看護教育 60巻2号 (2019年2月)

特集 —指定規則改正前の今こそ!—未来をみすえたカリキュラムを考える

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現在、第5回 保健師助産師看護師学校養成所指定規則改正に向け、看護基礎教育検討会が進行しており、多くの看護教員の関心を集めています。

もちろん、今後の看護基礎教育において、そこで決定された指定規則が重要な意味をもつことは言うまでもないですが、本来、カリキュラムは、トップダウンで提示されたものに準じるだけではなく、地域の特性や医療、社会の状況を勘案し、現場の看護教員自らが、課題を解決し、カリキュラムを評価し、また改正していくことが大切だといえるでしょう。

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 12月20日現在、看護基礎教育検討会が第6回まで開催されました。同検討会構成員であり、看護師ワーキンググループ座長を務められている山田雅子先生と、同じく構成員で、日本看護学校協議会会長の池西静江先生に、今後の看護基礎教育での課題についてお話いただきました。

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社会の変化とカリキュラム

教育は10年後、20年後に活躍する人材を育成する

 2025年、さらにその先の日本は、人口、なかでも、生産年齢人口の減少、出生数の減少にも歯止めがかからない一方、老年人口割合は増加する。人生100年時代を迎え、一人暮らしの高齢者の激増、認知症高齢者は5人に1人と予測される社会である。誰が人々の生活を支えるのか、誰が社会を支えるのか、大きく変化する社会を今、私たちは正しく認識しなくてはならない。同時に、これからの社会は、市町村レベルの「地域」が主体になる。高齢化率や健康問題、産業、交通事情、そして、そこで働く専門職者にも地域格差がある。そこに住む人々の文化的背景や価値観などにも違いがある。そのなかで、人々の生命と生活をどう支えていくか、その対策は「地域」により違って当然である。

 これまで、多くの看護学校・養成所では、保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下指定規則)に定める7領域からなる看護学〈基礎看護学、発達段階別看護学(母性、小児、成人、老年)、精神看護学、在宅看護論〉を画一的に取り入れ、運営してきた。しかし、これからの時代をみすえ、地域のニーズに応える看護師養成をめざすとき、画一的ではなく、地域のニーズ、学校・養成所の教育理念を反映した特徴あるカリキュラムの柔軟な開発、運営が必要である。

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領域横断科目の設定理由

 (専)京都中央看護保健大学校(以下、本校)は住民の健康を守り、保健・医療・福祉の向上を図るため、地域医療、救急医療の整備拡充と、これに伴う医療の高度化、多様化に即応できる高度な技術、豊かな教養と人格を備えた看護師の育成を主旨とし設立された。京都府内の医療を担う団体として行政や医療・介護・福祉の関係機関との密接な連携を図りつつ、良質で安心・安全な医療に資するための取り組みを積極的に行い、府内の病院が府民の方々の生命と健康を守る使命を十分に果たせるように努め、その一員となる看護師を養成することが使命である。

 2012年、3年課程で修業年限4年の教育をする看護学科を設立し、看護師教育として指定規則にある97単位を124単位3,658時間とし、高度専門士として社会のニーズに応えるため、より看護実践能力の向上を目指したカリキュラムを構築した。

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これからをみすえた看護学科のカリキュラム

 本校は、1993(平成5)年、鹿児島の地域医療を担う看護師の養成を目的として開校した。その後、①広く地域を視野に入れ、地域に貢献できる能力、②自ら状況を判断し、主体的に活動できる能力、そして、③確実な看護実践能力を育成するために、看護師教育の充実を図りたいと考え、2015(平成27)年から看護師3年課程、修業年限4年への課程変更を行い、これからの保健・医療・福祉の担い手として、活躍できる人材育成をめざして、その目標の実現に取り組みたいと考えた。

 そのため、看護師教育課程を修業年限4年間で、基礎分野の充実、地域社会のニーズをふまえ、主体的な判断のできる人材育成をめざす「しまの看護実習」、健康水準に応じた看護の実践能力を強化する領域横断科目の設定、主体性を育む教育方法などを積極的に取り入れ、より深い人間理解と確実な看護実践能力を育成し、社会に求められる看護専門職者の育成をめざしている。

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 本稿に目を止めた方は、気になっているが手がつけられないままのカリキュラムのこと、あるいは行ってきたカリキュラム開発があれでよかったのかと過去をふりかえる思いでおられるかもしれない。そんな読者を想定しながら、ここでは、カリキュラムの基本的な考え方、学習者中心のカリキュラム開発の意義、カリキュラム評価のプロセスの概要、について述べさせていただく。

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訪問看護師に教わったこと

—今、医療全体で地域包括ケアが進められ、看護教育でも、地域で活躍できる看護師の育成が課題となっています。ちょうどこのタイミングで、村上靖彦先生が訪問看護師さんの実践や語りを見つめられた『在宅無限大』が刊行されました。

 本書では、現場での実践や語りをふんだんにご紹介されながら、村上先生の考察で、現場を語るうえでのたくさんの新しい定義や概念が示されていますね。

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はじめに

 一般に、書くことと読むことは別々のように思われています。ところが、両者は表裏一体なのです。たとえば、自分で何かを書いてみる。すると、当然のことながら、今書いたものは即読む対象になっています。レポートや論文を書く場合も、書きっ放しで、一度も推敲せずに提出することはまずありません。自分で書いたものを最低でも数回読み直し、書き直すでしょう。このように、何かを書き上げるまでのプロセスを振り返ってみるなら、書くと言う行為のほとんどは読み返す行為からなっていることがわかります。ですから、書くことと読むことを切り離して考えることはできません。

 このように読み書きを繰り返し、最終的に書かれてものをより質の高いものにするために必要なのが「論理的に考える」という行為です。これ以降、論理的考えるために必要な道具について順にお話をします。その話には読者の皆さんに覚えていただきたい次の用語が含まれています。それらは、論理、論証、主張、根拠、論拠、導出、仮定です。これらの用語の意味を理解し、その使い方を身につければ、論理的に書いたり、読んだりすることの基礎ができ上がります。

 なお、これからお話しする内容の詳細は『看護学生が身につけたい論理的に書く、読むスキル』(医学書院、2018)でふれています。より理解を深めるために、あらためてお読みいただければ幸いです。

連載 障害や病いとともに学ぶ、働く・1【新連載】

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連載を始める前の思い

 本誌の担当者から「障害や疾患のある看護有資格者としての経験を文章に書かないか」と本企画のお話をいただいた際、正直それをお引き受けするかどうかとても迷った。自分の障害や疾患について文章を書き、それが不特定多数の人の目にふれることは、人から過度なアピールと思われて煙たがられることがあるのではないか、いろいろなことを言われるのではないか、そういう思いが頭をよぎったからである。要は周囲からの目が気になったわけだ。また、自分の障害や疾患について書くことは、多少なりとも自分と向き合うことになるため、それも果たして大丈夫かしら……と、少し心配した。

 さらに、自分の障害や疾患に関して書くことは、多かれ少なかれ周囲の人とのかかわりについてふれることになる。そのため、私がその経験を綴ることは、その時々でかかわった人や、現在一緒に働いている人など、周囲の人々への影響があるかもしれないと思われた。万が一、自分の周囲に対してネガティブな影響がもたらされるような結果を招いてしまったらどうするか、その可能性があるなら辞退すべきではないか、そういう思いも迷いに含まれていた。しかし、この文章が読者の目にふれているから自明のことであるが、あれこれ思いを巡らせた末、私はこの原稿執筆をお引き受けしている。

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・14

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 脳と聞けばシワだらけのかたまりが思い浮かびますが、そこに脳幹はほとんど見えていません。脳をキノコにたとえると脳幹は中心部の“柄”に相当します。脳幹は先端から順に、中脳、橋、延髄の部位に分けられ、脊髄へと移行します。脳幹は目立たないけれども、意識、呼吸、循環など生命維持に必要な機能を担う最重要な部位です。また、脳神経と呼ばれる重要な末梢神経のほとんどが脳幹から出入りします。

 造形では、まず上が左右に幅広の円柱を作り、前後の正中に溝を引きます。下半分では溝の左右にも溝を加えます(①)。この6本の溝は脊柱にもあるものです。後ろの真ん中に菱形の窪みを作り、これが第4脳室となります。前の真ん中に横向きの太い柱を巻きつけ、橋(きょう)を作ります(②)。橋より上が中脳で、下が延髄です。中脳の後面に玉を4つ押しつけて四丘体とし、上丘から鉢巻のように視索を前方へとぐるりと回しましょう。

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・2

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作品紹介

 今回は『シェイプ・オブ・ウォーター』(ギレルモ・デル・トロ監督、2017年、米)です。第90回アカデミー賞4部門を受賞した傑作です。舞台は米国バルティモア、時は1962年。米国とソビエト連邦が熾烈な宇宙開発競争を行っていた時代でした。幼年期に受けた虐待のため唖になったイライザは極秘の航空宇宙研究センターで清掃員として働いています。同僚のアフリカ系アメリカ人ゼルダと隣人の売れない画家で性的マイノリティのジャイルズが彼女の友人でした。ある日、同研究所にアマゾンの奥地で神と崇められていたという半魚人のような生物(以下、「半魚人」または「彼」と呼びます)が研究のために運ばれてきました。イライザは彼と心を通わせるようになり、お互いに愛情を抱くようになりました。しかし軍幹部らは彼の呼吸法の秘密を知るために生体解剖することを決定し、ソ連のスパイで研究者として研究所に潜り込んでいたホフステトラー博士は、上司から彼の毒殺を命じられます。愛する半魚人を救うために、イライザは友人らの助けを借りて、彼を救出しようとするのでした。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・02

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本連載では、米国を中心に広まりつつある「コンセプトにもとづいた学習活動」を導入する試みとして、事例を作成しています。事例提供は、熟達した実践経験をもつ看護師です。学習するコンセプトを表現するために、典型的な疾患や病態を示す患者の状況を選択し、「看護師ならこう考える」という視点で学ぶことができるように解説しています。質問項目は「卒業年度の看護学生や新人看護師が、知っているとよいと思う程度の難易度」に設定しました。基礎教育では、既存の知識を臨床で活用するための課題や自己学習に活用できると思います。読者のみなさまからの感想や意見を寄せていただけたら幸いです。

奥裕美(聖路加国際大学)

※詳細は小誌59巻12号参照

連載 NとEとLGBTQ・11

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 LGBTQの社会保障制度が整備されている米国では、LGBTQフレンドリーな街として知られるサンフランシスコ市などでも、都心部の地価高騰、家賃沸騰により、若者やLGBTQ、特に子どもをもつレズビアン・ファミリーなどが郊外に転出する傾向がみられます。米国ではLGBTも生殖補助医療や養子縁組によって子をもつことができ、実子も養子も含めた次世代の育成の任を負っています。そこで郊外の市は活力ある人口を流入させようと、LGBTQ政策を充実させています。一方都心部は地価高騰前に自宅を購入・相続した人や富裕層が多くなり、地域は高齢化しています。長年差別と闘い権利獲得に貢献してきた世代が、住み慣れた街で尊厳ある最後をどう迎えるかが、LGBTQコミュニティの課題になっているように見えます。少子高齢社会では、子育てや高齢者のサポートに関する公助・共助・自助のバランスが重要であり、このことはSOGIの多様な人にとっても同様です。

 しかし日本では、LGBTQの生活を保障する制度がないうえに、SOGI(性的指向・性自認)の多様性はまだ「生活の話」として地域社会のテーマになることも少なく、共助の基盤は整っていません。LGBTQ家族にとって、いざというときの備えは自助しかない現状です。世界的潮流と比べると、たとえば同性パートナー関係を保障する政策がまったくないのは、先進国では日本、ロシア、中国のみです。2018年は同性パートナーシップ認証を自治体に求める一斉請願が多くの自治体に対して起こりました。日本のLGBTQ家族の課題解決には、政治が動かなければどうしようもない局面に来ている、といってもよいでしょう1)

連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・10

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 本連載は、ベナー看護論を、そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目指しており、そのため、まずもってベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点を明らかにすることに取り組みました。そして前回までに、「身体化した知性」「背景的意味」「気づかい/関心」「状況」「時間性」という5つの視点すべてについて解説し、現象学的人間観にもとづいてこの書物で展開されている看護理論のいくつかの特徴についても考察しました。

 ベナーらによれば、人間は、さまざまな「身体化した知性」の能力—反応したり学習したりする生まれながらの身体的能力や、誕生後に文化的・社会的に身につけられる姿勢、身振り、日常的な道具使用、専門的な熟練技能などの能力—を具え、また自らが帰属する種々の文化や家族からさまざまな「背景的意味」を与えられ、それを当たり前のものとして身につけている、過去からの時間の厚みを具えた存在でした。また、人はつねにそのつど未来に向けて何らかの物事が大事に思われてそれを気づかい、その関心事に巻き込まれつつ、たとえば看護師として、看護教員として、子をもつ親として世界にかかわっていく、「気づかい/関心」という在り方をした存在であり、そのため現実世界のさまざまな関係性に巻き込まれつつかかわり、そうした関係性へのかかわりを自己にとっての意味という観点から「状況」として、感情をともなった仕方で直接的に経験するのでした。

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はじめに

 前回は、ティーチング・ポートフォリオ(TP)の第2稿の作成でした。メンタリング(作成者=メンティーと作成支援者=メンターの1対1の対話)によって初稿をさらに深める過程を追い、メンタリングによって深められた理念を方針および方法と結びつけつつ、全体を整えて書き進めた第2稿は、TPとしての形になってきました。

 今回は、提出された第2稿をもとに、第3稿を作成します。今回も、TP作成のワークショップのプロセスにのっとり、3回目のメンタリングを事例として紹介します。

 第3稿は、今回のこの連載におけるTPの「完成」です。ただし、TPは更新を重ねていくもので完成することはないため、「 」でくくった暫定的な「完成」です。

今回の目標

・第3稿のゴールを説明できる

・第3稿を作成するためのメンタリングを追体験し

・TP全体の質を高める

・メンターの問いかけの観点を知る

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目次

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 本書のタイトルに「看護学生が身につけたい」とあるが、私は看護教員にもこの本を読んでいただきたいと思う。その理由は、看護教員自身が論理的に読み書きすることを学んでいないという現状があることと、本書には論理的に読み書きするための思考の道具がわかりやすく書かれていることの2点である。

 私は専任教員養成講習会の運営を担当するなかで、受講生である看護教員から「論理的に書くことを学習したことがないので自信がない」という話をよく耳にした。また、「自分の考えが相手に伝わらないが、どこに問題があるのかわからない」「接続詞をどのように使ったらいいのか」といった悩みを聞くことも多かった。このように、書くことに苦手意識をもっている看護教員は多いのではないだろうか。実際、看護教員が論理的に書くことを学ぶ機会は少ないし、おそらく「論理的に書く」ことができると自信をもって言える看護教員は多くないであろう。

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新刊紹介

基本情報

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看護教育
60巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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