特集1 看護学生の論文 入選エッセイ・論文の発表
論文部門
死を迎える老年患者の家族への看護―悔いのない看取りに向けてのナラティヴケア
秋山 真理
1,2
1兵庫県立厚生専門学院看護学科第1部
2市立池田市民病院
pp.678-680
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100344
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はじめに
長年一緒に過ごしてきた人が亡くなるとき,家族は大きな喪失感や無力感を感じる。この感情は患者が亡くなった後も続くが,最期の看取りが十分でなかった場合は悲しみや精神的苦痛を長びかせ,その後の生活に影響を及ぼす恐れがある。そのため,ターミナルケアにおいては悔いのない看取りが重要である。看護師としては,ターミナル期にある人とその家族の残された時間がより豊かに過ごせるように配慮し,その人らしい最期が迎えられるように援助することが大切である。
私は死を迎える患者の家族において,悔いのない看取りに臨んでナラティヴケアが有効ではないかと考え実践した。野口はナラティヴについて,「物語という形式は現実にひとつのまとまりを与え,了解可能にしてくれる。物語は現実を組織化し,混沌とした世界に意味の一貫性を与えてくれる」1)と述べており,また物語ることで人は自己を確立し,語りなおすことで再構成していくとも述べている2)。
今回,関わりの中でA氏の思い出,偉大さ,感謝の気持ちを再認識でき,また私がA氏の家族への思いを語ることで,介護に対する満足感を得ることができ,家族も悔いのない看取りができたのでここに報告する。なお,この論文は,個人が特定されることのないように表現している。
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