医薬ジャーナル 51巻8号 (2015年8月)

特集 個別化医療とコンパニオン診断薬を取り巻く現状と問題点

  • 文献概要を表示

 本稿においては,この特集の企画に至った背景・経緯を紹介する。すなわち,近年の分子標的治療薬の開発を背景に,政策的にも個別化医療,オーダーメイド・ゲノム医療の推進が掲げられ,分子標的薬の治療の開発に拍車がかかると予測される。一方でPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)は,各ステークホルダーと意見交換をしながら開発の現実的な課題への対応を進めてきた。本特集においては,各執筆者の視点からこれまでの議論をまとめて頂くとともに,今後の検討課題について改めて提起頂いたものである。本特集が,この分野のさらなる進展に貢献できれば幸いである。

  • 文献概要を表示

 日本では,コンパニオン診断薬の定義等について記載した通知や,コンパニオン診断薬を利用した臨床試験デザインの留意点等を記載した技術的ガイダンスが2013年に発出されている。また,医薬品の添付文書では対応するコンパニオン診断薬の情報が記載されるなど,米国と調和した規制の内容になっている。  しかし,2014年に開催されたPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)ワークショップでも議論されたように,個別化医療の急速な進展に伴い,マルチプレックス診断や後発品としてのコンパニオン診断薬に対して,どのような規制が適切なのかという新たな課題にも直面している。そのためには,欧米の動向にも注視しながら,日本の医療環境および法制度に適応しやすいような日本独自の規制の在り方についても検討していく必要がある。

  • 文献概要を表示

 「コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について」(以下,技術的ガイドライン)に示されているように,個別化医療の推進のためには,特定の医薬品に対して有効な適応患者の適切な選択,特定の医薬品に対して適正な使用を判断する等に資するコンパニオン診断薬(CDx)が重要となる。技術的ガイドライン発出後,承認されたCDxは増えつつあるが,CDxに関して検討すべき課題は多くあるのが実状である。  本稿では体外診断用医薬品に係る通知や技術的ガイドライン等を踏まえ,体外診断用医薬品の観点から,CDxの開発や審査における評価における考え方,留意点等を紹介する。

  • 文献概要を表示

 コンパニオン診断(CoDx)は,治療の有効性や安全性の予測に欠かせない手段の一つとなっており,これに用いる体外診断用医薬品(IVD)や医療機器は,近年コンパニオン診断薬と呼ばれるようになった。コンパニオン診断の対象疾患は多岐にわたるが,がん領域,とりわけ固形がんにおいて最も実用化が進んでおり,それ故がん組織や細胞の診断業務を行う病理診断との関わりは極めて深い。  本稿では,病理におけるコンパニオン診断の現状を概説するとともに,その検査精度や使用する検体の品質管理における課題や,今後のコンパニオン診断薬開発における諸問題について,病理の視点から言及する

  • 文献概要を表示

 分子標的治療薬を中心とするがん新薬開発において,コンパニオン診断薬開発は極めて重要である。しかし,わが国においては検査の質保証に関する規制面での基盤整備が十分ではなく,開発を進める上での支障となっている。一方,急速なゲノム解析技術の進歩により包括的なゲノム診断パネルが開発され,がん新薬開発治験の形態も大きく変貌している。従来の1対1対応のコンパニオン診断薬とは異なる開発手法となっており,規制面での世界的な議論が進んでいる。わが国においても検査コストや保険償還問題を含めて,その対応が急務である。

  • 文献概要を表示

 がんの分子メカニズムがこの10~ 20年で飛躍的に解明され,多くの分子標的治療薬が開発されるきっかけとなった。分子標的治療薬の開発には,バイオマーカーやコンパニオン診断薬の同時開発が不可欠であるが,新薬を開発している製薬会社にとってコンパニオン診断薬の同時開発は,時に厄介な問題となる。ここでは医薬品開発企業の立場から,今後のコンパニオン診断薬の開発動向を踏まえ,現在日本が抱えている課題について述べる。

  • 文献概要を表示

Summary

 コンパニオン診断薬および関連する医薬品の同時開発・同時申請の初期段階では見られなかった,医薬とコンパニオン診断薬の組み合わせにおいて複雑な事例が生じている。  本稿では,複数の製薬メーカーが,1種類の標的分子に対して医薬とコンパニオン診断薬の組み合わせの開発を個別に進行させた場合に生じる,コンパニオン診断薬間の臨床的性能における差の問題について論じる。また,後発のコンパニオン診断薬の承認要件の課題についても,問題提起する。さらにコンパニオン診断薬を,より柔軟で効果的に層別化医療へ貢献させるために,Investigational Use Only(IUO)検査薬の活用についても提言したい。

  • 文献概要を表示

 ゲノム試料を臨床試験において適切に収集することは,新薬の研究・開発におけるゲノム薬理学を利用した臨床試験の実施のための前提条件である。しかしながら,臨床試験を実施する国や地域,施設によって,ゲノム試料の収集方法を含む取り扱いにばらつきがあることが知られており,グローバル化が進展する近年の医薬品開発において,ゲノム薬理学を利用した臨床試験を実施する際の障壁となる可能性を指摘する報告がある。

 本稿では,臨床試験におけるゲノム試料の収集方法を含む取り扱いを検討する際に資する,「将来の利用に向けたゲノム試料の収集方法(Genomic Sampling Methodologies for Future Use)」に関する技術的指針を作成することを目的とした,日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)E18専門家作業部会の最新の活動状況を紹介したい。

連載 薬剤師が知っておくべき臓器別画像解析の基礎知識 56

連載 リスクマネジメント~院内での薬剤師の活動~(99)

  • 文献概要を表示

 今回,鈴鹿回生病院薬剤管理課では,調剤ミスの詳細を収集・把握できるマニュアルを作成した。緊急性のある調剤ミスについては,ミーティングにて薬剤管理課内職員に周知させるとともに,月ごとに集計したデータを当事者に通知した。また,調剤ミスを注射薬,内服薬に分類し,各マニュアル改訂担当者へ情報をフィードバックし,同じミスを繰り返さないよう対策をとった。だが,ヒヤリ・ハット事例の報告件数に大きな変化は見られず,まだまだ対策は不十分であると考えられた。その一方で,職員にアンケート調査を行ったところ,医療安全に対する意識は確実に高まっていることが判明した。  今後もマニュアルの改訂やヒヤリ・ハット事例防止のための対策をとることで,医療安全の確保に貢献していく必要がある。

連載 クリニカル・パスと薬剤師(57) 計画と実践のノウ・ハウ

  • 文献概要を表示

 徳山中央病院(以下,当院)で周術期に使用している抗菌薬の種類と使用期間が,妥当であるか否かを薬剤師の観点で検討した。抗菌薬を不適切に使用しているパスには修正を促し,当院における医療の標準化の一助とした。ガイドラインと比較した結果,周術期に抗菌薬を使用しているパス72件のうち,27件が長期投与に当たることが判明した。これらを各科医師,当院パス委員に提示し,検討を促した結果,多くのパスで抗菌薬の使用期間は短縮された。抗菌薬の投与期間短縮に繋がった今回の活動は,当院の医療の標準化の足掛かりになったと考える。

  • 文献概要を表示

 高知医療センター(以下,当院)は,全国初の県,市の統合病院として2015年3月で開院10周年を迎えた。病床数は660床,薬剤師は25人であり,薬剤局では,開院時から,全フロア(1フロア2病棟)に病棟担当薬剤師を配置し,「見える臨床薬剤師をめざして,より信頼され,より親しまれる薬学ケアサービスを実践する」との理念の下,病棟業務を行ってきた。  整形外科領域では,化膿性骨髄炎,化膿性関節炎,骨・関節のインプラント感染などのMRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)感染症や結核性脊椎炎に対して,良好な骨移行性と抗バイオフィルム効果を有することから,リファンピシンが使用される。MRSA感染症治療ガイドライン1)にはリファンピシン,スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤に対するMRSAの感受性は良好であり,リファンピシン,ミノマイシン,クリンダマイシンは骨への移行性が良いので,抗MRSA薬と感受性のあるこれらの抗菌薬を併用するとよいとの意見がある,と記載されている。一方,リファンピシンは,チトクロムP450(主にCYP3A4)をはじめとする肝薬物代謝酵素,P糖蛋白を誘導する作用がある。Ohno2)によると,酵素誘導作用は他の酵素誘導薬剤と比較して最も強力と言われている。(図1)。そのためリファンピシンは多くの薬剤と薬物相互作用を有することから,併用薬剤との相互作用による有害事象に注意が必要である。  今回,当院整形外科病棟においてリファンピシンが投与された患者の併用薬剤について調査し,薬剤管理指導時に薬物相互作用発現のため薬学的介入を要した症例について紹介する。

  • 文献概要を表示

 がん化学療法の際,しばしば発生する口内炎は,疼痛による苦痛から摂食障害などのQOL(quality of life)低下を引き起こす場合があるため,その予防が重要となる。口内炎予防に活性酸素の発生を抑制する目的で,院内製剤であるメシル酸カモスタット含嗽液の使用が報告されているが,その有効性を検討した報告は少ない。また,本剤は増粘剤であるカルメロースナトリウム(CMC-Na)や矯味剤である単シロップを含むため,保存条件によっては微生物汚染がしばしば問題となる。尾道総合病院では,S-1(テガフール+ギメラシル+オテラシルカリウム配合剤)服用患者の口内炎予防に院内製剤として「フオイパン含嗽液」を使用する場合があり,その有効性並びに微生物汚染を調査した。その結果,微生物汚染は陰性であったが,「フオイパン含嗽液」の有効性は見られなかった。

連載 患者のQOL向上と薬剤師の関わりPART II .服薬指導と病棟活動(96)

  • 文献概要を表示

 がん患者に見られる突出痛に対応するには,患者が痛みの発生後,直ちにレスキュー薬を使用できる状況にすることが重要である。  秀和総合病院では,突出痛があった際に痛みを我慢している事例や,痛みが発生したタイミングでレスキュー薬を服用できていない事例が発生していた。さらに,ROO(Rapid-onset opioid)製剤が採用となり,効果を最大限に発揮させるためにも,自己管理の環境整備が必要となった。  今回,医療用麻薬服用患者において,レスキュー薬のみではあるが自己管理を開始したので,その取り組みについて紹介する。

連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック

  • 文献概要を表示

〔今月の注目論文のポイント〕 1.カペシタビンを投与された直腸癌術後患者において,医療者による助言や指導を無視した過剰なコンプライアンスにより,手足症候群が悪化した症例が報告されている。 2.健康成人を対象とした試験において,ホスアンプレナビル/リトナビルの併用によりオランザピンの血漿中濃度が低下し,CYP(チトクロムP450)1A2の誘導による相互作用の可能性が示唆されている。 3.フルボキサミンを服用していた若年患者において,眼内レンズ移植を要する白内障を呈した症例が報告されている。 4.無作為化比較試験のメタアナリシスにおいて,オンダンセトロン併用でトラマドールの累積投与量が増加したことから,トラマドールの鎮痛効果を減弱させる可能性が示唆されている。 5.ドイツでの観察研究において,薬物有害反応による入院のうち約4%がセルフメディケーション(一般用医薬品および過去処方薬の自己判断使用)によるものであったことが報告されている。 6.カペシタビンとワルファリンが投与された肝移植後患者において肝機能悪化を認めた症例が報告され,両薬の相互作用による肝障害の可能性が指摘されている。

医薬ジャーナル論壇

健康へのいばらの道 佐々木均
  • 文献概要を表示

 病気の予防や治療には食生活が重要である。しかし,昨今の日本の食糧事情や摂食行動は,異常に見える。豊かな食生活を維持するため,多量の食糧を輸入しては食べきれず廃棄している。病気の治療に用いる医薬品までが,使われずに多量に残っていることも明らかになった。こうした状況の中,健康食品の産業活性化として機能性表示食品制度が始まった。サプリメントの活用が世界で先行する米国では,巨大市場を作ることに成功したが,低品質や副作用・死亡事故などの問題により,消費者からの批判が相次いでいる。結局,健康に楽な道はない,正しい知識を身につけ,自分の欲望を把握し,病気の予防と治療に真面目に取り組むしかない。

  • 文献概要を表示

 第37回日本中毒学会総会・学術集会が7月17~18日,和歌山市内の和歌山県民文化会館で開催された。大会テーマは「今まさに正しい中毒医療が求められている~紀の国からの発信~」,大会長は日本赤十字社和歌山医療センター高度救命救急センター長・千代孝夫氏。中毒領域は,救急医学の中では重要な分野であり,特に近年では危険ドラッグといった新たな薬物の登場で,中毒の起因物質は毎年増加・多様化している。危険ドラッグについては,2014年6月に東京池袋で危険ドラッグ使用者による交通事故によって死傷者が出たことをきっかけに,社会的関心も高まったため,法規制や警察による摘発も厳格化された。それにより,救急搬送される危険ドラッグ使用者も減少傾向にあると言われるが,一方で常用化の進展や,製品流通の国際化といった新たな課題も浮き彫りになっている。総会では,シンポジウム「危険ドラッグ~その現況と対策~」が開催され,危険ドラッグ使用者を受け入れた救命救急センターの事例報告や,蔓延防止に向けた取り組みについて,関係者の間で活発に討議された。

▲メディカルトレンド・姉妹誌から

MONTHLY PRESS

  • 文献概要を表示

 小児における食物アレルギーの有病率は5?10%と報告され,患児およびその家族はアレルゲン混入への不安や,予期せぬ誘発症状による恐怖を感じながら生活していることも多く,生活の質は低下している。現在のところ食物アレルギーの治療薬は存在しないが,アレルゲン食品を計画的に少量ずつ摂取して,積極的に耐性獲得を目指す経口免疫療法が試みられるようになり,その有用性が報告されている。この治療は研究段階であるため一般診療とはなっていないが,全国約50の施設で臨床研究として実施されている。  今回は,島根大学医学部附属病院での経口免疫療法の方法や治療状況,そして薬剤師の治療への関わり,吸入薬やアドレナリン自己注射薬の理解度の調査結果を紹介する。

医薬ジャーナル 編集長VISITING(381)

2015年9月号特集内容予告

基本情報

02874741.51.8.jpg
医薬ジャーナル
51巻8号 (2015年8月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

文献閲覧数ランキング(
12月2日~12月8日
)