臨床眼科 68巻4号 (2014年4月)

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要約 目的:原因不明のぶどう膜炎に行った硝子体生検の結果に,硝子体灌流の有無が及ぼす影響の報告。対象と方法:過去6か月間に硝子体生検を行ったぶどう膜炎12例16眼を対象とした。男性11眼,女性5眼で,平均年齢は69±11歳である。まず無灌流の状態で,続いて灌流下で採取した検体を検索した。結果:IL-6値は,10眼で無灌流,6眼で還流下のほうが高値であった。IL-10値は4眼で検出できた。1眼で無灌流,3眼で還流下のほうが高値であった。IL-10/IL-6が算出できた4眼では,全例が1.0以上であった。病理細胞診の結果は,無灌流時と灌流時とで差がなかった。結論:ぶどう膜炎に対する硝子体生検の結果に,硝子体灌流の有無は影響しなかった。

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要約 目的:コンタクトレンズ装用者に発症した角膜潰瘍での,緑膿菌に対する薬剤耐性の報告。対象と方法:過去10年間に治療したコンタクトレンズ装用者の角膜潰瘍は,89例94眼である。うち49例53眼では緑膿菌が分離された。これに対するレボフロキサシン,ゲンタマイシン,トブラマイシンに対する感受性を検索した。症例の年齢は,15~69歳,平均32歳であった。結果:レボフロキサシンに対しては,49例中4例(8%)に感受性がなく,6例(12%)に耐性があった。ゲンタマイシンに対しては,2例(4%)に感受性がなく,15例(31%)に耐性があった。トブラマイシンに対しては,10例(20%)に耐性があった。結論:緑膿菌による角膜潰瘍では,キノロン系またはアミノグリコシド系の抗菌薬に対する低感受性や耐性が発見された時点で,治療薬剤の再検討が必要である。

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要約 目的:ぶどう膜炎に多発性脳神経麻痺を合併した眼・神経サルコイドーシス症例の報告。症例:34歳女性が1か月前からの右眼霧視で受診した。矯正視力は右1.2,左1.5で,右眼に前房内炎症があり,両眼に角膜後面沈着物と隅角結節,網膜静脈周囲炎があった。胸部X線検査で肺門リンパ節の腫脹があり,経気管支肺生検でサルコイドーシスと診断された。初診時から嗅覚と味覚障害があり,1か月後から左三叉神経の不全麻痺と右顔面神経麻痺が生じた。嗅神経,視神経,三叉神経,顔面神経,舌咽神経,迷走神経の多発性脳神経麻痺と診断された。ステロイドパルス療法を行い,3日目から味覚と嗅覚障害が回復し,続いて眼底所見が改善した。10か月後にすべての脳神経障害が寛解し,以後8か月後の現在まで,眼炎症と神経症状の再発はない。結論:ステロイドパルス療法で,サルコイドーシスによる神経と眼病変が改善した。

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要約 目的:過去9年間の眼瞼,結膜,眼窩腫瘍の自験例の報告。対象と方法:病理学的に診断された眼瞼,結膜,眼窩腫瘍853例を,診療録の記載に基づいて検索した。結果:良性腫瘍は601例(70.5%),悪性は252例(29.5%)であった。853例の発生部位は,眼瞼314例,結膜51例,眼窩236例であった。平均年齢は,各部位とも良性よりも悪性腫瘍が有意に低かった。30歳未満の悪性腫瘍は,眼瞼にはなく,眼窩ではその9%に発症した。眼窩腫瘍では,良性では血管腫,多形腺腫,皮様囊腫が多く,悪性ではその70%が悪性リンパ腫であった。眼瞼腫瘍では,良性では母斑と霰粒腫が多く,悪性ではその94%が基底細胞癌,脂腺癌,扁平上皮癌であった。結膜腫瘍では,良性では母斑がその30%であり,悪性の半数が悪性リンパ腫であった。結論:悪性の眼窩腫瘍は30歳未満でも発症する。

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要約 目的:ヒト生体角膜内皮細胞の動態とスペキュラーマイクロスコープ画像との関係の報告。対象と方法:縦断的解析群は22~76歳の正常な男性1名,女性7名の両眼を,1週間間隔で2年間角膜中央部内皮を自動解析装置KC4000(コーナン・メディカル社製)で検査した。横断的解析群は3年間に複数回内皮を検査した12~76歳の男性67名,女性223名である。同一眼に共通に出現する細胞群の面積と,辺の長さをディジタイザー法で計測し,測定値の変動を変動率=(最大値-最小値)÷平均値×100で表し,相関係数を検定し,回帰係数で示し,日時の異なる細胞群トレース画を重ねて細胞移動を調べた。結果:変動率は,第1辺長が周囲長の2.5倍で,両者に相関関係がない一方,細胞面積と周囲長が相関する(p=0.02)ことから,細胞は一定の大きさを保ちながら形は常に変化していると考られた。トレース画で細胞の配置に変化はなく,面積の回帰係数が0.01±0.04と低値なことから,内皮細胞の配置は変わらないと推定された。横断的解析群の結果は縦断的解析群の結果を検証した。結論:スペキュラーマイクロスコープ写真の解析から,ヒト生体角膜内皮細胞の尖端面(前房側)は常に変化しているが,基底面(実質側)は固定されていると推測した。

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要約 目的:眼球摘出に至ったアカントアメーバ角膜炎の症例の報告。症例:58歳女性が右眼の視力低下と眼痛で受診した。ワンデー用のソフトコンタクトレンズを数日連続装用していた。2か月前に右眼痛があり,角膜ヘルペスと診断され,副腎皮質ステロイド点眼を含む治療を受けていた。加療中に前房蓄膿が生じた。所見:矯正視力は右手動弁,左1.0で,右眼の角膜全面に,前房蓄膿を伴う潰瘍と浸潤があった。角膜実質の鏡検と培養でアカントアメーバが検出された。ステロイド薬の点眼を中止し,複数の点眼と全身投与を行った。3週間後に角膜が穿孔し,保存角膜を移植した。輪部角膜が融解し,初診から50日後に眼球を摘出した。結論:進行したアカントアメーバ角膜炎は,すべての治療に抵抗することがある。

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要約 目的:シングルピース眼内レンズ(以下,IOL)におけるパーソナルA定数を度数別,眼軸長別に算出し比較検討した報告。対象と方法:2011年1月~2013年2月に白内障手術を施行した146例252眼を対象とした。IOLはNS-60YG(NIDEK社)を使用。角膜曲率半径計測はTMS-5(TOMEY社),眼軸長測定はOA-1000(TOMEY社)のContactモード,度数計算式はSRK/T式を用いて予測屈折値を算出した。手術施行1か月後にオートレフラクトメーターARK-730(NIDEK社)を用いて他覚屈折値を測定した後,視力検査で自覚屈折値を算出,これを基にパーソナルA定数を度数別と眼軸長別に算出して個別A定数とし比較検討した。結果:IOL度数別の個別A定数は,17D以下ではパーソナルA定数より小さくなり,眼軸長別では25mm以上になるとパーソナルA定数よりも小さくなる傾向があった。結論:IOL個別A定数は,度数や眼軸長ごとに変化する。原因として,IOL度数ごとに変化するレンズ形状や度数計算式自体によるものが考えられた。

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要約 目的:2種のスペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)で測定された早期緑内障眼における黄斑部パラメータと視野障害の関係の報告。対象と方法:広義原発開放隅角緑内障21例31眼を対象とし,2種(3D OCT-2000,RTVue-100)のSD-OCTで黄斑部パラメータ(NFL厚,GCL+IPL厚,GCC厚,GLV,FLV)を測定した。視野検査はHumphrey視野計の中心30-2のMD値とPSD値,VFIで評価した。黄斑部パラメータと視野指標との関係を回帰分析で評価した。結果:黄斑部パラメータとMD値との決定係数(R2)で,最も高いのはGLVであった(0.559,p<0.05)。PSD,VFIにおいては,FLVのR2が最も高かった。結論:2機種の黄斑部パラメータは,各視野指標と有意に相関していた。早期緑内障眼での視野障害を最も反映していたのは,FLVであった。

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要約 目的:複数の薬物で加療中の緑内障患者で,1剤をブリモニジン点眼に切り替えた時の効果の報告。対象と方法:加療中の緑内障19例32眼を対象とした。男性18眼,女性14眼で,年齢は47~84歳,平均71歳である。内訳は,原発開放隅角緑内障22眼,原発閉塞隅角緑内障2眼,混合型緑内障2眼,落屑緑内障2眼,血管新生緑内障4眼である。3剤から5剤,平均3.8剤により治療中で,臨床的に効果が不十分と判定された。うち1剤を0.1%ブリモニジン酒石酸塩に切り替え,以後6か月間の眼圧を観察した。切り替え前の眼圧は,平均17.4±3.7mmHgであった。結果:切り替え後の平均眼圧は,1か月後15.6±2.8mmHg,3か月後15.9±3.1mmHg,6か月後15.8±2.9mmHgに下降した。結論:複数の薬物で加療中の緑内障患者で,1剤をブリモニジン点眼に切り替えた時,1か月後に眼圧下降効果が得られた。

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要約 目的:脈絡膜陥凹のある中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィの症例の報告。症例:51歳男性が,4年前からの視野欠損で受診した。10年前に健康診断で,両眼の黄斑部異常を指摘された。夜盲はない。所見:両眼に約-6Dの近視があり,矯正視力は左右眼とも1.2であった。両眼の黄斑部に境界鮮明な類円形の萎縮があった。フルオレセイン蛍光造影(FA)で,萎縮巣に一致した低蛍光があり,光干渉断層計(OCT)で,網膜外層と脈絡膜の菲薄化があり,萎縮がより進行した部位に脈絡膜陥凹があった。2年後に視力がやや低下した。結論:中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィのOCTによる所見として,脈絡膜の菲薄化と脈絡膜陥凹があった。

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要約 目的:黄斑円孔に網膜分離が併発した3症例の報告。症例:黄斑円孔に網膜分離が発症した3症例はいずれも片眼性で,年齢は55,70,81歳であった。罹患眼の屈折は,それぞれ-21D,-3D,0Dで,眼軸長は約30mm,24mm,22mmであった。強度近視がある1例では,7年間の経過観察で中心窩分離から中心窩剝離,黄斑円孔網膜剝離に進展した。他の2例では,光干渉断層計で乳頭小窩症候群と異なる所見を示し,SF6を併用する硝子体切除術で円孔は閉鎖しなかった。結論:中心窩分離には前後方向の硝子体牽引が関与していると推定され,黄斑円孔とは鑑別する必要がある。

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要約 目的:加齢黄斑変性(AMD)に対するラニビズマブからアフリベルセプトへの切り替えでの有効例の検討の報告。対象と方法:ラニビズマブの継続投与でも,滲出性変化が遷延化したAMDに対して,アフリベルセプトへの切り替えが有効となり,6か月間経過を追えた7例7眼を対象とした。切り替え後の視力と滲出性変化を検討した。結果:病型はすべてポリープ状脈絡膜血管症であった。切り替え前に比べ,視力は切り替え3か月後,4か月後および6か月後で有意に改善した。平均中心窩網膜厚は切り替え1か月後から有意に改善し,6か月後まで維持された。結論:遷延化した滲出性変化をもつAMDに対して,アフリベルセプトへの切り替えは有効であった。

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要約 目的:低眼圧黄斑症にシリコーンバンドによる輪状締結術が奏効した2例の報告。症例:1例目は13歳男児で,野球ボールが右眼に当たり,低眼圧が生じた。右眼圧は2mmHg,矯正視力は0.3であった。2例目は41歳男性で,15年前に野球ボールが右眼に当たって低眼圧になり,1週間前に転倒して右眼を打撲した。右眼圧は5mmHg,矯正視力は0.25であった。両症例に#240シリコーンバンドを用いた輪状締結術を行った。結果:症例1では眼圧が10mmHgになり,視力は1.0に改善したが,-3.50Dの近視が生じた。症例2では,眼圧が8mmHgになったが,網脈絡膜皺襞が残った。2か月後の白内障手術のときにバンドを調整し,15mmHgの眼圧になった。結論:本術式は毛様体の近くにバックルが設置でき,位置と長さの再調整が可能であり,低眼圧黄斑症の治療での選択肢になる。

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要約 背景:Klebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍は,多臓器に転移性病変を形成しやすく,invasive liver abscess syndromeと呼ばれる。目的:眼内炎を契機に肝膿瘍が発見された症例の報告。症例:73歳女性が3週間前からの眼痛と眼瞼腫瘍で受診した。4日前に発熱と意識障害で精神科病院に入院し,抗生物質メロペネムの投与を受けた。糖尿病と統合失調症の既往があった。所見:39℃の発熱があり,右眼に光覚はなく,前房に強い炎症所見があった。超音波検査で硝子体混濁と網膜下膿瘍が疑われた。腹部の造影CTで肝膿瘍が発見された。白血球増加と血糖値の上昇があり,感染症に伴う播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断された。内視鏡的胆管ドレナージでグラム陰性桿菌,肝膿瘍と硝子体からK. pneumoniaeが検出された。抗生物質などの投与で全身状態が改善し,初診から12日後に退院転科した。右眼視力は回復しなかった。結論:眼内炎を契機として肝膿瘍が発見された本症例は,典型的なinvasive liver abscess syndromeであったと診断される。眼科受診が遅く,失明が回避できなかった。

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要約 背景:睫毛エクステンション(睫毛延長術)は,美容目的で,化学繊維でできた人工睫毛を瞬間接着剤で本来の睫毛に装着する方法である。目的:睫毛エクステンションを契機として発症した眼内炎の症例の報告。症例:44歳女性が3日前からの右眼の眼痛と充血で受診した。その前日に睫毛エクステンションを受けた。20年前に緑内障と診断され,線維柱帯切除術が両眼に行われ,両眼の濾過胞炎の既往があった。所見:右眼の前房に炎症所見があり,濾過胞が白濁し,房水の流出があった。装着された人工睫毛は,その方向が乱れ,一部が眼球に接触していた。11日後に濾過胞炎が眼内炎に進行し,硝子体手術が行われた。その21か月後の現在,矯正視力は1.0で安定している。結論:無血管濾過胞を有する眼では,睫毛エクステンションが眼内炎を誘発することがある。

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要約 目的:Behçet病に続発した緑内障に対し,線維柱帯切除術を行った3症例の報告。症例:症例はいずれも男性で,年齢は30,39,44歳である。Behçet病の罹患歴はそれぞれ14か月,8年,14年で,眼圧上昇はいずれも片眼性であった。インフリキシマブをそれぞれ3か月,30か月,2週間全身投与した後に,マイトマイシンCを併用する線維柱帯切除術を行った。結果:罹患眼の術前の眼圧は,それぞれ42mmHg,27mmHg,35mmHgであり,術4年後の現在まで,すべて14mmHg以下に維持されている。重篤な眼炎症発作や感染などの合併症はない。結論:Behçet病3例3眼の緑内障に対し,インフリキシマブ導入後に線維柱帯切除術を行い,良好な結果を得た。

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要約 目的:両眼に急激な視力低下があり,副腎皮質ステロイドで寛解した視交叉炎の若年例の報告。症例:11歳男児が10日前からの視力低下で受診した。所見:視力は右指数弁,左光覚弁で,両眼に耳側半盲があった。MRIで視交叉の高信号と腫脹があり,視交叉炎と診断した。抗アクアポリン4抗体は陰性であった。メチルプレドニゾロンによるパルス療法を3クール行い,1か月後に視力は右1.2,左0.9になり,視野も改善した。MRIでの異常信号域は減弱した。以後14か月後の現在まで再発はない。結論:副腎皮質ステロイドのパルス療法で視神経炎が寛解した。本症例はわが国での報告例では最年少である。

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要約 目的:副腎皮質ステロイドのパルス療法が,肥厚性硬膜炎に併発した視神経症に奏効した1例の報告。症例:48歳女性が1週間前からの右眼霧視で受診した。所見:矯正視力は左右眼とも1.5で,眼科的には格別の異常はなかった。2か月後に右眼の霧視が悪化し,複視が生じた。右外転神経麻痺があり,ガドリニウム造影を併用した磁気共鳴画像検査で,肥厚性硬膜炎と診断された。ステロイド薬の内服で複視を含む神経症状は寛解したが,その10か月後に右視力が0.07に低下し,中心暗点が生じた。ステロイドパルス療法で4週間後に中心暗点は消失したが,開始から2か月後に肝転移を伴う大腸癌が発見された。以後4か月間の現在まで,眼病変を含む神経症状の再発はない。結論:ステロイドのパルス療法が,肥厚性硬膜炎に併発した視神経症に奏効した。

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要約 目的:独居認知症患者で介護サービスと連携して治療を行った眼部帯状疱疹の1例の報告。症例:77歳女性が左眼深部痛を主訴に受診。所見:左眼部に水痘を認め,帯状疱疹と診断した。アシクロビルの点滴を3日間行い,ステロイド点眼を処方した。深部痛と疱疹は軽減したが,左眼に角膜浮腫が出現した。薬を入手しておらず,全く点眼していなかったことから,独居の認知症と判明した。訪問看護による点眼の確認作業を要請した。初診から12日後に,左眼の角膜浮腫が軽減した。結論:独居認知症患者の早期発見と早期対応は困難であり,地域包括支援センターとの連携が必要である。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

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 人工角膜の歴史を東海大学 医学部 専門診療学系眼科学 河合憲司が担当し,人工角膜の臨床を宮田眼科 宮田 和典氏にお願いした。

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 専門別研究会として行われてきたオキュラーサーフェス研究会は,2012年からSIG(Special Interest Group Meeting)として,ドライアイ研究会と日本眼科アレルギー研究会との合同で行われている。今回,筆者は順天堂大・浦安の海老原伸行先生とともにプログラムを担当した。以下には,ドライアイの立場からドライアイに関する講演についてご紹介する。

連載 今月の話題

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 高血糖による網膜微小循環の障害に引き続く組織虚血,新生血管の発症,そして線維血管増殖膜の進展に至る増殖糖尿病網膜症については,網膜光凝固や硝子体手術といった眼科的治療の進歩によって視機能の温存が可能になってきた。一方で,視機能中心である黄斑部に浮腫をきたす病態である糖尿病黄斑浮腫については,その治療法はおろか原因さえ不明な点が多い。本稿では糖尿病黄斑浮腫の治療についての現況を紹介し,今後の提言も含めて論じてみたい。

連載 硝子体手術アジュバント―知っておきたいコツと落とし穴・第3回

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コツ

1.使用前にシリンジを撹拌することが大切です。この際に,針先を下に向けてシリンジの軸に沿ってゆっくり回転させるようにしておくと,少量の滴下で十分な量が得られます。

2.硝子体腔内に入る前に必ず眼外で少量出してみて,抵抗なくシリンジを押せることを確認したほうがよいです。特に後部硝子体剝離作製時など周辺切除を十分に行っていない状態では,硝子体ゲルが針先を塞いでしまい,押し出す際に抵抗が強く,余計なトラブルの元になることがあります。

3.後極に注入の際は網膜に吹きかけるのではなく,1滴垂らす感覚で皮質の上にそっと乗せる感覚で行うと,散らばり具合が非常によいです。

4.注入量が多すぎた場合でも,必ずしも灌流を止める必要はありません。ただし,硝子体カッターで吸引するのはやや危険な操作であり,灌流が強く流れるためすぐに硝子体腔内全体が混濁し,余計な時間がかかります。バックフラッシュニードルによる受動吸引を用いるほうが丁寧で安全です。

落とし穴

1.一番手前にある硝子体が可視化されるだけなので,ゲルに対して振り掛けるときは硝子体の切除量をある程度予測しながら行うほうがよいです。

2.可視化された硝子体皮質を除去する際には,特にアーケードの周辺側では鑷子で直接把持することが難しく,容易に網膜を損傷するためバックフラッシュニードルの受動吸引でしっかりきっかけを作り,ある程度広い面積で硝子体皮質を浮き上がらせることができてから,硝子体カッターの能動吸引に切り替えたほうが効率はよいです。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第15回

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Point

◎網膜色素変性ではOCTにて周辺部から中心に向かってELM,IS/OS,COSTの各ラインが欠損し,中央に残存する各ラインの長さを計測することができる。

◎網膜色素変性の進行に伴い網膜外層の障害はCOST,IS/OS,ELMの順に進行し,これらのラインの障害が連動している。

◎網膜色素変性のOCT画像におけるCOST,IS/OS,ELMの長さは視力・網膜感度などの視機能と相関し,網膜色素変性の進行を評価するうえで有用なパラメータになりうる。

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 症例は4歳,女児。保育園で視力不良を指摘され,近医を受診。眼底に卵黄状の病変を認めたため,精査目的で当科紹介受診となった。

 初診時視力は右0.7(n. c.),左0.3(n. c.),眼圧は右14.7mmHg,左18.0mmHg,左眼10 Δ内斜視であった。前眼部・中間透光体に異常所見はなかった。眼底写真では両眼とも黄斑部に典型的な卵黄状の円形病変がみられ,光干渉断層計では中心窩網膜下に高反射の隆起性病変と網膜下液を認めた。以上の結果より,卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)と診断した。卵黄状黄斑ジストロフィは,眼底所見から,stage 1前卵黄期およびキャリア期,stage 2卵黄期,stage 3偽蓄膿期,stage 4炒り卵期,stage 5萎縮期,stage 6瘢痕および脈絡膜新生血管期のステージに分類される。本症例は,年齢および眼底所見からstage 2卵黄期と考えられた。

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 本書は角膜分野の診療を切り拓いてきた阪大眼科と,東大眼科が総力を挙げて作った「オキュラーサーフェス疾患」の教科書である。西田幸二教授,天野史郎教授の情熱が伝わる力の入った書となっている。タイトルに「目で見る鑑別」とあるように,鮮明な写真が豊富に使われており,ひと目で疾患が理解できるように構成されている。また内容も具体的な鑑別に加えて,実際の治療まで懇切丁寧に書かれているので,日々の臨床に大いに役立つこと間違いない。

 従来は「角膜疾患」としてひとくくりにされていた眼表面疾患だが,最近では「オキュラーサーフェス疾患」として一つの独立した分野として認識されるようになった。涙腺から涙液が分泌され,眼瞼による正常な瞬目によって涙液が眼表面に供給され,そして涙道から排出されるダイナミックな側面も重要な一つの概念になっている。そして角膜および結膜上皮とそれを定常的にサポートするそれぞれのステムセルに,ゴブレットセルなどの機能細胞群が互いに助け合ってオキュラーサーフェスの健常性を維持しているのである。それぞれの機能の一つでも破綻するといわゆる“病態”となるわけだが,オキュラーサーフェスの診断においては,どの部分が破綻しているのかをしっかりと把握する必要がある。

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 糖尿病患者の増加と社会の急速な高齢化が相まって,糖尿病網膜症の患者は一向に減る気配がない。むしろ経済状況の悪化が原因なのか,網膜症はおろか糖尿病そのものも無治療で,失明寸前の症例(しかも比較的若年者)に遭遇することも少なくない。日本が世界に誇る高水準の医療に綻びが出始めているのでは,と不安すら覚えてしまう。

 糖尿病網膜症は眼科において一般的,そして極めて重要な疾患でありながら,なかなか優れた成書に恵まれなかった。黄斑症の治療や硝子体手術に特化した書籍は多いものの,「一冊丸ごと網膜症」は少なく,あっても共著のため読みづらいものであった。そのような教育上の問題が影響しているのか,紹介を受ける症例の中には,それまでの治療歴に首を傾げたくなるようなものが少なからず存在する。地域での講演会では糖尿病網膜症を頻繁に取り上げるようにしているし,内科と合同の勉強会も定期的に開催しているが,やはり単発の講演では「耳学問」に止まるものかもしれない。

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 翻訳中とは聞き及んでいたが,思いのほか早く出版されたので驚いている。早速散読させてもらった。誠に慶賀にたえない。理由はいくつかある。第一には,身体診察のバイブルである。万事に考察が幅広く,深い。第二に,もともとはサパイラ先生の単著である。つまり,1990年の初版は,米国における「悪しき検査主義」に抗し続けた先生の魂魄の書であった。第三に,内容を新しくする努力が継続されている。すなわち,第2版以降はオリエント先生(初版から関与)たちによって斬新さが保たれて,今日の第4版にまで至っている。したがって,1990年代以降のEBMの成果も盛られている。第四に,日本語なので何といっても読みやすい。原著の英語は医学書にしてはかなり歯応えがある。人を食ったようにしゃべられることの多いサパイラ先生ならではだが,「米国の研修医の英語の水準では,ちょっと難しい」。第五に,あちこちで「サパイラ節」が炸裂していることである。個人的思い出あり,医学の歴史の叙述あり,さらには文学の挿入ありという風に。ただし,これには異論もあるだろう。初学者向きではないし,医学書は簡潔を旨とすべきだからである。第六に,この方面に造詣の深い,しかも練達の英語の読み手を訳者として多数集められたことである。数多くの訳注は,各訳者の努力を物語る。監訳者の尽力も透けて見える。よりこなれた訳出のためには数名だけの手になるのが理想だが,さすがにそれは高望みであろう。

 サパイラ先生の医者人生と還暦での引退が,米国でのH&P(history taking&physical examination;病歴聴取と身体診察)の消長を裏打ちするのは,「初版の序」からもうかがえる。1936年生まれの先生は,61年にピッツバーグ大学医学部を超優等で卒業。根っからの一般内科医なのだが,身体診察研究者としても頭角を現され,全米中で活躍された。私は90年代の中ごろにお付き合いをしたのだが,60年代初頭の米国の内科の臨床・教育のまとまりをしきりに懐かしがっておられた。専門分化に伴う知識の分断化に対する憂いは,実に深かった。

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 このたび,『がん診療レジデントマニュアル 第6版』に対する書評を書くようにご依頼をいただいた。おそらく,私は実はがん診療レジデントマニュアルの第1版の著者の一人であるので,先輩として後輩たちの作った第6版を厳しく評価せよ(笑)ということであろうと思われるので,お引き受けした。

 世の中には,たくさんのがんの本が出版され,どれを選んで良いのか,迷う先生方も多いのではないだろうか? 最近は随分減ってきたが,私がマニュアル作りに携わったころには,がんのテキスト本でも,著者の私見ばかりで,しっかりとしたエビデンスの記載のないものがたくさんあった。やはり記載された文書には,その考え,解説に至ったエビデンスの出典がしっかり記載されたテキスト本を選ぶべきである。そういう点から,本書を読むと,まさにその通りで事細かに,適切なエビデンスが選ばれており,著者の記載が適切であることが保証されている訳である。われわれが,抗がん剤という毒性の強い薬を患者に用いるときに,EBMの裏付けのない治療を施行することは絶対に避けねばならないが,本書を選択すればその心配はほぼないものと思われる。しかも,そのエビデンスも重要度が★によって判りやすく格付けがなされ,その推奨度が一目でわかるようになっている。

やさしい目で きびしい目で・172

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 医師になって2年目,結婚式の2次会で「子どもは何人欲しいですか?」というお決まりの質問に「2人かな??」なんてはにかみながら答えていた26歳の私。あのとき,誰が12年後,4人の母になる私を想像できたでしょう?

 4人目を生む前の2012年12月までは卒業した北海道大学眼科にお世話になり,学位も取らせていただきました。夫婦双方の実家が本州のため,保育園をフル活用し,子どもが病気になったら当日早朝の電話でベビーシッターさんを派遣してくれるというNPOの会員になってしのいでいました。医局のサポートもすばらしく,土日の術後の回診時は子どもたちを病棟のカンファレンスルームでほかの先生のお子さんと一緒にテレビ番組を見せて待たせたりしていました。でも,4人目!! もうサポートしてくれる家族なしでは無理だろうと,医師をやめる覚悟をし,実家に帰って出産しました。

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要約 背景:ザラカム®配合点眼液は,1mlあたりラタノプロスト50ngとチモロールマレイン酸塩6.83mg(チモロールとして5mg)を含み,緑内障と高眼圧症が適応である。目的:臨床的に用いられたザラカム®配合点眼液の安全性と有効性を検討した報告。対象と方法:契約が締結された116施設で,ザラカム®配合点眼液を投与した緑内障患者を対象とした。2年間の調査機関中に659例が登録されたうち534例について調査票が回収され,473例473眼を解析の対象とした。男性47.6%,女性52.4%で,平均年齢は67.4±12.6歳であった。473眼の内訳は,原発開放隅角緑内障46.1%,正常眼圧緑内障42.8%,原発閉塞隅角緑内障4.8%,続発緑内障3.5%,その他の緑内障2.9%である。結果:副作用は47例(9.9%)に生じ,眼刺激13例,点状角膜炎9例,角膜障害4例などであった。安全性には背景因子として眼合併症(p=0.045)と眼の既往歴(p=0.025)が有意に関係した。担当医が総合的に判定した有効率は,473例中400例(84.6%)であった。投与開始から52週までの眼圧と,緑内障の型についての相関は検討しなかった。結論:ザラカム®配合点眼液は,おおむね安全で有効である。

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要約 目的:難治性血管新生緑内障に対する毛様体光凝固の報告。対象と方法:血管新生緑内障3例3眼を対象とした。年齢は54,57,88歳で,緑内障の原因はそれぞれ網膜中心動脈閉塞症,穿孔性外傷と糖尿病,白内障手術と糖尿病網膜症であった。罹患眼の視力は,それぞれ0,手動弁,0で,眼圧は64mmHg,51mmHg,40mmHgであった。毛様体扁平部経由での硝子体切除を行ったのち,緑色レーザーで240°の範囲で毛様体突起を凝固した。平均13か月の経過を追った。結果:最終眼圧は,それぞれ4mmHg,8mmHg,24mmHgであり,眼痛,角膜浮腫,虹彩新生血管は消失した。結論:難治性の血管新生緑内障3眼に,毛様体扁平部を経由する毛様体光凝固関連薬を行い,眼圧が下降し,角膜浮腫と虹彩新生血管が軽快した。

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欧文目次

べらどんな グレノウ先生
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 ヨーロッパには名前が二つついた都市がよくある。ベネツィアとベニス,フィレンツェとフローレンスなどがその例であるが,戦争などで国境が変わることも原因になる。

 東プロイセンの首都は以前はKönigsberg(ケーヒスベルク)であった。哲学者カント(Immanuel Kant,1724-1804)はこの町で一生を過ごしたし,検眼鏡を発明したヘルムホルツ(Herrmann von Helmholtz,1821-1894)も,この大学の生理学教授をしていた。この町は現在はロシア領になり,Kaliningradと呼ばれている。

べらどんな ミヤマカラスアゲハ
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 古本屋にときどき行く。世の中には,どのような問題についても専門書があることを発見できるという楽しみもある。

 本が出版されるには,「書く人」と「読む人」の両者が存在することが前提条件である。それでも釣りの本とか,猫の本とか,よくこんなことに関心を持つ人が多いことに感心させられる。

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 甲州の方から葡萄をどっさり送っていただきました。葡萄と言えば,マスカット,巨峰,デラウエアくらいしか知りませんでした。ところが送られてきたのは,ピオーネ,カッタ・グルガン,ビッテロ・ビアンコ云々と,なかなか洒落た名前がついています。どれも食用で旨いのですが,ワインにはまったく別の種類が使われます。

 ものの本によると,栽培されている果物のうち,重量でいうと葡萄が世界一なのだそうです。少しその歴史を調べてみました。

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あとがき 稲谷 大
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 みなさんのお手元に本号が届けられる頃は,WOC2014 Tokyo開催真っ只中で病院や診療所を留守にされている先生方が多いのではないでしょうか?

 私,稲谷大は,神戸大学根木昭先生の後任として昨年度の終わりから臨床眼科の編集委員に加えていただくことになりました。若手といわれることの多い私も今年度で眼科医になって20年目を迎えました。実は,私の最初の論文は臨床眼科の原著論文で,臨床眼科学会で発表した神経眼科の論文でした。編集委員になって,臨床眼科学会の原著論文の査読をしておりますと,まだ論文を書き慣れていない初々しい先生方の原著論文も混じっていて,フレッシュマンだった頃の自分を思い出します。最近,教室員が原著論文を書いているのを見て思うことですが,学会発表までの準備をしただけでは,その研究は1/3しか終わってないのではないかと思うことです。論文を書いて投稿して,やっと2/3,査読者から返事が返ってきて,データを追加して送り返して受理されて,やっと仕事が終わります。学会発表だけで終わるのではなく,論文を書かないと,本当に仕事をやり遂げたとは言えません。みなさんの原著論文の投稿を楽しみにしていますので,いじわるなコメントをしてしまうかもしれませんが,是非沢山の投稿よろしくお願い致します。

基本情報

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臨床眼科
68巻4号 (2014年4月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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