書評
ケースで学ぶ 日常みる角膜疾患
天野 史郎
1
1東京大学大学院・眼科学
pp.1103
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103253
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山口大学眼科学教室前教授の西田輝夫先生と山口大学眼科の教室員の先生方が執筆された『ケースで学ぶ 日常みる角膜疾患』が医学書院より発刊された。西田先生は世界的な業績を挙げた角膜研究者に贈られるカストロビエフォ賞を受賞された日本を代表する角膜研究家であり,フィブロネクチン点眼による再発性角膜上皮びらんの治療,サブスタンスPとIGF(インスリン様増殖因子)の部分ペプチドの点眼による遷延性角膜上皮欠損の治療などの研究でLancet誌に論文を数本発表されるなど,輝かしい業績を残されてきた。その西田先生がこれまでの長い診療経験において蓄積された多くの症例から,日常みる角膜疾患を抽出しまとめ上げられたのが本書である。
その内容は,角膜疾患および関連事項を大きく「角膜上皮」「感染・免疫」「角膜変性・内皮」「形状異常・外傷」「腫瘍・全身」「角膜移植」「検査」の7つに分け,それぞれの代表的な疾患や討論点などの小項目を全体で80項目掲げ,詳細な解説が述べられている。各項目においてはまず典型的な症例が提示され,いずれの項目の症例も初診時所見から最終的な転帰までが詳細に記述されており,教室員の先生方が精魂込めて症例をまとめられた様子がうかがえる。そして症例の提示に引き続き,各疾患の説明が,疾患の定義,疾患概念,自覚症状,他覚所見,診断・鑑別診断,治療・予後の順に述べられており,本書の最も読み応えのある部分となっている。
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