に対する放射線治療に際し種々の腎障害が発生することがある。これら腎障害は慢性腎不全や尿毒症の原因となり,時として死にいたらしめることがあり,ことに最近のごとく超高圧X線やγ線による治療が普及してきている現在,照射に伴なう腎障害の問題はますますその重要性をましてきた。

 本稿においては,このうち特に放射線腎炎(Radiation Nephritis)の問題について文献および私どもの研究成果をもとにして,二,三の考察を試みることにする。

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 近年,放射線治療装置の著しい進歩によつて,がん治療上放射線療法の占める比重が大きくなつてきたことは今更いうまでもないことである。放射線療法は適応が広く,その利用の仕方によつてはこれまでのがん治療成績を大きく向上させ得る可能性については,今日疑う余地のないことであり,放射線療法を導入しなければ成績向上は望めないといつても過言ではないと考える。しかしながら,放射線療法は慎重な治療計画にもとづいて行なわれない場合には,放射線傷害発生の危険があることを常に忘れてはならない。実際に高度な放射線傷害の症例を経験するにつけ,傷害発生の防止に極力気を配らねばならないと痛感するわけである。とはいえ,いたずらに傷害発生を恐れて,放射線療法を敬遠することもないと考える。

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はじめに

 放射線治療は,癌の発生母地およびその隣接臓器の放射線に対する耐容量と,癌の致死線量との差によつて成り立つている。

 したがつて,癌が照射により,良く治癒するためには,第一には,癌の発生母地が,その癌より,照射によく耐え得なければならない(子宮腟部ならびに頸部は,幸いにも,そこに発生している癌の放射線致死線量の2〜3倍の線量にも耐え得る)。第二には,発生母地周囲の近接臓器(子宮頸癌の場合には,特に膀胱後壁,直腸前壁)に,大線量が与えられないように,適切な照射技術を駆使しなければならない。

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 尿管に対する放射線障害の危惧のある対象疾患は,子宮頸癌,膀胱癌,前立腺癌,睾丸腫瘍および後腹膜腫瘍等であるが,このうちで最も問題になるのが,子宮頸癌であり,また睾丸腫瘍の後腹膜リンパ節照射である。

 ことに,子宮頸癌と尿路の障害については,古くより論じられており,それには癌の浸潤によるものと放射線照射によるものとがあげられている。その他の悪性腫瘍に対する後腹膜照射で尿管狭窄をきたすことは極く稀なことであるから,ここでは,子宮頸癌を中心に尿管の放射線障害について論ずることとする。

基本情報

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臨床泌尿器科
22巻13号 (1968年12月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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