連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・7
医学系研究の進め方―『アルジャーノンに花束を』
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科
pp.582-583
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201284
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作品紹介
今回は『アルジャーノンに花束を』(ダヴィッド・デルリュー監督、2006年、仏・スイス)を紹介します。原作はダニエル・キイスが1959年に発表した、時代をこえて読み継がれている傑作同名小説です。主人公シャルルは30歳代の男性で、知的障害があり、近くの学校で清掃係として働いていました。小さい頃に知的障害者の施設に預けられ、現在はひとり暮らしです。自宅から職場へも毎日地図を見ないとたどり着けません。自分の名前も書けません。本人にはわかりませんが、学校の生徒にもバカにされています。
ある日、シャルルは親代わりである職場の校長の薦めで、知的機能を改善する薬物を開発するための臨床研究への参加について、説明を受けることになりました。この薬物は、先行する動物実験でネズミのアルジャーノンに投与され、その知的機能を飛躍的に向上させていました。シャルルはヒト被験者の第一号として、実験薬を使用する候補になったのです。彼は説明された内容をほとんど理解できませんでしたが、自分の頭が良くなったら母親が喜ぶと思い、またお守りがあるから悪いことは起きないと信じ、「頭が良くなったらいいな」という一心で参加を望みました。そして、校長の代理承諾によって実験に参加します。
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