医薬ジャーナル 53巻7号 (2017年7月)

特集 糖尿病の最新治療と総合戦略~薬物療法を中心に~

  • 文献概要を表示

 国立国際医療研究センターと日本糖尿病学会が共同で取り組んでいる,新しい診療録直結型全国糖尿病データベース事業(Japan Diabetes compREhensive database project based on an Advanced electronic Medical record System:J-DREAMS)は,糖尿病大規模データベースの構築を主な目的としている。さらに,J-DREAMSの糖尿病標準診療テンプレートを用いた診療により,日本の糖尿病診療の質向上,診療の均てん化,各施設や全国の糖尿病患者の病態把握,合併症予防に有効な治療法の開発,薬剤による有害事象の把握などが可能になると考えられる。

  • 文献概要を表示

 メトホルミンに代表されるビグアナイド薬は,主にインスリン抵抗性を改善することにより血糖コントロールを改善させる経口血糖降下薬である。本薬は安価,体重増加をきたしにくい,心血管イベント抑制効果などの特徴から,現在,欧米諸国の治療ガイドラインでは第一選択薬に位置付けられている。また近年,その作用機序の解明が進み,血糖降下以外の抗動脈硬化,脂質改善,抗腫瘍,心保護に関する分岐基盤も明らかとなりつつある。本稿ではメトホルミンのエビデンス,多面的作用,適正使用を最新の知見も踏まえて紹介したい。

3.DPP-4阻害薬 矢部大介
  • 文献概要を表示

 DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬は,糖尿病薬の処方を受ける者の約7割,実に300万人以上に使用されている。非肥満かつ,インスリン分泌不全を特徴とする日本人では,他民族と比して治療効果が大きく,第一選択薬になる可能性がある。低血糖リスクが低く,体重を増加させない点から,使い勝手の良い糖尿病治療薬であるが,有効性を維持するには糖尿病治療の基本である食事・運動療法が他薬に比して,より重要となる。副 作用は限定的であるが,SU(スルホニル尿素)薬併用時の重症低血糖や急性膵炎,心不全など副作用に関する懸念に対して,引き続き慎重に観察する必要がある。上市後7年にして,今一度,安全性や有効性に関する知見を再認識して,日常の糖尿病診療に活用することが望まれる。

4.SGLT2阻害薬 関根理 , 前川聡
  • 文献概要を表示

 糖尿病状態では,近位尿細管でのSGLT2(sodium-glucose co-transporter 2)発現が亢進しており,グルコースの再吸収が亢進することから,高血糖を増強させている。SGLT2阻害薬は,近位尿細管でのSGLT2の働きを抑えることによりグルコースを尿糖として排泄させるという,従来の経口糖尿病治療薬とは異なった血糖降下作用をもたらす。SGLT2阻害薬は血糖のみならず,体重や血圧などの代謝面や循環動態面への改善効果も見られ,心血管や腎合併症への抑制効果も期待されている反面,さまざまな副作用なども懸念されている。  本稿ではSGLT2阻害薬における,これまでの糖尿病治療薬とは異なったユニークな作用などについて,最近発表された大規模臨床試験の結果や,診療上で考慮すべき点なども含めて概説する。

5.GLP-1受容体作動薬 大西由希子
  • 文献概要を表示

 GLP-1(glucagon-like peptide 1)受容体作動薬は,薬理的濃度のGLP-1作用で血糖および体重コントロールを改善する注射製剤である。DPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬より血糖降下作用が強く,体重減少が得られる場合もある。ただし,これはインスリン自己分泌能が残っている患者に使用するものであり,インスリン注射の代わりにはならない。副作用は,使用開始時に見られる悪心,嘔吐,下痢,便秘などの消化器症状だが,投与を少量より開始し,漸増することで副作用頻度を減らすことができる。1日1回投与のリラグルチドとリキシセナチド,1日2回投与のエキセナチド,週1回投与のデュラグルチドやエキセナチドlong-acting releaseなどの臨床成績や,使用上の注意を述べるとともに,現在開発中のGLP-1受容体作動薬についても紹介する。

  • 文献概要を表示

 近年,インクレチン関連薬やSGLT-2(sodium-glucose co-transporter 2)阻害薬,多くの配合剤が登場し,糖尿病治療の選択肢は大幅に広がっている。糖尿病治療ではHbA1cの低下のみならず,膵β細胞機能をより長期間温存することが,予後の観点からも重要な課題である。その点において,インスリン治療は最も効果的である。ここ数年,従来のインスリン製剤や頻回注射療法に加えて,Basal-supported-Oral therapy(BOT)の普及や新規のインスリン製剤・デバイスが開発され,より患者のニーズに沿ったインスリン療法の選択が可能となっている。本稿では,新規のインスリン製剤の紹介に加え,外来インスリン導入時の製剤選択について解説する。

  • 文献概要を表示

 心血管イベントの発症阻止を見据えた糖尿病治療においては,HbA1cに加えて,低血糖および食後高血糖を避け,血糖日内変動の平坦化された血糖管理が重要視されており,近年CGM(Continuous Glucose Monitoring)が糖尿病診療に活用されている。現在,臨床で使用されている7系統の経口血糖降下薬は,血糖日内変動の視点から「主に24時間の平均血糖値を低下させる薬剤(ビグアナイド薬,チアゾリジン薬,SU〔スルホニル尿素〕薬,SGLT2〔sodium-glucose co-transporter 2〕阻害薬)」,「主に血糖変動幅を縮小させる薬剤(α-GI〔α-グルコシダーゼ阻害薬〕,グリニド薬)」,両者の特性を備えた薬剤(DPP-4〔dipeptidyl peptidase-4〕阻害薬)に分類される。また,併用薬の組み合わせとしては,作用機序の異なった薬剤の併用という考え方に加え,各薬剤の血糖降下特性を念頭に置いて血糖降下特性の異なった薬剤の組み合わせを選択することが重要である。

  • 文献概要を表示

 糖尿病の抜本的な治療を目的として,膵β細胞の再生医療に期待が集まっている。再生のためのβ細胞のソースとしては,胚性幹細胞(ES細胞),人工多能性幹細胞(iPS細胞),内分泌前駆細胞,既存のβ細胞自身,β細胞以外の膵細胞(膵管細胞,膵外分泌細胞)などが研究に用いられている。最近,注目されているのは,膵臓の外分泌細胞(腺房細胞)を生体内でβ細胞に変えようとする研究である。また,膵臓の中でβ細胞を選択的に増殖させる因子の探求も行われている。本稿では,このような研究分野の進展を紹介する。

連載 薬剤師が知っておくべき 臓器別画像解析の基礎知識 79

  • 文献概要を表示

 子宮筋腫は生殖年齢の女性に見られる最も頻度の高い腫瘍である。子宮筋腫の治療方針決定には,患者の年齢や症状の有無・程度に加え,大きさ・発生部位・性状の把握が重要であり,それに対してmagnetic resonance imaging(MRI)が有用である。また子宮筋腫に対しては,外科的治療とともにgonadotropin releasing hormone(GnRH)アゴニストを用いたホルモン療法が有効であるが,骨粗鬆症など女性ホルモン低下に伴う副作用が問題となっており,新しいホルモン療法の確立に向けた研究がなされている。

  • 文献概要を表示

 経口がん分子標的治療薬であるゲフィチニブおよびエルロチニブなどの上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitors:TKI)の開発により,非小細胞肺がんの治療成績は飛躍的に向上した。一方,EGFRTKIの副作用である皮膚障害は高頻度に発現し,患者の生活の質を低下させることから,治療の継続には,皮膚障害マネジメントが重要である。そこで,九州大学病院では,皮膚障害マネジメントシステムを構築し,クリニカル・パスを導入した。これらの取り組みは,多職種連携による皮膚障害対策を可能とし,さらには皮膚障害の重篤化回避および治療の継続につながると考えられた。

連載 薬剤師による処方設計〈58〉

  • 文献概要を表示

 近年,経口抗がん薬が増加してきたこともあり,外来でのがん治療が増えている。経口抗がん薬の治療強度を担保するためには,服薬のサポート体制とアドヒアランスの確認が必要であり,薬剤師の果たすべき役割は大きい。がん研有明病院における薬剤師外来では,医師診察前の患者面談で服薬アドヒアランスの確認や副作用を把握し,必要に応じて抗がん薬の減量・休薬や支持療法薬の提案を行っている。

連載 患者のQOL向上と薬剤師の関わりPART II .服薬指導と病棟活動(117)

  • 文献概要を表示

 平成28年(2016年)度の診療報酬改定では,病棟薬剤業務実施加算2(1日につき80点)が新設された。集中治療病棟での病棟薬剤業務は,医療安全の視点からも経済的にも効果が高いと言われている。本稿では,二次救急の指定医療機関での集中治療病棟における薬剤師の取り組みを報告する。具体的には,① 定数配置薬の見直し,② 看護師向け勉強会の実施,③ カンファレンスへの参加,④ 薬剤管理指導業務,などである。また,集中治療領域での緊急入院や急な状態変化などについては24時間対応しなければならない。そこで担当者以外の薬剤師や他職種との連携体制についても紹介する。

連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック

  • 文献概要を表示

〔今月の注目論文のポイント〕 1.デンマークの医療情報データベース等を用いた症例対照研究が行われ,抗血栓薬による硬膜下血腫のリスクはビタミンK拮抗薬で大きく,クロピドグレルと直接作用型経口抗凝固薬では中程度,低用量アスピリンでは小さかったことが報告されている。 2.米国の民間健康保険のデータベースを用いた研究が行われ,ベンゾジアゼピン系薬の併用によりオピオイド過剰摂取による救急受診や入院のリスクが高かったことが報告されている。 3.スカンジナビア地方とフランスの医療情報データベースを用いた研究が行われ,妊娠中にノイラミニダーゼ阻害薬を使用した場合,新生児の有害アウトカムのリスクは上昇しなかったことが報告されている。 4.英国の医療情報データベースを用いた研究が行われ,レニン・アンジオテンシン系阻害薬開始後にクレアチニン値が軽度に上昇した場合でも,心・腎臓有害アウトカムのリスクが高かったことが報告されている。 5.閉経後健康女性を対象とした試験が行われ,ミラベグロンの併用によりトルテロジンのAUC(血中濃度-時間曲線下面積)が1.86倍と軽度に上昇し,CYP(チトクロムP450)2D6を介した相互作用が示唆されている。 6.健康成人を対象とした試験が行われ,フルボキサミンの併用によりアトモキセチンのAUCが1.20~1.48倍と軽度に上昇し,CYP2D6を介した相互作用が示唆されている。

連載 医薬品情報(DI)室より 注目の新薬情報〈18〉

  • 文献概要を表示

◆製剤の特徴  「ジャクスタピッド®カプセル5mg,同10mg,同20mg(ロミタピドメシル酸塩)」は,ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)に適応を有する希少疾病用医薬品である。ロミタピドは,小胞体内腔に存在するミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)に直接結合することにより,肝細胞および小腸上皮細胞内においてトリグリセリドとアポリポタンパク質Bを含むリポタンパク質の会合を阻害する。その結果,肝細胞における超低比重リポタンパク質(VLDL)の形成,および小腸細胞におけるカイロミクロンの形成を阻害する。VLDLの形成が阻害されるとVLDLの肝臓からの分泌が低下し,血漿中のLDLコレステロール(LDL-C)濃度が低下する。  HoFHは難病指定されており,平成26年(2014年)度には166名のHoFH患者が登録されている。従来の薬物療法あるいは近年発売された抗前駆タンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)モノクローナル抗体製剤を用いても,十分な効果が認められない症例も存在することから,本疾患の治療にはLDLアフェレーシスが推奨されている。しかしながら,LDLアフェレーシスは拘束時間が長く,患者負担が大きいことも指摘されており,本剤の登場によりHoFH患者の心血管イベントの抑制につながることが期待される。

連載 医薬ジャーナル 編集長VISITING(404)

カラー口絵

メディカルトレンド 学会・ニュース・トピックス

  • 文献概要を表示

 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は6月1日,都内で記者会見を開き,これまでの第一期(2013~ 2017年度)の事業成果を報告するとともに,2018年度から予定されている第二期(2018~ 2022年度)事業の目標を発表した。グローバルヘルス技術振興基金は,日本政府,国内製薬企業5社と,米国のビル&メリンダ・ゲイツ財団が共同で資金拠出し,開発途上国の医療問題解決を目指して2013年4月に設立された国際基金。100億円規模の拠出金をもとに,開発途上国の感染症制圧に向けた新薬やワクチン,診断薬等の研究開発に対して資金援助を行ってきた。官・企業・市民団体(財団)が共同で出資し,グローバルヘルスの開発に特化した援助を行う基金は世界初であり,参加企業・組織は2017年現在,国内39団体,海外49団体に上る。グローバルヘルス技術振興基金はこの4年間に,日本の創薬技術と知見を活用した61件の治療薬開発プロジェクトに投資し,非臨床試験候補製品12件,臨床試験候補製品6件の成果を収めており,うち2件は第III相試験に向けた準備が進んでいる。今後,2022年度までの5年間を想定している第二期に向けて,参加団体からは200億円以上の資金を確保済み。国際的な注目を集める同基金が,世界の保健医療の向上のためにさらなる貢献をすることが期待される。

メディカルトレンド・姉妹誌から

MONTHLY PRESS

糖尿病の最新治療と総合戦略~薬物療法を中心に~

  • 文献概要を表示

 SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬の高齢者市販後全例調査の結果によれば,高齢者へSGLT2阻害薬を使用する際,特に注意すべきことは,体液量減少(脱水)であると考えられる。この有害事象が高齢者に多い理由として,口喝中枢の低下,認知症などのADL(日常生活動作)の低下,頻尿などにより飲水が不十分な傾向があるためである。従って,高齢者へSGLT2阻害薬を投与する際の注意点として,①(症候性)脳梗塞の既往なし,② 老年症候群なし,③ 頻尿傾向(夜間1回まで)なし,の3点が重要であると思われる。SGLT2阻害薬の中でも尿量増加がほとんどないとされるルセオグリフロジンを高齢者糖尿病40例に投与し,高い安全性と有効性を示すことができた。今後,高齢者にSGLT2阻害薬を投与する際の薬剤選択にも,十分な注意を払う必要があると思われる。

リスクマネジメント~院内での薬剤師の活動~(116)

  • 文献概要を表示

 京都大学医学部附属病院では,2014年3月より術前検査と手術説明を集約し,医師および外来看護師の業務負担軽減と周術期の安全確保,患者満足度の向上を目的として術前外来を開始した。この術前外来では,クリニカルパスに則り看護師コーディネーターが術前検査の説明や検査オーダーなどを行うとともに,薬剤師が服用薬を確認し,診療科ごとに休薬が必要な薬剤の提案を行っている。休薬提案においては,単に抗血栓薬を鑑別するだけにとどまらず,診療科や術式の事情に応じた薬剤鑑別を行っており,手術における合併症の軽減に有益であると考えられる。今回,院内の術前の休薬指針の見直しを行った経緯と,術前外来における運用状況について報告する。

2017年8月号特集内容予告

基本情報

02874741.53.7.jpg
医薬ジャーナル
53巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

文献閲覧数ランキング(
10月11日~10月17日
)