臨床眼科 68巻5号 (2014年5月)

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要約 目的:ラニビズマブ硝子体投与に無反応または再発した加齢黄斑変性(AMD)にアフリベルセプト硝子体投与を行った症例の報告。対象と方法:滲出型加齢黄斑変性74例75眼を対象とした。男性59眼,女性16眼で,年齢は57~88歳,平均73歳である。過去にラニビズマブを1~17回,平均5.8回の投与を受け,67眼が再燃,8眼が耐性と判断された。34眼がⅠ型AMD,41眼がポリープ状脈絡膜血管症(PCV)であった。各眼にアフリベルセプト硝子体投与を行い,その1か月後に眼底所見を光干渉断層計(OCT)で検索した。結果:中心窩網膜厚は343μmから201μmに,Ⅰ型での脈絡膜新生血管厚は90μmから60μmに,PCVでの病巣厚は359μmから239μmに,網膜色素上皮剝離の高さは360μmから203μmに,いずれも有意に減少した。結論:ラニビズマブ硝子体投与に無反応,または再発したAMDに対し,アフリベルセプト硝子体投与は有効であった。

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要約 目的:白内障手術前患者を対象として通常の好気性培養にて結膜囊内常在菌を検索した報告。対象:569眼中305眼(53.6%)に細菌が検出され,総菌株数は435株であった。結果:80歳以上の高齢者群では65歳未満,65歳以上80歳未満の群と比べて菌検出率が有意に高かった。糖尿病およびアトピー性皮膚炎の既往の有無による比較では菌検出率,検出菌の内訳ともに差を認めなかった。メチシリン耐性表皮ぶどう球菌(MRSE)は65株であり,そのうちレボフロキサシン(LVFX)耐性菌は53株(81.5%)であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)5株のうち,LVFX耐性菌は3株(60.0%)であった。MRSEおよびMRSAのレボフロキサシン耐性率は,それぞれのメチシリン感受性菌と比べて有意に高かった。結論:高齢者ほど細菌,特に薬剤耐性菌が検出されやすく,術前の一律なLVFX点眼には限界があり,術前結膜囊内細菌検査を行うことは,術後感染症の予防および治療のために有意義と考えられた。

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要約 目的:全身麻酔下で頸髄症の手術を受け,その直後に片眼が失明した症例の報告。症例:60歳男性に右眼視朦が突発し,院内往診を依頼された。整形外科で頸髄症の手術を受けた直後であった。手術は腹臥位による全身麻酔下で行われ,手術時間は2時間20分,麻酔時間は3時間20分であった。糖尿病の既往があり,12歳からインスリン治療が行われ,45歳で汎網膜光凝固を受けていた。所見:右眼には光覚弁がなく,眼球運動は全方向で制限されていた。右眼に結膜浮腫,眼瞼下垂,眼瞼腫脹があり,Hertelによる眼球突出度は右22mm,左16mmであった。右眼角膜に皺壁があり,眼底の色調は蒼白で桜実紅斑があった。CT検査で頭蓋内に異常所見はなく,MRIで右眼の外眼筋腫脹があった。眼窩圧上昇による網膜中心動脈閉塞症と診断した。1か月後の右眼視力は無光覚弁であった。結論:本症例は,全身麻酔中に眼窩が圧迫されたための,網膜中心動脈閉塞症を伴う虚血性眼窩コンパーメント症候群であると推定される。

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要約 目的:白内障患者の中心窩下脈絡膜厚(CT)に相関する因子についての検討。対象と方法:当院での白内障手術を予定した他に眼疾患のない連続した109名159眼に対し,deep range imaging optical coherence tomographyを用いてCTを計測した。そして,検討項目とCTとの相関を統計学的に解析した。結果:CTは全体平均181.0±74.5μmであった。2群に分けた検討では,眼軸長25.0mm以上と屈折値-5.0D以下の群は有意にCTが薄かった。眼軸長とCTは負の相関を示した。重回帰分析では年齢と眼軸長が有意な予測変数となった。結論:白内障手術患者のCTは,眼軸長と負の相関を認め,加齢と長眼軸は薄い脈絡膜厚の有意な予測変数であった。

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要約 目的:両眼に虹彩ルベオーシスが出現し,ステロイドパルス療法を施行した原田病の症例の報告。症例:24歳男性が両眼の充血と霧視を主訴に近医を受診した。両眼の虹彩ルベオーシスを認めた。前眼部の炎症が強く,眼底所見の詳細は不明であった。原因不明のぶどう膜炎とされ,当院を紹介され受診した。所見:矯正視力は右0.3,左0.8で両眼の虹彩ルベオーシスを認め,眼底は夕焼け状眼底であった。髄液検査で細胞数の増加があり,感音性難聴も認めたため,原田病の診断でステロイドパルス療法を行った。ステロイドパルス療法後,矯正視力は改善し,虹彩ルベオーシスは著明に消退した。結論:前眼部の炎症が強いぶどう膜炎を診察する際には,原田病などの汎ぶどう膜炎の可能性を考慮し治療にあたる必要がある。

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要約 目的:顕著な視神経浸潤を伴う網膜芽細胞腫の1症例の報告。症例:1歳7か月の男児が,左眼の角膜が白いことを主訴として受診した。1年前から眼位の異常があった。家族内には特記事項はない。所見:左眼は外斜し,眼圧は右19mmHg,左38mmHgであった。左眼の角膜径は13mmで,虹彩に新生血管があった。超音波検査で左眼の網膜に沿う腫瘍像と石灰化があり,視神経が眼窩先端部まで腫大していた。視神経浸潤を伴う網膜芽細胞腫と診断した。抗癌薬の全身と髄腔内投与を行ったのち,眼球を摘出し,視神経を眼球の15mm後方で切断した。眼球内に壊死した腫瘍があり,視神経断端に化学療法の前に腫瘍細胞があったことを示す所見があった。さらに抗癌薬の全身と髄腔内投与を行い,視交叉までの左視神経部をリニアックで照射した。以後34か月後の現在まで再発または転移はなく,右眼と発育に異常はない。結論:視神経腫大のある幼児の網膜芽細胞腫に対し,抗癌薬を全身と髄腔内に投与したのち眼球を摘出し,良い結果を得た。

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要約 目的:網膜色素変性に生じた黄斑分離に対し,硝子体手術を行った症例を報告する。症例:67歳,男性。初診時左眼視力は(0.5)。網膜周辺部に骨小体様色素沈着があり,求心性視野狭窄を認めた。網膜電図にて振幅は低下していた。光干渉断層計(OCT)による検査で黄斑分離を認めた。網膜色素変性および黄斑分離と診断し,白内障手術併用25ゲージ硝子体手術を行い黄斑部の内境界膜剝離を行った。術後12か月で黄斑分離は改善し,視力は(0.7)と改善を得た。結論:網膜色素変性に生じた黄斑分離に対し硝子体手術を行い,視力の改善を得た。

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要約 目的:慢性中心性漿液性脈絡網膜症に対する低照射エネルギー光線力学的療法(RFPDT)の術後2年成績について検討した。対象と方法:2010年4月~2011年4月の間に治療を行い,2年間の経過を追うことのできた8例10眼。結果:平均logMAR視力は治療前で0.26±0.17,2年後で0.17±0.22と改善傾向であった。中心窩網膜厚は治療前347±154μm,1年後,2年後とそれぞれ平均185±83μm,178±56μmと治療前と比べて有意な改善がみられた(p<0.01)。中心窩脈絡膜厚は治療前315±113μm,1年後,2年後とそれぞれ平均285±79μm,270±78μmと治療前と比べて有意な改善がみられた(p<0.01)。4眼(40%)に脈絡膜新生血管(CNV)が発生し,type 1の出現が2眼,type 2の発生が2眼みられ,いずれも照射範囲内に発生し中心窩にCNVが発生したものの中には視力低下がみられるものがあった。結論:RFPDT後に中心窩にCNVが高頻度(40%)に生じ,視力悪化の要因となった。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫の原因としての毛細血管瘤に対する光凝固の長期効果の報告。対象と方法:毛細血管瘤が,糖尿病黄斑浮腫の原因であると推定された11例13眼を対象とした。年齢は58~83歳,平均73歳で,視力は0.3~1.2,中央値0.8であった。黄色または緑色のレーザーで毛細血管瘤を凝固した。照射時間は0.02秒,凝固斑は50μm,出力は0.15~0.2Wとした。薬物療法は併用せず,1年以上の経過を追った。結果:光干渉断層計(OCT)で測定した中心窩厚の平均値は,治療前は414μmであり,光凝固3か月後に271μmになり,黄斑浮腫は減少または消失した。視力は0.7~1.2,中央値1.0になった。4眼で光凝固の18~29か月後に黄斑浮腫が再発し,3眼で光凝固後に消失した。結論:糖尿病黄斑浮腫の原因であると推定される毛細血管瘤に対して短照射時間での光凝固を行い,3か月後に中心窩厚が減少し,黄斑浮腫が減少または消失した。

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要約 目的:角膜生検による病理検査が有用であった角膜真菌症の2例を報告。症例1:58歳,男性。木の枝により右眼を受傷し3週間後,当科受診。塗抹検査で真菌を認め,抗真菌剤による点眼・内服治療を開始したが進行したため,角膜実質内注射を施行した。その際に角膜生検を行った。症例2:73歳,男性。右眼角膜移植後の角膜潰瘍と穿孔で当科へ紹介となった。保存角膜移植を行った際に,角膜生検を行った。結果:2例とも生検の病理検査で真菌を認めた。培養検査は,症例1ではFusarium属が検出されたが,症例2では陰性であった。結論:数mm大の小さな角膜組織で病理検査は可能であり,角膜生検は必要に応じて考慮すべき検査である。

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要約 目的:小乳頭に伴う傍乳頭網膜分離症の症例報告。症例:数か月前からの左眼視力低下を主訴に受診した67歳男性。矯正視力は右(1.2),左(0.7)。両眼ともに乳頭小窩を認めず,小乳頭だった。左眼黄斑部に車軸状の反射があり,スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)像では,左眼乳頭上膜と乳頭内の空隙から連続する網膜分離を認めた。結論:小乳頭に傍乳頭網膜分離を合併することがある。乳頭部を含めた複数方向のSD-OCTが診断に有用であり,分離の起始部を推測できた。

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要約 目的:前部円錐水晶体を伴ったAlport症候群に対して水晶体再建術を行った報告。症例:46歳,男性。8か月前に両眼の視力低下を自覚して受診した。慢性腎不全と難聴の既往があり,長女がAlport症候群で治療中であった。母親に血尿が認められていた。初診時の視力は左右とも0.07(0.3)で,両眼に前部円錐水晶体を認めたため,水晶体再建術を施行した。術中は,前囊は薄く伸展性に富み,continuous curvicular capsulotomyが困難であった。切除した前囊の組織像では,全層にわたり微細な亀裂が認められた。術後の矯正視力は右(1.0),左(0.9)で,その後3年間視力を維持している。結論:Alport症候群に合併した前部円錐水晶体による視力低下に対し,水晶体再建術を施行した結果,視機能の改善を得た。

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要約 目的:近視LASIKの既往眼における白内障術後の屈折誤差を後ろ向きに検討する。対象と方法:対象は,当院で白内障手術を施行した近視LASIK既往眼48眼。術後の屈折誤差が,予想屈折度数からそれぞれ±0.5D,±1.0D以内に収まった症例の割合と,屈折誤差が比較的大きかった症例についての検討を行った。IOL度数の算出にはHaigis-L式を主に用いた。結果:屈折誤差は,±0.5D以内が62.5%,±1.0D以内が85.4%であった。算出されたIOL度数が+20Dから大きく外れた症例では屈折誤差が大きくなりやすい傾向を認めた。結論:Haigis-L式は近視LASIK術後眼のIOL度数決定に有用であったが,一部の症例で大きな屈折誤差が生じた。

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)強膜内固定術の術後合併症と対処の報告。対象と方法:対象は初期の5例5眼(無水晶体眼2眼・IOL脱臼3眼)。術式は当初Gaborの原法に従い,続いて太田のY-fixation techniqueに改変を加えた。結果:術後合併症はIOL脱臼,低眼圧(各1眼;IOL縫着術にて対処),高眼圧(偽落屑症候群の1眼;濾過手術にて対処)。低眼圧眼でIOL支持部が強膜を貫き,毛様体剝離を起こしていることが光干渉断層計で示された。結論:本術式の習得には習熟曲線がみられ,原疾患による合併症が起こることがある。手技の工夫,適したIOLの選択,合併症への対応が重要である。

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要約 目的:網膜色素変性患者に生じた囊胞様黄斑浮腫に対し,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼が有効と思われた症例の報告。症例:63歳女性が左眼の霧視で受診した。2年前に前医で原因不明の左眼の黄斑浮腫,両眼の緑内障と診断され,21か月前に左眼に白内障手術,硝子体手術,ステロイドのテノン囊下注射を受けた。所見:矯正視力は右0.5,左0.2で,眼圧は右12mmHg,左7mmHgであった。左眼に囊胞様黄斑浮腫があり,両眼の網膜電図が平坦で,網膜色素変性と診断した。左眼に1%ブリンゾラミドの点眼を1日2回行った。光干渉断層計による観察で,囊胞様黄斑浮腫は点眼開始から7か月半後の現在までに改善し,視力は0.3になった。結論:硝子体手術,ステロイドのテノン囊下注射を施行後も遷延した囊胞様黄斑浮腫に対し,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼が有効と思われた。

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要約 目的:裂孔原性網膜剝離への術後,19か月で黄斑下の網膜下液が吸収され,良好な最終視力を得た症例の報告。症例:32歳男性が右眼の下方視野の欠損で受診した。左眼に網膜剝離手術の既往がある。所見:矯正視力は右1.2,左1.5で,右眼の黄斑下方に網膜剝離があった。右眼の2時から9時にかけてシリコーンスポンジを縫着し,強膜内陥術を行った。網膜下液は排液しなかった。網膜下液は,術直後は残存し,14か月後に減少しはじめ,19か月後に消失した。この期間中,視力は1.0~1.5の間にあった。術後28か月まで網膜剝離の再発はない。結論:裂孔原性網膜剝離への術後,黄斑部に網膜下液が長期間残存しても,最終視力が良好なことがある。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 さまざまな疾患の発症にかかわる体質をつかさどる遺伝的な要因として,遺伝子多型が挙げられる。近年の高速大容量SNPタイピング技術と超並列シークエンシング技術の発展により,ゲノム全域を対象とした疾患関連遺伝子多型ならびに変異の探索が容易になり,多くの疾患関連遺伝子が発見されている。また新型シークエンサーの急速な発展に伴い莫大な遺伝子配列情報を解析する必要があり,ゲノム情報解析の技術も飛躍的に発展している。

 2013年11月1日(金),第67回日本臨床眼科学会のSIGとして,第14回眼科DNAチップ研究会がパシフィコ横浜で開催された。本研究会では,理化学研究所ファーマコゲノミクス研究グループの莚田泰誠先生に,「ファーマコゲノミクス情報に基づいた重症薬疹の回避」という内容でゲノム情報に基づいたオーダーメイド医療についての教育講演をしていただいた。また,東北大学東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析部門の布施昇男先生に「緑内障のエクソーム解析」,横浜市立大学の水木信久先生に「ベーチェット病およびサルコイドーシスのゲノムワイド相関解析および機能解析」,京都府立医科大学の上田真由美先生に「感冒薬により発症した眼・粘膜病変型重症薬疹の全ゲノム解析」についてご講演いただき,それぞれについて熱心な討論が行われた。ここでは,教育講演,ならびに,3つの講演の要旨を報告する。

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 日本緑内障学会の濾過胞感染多施設共同研究では,①濾過胞感染の発症率は5年間に2.2%,眼内炎発症率は1.1%,②感染発症のリスク因子として濾過胞漏出が重要,③眼内炎は予後不良例が多い,などの科学的成果を得つつある。そのデータを元に今後の濾過手術の適応と濾過胞感染の予防ならびに治療に関して私見を述べる。

連載 硝子体手術アジュバント―知っておきたいコツと落とし穴・第4回

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落とし穴とそれを避けるためのコツ

1.抗VEGF薬の硝子体注射によって起こりうる眼合併症として,細菌性眼内炎,水晶体穿孔,網膜剝離などが挙げられる。それらを避けるコツとして,

 ・特に手術室以外で注射を行う場合には,術者,患者ともマスクを着用し,会話をできるだけ避ける。

 ・特に未熟児に注射を行う場合には,水晶体が眼内に占める体積が大きいので,刺入方向を眼球中心方向ではなく,後極部方向に向ける。

2.抗VEGF薬の硝子体内投与によって,特に円周方向に連続した線維血管増殖膜を有する症例などでは,牽引性網膜剝離の合併もしくは増悪を認めることがある。それを避けるコツとして,

 ・そのような症例には,なるべく抗VEGF薬を投与しない。

 ・投与が必要な場合には,投与後早期の硝子体手術を計画する。

3.抗VEGF薬の硝子体内投与によって起こりうる全身合併症として,脳血管イベントなどが挙げられる。それらをなるべく避けるため,

 ・投与しなければならない症例を限定する。

 ・投与が必要な場合,必要最小限量を投与する。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第16回

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Point

◎オカルト黄斑ジストロフィは検眼鏡的所見に異常がなく,しばしば視神経疾患などと間違われる。

◎詳細なERG検査によって確定診断が可能である。

◎OCTを用いると,黄斑部視細胞層構造の異常がほぼ全例で確認できる。

今月の表紙

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 症例は24歳,男性。右眼変視症を主訴に近医受診し,網膜前出血の診断,精査・加療目的に当院を受診した。初診時視力は右0.2(0.7×-1.75D),左0.4(1.5×-1.25D),眼圧は圧平眼圧計にて両眼とも14mmHg,眼底所見は右眼視神経乳頭上方に網膜前出血がニボーを形成しており,黄斑部にも網膜前出血を認めた。9か月前までボクシングをやっていたが最近の外傷や既往歴はなく,症状出現前に筋力トレーニングなどでいきんだというエピソードからValsalva網膜症と考えられた。撮影は初診時に行った。

 内服加療を行い,2週間後に黄斑部の網膜前出血は消失,2か月後には視神経乳頭上方の出血も吸収され硝子体混濁をわずかに残すのみとなり,右視力(1.5)まで改善した。

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 眼免疫に詳しい園田康平教授,眼病理に詳しい後藤浩教授の編集の下,第一線で活躍するエキスパートの先生方のご執筆でまとめられた本書は「専門外であっても最新の知識のアップデートを容易にし,明日からすぐ診療に役立つ内容を」との目的で発刊された。

 眼科の強みは「見てわかる」ことである。しかしぶどう膜炎患者においては,それぞれの所見が原因疾患の同定に直接結び付くわけではないのが難しいところである。疾病背景には自己免疫疾患,感染症,血液疾患,悪性腫瘍など,全身異常が関与していることが多いが,初診時に全身検査を行うことは臨床の現場では難しいのが実情である。それ故,診断が難しい。また軽症と思って加療していたら突然悪化することも少なくなく,放置すれば中途失明する疾患も数多い。さらに再発の可能性が高い慢性病でもあることから,ぶどう膜炎は眼科医泣かせの疾患といえる。

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 もしあなたの周りで,ある日突然上司から「明日から臨床研究コーディネーター(Clinical Research Coordinator;CRC)になって」と言われて悩んでいる人がいたら,あなたはどうしてあげますか? また,CRCになったものの,仕事の進め方に悩んでいる人がいたら,どのようにアドバイスをしてあげますか? あるいは,病棟に勤務する看護師の中には,担当する患者さんが治験や臨床研究に参加している場合もあるかもしれません。そんなとき,私は迷わず本書を差し出します。

 今,治験や臨床研究を活性化するための取り組みが国レベルから個々の医療機関のレベルまで盛んに行われています。そのため,医療人としての臨床研究や治験に関する知識と,研究にご協力くださる患者さんのケアのポイントは最低限押さえておきたいものです。そんなとき,とても頼りになるのが本書です。研究者や臨床研究をサポートするCRCに限らず,医療機関で働く人なら誰でも一度は手に取っていただきたい必見の書とここに推薦いたします。

やさしい目で きびしい目で・173

私の音楽活動(1) 佐藤 弥生
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 新潟大学眼科網膜外来と大学の関連病院である,南部郷総合病院眼科で診療をしています。南部郷総合病院は新潟県五泉市の地域医療を担う病院で,2012年春の「銀海」に病院の紹介記事を書きました。2013年秋には「新潟県医師会報」にエッセイが掲載され,どちらも大きな反響があり,特にエッセイのほうは「おもしろかったよ」とご好評頂きうれしく思っています。エッセイの執筆依頼が続いています。

 眼科医としてフルタイムの勤務ですが,余暇に音楽活動をしていますので,その内容を書きたいと思います。第1回目は自分の音楽活動の歴史を簡単に。新潟県医師会報に寄稿した内容と少し重なるかも知れませんが…。

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要約 目的:加療中のCrohn病患者に網膜中心静脈閉塞症が発症した報告。症例:23歳男性が10日前からの左眼視力低下で紹介受診した。9年前に腹痛と下痢を契機としてCrohn病と診断され,現在までインフリキシマブの経口投与を受けている。30か月前に腸管穿孔が生じ,外科的に処置された。所見:矯正視力は右1.2,左0.3で,左眼には蛍光眼底造影で,網膜血管からの色素漏出と黄斑浮腫を伴う網膜中心静脈閉塞症の所見があった。乳頭血管炎を疑い,プレドニゾロンを経口投与した。1週間後に左眼視力が0.5に改善した。初診から4か月後に自覚的に左眼視力が低下した。腸管の具合からステロイドを減量した。初診から7か月後の蛍光眼底造影では,網膜血管からの色素漏出が減少していた。視力は1.2に改善した。結論:インフリキシマブで加療中のCrohn病の若年の患者に片眼性の網膜中心静脈閉塞症が発症した。プレドニゾロンの経口投与で網膜中心静脈閉塞症は寛解した。

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要約 目的:短期間で進行し,手術を要した両眼性の後部円錐水晶体の症例の報告。症例:12歳男児が2か月前からの右眼視力低下で受診した。2年前にアトピー性皮膚炎による右眼の白内障と診断された。父親がアトピー性皮膚炎による白内障として手術を受けている。所見:矯正視力は右0.2,左0.8で,右眼の水晶体後囊の中央部が後方に突出していた。3か月後に左右眼とも矯正視力が0.06に低下し,右眼に-10.00D,左眼に-2.50Dの近視が生じていた。左眼に水晶体後囊の突出があった。両眼に水晶体再建術を行い,視力は1.5に改善した。以後11か月間の現在まで経過は良好である。結論:若年者での後部円錐水晶体は短期間に進行することがある。

臨床報告 カラー臨床報告

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要約 目的:感染性角膜潰瘍の治療中に薬物アレルギーが生じた1例の報告。症例:63歳男性が左眼の眼瞼腫脹で受診した。アトピー性皮膚炎の既往があり,ステロイド外用剤で加療中であった1か月前に左眼の黄色ブドウ球菌による角膜潰瘍と診断され,4種類の抗菌薬の点眼と3種類の抗菌薬の投与を3週間受けた。所見:左眼に上皮下混濁があり,眼底は透見不能であった。細菌感染が眼窩に波及した可能性があり,4種類の抗菌薬の点眼とセファゾリンの点滴を行ったが,眼症状は改善しなかった。パッチテストでセフメノキシム,セファゾリン,アトロピン,バンコマイシンに陽性であり,接触皮膚炎と診断した。それまでの点眼をフルオロメトロンに変更し,プレドニゾロン内服を追加した。角膜潰瘍の再発はなく,眼瞼腫脹と結膜充血は寛解した。結論:本症は点眼アレルギーであった可能性がある。感染症との鑑別が必要であり,パッチテストが診断に有用であった。

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欧文目次

べらどんな ルイシュ膜
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 ブルッフ膜を最初に記述したのはドイツのBruch先生で1844年のことである。これはカミソリやブラシを使って念入りに精製したからで,網膜色素上皮・ブルッフ膜・脈絡毛細血管板の複合体は,そのずっと前から知られていた。オランダのFrederik Ruysch(1638-1731)がその発見者である。

 ルイシュはden Haagに生まれ,Leyden(ライデン)で医学を学んだ。「肋膜炎の研究」が卒業論文の題名である。28歳でアムステルダム大学に招かれ,法医学と解剖学を教えた。

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 財団法人 高齢者眼疾患研究財団は1993年に,高齢者の視力障害をきたす疾患に関する調査・研究・国際協力等を行い,国民の健康の増進及び眼科学の進歩に寄与することを目的に設立しました。

 その後2013年に,内閣総理大臣の認定を受け,公益財団法人 高齢者眼疾患研究財団となりました。

ことば・ことば・ことば 虎と豹
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 近視に多い豹紋状眼底は,英語ではtigroid fundusなので,「虎紋状…」が正しいはずです。これを「紋理眼底」にしようという話もあります。

 動物の虎は,古代から知られていました。英語のtigerは,ほとんど同じ形でラテン語やギリシャ語にあります。住んでいる地域も広く,シベリアからインド,それにスマトラやバリ島にも居るそうです。

べらどんな 風船と手袋
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 乳児の眼球は小さく,成人のは大きい。眼軸長については,新生児は17mm,成人は24mmである。内径か外径かで違うが,この数字はDuke-Elder(1963)にあり,外径と解釈する。

 出生から成人になるまで,眼軸長は1.4倍になるだけだが,眼球の表面積はその二乗,すなわち1.99倍,そして眼球の容積は2.8倍になる。眼球が成長するとき,全体が風船のように均等に大きくならないのではと気になった。

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あとがき 寺崎 浩子
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 厳寒から抜け,あっという間に桜の開花を過ぎてさわやかな日々をお過ごしのことと存じます。日本の眼科の大事業である国際眼科学会も幕を閉じ,静かに勉強に勤しむ毎日となりました。本号は,昨年秋開催された第67回日本臨床眼科学会の講演集の第3回となります。講演集とともに本学会のSIGの報告もご覧ください。

 本号で特筆すべきは今月の話題「濾過胞感染への対応 日本緑内障学会『濾過胞感染多施設共同研究』の成果を受けて」です。山本哲也先生には,3月号で「患者(ひと)はなぜ緑内障で失明するのか? 失明回避にTSUNAGUために」と題してご投稿いただき,我々一同感銘を受けたところですが,濾過胞感染は長期にわたる合併症であることから,その時期における治療が将来どのように評価されるかに関わっており,なかなか難しい問題であります。是非ご拝読をいただきたいと思います。

基本情報

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臨床眼科
68巻5号 (2014年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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