医薬ジャーナル 53巻12号 (2017年12月)

特集 くすりの値段を考える

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 高額薬剤の上市によって,医療の分野でもオカネの話の考慮が不可欠となっている。しかし単に薬価や財政影響の議論だけでなく,オカネと効き目のバランスを見る費用対効果の評価がなければ,医薬品の価値を正しく評価することは難しい。  費用対効果の指標は,質調整生存年(QALY)をものさしとした増分費用効果比(ICER)で示されることが海外でも一般的である。ただし政策応用の方法は,給付の可否や価格調整など,さまざまな手法がある。どのような立場をとる国であれ,ICERの数値のみで画一的に政策決定をする国はなく,費用対効果以外の要素を考慮する総合的評価(アプレイザル)が重要になってくる。  国のみならず臨床医などの意思決定者も,コストの要素に注目する時代である。国からの要求の有無に関わらず,製品の価値を適切に示すために,費用対効果のデータは不可欠であろう。

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 新規医薬品や医療技術の発展は,生存年数が延長するなど多くのメリットがもたらされる一方で,これにより医療費が増加するといった側面がある。そこで,医薬品等の費用対効果の評価を行い,これに基づく合理的な意思決定が期待されている。  平成24年(2012年)度には,中央社会保険医療協議会の下に費用対効果評価専門部会が設置され,費用対効果の評価対象,評価手法,評価結果の活用方法などについて議論がなされ,平成28年(2016年)度からは加算や予測売上高などの一定条件を満たす医薬品・医療機器について,費用対効果評価の試行的導入が開始された。これらは平成30年(2018年)の診療報酬改定時に価格調整に用いられる予定である。また今後の費用対効果評価の制度化に向けて議論されているところである。

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 医療経済評価は,多くの国々において医療技術の保険償還の可否の判断や,ワクチンや健診等の予防技術の導入の判断等の政策決定に利用されている。本稿では,英国の評価組織である国立医療評価院(NICE)と,カナダの抗がん剤に関する評価組織である全カナダ抗がん剤レビュー(pCODR)について概説するとともに,わが国の試行的導入で評価対象となった薬剤の一つであるNivolumabを例として取り上げ,非小細胞肺がんを対象とした使用に関して,英国とカナダでどのような分析がなされ,どのような判断がなされたかを紹介する。

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 2016年よりわが国では費用対効果評価が試行的に導入された。中医協(中央社会保険医療協議会)のガイドラインでは,分析の立場は「公的医療の立場」を基本とする旨が明記されているが,企業の立場からは,患者を中心に考えることに基本的価値を置く必要があり,患者の利益に基づいて,患者と社会に対する医療技術の価値を評価することが肝要である。また,企業の課題として,内外の関係者と信頼関係を構築しつつ,一定の独立性を持って活動できる費用対効果評価の担当者の育成がある。企業は,医療現場への技術の導入後もより広義の医療技術評価を実施し,患者・医療関係者・医療費負担者および社会による意思決定と,最新の科学技術との整合性を高めていく必要がある。

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 2016年4月からわが国の医療政策に費用対効果評価が試行的導入されたが,実はわが国の医療政策における費用対効果評価の歴史はさらに古く,1992年に遡る。現在,本格導入に向けた議論が中央社会保険医療協議会(中医協)で急ピッチで進んでいるが,過去の歴史に学ぶことも多いと思われる。本稿では,1990年代の状況を振り返り,さらに現在の試行的導入の状況を鑑みつつ,本格導入に向けたいくつかの課題を考えたい。

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 本邦で長年にわたり続いている抗精神病薬の多剤大量併用療法は,副作用リスクだけでなく薬剤費の増加をもたらすといった問題がある。薬剤師は,抗精神病薬の適正使用の推進に貢献する必要があるが,その経済効果や健康アウトカムに関する評価が十分に実施されているとは言い難い。本稿では,精神科病棟薬剤業務を通じた抗精神病薬の単剤化により,健康アウトカムを獲得でき薬剤費削減が達成できることを,費用効用分析により評価した実例を紹介する。費用効用分析は,精神科病棟薬剤業務に必要とされている評価に応用でき,またさまざまな波及効果が期待されることから,その介入効果のアセスメントに適した方法と考えられる。

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 薬局薬剤師は,調剤薬の服薬指導後やOTC(Over The Counter)の販売時に患者より直接薬代を支払われることが多いため,「くすりの値段」には敏感である。調剤薬は院内処方より割高になり,さらに薬局間でも基本調剤料等の差があるため「くすりの値段」以外の差額について問題となることも多い。  また,ジェネリック医薬品(GE医薬品)の使用推進は,医療費削減という観点からも,薬局薬剤師の重要な責務である。さらに,このGE医薬品の使用推進においては,エビデンスと価格に基づいた適切な評価による薬剤の選択が必要となる。本稿では,以前に薬局で行った費用対効果評価の調査を中心に報告する。

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 薬剤師が中心になって行う社会的実験(フィールド研究)についての国内外の研究報告から,介入サービスの費用対効果評価をどのように行っているのかを事例としてまとめた。具体的には糖尿病患者への介入,抗凝固薬マネジメント,ブラウンバッグ運動など,地域医療で活躍する薬剤師の役割を評価した研究を取り上げた。その結果,以下の2点を学ぶことができた。  まず,サービス効果を臨床的な指標だけで示すことは困難であり,経済性や患者評価を加味することが大切である。また,単なる医療費の削減効果を示すだけでなく,効果と費用の両方から総合的に評価することが重要である。今後,このような研究を実施する際に,参考にして頂ければと思う。

連載 薬剤師が知っておくべき 臓器別画像解析の基礎知識 84

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 腎細胞癌は,淡明細胞癌と非淡明細胞癌に大別される。淡明細胞癌は造影CT(computed tomography)により早期に濃染され,速やかにwash outされる特徴がある。非淡明細胞癌は組織型により多少の違いはあるものの,概して造影効果は乏しいとされている。また,進行腎癌ではステージ診断を行うが,その際は周囲への浸潤だけでなく腫瘍塞栓の範囲,所属リンパ節や遠隔転移の評価が必要で,CTが有用である。

連載 リスクマネジメント~院内での薬剤師の活動~(121)

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 近年,集中治療室(ICU)における薬剤師業務の必要性,重要性はますます高くなっており,九州大学病院ICUにおいても専任の薬剤師を配置し,病棟業務を行っている。ICU担当薬剤師には医師や看護師からさまざまな相談が寄せられるが,その中でも頻度の高い相談は注射剤の配合変化についてである。これを踏まえ,我々はICUにおいて使用頻度の高い注射剤の配合変化早見表を作成し,看護師ならびに医師に提供するとともに,担当薬剤師の病棟業務にも活用している。配合変化早見表は,ICU担当薬剤師の業務効率改善に有用であるだけでなく,医師や看護師の注射薬に関するインシデントの回避にもつながり,医療安全の推進に貢献すると考えられる。本稿では,これらの取り組みについて紹介する。

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 薬剤耐性に対して国際的な行動計画の策定が求められる中,抗菌薬の適正使用は急速に進展している。旭川医科大学病院においては,これまでエコーガイド下の経皮的肝生検術時にセフェピムが用いられていた。病棟常駐薬剤師はその予防投与の妥当性を検討し,医師と協議を行った結果,必要性は低いという結論となった。そこで運用を変更し,変更後におけるエコーガイド下経皮的肝生検術後の感染発生について調査を行った。その結果,生検術が原因と考えられる感染については変更前と同様の0件で,発生は見られなかった。本報告では,薬剤師が薬学的観点から医師と協議した結果,基本的に抗菌薬は使用しないという運用となり,薬剤の適正使用が進んだと考えられた。

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 2012年度の診療報酬改定に伴い,病棟薬剤業務実施加算が新設され,病棟における薬剤師の役割の一つとして効果的で安全な薬物療法の支援拡充が求められている。病棟薬剤業務における疑義照会・処方提案等の介入は,薬物療法の適正化や安全確保の観点から重要であるとともに,介入事例の具体的情報を相互に共有することは,薬剤師個々のスキルアップやスタッフ教育にも役立つと考えられる。また,疑義照会や処方提案に至った原因を精査し分析することにより,処方ミス防止や他の症例への活用も可能となる。本稿では,疑義照会・処方提案内容のデータベース化と原因分析,薬剤部内ならびに院内スタッフ間での情報共有の取り組みについて紹介する。

連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック

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〔今月の注目論文のポイント〕 1.米国の病院単施設で行われた調査において,ニボルマブまたはペムブロリズマブを投与された患者のうち2.9%で,ミオパチー,神経障害,小脳性運動失調,網膜症,眼筋麻痺,頭痛といった神経学的合併症が認められたことが報告されている。 2.米国の病院単施設で行われた調査において,保護者からペニシリンアレルギーの申告があった小児のうち,約7割は真のペニシリンアレルギーではないと考えられる症状からペニシリンアレル健康成人を対象とした試験において,セレキシパグの活性代謝物の血漿中濃度はリファンピシン併用で低下,ゲムフィブロジル併用で上昇し,CYP(チトクロムP450)2C8を介した相互作用が示唆されている。 4.台湾の病院単施設で行われた調査において,プロトンポンプ阻害薬に関連した遅延型過敏反応の69症例が報告されており,構造的に異なるプロトンポンプ阻害薬では交差反応を示さなかったとされている。 5.米国の病院2施設で行われた調査において,スタチンによる推定有害反応を経験後にスタチンを再開した群では,再開しなかった群と比較して4年後の心血管イベントや全死因死亡のリスクが低かったことが報告されている。 6.スタチン服用患者でのエボロクマブの追加効果を検討したプラセボ対照比較試験のサブグループを対象とした試験で,19.4カ月の追跡期間における認知機能の変化はプラセボ群とエボロクマブ群で同程度であったことが報告されている。

連載 医薬品情報(DI)室より 注目の新薬情報〈23〉

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◆ 製剤の特徴  「デュオドーパ®配合経腸用液(レボドパ・カルビドパ水和物配合経腸用液:LCIG)」は,胃瘻造設により留置された空腸チューブを介して,専用の小型携帯型注入ポンプを用いる,新しい投与経路のパーキンソン病(PD)治療薬である。本剤は,レボドパの吸収部位である空腸に直接投与することで,胃内容物排出遅延による薬物吸収への影響を抑えられる。また,16時間持続投与することにより安定したレボドパ血中濃度を維持することで,既存の薬物療法で十分な効果が得られないPDの症状の日内変動(wearing-off現象)の改善が期待できる。現在,国内のみならず世界50カ国以上で承認・販売されている。

連載 医薬ジャーナル 編集長VISITING(409)

医薬ジャーナル論壇

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 昨今,三井不動産,神戸製鋼所,日産自動車といった,日本を代表する大企業が相次いで人命にも関わりかねない不正を行っていたことが報道されている。たとえ,重大な事故が起こっていないとしても,そこにプロフェッショナリズムは働いていなかったと言える。このことは,医療業界においても決して無縁ではない。大手薬局の不正請求や,高額な薬剤の中身をすり替えて販売するなど,国民の信頼を裏切る行為を見聞きする度に,薬剤師の将来を憂いているのは私だけではないと思う。日常業務に忙殺されながらも,患者やその家族と向き合い,何とかしたい,健康な生活を取り戻せるようにしてあげたいと必死に頑張っている薬剤師までもが,一括りにされ,同じような目で見られてしまうことを考えると,実に大きな損失である。

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2018年1月号特集内容予告

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医薬ジャーナル
53巻12号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

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