臨床眼科 69巻5号 (2015年5月)

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要約 目的:未治療の重症糖尿病網膜症の臨床像と手術成績の報告。対象と方法:過去21か月間に糖尿病網膜症に対する硝子体手術を行い,6か月以上の経過を追えた26例35眼を対象とした。男性26眼,女性9眼で,年齢は23〜70歳,平均43歳である。全例がそれまで糖尿病の治療を受けておらず,当科受診後に糖尿病の治療を開始した。結果:全例が2型糖尿病で,70%の症例が10%以上のHbA1c値を示した。46%の症例に顕性腎症があった。視力は指数弁以下が13眼(37%),0.1未満が10眼(29%)であり,硝子体出血が2眼(6%),牽引性網膜剝離が21眼(60%),血管新生緑内障が2眼(6%)であった。術後の最終視力は,改善69%,不変17%,悪化14%であった。術後視力に影響する因子は,術前視力,牽引性網膜剝離,初診時のHbA1c,腎症の病期,初診から手術までの日数,HbA1cの改善値であった。結論:未治療の重症糖尿病網膜症であっても,迅速に血糖をコントロールし,早期の硝子体手術を行うことで,視力が改善または維持する可能性がある。

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要約 目的:強力な治療で軽快した巨大結節性後部強膜炎の1症例の報告。症例:48歳女性が両眼の強膜炎で紹介受診した。2か月前に両眼の虹彩炎と診断され,1か月後に両眼の強膜炎が発症した。ステロイド薬の局所と全身投与で改善がなかった。所見:矯正視力は右0.3,左0.8で,両眼に前房の強いフレアと硝子体混濁があり,上方の強膜に充血した結節があった。MRIで上方後部の強膜に強い肥厚があり,巨大結節性後部強膜炎と診断した。当初は治療に抵抗した。メチルプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド薬の大量投与に,コルヒチンとメトトレキサートを加え,2か月後に病勢が鎮静化した。結論:巨大結節性後部強膜炎は眼内腫瘍に似た所見を呈することがある。本症例のような難治例では,強力な抗炎症薬と免疫抑制薬の全身と局所投与が奏効した。

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要約 目的:偽黄斑円孔において,円孔底網膜厚が減少し視力低下をきたす場合がある。これらに対し,黄斑上膜と内境界膜(ILM)剝離併用硝子体手術を施行した際,術後合併症に黄斑円孔がある。この場合,すでにILM剝離がされており,治療に苦慮する場合がある。今回,偽黄斑円孔に対し,Hemi-Inverted法を併用した硝子体手術の有用性につき検討した。対象および方法:対象は2011年10月〜2014年3月に当院で偽黄斑円孔に対し,Hemi-Inverted法併用硝子体手術を施行し,6か月以上経過観察可能であった11例11眼(平均年齢71.1±6.7歳,男性3例,女性8例)。手術適応基準は黄斑部偽円孔底網膜厚が100μm以下の症例とした。結果:術前平均対数視力は0.44±0.32から術後0.19±0.19(Wilcoxon signed-rank test, p=0.0033)へ有意に改善した。術前偽円孔底網膜厚平均77.6±20.8μmから術後191.5±79.3μm(paired t-test, p=0.00065)へ有意に増加が認められた。結論:Hemi-Inverted法は偽円孔修復に有効であり,合併症としての黄斑円孔の発生もなく,偽黄斑円孔の治療法に有効である可能性が示された。ただし,今後,症例数の増多とさらなる長期間の経過観察が必要である。

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要約 目的:網膜内層に微小囊胞様変化がある特発性黄斑上膜眼に行った手術成績の報告。対象と方法:過去43か月間に当科で手術を行った特発性黄斑上膜56眼のうち,網膜内層に微小囊胞様変化がある18眼と,変化がない38眼とを比較した。微小囊胞の有無は光干渉断層計(OCT)による所見で決定した。術後6か月以上の経過を追跡した。結果:手術6か月後の視力は,微小囊胞がある群では,ない群よりも有意に低かった(p=0.003)。多変量解析では,手術6か月後の視力に関係する因子は,術前の囊胞様変化の有無(p=0.02)と,術前視力(p<0.001)であった。結論:特発性黄斑上膜の術後視力には,網膜内層の微小囊胞様変化の有無が影響する。

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要約 目的:LYTRO®は写真の焦点位置を撮影後に自在に変更することができる特殊なデジタルカメラである。今回,筆者らはLYTRO®を用いて細隙灯顕微鏡下での前眼部,中間透光体,後眼部所見を撮影し,臨床的有用性を検討した。対象と方法:対象は細隙灯顕微鏡検査で所見がとれた角膜疾患,白内障,眼底疾患を有する患者15例15眼(男性6例女性9例)である。撮影はLYTRO®を細隙灯顕微鏡の接眼レンズ前方に固定して行った。眼底所見の撮影時には,接触型の前置レンズも使用した。結果:撮影後に焦点を変更することで,混濁の深さの推定や,所見の立体的な観察が可能であった。結論:本法は臨床的に有用であると考えられた。

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要約 目的:細隙灯顕微鏡用のスマートフォンアタッチメントの作製。対象と方法:規格瓶No. 8K(PS-8K,FDA認証DMF No. 7129)のキャップ中心に約9mmの穴をあけ,市販のスマートフォンケースを接着させて規格瓶アタッチメントを作製した。細隙灯顕微鏡とスマートフォン内蔵の写真撮影ソフトを使用し,細隙灯顕微鏡写真を撮影した。結果:本アタッチメントにより前眼部,角膜,虹彩,水晶体に加え,眼底撮影も可能であった。考察:規格瓶アタッチメントは安価に作製でき,臨床使用も容易であった。前眼部写真撮影設備や眼底カメラがない施設での治療効果の判定や,記録情報を遠隔地に送信することで医療過疎地域での眼科診療支援などに有用である。

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要約 目的:過去10年間の松山赤十字病院眼科で確定診断した眼部悪性腫瘍の報告。対象と方法:2014年11月までの128か月間に病理学的に診断した眼部腫瘍773例を対象とした。年齢別の頻度,腫瘍の悪性度,治療法,転帰などを検索した。結果:悪性腫瘍は186例(24.1%),良性腫瘍は587例(75.9%)であり,悪性腫瘍は高齢者に多かった。眼瞼の悪性腫瘍は,基底細胞癌,脂腺癌,扁平上皮癌の順に多く,結膜の悪性腫瘍は,悪性リンパ腫,扁平上皮癌,悪性黒色腫の順に多かった。眼窩の悪性腫瘍では悪性リンパ腫が最も多かった。眼内腫瘍では,中年者の悪性黒色腫と乳幼児の網膜芽細胞腫が多かった。結論:高齢になるほど悪性腫瘍が増え,予後不良な症例が少なくなかった。

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要約 目的:若年性の金柑型膠様滴状角膜ジストロフィの1例の報告。症例:38歳女性が両眼の強い眼痛で受診した。10歳時に両眼の視力低下と眼痛があり,両眼に角膜の隆起性混濁が指摘された。14歳時に左眼に角膜移植を受けた。両親はいとこ同士であった。所見:矯正視力は左右眼とも手動弁で,眼圧は右47mmHg,左37mmHgであった。両眼の角膜に血管侵入を伴う黄色の隆起があり,角膜後面よりも後方は不透明であった。臨床所見から金柑型膠様滴状角膜ジストロフィと診断した。遺伝子検査でTACSTD2遺伝子にc.632delA変異があった。両眼に角膜部分切除を行い,コンタクトレンズを装用させた。切除した角膜にアミロイドの沈着があった。矯正視力は右0.2,左0.1になり,眼圧は正常化した。結論:TACSTD2遺伝子のc.632delA変異が金柑型膠様滴状角膜ジストロフィに特異的であるという報告はない。本症が若年に発症した原因として,他の遺伝子の関与や環境要因が推定される。

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要約 背景:定量PCR法を用いて経過観察した単純ヘルペスウイルス角膜内皮炎の1例報告。症例と所見:70歳男性。繰り返す右眼角膜浮腫と眼圧上昇のため当科へ紹介された。初診時の右眼矯正視力は0.2。耳側角膜に扇状の実質浮腫がみられ,拒絶反応線様の線状の角膜後面沈着物を認めた。角膜内皮炎と臨床診断し,約50μlの前房水を採取した後,PCR法を施行した。HSV-DNAは,定性PCR法で陽性,かつ定量PCR法では4.7×103 copies/sample検出された。アシクロビル内服・眼軟膏,ベタメタゾン点眼で初診4週後に角膜実質浮腫は軽減した。初診3か月後,角膜浮腫は消失した。再度前房水を採取し定量PCR法を施行したが,HSV-DNAは検出されなかった。結論:定量PCR法がHSV角膜内皮炎の治療法を検討するうえで重要であった。

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要約 目的:ブリモニジン点眼後の緑内障眼の視神経乳頭の血流変化の報告。対象と方法:他の薬物による治療が困難な,広義の原発開放隅角緑内障11例11眼を対象とした。1か月間の休薬期間を置いたのち,0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼薬の1日2回点眼を開始した。点眼開始前と,直後,1か月後,3か月後に視神経乳頭血流を測定した。測定には,レーザースペックルフローグラフィを用い,mean blur rate(MBR)として評価した。結果:眼圧は点眼前と比較し,1か月後と3か月後に有意に下降した。乳頭の血流量は,点眼前と比較し,1か月後と3か月後では差がなかった。全身血圧,脈拍,眼灌流圧は,点眼前と比較し,1か月後と3か月後では差がなかった。結論:緑内障眼に対する3か月間のブリモニジン点眼で,眼圧は有意に下降し,乳頭の血流には変化がなかった。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞(BRVO)に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体注射(IVR)の効果を検討する。対象と方法:BRVOに伴う黄斑浮腫にIVRを行い,6か月間以上観察可能であった41例41眼を対象とし,初回IVR後1,3,6か月ならびに最終受診時の,視力と中心網膜厚,追加治療について検討した。対象の内訳は,初回治療眼が21眼,ベバシズマブからの切り替え例が20眼である。結果:全症例におけるIVR前の視力の平均logMAR値は0.46で,治療1,3,6か月後および最終受診時には0.34,0.31,0.30,0.25と改善傾向を示した。治療前の網膜厚は502.5μmで,治療1,3,6か月後および最終受診時には300.6μm,407.8μm,368.4μm,348.7μmと,いずれも有意な改善を示した(p<0.05)。注射回数は平均2.4回であった。6か月後に小数視力0.5以上となった症例は全体の70%を占めた。結論:短中期的にはBRVOの黄斑浮腫の軽減と視機能の改善にIVRは有効である。

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要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体投与の結果の報告。対象と方法:BRVO 10例11眼を対象とした。男性5眼,女性6眼で,年齢は平均68歳である。虚血型8眼,非虚血型3眼であり,2眼には光凝固,9眼にはトリアムシノロンテノン囊下注射の既往があった。視力はlogMARで評価し,0.2以上の変化を改善または悪化とした。中心窩網膜厚は20%以上の変化を改善または悪化とした.投与後2〜6か月間の結果を観察した.結果:ラニビズマブ投与前の視力は0.545で,投与後1〜6か月まで有意に改善した。中心窩網膜厚は投与前684μmで,投与後1〜6か月まで有意に改善した。漿液性網膜剝離は投与前7眼にあり,5眼で再投与を要した。結論:BRVOに伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブ硝子体投与により,投与後6か月間の視力と中心窩網膜厚が有意に改善した。漿液性網膜剝離が併発しているときには,投与後の黄斑浮腫の再燃があった。

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要約 目的:Sulfur hexafluoride(以下,SF6)ガス硝子体内注入により改善したValsalva網膜症の1例を報告する。症例:45歳女性。前日からの左眼光視症と飛蚊症を主訴に当科を受診した。発症前日にカラオケをした。所見:初診時視力は右眼(1.5),左眼(0.07)。左眼眼底にニボーを形成した網膜前出血と硝子体出血を認めた。発症4日後に左眼SF6ガス硝子体内注入による血腫移動術を施行した。出血は徐々に吸収,拡散され,視力は術後1週で(0.3),10週で(1.2)に改善した。結論:Valsalva網膜症に対し,SF6ガス硝子体内注入は有用であった。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するトリアムシノロンアセトニド(TA)のテノン囊下注射(STTA)と硝子体注射(IVTA)の効果の比較。対象と方法:2011〜2012年にSTTAを施行した10眼と,2013〜2014年にIVTAを施行した22眼のDMEを対象とし,中心網膜厚,視力,眼圧について比較検討した。結果:中心網膜厚が投与前より有意に縮小していた期間は,STTA群では投与後2〜5か月(4か月間),IVTA群では1〜6か月(6か月間)であった。logMAR視力が投与前より有意に減少していた期間は,STTA群では投与後2〜4か月,IVTA群では1〜3か月(ともに3か月間)であった。眼圧上昇はIVTA後1〜2か月(2か月間)のみに認めた。STTA群で,投与前と比較した投与6か月後のlogMAR視力減少量が6か月観察期間中CRT≦300μmであった期間と,相関した(r=0.57,p=0.04)。結論:IVTAは施行後早期の眼圧上昇に注意を要するが,浮腫・視力改善に即効性がある。STTAは浮腫制御期間が長いほど,視力改善が大きい。

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要約 目的:特発性脈絡膜皺襞と考えられた症例において,髄液検査で脳脊髄液圧亢進を認めた1例の報告。症例:60歳,男性。主訴は約半年前からの左眼の単眼性複視と視力低下であった。所見:左眼に遠視化と後極広範に水平方向に走る脈絡膜皺襞を認めた。低眼圧や腫瘍,後部強膜炎などの既知の脈絡膜皺襞の原因となりうる疾患はなかった。髄液検査で,初圧210mmH2Oと高値であった。脳外科の精査で脳脊髄液圧亢進の原因は不明であった。特発性頭蓋内圧亢進に伴う脈絡膜皺襞としてイソソルビド内服を開始し,遠視と視力が一部改善した。結論:脳脊髄液圧亢進は遠視化と脈絡膜皺襞の原因となりうる。

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要約 背景:眼瞼痙攣の病因として,遺伝的素因や薬物の使用などが指摘されているが,確立されていない。目的:眼瞼痙攣が生じた親子4組の報告。症例:眼瞼痙攣と診断された4組は,いずれも母親とその子であり,80歳の母親と57歳の娘,56歳の母親と22歳の息子,故人となった母親と52歳の娘,年齢不詳の母親と29歳の息子である。抗不安薬であるベンゾジアゼピン系薬物の内服歴が3症例にあった。結論:眼瞼痙攣が4組の親子にあったことから,本症には遺伝的素因のあることが推定され,これに加齢,環境因子,ベンゾジアゼピン系薬物の服用などが加わると発症する可能性がある。

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要約 目的:網膜色素変性がある眼に白内障手術と着色眼内レンズを挿入した経過の報告。症例:50歳女性が右眼の視力障害で受診した。10年前に他医で網膜色素変性と診断された。所見と経過:矯正視力は右0.3,左1.2で,右眼に後囊下白内障があった。両眼に網膜色素変性の典型とされる所見があり,眼底後極部の色調が良好な範囲は,左眼よりも右眼で狭かった。左右眼とも視力は不変であったが,6年後に右眼に超音波乳化吸引術と着色眼内レンズ挿入を行った。手術は6分で終了し,術中に問題はなかった。手術前のHumphrey視野計によるMDは−28dBであった。手術の10か月後に視力は0.7になり,MDは−30dBであった。手術の18か月後に視力は0.3になり,MDは−30dBであった。手術の55か月後に右眼視力は0.05,MDは−31dBで,後極部全体が蒼白な網膜変性になった。左眼の矯正視力は1.2であった。パネルD15による検査で,右眼に高度の視機能障害があった。結論:網膜色素変性では,白内障手術後に視機能が改善しても,後極部の網膜変性が進行して視機能障害が生じることがある。

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要約 目的:過去10年間に眼瞼悪性腫瘍と当科で診断した症例の報告。対象と方法:2004〜2013年の10年間に順天堂眼科を受診し,眼瞼腫瘍として病理組織学的検査が行われた122例のうち,眼瞼の悪性腫瘍と診断された10例を対象とした。結果:10例は,男性6例,女性4例で,年齢は7〜86歳,平均67歳である。内訳は,Gorlin-Goltz症候群1例を含む基底細胞癌4例,扁平上皮癌3例,脂腺癌2例,悪性リンパ腫1例である。10例中8例が上眼瞼腫瘍であった。転移例はなく,基底細胞癌と扁平上皮癌の各1例が再発した。結論:眼瞼悪性腫瘍では,基底細胞癌,扁平上皮癌,脂腺癌が大部分を占めた。10例中6例が病理検査前に良性と臨床診断され,病理検査の重要性が確認された。

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要約 目的:照度計を用いることで,羞明を数値化できないかを検討する。対象と方法:過去2年間に羞明の訴えのあった15例(男性3例,女性12例),平均年齢63.5±12.7歳を対象とした。検査室の明るさを上げていき,最初に羞明の訴えのあった照度を記録した。結果:羞明を訴えた照度は平均612.1±263.8lxで,眼瞼痙攣では最も低く330.0±136.0lxであった。処方した遮光眼鏡の視感透過率と今回の値との相関はなかった。結論:照度計での羞明評価は参考になると考えられた。

連載 今月の話題

網膜循環測定の臨床応用 岩瀬 剛
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 網膜疾患における診断や治療効果の判定に,網膜循環という観点からの評価がますます重要になってきている。レーザースペックル法を用いた眼底の血流画像化装置であるレーザースペックルフローグラフィ(laser speckle flowgraphy:LSFG)は,簡便かつ非侵襲的に網膜循環を定量化することができる。LSFGにより,日常臨床における網膜循環の実質的応用が可能となってきたので,症例を提示し解説する。

連載 知っておきたい小児眼科の最新知識・5

小児白内障のDos and Don'ts 黒坂 大次郎
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point

1)生直後からの強い白内障においては,片眼性では生後6週,両眼性では12週以内の手術が視機能向上には望ましく,遅れないように専門医を紹介する

2)視性刺激遮断弱視を作る可能性が低ければ,学童期まで待って手術を行う

3)両眼性白内障の経過観察例で眼振が出現した場合には,すぐに手術を行う必要がある

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第9回

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はじめに

 眼瞼下垂手術では,経皮アプローチを介して腱膜やMüller筋の前転を行うことが一般的ですが,それ以外の方法について今回から2回にわたって解説します。結局,どの方法であっても「しっかり挙がって,きれいなカーブができて,眼にやさしい手術」ができれば申し分ありません。そのためには,状態の異なった個々の患者さんに対して最も適切な術式を選択する必要があります。手術のレパートリーを広げることによって,より広範な病態に対して適切に対処することが可能になります。さあ,今回は「経結膜法」と「切らないで縫い上げる方法」です!

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 症例は37歳,男性。右眼に歪視を訴え,近医を受診した。右眼眼底に白色病巣とその周囲に網膜剝離を認めたため,精査加療目的で当科へ紹介受診となった。

 初診時視力は右0.15(0.8p×S−1.75D),左0.4(1.5×S−1.00D),眼圧は右12mmHg,左14mmHgであった。前眼部・中間透光体に異常はなかった。眼底所見は右眼の黄斑部上耳側に円形の黄白色隆起病巣とその周囲に漿液性網膜剝離および網膜下出血を認めた。左眼に異常はなかった。既往歴として,約2年前に健康診断で両側上肺野の浸潤影を指摘されたため,当院呼吸器内科を受診した。肺結核と診断され,約1年間抗結核療法を受けた。

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 メディアを見ると,医療と法の絡んだ問題が目に入らない日はないと言っても過言ではない。当然である。私たちの行う医療は,「法」によって規定されている。本来,私たち医師は必須学習事項として「法」を学ぶべきである。しかし,医学部での系統的な教育を全く受けないまま,real worldに放り出されるのが現実である。多くの医師が,実際に医療現場に出て,突然,深刻な問題に遭遇し,ぼうぜんとするのが現状である。その意味で,全ての医師の方に,本書を推薦したい。このような本は,日本にはこの一冊しかないと確信する。

 先日,若い裁判官の勉強会で講演と情報交換をさせてもらった。その際,医療と裁判の世界の違いをあらためて痛感させられた。教育課程における履修科目も全く異なる。生物学,数学は言うまでもなく,統計学や文学も若い法律家には必須科目ではないのである。統計学の知識は,今日の裁判で必須ではないかという確信があった私には少々ショックであった。その席で,いわゆるエビデンスとかビッグデータを用いた,コンピューターによる診断精度が医師の診断を上回る時代になりつつあることが話題になった。同様に,スーパーコンピューターなどの力を借りて,数理学的,統計学的手法を導入し,自然科学的な判断論理を,法の裁きの場に持ち込むことはできないかと若い法律家に聞いたが,ほぼ全員が無理だと答えた。法律は「文言主義」ではあるが,一例一例が複雑系のようなもので,判例を数理的に処理されたデータベースはおそらく何の役にも立たないというのが彼らの一致した意見であった。法律の世界での論理性と医療の世界での論理性は,どちらが正しいという以前に,出自の異なる論理体系を持っているのではないかと思うときがある。医師と法律家の間には,細部の違いではなく,乗り越えられない深い次元の違う溝が存在するのではというある種の絶望感が残った。

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 一昔前の屈折異常矯正法は眼鏡とコンタクトレンズであったが,近年,屈折矯正手術やオルソケラトロジーが加わり選択の範囲が広くなった。このうち,屈折矯正手術の進歩は著しく,初期の角膜前面放射状切開術は影をひそめて,エキシマレーザーを使用したLASIKが主流になってきている。さらに,この術式はフェムトセカンドレーザーを使用したり,老視手術にも使われたりしている。以前には強度近視の矯正は分厚い眼鏡レンズやコンタクトレンズで矯正されたが,十分に視力を出すことができなかった。しかし,有水晶体眼内レンズで良好な矯正視力を出すことができるようになった。さらに,白内障手術後に挿入する眼内レンズの度数によって,屈折度を自由に決めることが可能になった。このように屈折異常矯正法のオプションが増えてきたことは,屈折異常者への福音である。しかし,その進歩は著しくその詳細を知ることは困難を極める。

 本書は8章からなる。第1章は屈折矯正手術の現状を知るためにぜひとも読んでいただきたい章である。第2章は現在使用されている角膜屈折矯正手術の詳細が記載されている。第3章と第4章は眼内レンズによる屈折矯正手術であるが,第3章では強度近視などに行う有水晶体眼内レンズ,第4章は白内障手術後に使用する特殊レンズであるトーリック眼内レンズや多焦点眼内レンズの適応などについて記載されている。第5章は屈折矯正手術後の白内障手術前の眼内レンズの度数の決め方と屈折矯正手術後の眼鏡とコンタクトレンズの処方法の記載があるが,後者は通常の処方と違うので大いに役立つ。第6章は,もう一つの屈折矯正法としてのオルソケラトロジーについてで,この方法は近視進行防止に役立つとの報告もあり注目されている。また,この章では近視進行予防としての眼鏡やコンタクトレンズ処方についても記載されている。第7章では屈折矯正手術と違い,老視の眼鏡やコンタクトレンズによる矯正,また白内障手術後のモノビジョン法の記載がある。第8章では眼鏡・コンタクトレンズ矯正の不満とその解決法があり,この章は日常臨床で困ったときにひもとくとよい。

やさしい目で きびしい目で・185

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 医師になって8年目の1983年,私は3人の子の母となっていた。実家から遠い滋賀県で,親の助けも得られず,内科医の夫の協力にも限界がある状況のなか,規定の産休のみで,常勤医としての勤務を続けていた。子供は可愛く,ともすれば育児重視になりがちな中,ひとたび非常勤になれば常勤に戻ることは不可能と考えたからである。当然,当直も男性医師と同様に回ってくる。当直の日には,夕方子供を保育園から夜間もOKのベビーホームへ預けなおして,勤務をこなした。そんな中,夫が留学することになり,夫は,私も米国で研究ができればと,自身の留学先候補のうち,“眼科の研究室があること”を条件に候補を絞り,私の受け入れを応諾したシンシナティ大学を選択した。

 米国では,まず保育所を探し,3歳半と9か月の下二人を預け,上の子は小学校に入学。環境を整えて,研究生活をスタートした。シンシナティ大学眼科研究室のボス,Kao先生はコラーゲンをはじめとする細胞外基質の大家で,素人同然の私に実験手技を懇切丁寧に指導してくださった。最初に与えられた研究テーマは,「増殖性硝子体網膜症の発症機序」で,ウサギを用いた実験を,網膜硝子体を専門とするドクターとともに行った。この研究で論文を2つ投稿し,次の研究テーマは「角膜創傷治癒」。ウサギに角膜穿孔創を加え,創傷治癒過程におけるコラーゲンの代謝を調べるもので,研究に興味をもつ医学部の学生たちと一緒に楽しく取り組んだ。

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要約 目的:原発開放隅角緑内障眼(POAG)に対するタフルプロストの3年間点眼が,視神経乳頭血流,視野,視神経乳頭形状に及ぼす影響の報告。対象および方法:広義のPOAG 24例を対象とし,無作為割付を行い11例にタフルプロスト(T群),13例にラタノプロスト(L群)を3年間点眼した。全例で眼圧,レーザースペックル法による乳頭微小循環,視野,乳頭形状などの測定を行った。結果:両群で同等の眼圧下降効果を認めた。上方,下方,耳側の乳頭血流がL群で減少したが,T群では有意な減少はなかった。Humphrey視野のMD値,乳頭形状や網膜神経線維層厚は期間中,両群で有意な変化がなかった。結論:3年間の点眼により,タフルプロストはラタノプロストと異なり,乳頭血流を維持した。

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要約 目的:副鼻腔癌への重粒子放射線治療後に発症した放射線網膜症と血管新生緑内障の1例の報告。症例:52歳女性が左側の篩骨洞癌に対して重粒子線治療を受けた。総量は3.8GyEで,総生物線量は60.8GyEであった。治療開始から2年6か月後に左眼視力が低下し,前房出血と高眼圧が生じた。その2年後に当科を受診した。所見と経過:矯正視力は1.2,左手動弁で,眼圧は右13mmHg,左32mmHgであった。左眼に前房出血,ルベオーシス,虹彩縁の反転,硝子体出血があった。硝子体手術を行い,術中所見として網膜の軟性白斑と視神経萎縮があった。複数の薬物点眼で眼圧は21mmHgになり,6か月後の現在まで疼痛はなく,副鼻腔癌の再発もない。結論:副鼻腔癌への重粒子放射線治療により,放射線網膜症と血管新生緑内障が発症することがある。

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欧文目次

第33回眼科写真展 作品募集

べらどんな 空色
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 色の名前を口では言えても,「それがどのような色なのか」を具体的に説明するのは難しい。

 小学校の4年生だったとき,24色のクレヨンを親からもらった。白と黒はもちろん,金と銀まで入っているのが嬉しかった。

ことば・ことば・ことば 憂鬱
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 うつ病が急増しています。理由は簡単です。

 ずっと昔の医学部の講義では,躁鬱病と教わりました。ドイツ語ではmanisch-depressives Irrseinなので,MDI,すなわちエム・ディー・アイと覚えました。それが現在では,「私はうつです」というだけで通じるからです。

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次号予告

あとがき 寺崎 浩子
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 我々のところでは桜の花があっという間に散って葉桜になったような気がしますが,4月の半ばでもまだ咲いていなかった地域もあるようでした。東京でも4月に雪がちらついたそうです。しかし,きっとこれからは暑さがうなぎのぼりとなり,夏に向かってしまうのでしょう。皆様お体にはくれぐれもお気を付けください。4年前,大震災のために,会場での講演会・博覧会が中止となった日本医学会総会が今年は関西で開催されました。科学の進歩が目に見えて加速している印象をうけましたが,本当に我々の医療として届けられる日が早く来るといいと思います。講演を拝聴するところによりますと,日本初の創薬はまだまだ米国には追いつかないが,金額で示すと収入に関係なく同じだけの医療が受けられていることは米国に勝っているということでした。

 フルオレセイン蛍光眼底撮影は,最もポピュラーな眼底血管を評価する方法だと思いますが,最近超広角眼底撮影機器Optos®により,ますますその評価能力が向上したといえるでしょう。「今月の話題」では,スペックルノイズを用いて視神経乳頭血流を見る方法として以前から大学の医工連携により開発されてきたレーザースペックルフローグラフィについて解説されていますが,平成21年には保険収載され,血流解析ソフトウェアの改良により測定精度が良くなり,安定して眼循環の評価ができるようになったのではないかと思います。黄斑部での血流評価は脈絡膜循環も反映すると考えられ,研究のみならず臨床でも使いやすくなっているので,ご覧ください。眼循環ではまだまだわからないことも多いですし,この方法はまだ海外でもそれほど注目されていません。今後は日本発の臨床研究がたくさん世に出てほしいと思います。

基本情報

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臨床眼科
69巻5号 (2015年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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