看護教育 60巻1号 (2019年1月)

特集 VR/AR/MR 教育への応用最前線

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VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)。

これらの言葉は、この1年で一般にも広く知られるようになりました。

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はじめに

 本誌の2018年2月号(59巻2号)で、VR技術について書かせていただいた。それから約1年、世の中の流れは高速で、VRをめぐる状況はめまぐるしく展開しつつある。ハードウェアの低廉化、カジュアル化はさらに進み、スタンドアローン(外付けのコンピュータなどを必要とせず、単体で機能する)のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が数万円台で登場したほか、スマートフォンをHMD化して見回し可能にするためのアタッチメントが100円均一ショップで売られるようになってきた。VRは研究開発の段階から、利活用の時代へと歩を進めつつある。

 先日、あるVRスタートアップの社長に聞いた話であるが、ここ数年来の取引件数はすでに3万社に達するという。もっともその90%が外国企業であり、わが国がこういう新規分野にとり残されつつある状況も心配されるところである。

 筆者のまわりについて言えば、2018年2月、東京大学に連携研究機構としてVR教育研究センターが設置された。この体制については後述するが、教育訓練の場において、VRやARなどの新しいメディアの活用が本気で考えられるようになってきた。

 さて、本稿では新しい取り組みとして、スマートフォンで体験できるVRアプリを2点添付している。対応する場所にはQRコードがあるので、実際にVRを体験しながら本文を読み進めてほしい。

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はじめに

 近年の情報技術の目覚ましい発展にともない、高速処理技術・高精細グラフィックスを搭載したPCが比較的安価になってきました。また、多種多様なHMD(Head Mounted Display)の販売や、3次元空間の位置を正確にトラッキングできる技術の進展により、VRやARはわれわれにとって、より身近なものとなってきたように思われます。

 数年前までは、大学講義において「VRやARを知っている?」の質問に、1割にも満たない数名の学生しか手を挙げませんでしたが、最近では半数以上の手が挙がるようになりました。また、講義課題としてのコメント入力や、講義資料の閲覧にスマートフォンを使用している学生たちを見ると、ここ数年でも随分と学びの形態が変わってきたように感じます。2016年がVR元年であるとも言われていますが、まさにデジタルネイティブな学生たちに対して、VRやARの技術を活用することによる、新たな教育方法を考えていくときかもしれません。

 われわれの研究グループでは、2006年頃からVR技術の効果的な教育利用について探求してきました。その1つのアプローチは、学習者の空間認識の支援という観点です。また、もう1つのアプローチは、実際にその場にいるような臨場感から得られる体験的な学習の提供です。本稿では、それぞれの研究の概要と成果を中心に、VR・ARの教育利用についてご紹介します。なお、今回ご紹介する題材は、看護に直接関係するものではありませんが、現在の教育現場における事例として見ていただければと思います。

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VR/AR/MR それぞれの特徴

仮想世界への没入感を味わうVR

 仮想現実や人工現実感を表すバーチャル・リアリティ(Virtual Reality : VR)の技術は、環境や現象、行動などへのヒトの「認識を容易にする媒体(メディア)」として今や人間活動の多くの分野で応用されてきています。したがって、VRが教育目的として利用されるのは自然なことです。

 それでは、医療分野ではVRや複合現実感(Mixed Reality : MR)、拡張現実感(Augmented Reality : AR)をどのように利用すればいいのでしょうか。そのためには、もう一度VR/MR/AR技術の特徴を考えてみましょう。

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はじめに

 医療・医学・看護教育において、仮想現実(Virtual Reality: VR)、拡張現実(Augmented Reality: AR)、複合現実(Mixed Reality: MR)などの技術が、基礎教育や臨床実地体験など多くの分野で活用されつつある。これらのVR/AR/MRは総称としてXR(eXtended reality)とも呼ばれているが、本稿はとくにCTやMRIなどの医用画像を用いたXRにつき、臨床現場と医療・医学・看護の教育現場で実際に導入した経験1〜9)から、得られた知見および今後の展望を考察する。

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VRを導入した看護教育に取り組む

VRが技術練習の教材として適するだろう理由

 Embodied Labs1)が開発している「We Are Alfred」というプログラムは、仮想現実(Virtual Reality、以下VR)によって、近親者や医大生に疾患のある高齢者の疑似体験をさせるというものである。これにより共感力・実践力が育まれたとの報告がなされている。具体的には、病期に応じて、幻覚や混乱の映像、音が被験者の目や耳をとおして体験し、また患者の目線からも家族や医療者とのかかわりを受容していくことで、患者中心のケアを強化しようとしている。

 看護の技術練習の教材には、これまで模擬患者やシミュレータなどが主に採用されてきた。しかし、模擬患者による教育2)では、事前準備や演技力によって学習効果は演技者に大きく依存してしまうと同時に、緊迫感がないことなどの問題点があった。また、シミュレータを用いた教育でも、装置が高額であって普及が難しく、また操作方法の習熟、各疾患への対応が負担になるなど、場面設定づくりの対応にも労力がかかっていた。このように現行のいずれの方法でも、指導者は導き方や振り返りの方法に多くの苦労があり、現状では公平性のある学習機会を提供するために試行錯誤を続けているだろう。

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VR教材作成に至る過程と作成の実際

看護基礎教育課程における小児看護学教育の限界と課題

 看護師は、子どもの権利を擁護し、子ども自身が主体的に治療や検査、処置を受け入れ対処できるよう援助することが求められる。このようななか、病気や治療によって引き起こされる子どもの心理的混乱を最小限にし、子どもの対処能力を高めるための心理的準備を促すケアとしてプレパレーションが実施されている。しかし、子どもと接する体験が少なくかつ看護の学習過程にある看護学生が、子どもの権利を守る必要性を実感しつつ対象にあったケアを実施することは容易ではない。そのため、看護基礎教育ではシミュレーション教育が注目を集め、シミュレータや模擬患者を用いた演習によって、より実際の場面を想定できる教育が実施されている。しかしながら、小児看護学領域では、対象の特性からシミュレータの種類が限られ、模擬患者の活用にも限界がある。

 これまで、筆者らも大学内での講義や演習において、学生がリアルな子どもイメージを描けるように、さまざまな視聴覚教材やモデル人形を活用してきた。しかし、臨地において、啼泣し四肢を激しく動かす患児を目の当たりにして「こんなに動くなんて」「泣き声に驚いた」「イメージと違った」と戸惑う学生が複数いた。そして、学生は自身と患児の信頼関係の構築に目が向き、児が受けている治療や検査、それにともなう苦痛、生活への影響等になかなか視点が向かず、子どもの安全面への配慮が不十分になるケースがあった。

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VRの医療教育への応用はさまざまな形で進行しています。

ここでは、執筆原稿に入らなかった分野の参考映像をご紹介します。

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学生たちの学ぶ気持ちを上げていくために参加したセミナー

看護学生の厳しい「毎日」を支えるために

 看護専門学校は3年間で3,000時間もの授業を詰め込む。さらに、その3,000時間には含まれないたくさんの授業課題、予習復習が学生には求められている。看護学生は常に時間と戦っている。また、各学校には、即戦力かつ社会人として生きるための服装や身だしなみを定めたさまざまなローカルルールがある。若い学生にとっては小姑の小言にしか思えないであろうそのルールをクリアしなければならない。

 看護学生たちは、違う道を選んだ友人たちが学生生活をエンジョイしているのを横目で見ながら、黒髪をまとめ、重く大きい鞄を背負って、朝早く、または夜遅く通学路を歩く。どれだけの学生が自分の決めた道を挫折しかけたことだろうか。

連載 看護師のように考える コンセプトにもとづく事例集・01【新連載】

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本連載では、米国を中心に広まりつつある「コンセプトにもとづいた学習活動」を導入する試みとして、事例を作成しています。事例提供は、熟達した実践経験をもつ看護師です。学習するコンセプトを表現するために、典型的な疾患や病態を示す患者の状況を選択し、「看護師ならこう考える」という視点で学ぶことができるように解説しています。質問項目は「卒業年度の看護学生や新人看護師が、知っているとよいと思う程度の難易度」に設定しました。基礎教育では、既存の知識を臨床で活用するための課題や自己学習に活用できると思います。読者のみなさまからの感想や意見を寄せていただけたら幸いです。

奥裕美(聖路加国際大学)

※詳細は小誌59巻12号参照

連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・1【新連載】

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本連載は、将来の医療専門職を教育する方に、映画を活用した臨床倫理の教育法を紹介する試みです。全編を鑑賞する価値のある新しい作品を、複数の文化・言語圏から選びました。学生さんは作中人物の行動や態度、発言を観て倫理問題を感じ取り、多くのことを考えることができるでしょう。

本連載は、市販のDVDのチャプター機能を活用し、どの作品のどの場面を見せ、どのような形で授業を展開するかを示します。筆者の考えも随所に記述します

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・13

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 特別な感情をハートマークで飾るように、心臓(ハート)は他の臓器とは違う特別な印象を与え続けています。一方、医学ではその働きをシンプルに「血流をつくるポンプ」だと説明します。いずれにしろ、心臓はパワフルでスタミナのある心筋組織から構成される唯一の臓器であり、自ら拍動するなど特殊な性質も有しています。心臓は2階建てで、血液は2階の心房から入り1階の心室から出ていきます。血液を押し出す心室の壁は非常に厚いものですが、実は心房の壁との連続性はほとんどなく、弁の部分の結合組織が両者をつなぎとめています。

 造形は先の尖った左心室から始めます。続いて、それを取り囲むポケットのように右心室を作り、上部に大きな房室弁と小さな動脈弁を作れば1階心室部の完成です。2階の心房部は、動脈弁を避けるように“コの字”で、犬の垂れ耳に似た心耳を左右に作ります。静脈は右心房には上下に、左心房には左右に付きます。続いてT字の肺動脈を弁に付けて後ろへ曲げ、最後に大動脈を付けて肺動脈に被さるように後方へ曲げると大動脈弓になります。

連載 NとEとLGBTQ・10

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 すでによく知られていますが、LGBT当事者は日本全人口の約7.6%1)いるという統計結果が出ています。ということは看護学校や医療機関のなかにも当事者がいる可能性はかなり高いわけです。自分の周りには当事者はいないと思っている人も少なくありませんが、学校や職場、友人・知人の付き合いのなかで、本当は誰もがすでに当事者に接しているといえるでしょう。ですので、自分の周りにいないと感じるのは、当事者がカミングアウトしていないから、あるいは差別や偏見に恐れて言えない状況にあるからであり、当事者が実際にいないからではないと理解することがまずは重要です。

 医療者に知っておいてもらいたいのは、LGBT当事者が直面する問題は、ライフステージや性自認・性的指向により異なること、問題が重症化していくと自殺リスクも高くなること、直面する困難自体が性別規範と密接しており、日々の社会生活のなかで目に見えにくく、血縁など周囲の人に頼れないことなど、多岐にわたります。だからこそ、看護学生時代から多様な性に注目してもらう必要があると考えます。学生の頃から多様な性についての教育を受け知識として知っていれば、臨床現場に出たときにLGBT当事者と良好な関係を築きやすいですし、適切な配慮や対応が早期にできます。

連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・9

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 本連載は、ベナー看護論を、そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目指し、これまで、まずもってベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点を明らかにすることに取り組んできました。そして前回までで、「身体化した知性」「背景的意味」「気づかい/関心」「状況」「時間性」という5つの視点すべてを解説し終えました。

 ベナーらによれば、人間は、さまざまな「身体化した知性」の能力―反応したり学習したりする生まれながらの身体的能力や、誕生後に文化的・社会的に身につけられた姿勢、身振り、日常的な道具使用、専門的な熟練技能などの能力―を具え、また自らが帰属する種々の文化や家族からさまざまな「背景的意味」を与えられ、それを当たり前のものとして身につけている、過去からの時間の厚みを具えた存在でした。また、人はつねにそのつど未来に向けて何らかの物事が大事に思われてそれを気づかい、その関心事に巻き込まれつつ、たとえば看護師として、看護教員として、子をもつ親として世界にかかわっていく、「気づかい/関心」という在り方をした存在であり、そのため現実世界のさまざまな関係性に巻き込まれつつかかわり、そうしたかかわりを自己にとっての意味という観点から「状況」として、感情をともなった仕方で直接的に経験するのでした。

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はじめに

 前回は、ティーチング・ポートフォリオ(TP)の初稿の作成でした。事前課題のTPチャートおよびスタートアップシート(SUS)にもとづいた第1回メンタリングの事例を取り上げ、作成者(メンティー)が作成支援者(メンター)との1対1の対話(メンタリング)においてどのように自分の教育理念や方針・方法を深めたり、むすびつけていったりするのかについてみてきました。

 初稿作成のゴールは、理念や方針・方法を深めて文章化すること、そして、目次構成を考えることでしたが、今回は、この初稿にもとづいて2回目のメンタリングを行い、初稿を土台にして第2稿を作成していきます。そのために、ここでは前回と同様に、第2稿のゴールを示し、メンタリングの2回目の事例を紹介していきます。

 第2稿では、TPのほぼ全体を書き上げることが目標となります。理念をさらに深めつつ、初稿で設定した目次構成をもとに教育活動を自分の理念を軸にとらえ直して記述していきます。

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目次

INFORMATION

新刊紹介

基本情報

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看護教育
60巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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