特集 くすりの値段を考える
1.薬の費用対効果とは?~やるリスクから,やらないリスクへ~
五十嵐中
1
1東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学寄付講座・特任准教授
pp.2645-2650
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201712057
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高額薬剤の上市によって,医療の分野でもオカネの話の考慮が不可欠となっている。しかし単に薬価や財政影響の議論だけでなく,オカネと効き目のバランスを見る費用対効果の評価がなければ,医薬品の価値を正しく評価することは難しい。 費用対効果の指標は,質調整生存年(QALY)をものさしとした増分費用効果比(ICER)で示されることが海外でも一般的である。ただし政策応用の方法は,給付の可否や価格調整など,さまざまな手法がある。どのような立場をとる国であれ,ICERの数値のみで画一的に政策決定をする国はなく,費用対効果以外の要素を考慮する総合的評価(アプレイザル)が重要になってくる。 国のみならず臨床医などの意思決定者も,コストの要素に注目する時代である。国からの要求の有無に関わらず,製品の価値を適切に示すために,費用対効果のデータは不可欠であろう。