臨床眼科 37巻3号 (1983年3月)

特集 第36回日本臨床眼科学会講演集 (その3)

特別講演

視野の臨床 松尾 治亘
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 わが国における視野計測の実態を把握し将来の視野検査を考える意味でのアンケート調査を行い771機関(38.1%)の有効回答を得た。視野計としてはGoldmann型視野計が最も広く使用されている(84%)。これに比べ,静的計測を日的としている視野計の使川はStatic campimeter 9%, Friedmann Central Field Analyser 8%であり,中心部の静的計測の重要性が認識されて将来もっと普及することが望まれる。

 計測法としては,動的量的視野計測法のみ行っているという回答が全体の45.3劣を占めており,我々の推奨しているscreeningと精密視野計測の合理的な組合せを実施しているという回答は全体の26.9%で,今後さらにscreening法が行われることが望まれた。

 現在,安価でしかもscreeningとして有用と考えられるFriedmann Central Field Ana—lyser, Static campimeterおよびFriedmann Analyser Ⅱの3機種の正常閾値を求め,その値から最もscreeningに妥当と思われるND値を年代別に求めると, Friedmann CentralField Analyserでは30歳代までは1.8,40歳,50歳代では1.6,60歳以上では1.4,とほぼFriedmann 自身の定めたND値より0.2logu低い値であり,Static campimeterでは20歳代までは2.0,30歳代1.9,40歳代1.7,50歳代1.6,60歳以上では1.4であった。またFricdmann Analyser ⅡではFriedmannnr自身の定めたND値が最もscreeningに適している結果を得た。

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 27歳女性のSturge-Weber症候l群に伴う先天性緑内障に対し行ったtrabeculec—tomy術後,網膜剥離・脈絡膜剥離を併発した1症例につき報告した。

 術前,眼底(患眼)には緑内障性視神経乳頭陥凹が認められたが,明らかな脈絡膜血管腫は発見されなかった。術後眼圧は正常化したが,31日目に高度な網膜剰離・脈絡膜剥離をきたし,安静とダイアモックス・アスピリン加療の後,光凝固・ステロイド大量投与で著しい復位を認めた。

 この高度な網膜剥離・脈絡膜剥離の原因として,元来術後脈絡膜剥離の原因とされる術後の急激な眼圧低下を引き金とした機序に加えて,Sturge-Weber症候群という血管奇形疾患に発症した点,および光凝固術後の一過性漿液性網膜剥離が著明に出現した点から,血管腫は指摘できなかったものの脈絡膜血管に滲漏性変化をきたしやすい脆弱性の存在を推察した。

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 虹彩毛様体に認めた色素性腫瘍に対して,隅角虹彩毛様体切除術を試み,病理組織学的検索を加え,良性のmelanocytomaと診断した。臨床的に悪性と確診されない比較的小さい虹彩毛様体腫瘍の症例には,腫瘍の単純摘出術を行い,病理組織学的診断を行うことにより,眼球摘出を避け,視力を保存することが可能である。

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 角膜の上皮から実質,内皮およびその後面に至るまでの種々の病変について,広視野スペキュラーマイクロスコープを用いた生体観察を行った。対象となった症例は瀰慢性表層角膜炎,糸状角膜炎,顆粒状角膜変性症,原田病および白内障全摘術後症例である。ローズベンガル染色を行った上皮病変は異なった染色性こと観察光への反射を示す細胞が認められた。顆粒状角膜変性症で角膜実質内の個々の混濁の三次元構造と配列が詳細に観察できる。角膜裏面沈着物には,微細な沈着物から大型の豚脂様角膜裏面沈着物に至るまでスペキュラーマイクロスコピー上で各々特徴的な陰影を示す。内皮パノラマ像からは,白内障術後の角膜内皮に角膜下方3mmから上方3 mmの範囲で,内皮形態に部位差のある症例を示した。同一内皮部位の経時的観察により,内皮モザイク像には細胞間で離解と接合を認めるモザイクパターンの変化が生じていることが示された。広視野スペキュラーマでクロスコピーは,角膜前面から裏面にいたる病変を観察することができ,広く臨床応用の可能なbiomicroscopyであると考えられた。

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 脈絡膜雛襞症例16例17眼について螢光眼底造影による分析を主とした臨床的調査を行った。原因ないし併発疾患として眼窩病変(3眼),上顎洞病変(2眼),水晶体全摘出術後(6眼),網膜剥離強膜内陥術後(3眼),黄斑部変性症(1眼),中心性漿液性網脈絡膜症(1眼),非増殖性糖尿病性網膜症(2眼)などがあった。

 螢光限底造影では脈絡膜雛襞はHyperfluorescence (過螢光)またはHypofluorescence(低螢光)の二つの線条に区別され,カラー写真では過螢光の部は白色を,低螢光の部は黒または灰色を呈していた。過螢光および低螢光の線条の染色性の有無や時間的経過によるちがいからそれぞれを三つの型にわけてその解釈を論じた。

 脈絡膜雛襞が直接の原因となって視力低下を生じた例はなく,Goldmann視野計による動的視野計測でも脈絡膜雛襞による特徴的な変化はみられなかった。Goldmann視野計による静的視野計測では脈絡膜雛襞部で閾値の上昇がみられた。

 眼底中間周辺部に輪状に配列する脈絡膜雛襞が存在することを示し,両眼性の1症例の報告を行った。

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 村上色彩技術研究所製「高速分光色彩計」CMS−1000型を用いて,日本人葡萄膜の色を測色した。被験眼は11〜84歳の6眼で,測定値は次のごとくであった。

x=0.319〜0.350(平均0.334)

y=0.316〜0.332(平均0.319)

Y=3.14〜5.95(平均4.22)

 葡萄では「キヤンベル」という品種が,また赤毛の頭髪が上記の値と類似した。

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 23歳女性で,比較的急激な片眼性の視力低下をもって発症し,約4週間で視力回復をみ,網膜色素上皮障害と考えられる1例を経験した。その発症から自然治癒までの経過をEOG,螢光眼底造影などで詳細に観察したので報告した。

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 生前に電気生理学的検査を行った常染色体性優性遺伝の網膜色素安性圧の女性(93歳)の眼球について,電顕および光顕による観察を行った。

 病理学的所見では視細胞はほとんど消失しており,黄斑部にわずかに残存していた。残在する視細胞では外節が全く消失し,内部が直接色素上皮と接していた。周辺部ではミュラー細胞と色素上皮細胞の突起がよく発達し視細胞をおおっていた。視細胞核の周辺原形質には電子密度の大きな顆粒を多数含むライソゾームが出現していた。色素上皮細胞も網膜全体にわたり変性や萎縮が著明に認められた。そこではメラニン顆粒の減少とリポイド顆粒の高度な増加がみられ,他方で滑面小胞体が著しく発達し,ミエリン様構造を含む集塊を形成していた。またミトコンドリアも発達し密集した部位もあった。ブルッフ膜には高齢の症例でよく観察される小空胞,膠原線維および幅の広い縞構造がみられた。

 脈絡膜毛細血管は黄斑部を除いてほとんど消失していたが,残存部分ではほとんど異常がなかった。網膜内層では内顆粒層の高度の変性および神経節細胞の変性と細胞数の減少が顕著にみられた。網膜毛細血管は内皮細胞の肥大と管腔の狭窄および基底膜の著しい肥厚を示し,周辺には色素顆粒を含んだ細胞がみられた。以上の結果は生前の電気生理学的検査の結果とよく対応していた。

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 飛入した鉄性異物を放置したため眼鉄錆症を起こした眼球の組織を電子顕微鏡で観察した。

 1例は眼鉄錆症で,難治性の眼内炎を起こしたため眼球が摘出された。摘出眼球の角膜,隅角,虹彩,毛様体,脈絡膜,網膜,強膜の各組織を観察した。他の1例は眼鉄錆症に緑内症を続発した症例で,持続する高眼圧のためにトラベクレクトミーを施行した。その手術の際に得られた角膜,隅角,虹彩の組織を調べた。その結果,2症例とも観察したすべての組織において,組織固有の細胞の細胞質内にフェリチンが存在していた。また細胞質内にsiderosomeを有する細胞も見られた。大量へ鉄成分が蓄積した細胞のなかには,細胞質に空胞変性を生じ,さらには崩壊しているものも認められた。

 今回の観察で,眼鉄錆症において,鉄成分がフェリチンとして眼球の各組織の細胞の細胞質内に蓄積し,さらにsiderosomeを形成することが明らかになった。また眼鉄錆症の発症原因として,大量のフェリチンが細胞の細胞質内に蓄積して,細胞が変性・崩壊を起こすことによる鉄の直接障害があることが結論された。

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 蝶形色素沈着黄斑ジストロフィは黄斑部網膜色素上皮に特異な暗い色素沈着を認め,検限鏡所見からほぼ確実に診断できる黄斑ジストロフィとされているが,きわめて稀な疾患である。47歳の白人男性で両限に特異な病巣を有し,その螢光眼底造影所見が蝶形色素沈着黄斑ジストロフィに似た黄斑ジストロフィの1例を報告した。

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(1)43歳女性の両眼に発症した地図状脈絡膜症の1例を報告した。

(2)螢光眼底造影により,右眼は陳旧性の病巣を示したが,左眼は造影早期に異常血管網が認められ,網膜下新生血管膜の存在が証明された。

(3)経過観察中,前房や硝子体に混濁は認めず,血液検査の結果にも異常所見はなかった。

(4)本症が中心窩に及ぶとneovascular macuiopathyを惹起する可能性を示した。

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 卵黄状黄斑変性症の3症例を観察した。症例は12歳,30歳,46歳で,sporapic caseと思われ両眼羅患していた。第1例は卵黄様病巣をもつ嚢腫期から5年間の観察中にscrambled eggを示す嚢腫)崩壊期を経て変性萎縮を示す瘢痕期へ進行した。策2例は卵黄様病巣にscrambled eggと色素沈着を伴った嚢腫の崩壊期から瘢痕期へ移行しつつあった。第3例は,いわゆるpseudohypopyonを伴った著明なscrambled eggの限底を示し,他眼は結合組織増殖と,そこに螢光造影で網膜下新生血管がみられ,合併症が発生していた。

 細隙灯顕微鏡でみると,3症例とも病巣はすべて黄斑部網膜の深層にあり,黄斑部以外の網膜は正常で,周辺視野は正常,視力は比較的良かった。ERGは正常であったが,EOGに著明な低下をみた。螢光造影では卵黄様の嚢腫は低螢光であり,嚢腫が崩れてscrambled eggとなると過螢光を示した。

 この様に本症の典型的な所見は良く知られているが,多彩な眼底所見を示すので他疾患との鑑別診断が必要となる。診断にはコンタクトレンズによる細隙灯顕微鏡検査,螢光眼底造影,電気生理学的検在とくにEOGが有用であった。

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 緒言鏡面反射を利用したspecular microscopyは,現在角膜内皮細胞を中心に臨床上多くの情報をもたらしている。一方,specular microscopyにはもう一つの観察法,すなわちindirect reflexを利用したものがあるが,今回我々は主に角膜上皮浮腫についてindirect reflexによる観察を行い,従来の鏡面反射による所見と比較しいくつかの興味ある知見を得たので以下に報告する。

 方法すでに報告したものと同様に,表而麻酔剤として1%塩酸リドカインを点眼後,バネ式開瞼器を使用し,必要に応じて1%Rose-Bengal染色を併用し,spe—cular microscope (甲南カメラ)にて観察を行った。この際光源の最も明るい部分より後方の反射光の位置にfocusを合わせ,いわゆる間接照明法にて観察しEktach—rome Film (ASA 400)を使用し撮影を行い増感現像を行った。

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 緒言Lccithin:cholesterol acyltransferase (LCAT,欠損症は,1967年ノルウェーにおいて初めて報告された遺伝性疾患で,現在までに北欧を中心としていくつかの家系が報告されている。わが国では,1979年,最初の報告がなされている1)。今回我々の経験したわが国で第3家系目のLCAT欠損症について,本症の角膜病変像を中心に報告する。

 症例47歳男性。学童期より角膜混濁を認める,34歳時,定期検診にて蛋白尿を指摘され,45歳時,下腿浮腫に気付く。47歳夏より浮腫が増強,血圧220/80mmHgとなり近医受診,精査のため当院内科入院,角膜混濁のため当科紹介となる。家族歴では姉と母方の祖母の妹に同様の角膜混濁を認める(図1)。血族結婚はない。V.d.=1.2(n.c.), V.s.=1.5(n.c.)。両角膜は全体に混濁を認めるが,混濁は周辺部で強く,リング状となり老人環に似る。また,リング状の混濁と輪部との間には幅の狭い比較的透明な部分が介在するが,混濁の周辺部境界は不明瞭である(図2)。混濁部位の糸田隙灯所見では,Bowman層からDescemet膜前面まで実質全層にわたり微細な点状混濁が散在する(図3)。角膜内皮細胞は,平均細胞面積315±67μm2で六角形主体の正常内皮像を呈し,内皮細胞の異常を疑わせる所見は認めない(図4)。

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 緒言悪性リンパ腫や細網肉腫などでは,初発時しばしばぶどう膜炎様症状を示し,通常の炎症に対する治療に反応せず,令身症状の出現によって初めて診断の確定することが多い。本報では,このような疾患における眼病変の特微を要約したので報告する。

 症例過去5年間に当科で1年以上経過を観察することのできた色素性乾皮症1例を含む6例の腫瘍性ぶどう膜病変について検討した。症例の性別は男3名,女3名であり,発症年齢は24歳から62歳まではば広い年代にわたっており,罹患限では症例3を除きすべて両眼性であった。当科あるいは前医での初診時診断名は表1のごとくであるが,経過とともに初診時診断とは異なる臨床像を賢した。

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 緒言oxytalan fiberはelaunin, elastinと共に弾性線維に属する線維で,元来歯根周膜,腱,皮膚,血管外膜に存在する1)。角膜には正常では弾性線維,oxytalanfiberは存在せず,病的角膜,すなわち円錐角膜,炎症,外傷後の瘢痕組織フックス角膜内皮変性症等において上皮下あるいは,新しく形成されたデスメ膜に出現することが報告されている2〜4)。今回様々な原因により水疱性角膜症を生じた角膜のデスメ膜を形態学的に観察しoxy—talan fiberの存在の有無を検索した。

 対象と方法対象とした疾患は(1)先天性家族角膜内皮変性症,(2)フックス角膜内皮変性症,(3)進行性顔面半側萎縮症,(4)近視に対する角膜後而切開術後,(5)前房内異物,(6)緑内障各1例,および,(7)移植角膜2例,合計8例である。全層角膜移植時に採取した角膜を半切し,一方を10%ホルマリンにて固定し,パラフィン包埋した。他方を2.5%グルタールアルデヒドおよび1%四酸化オスミウムにて固定し,脱水後エポン812に包埋した。パラフィン包埋した試料から3μmの厚さの切片を作り,弾性線維染色,エラスターゼ消化を行った。

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 先天性背理性異常眼球運動にはDuane症候群をはじめ種々のものがみられるが,側方視にさいして両眼が外転すなわち開散眼位をとるいわゆるparadoxical diver—gence during lateral gazeはまれな異常であり,その報告も非常に少ない1,2)。今回我々は本疾患2症例を経験したのでここに報告する。

 症例1:11歳.女子。

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 緒言著者はこれまで衝動性眼球運動を視覚系だけで行う視性衝動運動と聴覚刺激により誘発される聴性衝動運動に分け,両者の衝動性眼球運動潜時(saccadicreaction time:以下SRTと略す)の特微について報告してきた。正常者においては求心性経路や知覚認知過程の違いによりそれらのSRTが異なり1),精神薄弱やびまん性大脳萎縮および頭頂葉病変例では障害に相関した視性や聴性SRTの遅延が認められる2,3)。今回,後頭葉視覚領野を中心とした病変における視性と聴性SRTを比較し.視覚領野機能障害の評価を行った。

 症例および方法症例は後頭葉視覚領野を中心とした病変6例である。症例1は63歳の男性で.右後大脳動脈の出血性梗塞による左同名性半盲を呈した。症例2は46歳の女性で,左後大脳動脈梗塞による右同名性半盲を呈した。症例3は68歳の男性である。大腿動脈の閉塞性動脈硬化症の診断で血管造影直後より発症した左後大脳動脈梗塞である。視野は発症時右同名性半盲と左上1/4半盲を呈していたが,SRT検査時左視野は改善し右同名性半盲だけの状態であった。症例4は53歳の男性で,右中大脳動脈梗塞による左同名性半盲と左片麻痺を呈した。症例5は33歳の男性で,左後大脳動脈梗塞による右同名性半盲と右片麻痺を呈した。症例6は18歳の男性で,左後頭葉萎縮の症例である。視野は約20°の求心性狭窄を呈した。全症例にCT-scanを施行し,病変考察の参考にした。

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 緒言最近2年間に心因性視力障害と診断した小児について統計的観察を行い,若干の知見を得たのでその実態について報告するとともに,一部の症例についてはopen-loop赤外線電子瞳孔計を用いて対光反応を測定し,そのパターン分析を行ったので,その結果についても報告する。

 対象1980年8月より1982年7月までの2年間に,当科外来にて心因性視力障害と診断した45症例を対象とした。

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 緒言上斜筋麻癖の手術療法において,先に,Biel—schowsky頭部傾斜試験(BHTT)の陰性化を目標にした患眼上直筋後転法が有効であり,術後の診断的むき眼位へもあまり大きな影響をきたさないことを報告した1,2)。今回は頭部傾斜時の動的反対回旋(Dynamic CounterRolling, DCR)を測定し.頭位異常と上下回旋ずれとの関連を検討した。

 対象と方法未手術上斜筋麻癖20名(後天性12名)と術後例23名(後天性1名)に,一般弱視斜視検査とDCRの測定を行った。術後例は患眼上直筋後転術(SR群),2名,患眼上直筋後転術と下斜筋減弱術併用(SR-IO群),12名(後天性2名),上斜筋増強術併用(SR-SO群)2名,患眼下斜筋減弱術と健眠下直筋後転術併用(IR-IO群)3名と,下斜筋減弱術(IO群)4名(後天性2名)に分類した。

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 緒言外眼筋の肥厚や球後の脂肪組織の浮腫ないし増殖性変化により眼球突出をきたす眼窩疾患に際して,外眼筋厚度を生体計測することにより,それらの疾患の早期発見や経過観察に有用な情報を得ることができる。近年,眼窩疾患の検査には,超音波診断法やCT-scan検査法が広く用いられてしいる。

 著者はすでに正常眼およびdysthyoid ophthalmo—pathy, myositisならびにpseudotumorなどに際しての外眼筋厚度の超音波生体計測を行い報告。今回は外眼筋肥厚をきたす二,三の眼窩疾患に対し.超音波生体計測を行い,更にCT-scanでの計測とを併川して,両計測法の比較を行い.臨床的意義を検討したのでその大要を報告する。

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 緒言外眼筋麻痺に対する手術法として,筋移動法は,有効かつ重要な方法であり,従来より種々の術式1)が報告されている。著者らは複雑な外傷性眼筋麻痺に対し,本法が著効した症例を経験し,その手術適応について若干の考察を加えここに報告する。

症例M.K.38歳,男性。(滋賀医大0498198)

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 緒言頭部顔面外傷により視覚障害を主訴として眼科を受診する症例は少ないものではなく,このほとんどが視神経の損傷によると考えられる。今回我々は,最近3年間に当科にて行った視神経管開放術の予後について検討を加えた。

 対象対象は1979年1月より1981年12月までの3年間に当科を受診し,顕微鏡下にて経篩骨洞視神経管開放術を行った16例である。このうち術中に視神経を確認できなかった3例を除き,166例について検討した。

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〔解説〕

 1971年浦山,山田ら1)が最初に記載した桐沢型ぶどう膜炎は,片眼性で急性の激しい汎ぶどう膜炎として発症し,網膜動脈周囲炎と眼底周辺部に濃厚な滲出を認め,強い硝子体混濁を伴い,発病後2〜3ヵ月で網膜剥離をきたす予後不良の疾患である。最近になって欧米では,necrotizing vaso-occlusive retinitis2), bilateral acute reti—nal necrosis3)として網膜閉塞性血管炎を主徴とする類似の症例が報告され本症との異同が問題であるが,ほぼ同一スベクトルの疾患と考えられている4)。最近著者らは,発症後比較的初期の症例を経験し本症の典型的な眼底像をパノラマカラー合成写真として記録できたので供覧する。

 症例は34歳女性(S.K.57-2837)。初診の10日前に左眼羞明,充血を自覚し某眼科を受診し前部ぶどう膜炎と高眼圧を指摘され当科に紹介された。初診時視力は矯正で右1.5,左1.0であったL眼圧は右17mmHg,左31mmHgであった。左眼は毛様充血が中等度で,豚脂様角膜後而沈着物を多数に認め,前房は細胞3+,フレア2+に見られた。左眼底は乳頭の境界は不鮮明で充血し6時の中間周辺部に出血を伴う黄白色滲出性病巣と周辺部全域に多数の点状滲出斑が見られた(図1a)。

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 検眼鏡的に両視神経萎縮の他に眼疾患を認めず,ERGが正常で中枢神経系の異常を合併している小児14例について,殊にVEPと視反応との関係について検討した。VEPにて良好な反応が得られたものは1眼もなかった。VEP反応,視反応ともに認められないもの10眼。VEPにて悪いながらも再現性のある反応がみられ,視反応もみられたもの12眼であった。平均9.4ヵ月の経過観察期間中,両反応に改善をみたものは1例もなかった。

 以上の症例につき視覚路の障害部位および程度とVEP反応,視反応との関係につき考察を加えた。

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 Triamcinolone acetonide局部注射により寛解をみた難治惟春季カタル2症例を報告した。2症例は経過が数年にわたり種々の治療に抵抗した難治例でありたが,Tri—amcinolone acctonide 0.2ml (2mg)の上眼瞼結膜下注射1〜2回で,結膜・角膜所見は軽快・消失した。また組織学的にも注射前は炎症性細胞の浸潤が顕著であったが.注射後には浸潤細胞は消退し,膠原線維の増生およびその硝子化がおこっていた。

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 網膜静脈閉塞症患者30例30眼にurokinase線溶療法を試み,治療効果と血液凝固,線溶能に対する影響を検討した。

 Urokinase 48×103 IU one shot静注を15日間連続施行した分枝閉塞症17例17眼(Aグループ)中14例14眼に視力および眼底所見の改善が見られて有効であったが,3例3眼では無効であった。

 Urokinase 240×103IUの点滴静注を4日間連続施行した分枝閉塞症3例3眼(Bグループ)中2例2眼に有効で,1例1眼では視力が全く改善せず無効であった。

 Urokinase 240×103の点滴静注を4〜5日間連続施行した基幹閉塞症10例10眼(Bグループ)中hemorrhagic retinopathyに分類される3例3眼では全例無効で,venousstasis retinopathyに属する7例7眼中5例5眼に有効,2例2眼に無効であった。

 血液凝固系はBグループでPTTが短縮を示し,ATⅢはA,B両グループ共にATⅢ値の低い症例で,その上昇が見られた。線溶系ではurokinaseの投与によりα2PLの低下が見られて線溶活性の上昇が示唆されたが,特にBグループで著しかった。

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 今回,我々は臨床経過および直腸生検,骨髄の病理像からBatten病と診断し,検眼鏡にて3年4カ月間にわたり経過観察を行い,また螢光眼底造影をも行うことができた,17歳女性の1症例につき,死後組織学的ならびに生化学的に検索した。

 眼底は全体に黄緑色を呈し細い色素斑が散在していたが,後極部には約1/4〜1/2乳頭径の円形白色調を呈する萎縮病巣を多数認めた。

 網膜の変化は周辺部まで広範囲に全層にわたり,神経節細胞は強く変性し,外節の消失,網膜色素上皮細胞の変性,消失とglia細胞の増殖が認められ,脈絡膜細動脈は内腔が狭窄していた。

 検眼検的に円形白色調を呈し,螢光眼底造影にて脈絡膜循環の遅延を示す部位では,視細胞内節,外節,色素上皮細胞が消失し,ミューラー細胞がBruch膜と接していた。また,脈絡膜細動脈は封入体の蓄積により変性血管内腔は著しく狭窄し,脈絡膜毛細血管板が減少していた。

 これと対比して,網膜が黄緑色調を呈し,螢光眼底造影にて正常の脈絡膜循環を示す部位では,視細胞内節は残存し,外節は消失,網膜下腔には外節を貧食するマクロファージを認めた。また,色素上皮細胞は変性,重層耐化し,脈絡膜毛細血管板の内皮細胞の変性とfenestrationの消失も認められた。

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24.家伝秘用方

 秘伝書には門人などがその師から直接伝授されるものと,ある旧家に代々伝えられる秘方が家伝として次代に受継がれる秘伝書がある。

 この「家伝秘用方」はその後者に当るものであるが,この写本の奥書によると,これは文禄5年(1596)に大月寿斉仙隆より江森平右衛門に伝えられた家伝の秘方とみられる。

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 1979年7月から82年6月までの3年間に行った網膜剥離手術516眼の中に,やむをえず渦静脈が切断されたり圧迫を受けたりしたことによって起こったと思われる合併症に二通りがあった。一つは硝子体出血で,渦静脈が3本と4本各々障害を受けた2眼に起こった。症状は重篤で,術後3ないし6日月から起こり,角膜浮腫,浅前房,前房出血,白内障を伴い予後は不良であった。他の一つは硝子体混濁で,渦静脈2本が障害を受けた3眼と,渦静脈1本が障害を受けた1眼に起こった。術後1週間目くらいから起こり,2週間目まで増大し眼底が全く見えなくなった。混濁は3ないし4週間で減少しはじめ,2ないし3ヵ月で完全に消失し,性質としては良性のものであった。

 著者らのこの体験から,網膜剥離手術時の渦静脈の取り扱いについては次の注意を必要とすることがわかった。すなわち,3本以上の渦静脈には決して障害を加えてはならない。

 2本に障害を加えると高率に硝子体混濁を起こし,1本の障害でも時に硝子体混濁を起こすことがあるのでこのことを頭において渦静脈を取り扱う必要がある。

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 透析患者7例8眼に白内障重術を行い次の結果を得た。

(1)8眼中7眼は術中術後何ら合併症の発生をみなかったが.1眼に術後創癒合不全,硝子体瞳孔ブロックによる続発性緑内障およびアセタゾラマイド蓄積によると思われる意識障害の発生をみた。

(2)術前および術後の透析の時期と白内障手術の合併症の発生は相関しないと思われた。

(3)術後視力は糖尿病性網膜症を有する2眼を除けば平均0.9の矯正視力を得た。

 透析患者に対する白内障手術は全身管理を第一を第一とし,良好なコントロールのもとに手術を行えば一般患者に対する白内障手術と同様安全な手術が行えると思われる。

GROUP DISCUSSION

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 今回も総説と,テーマをしぼった一般演題が15題発表された。

 総説として,北澤克明(東大)が緑内障のレーザー治療について述べた。

基本情報

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臨床眼科
37巻3号 (1983年3月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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