特集2 心臓性浮腫とトルバプタン ~入院早期の体液管理における役割~
5.トルバプタンの水の引き方:臓器うっ血の観点から
安村良男
1
1独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター循環器内科・科長
pp.128-132
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201401128
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生体内の水分は約15%が高圧系の動脈に,約85%が低圧系の静脈に分布している。頸動脈洞や大動脈弓にある高圧系の圧受容体(伸展受容体)により心拍出量が感知され,低心拍出量の場合は動脈系の容量は減少しても,静脈系やサードスペースに貯留することにより体内総水分量は増加し得る。(arterial underfilling)1)。通常,静脈系の容量が増加すると,低圧系の受容体によりその増加が感知され,腎臓でのナトリウムや水分の排出が促進される。しかし,心不全ではこのシステムが障害されており,ナトリウムや水分はますま す貯留するという悪循環が形成されている 2)。心拍出量が比較的保たれた拡張不全における腎臓でのナトリウムや水分の貯留のメカニズムは十分説明されてはいない 3)。浮腫を伴 う心不全では,循環血液量は増加し,増加した水分は血管内の増加のみならず血管外にあふれ出し,間質や細胞内を占拠している。増加した水分はいわゆる塩水(塩分と水から構成される)のみではない。自由水も増えている。従来のナトリウム排泄型利尿薬ではできなかった自由水中心の除水がトルバプタンで可能となった。血行動態ガイド下に行ってきた心不全治療において除水は基本ではあるが,同時に臓器うっ血の改善に目を向けた治療が必要となってきている。