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はじめに
高齢化率の急増と生産年齢人口の減少は、医療提供体制に大きな変化をもたらし、看護職の需給にも影響があると思われる。日本看護学校協議会(以下、本会)の会員の多くは看護師等養成所である。18歳人口の減少に伴い、受験生確保に苦戦する養成所も増えてきた。このたびの保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下、指定規則)の第5次改正に伴うカリキュラム編成にどう取り組み、その結果、地域に必要とされる卒業生を輩出することができるかは、看護師等養成所にとって重要な課題になると考えている。
看護師等養成所が強化しなくてはならないのは技術教育であろう。学校教育法などをひもといても、養成所教育に期待されるのは「実践的な職業教育、専門的な技術教育」である。長年にわたり看護師等養成所が得意としてきた分野ともいえる。看護実践を可能にするのが「技術」であり、養成所の教育は今、技術教育に立ち返るべきと考える。
新人看護師の実践能力の低下が指摘され、2008(平成20)年に指定規則の第4次改正があった。そのときに最初の「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」が示され、13の技術項目と142の技術の種類が明確になった。その後、各養成所では技術項目と卒業時の到達度を意識して教育内容に組み入れる努力はしてきたと思う。しかし、示された到達レベルには「知識としてわかる」というものも含まれていたこと、加えて、演習と実習の区別がなかったことで、すべての技術項目・種類について演習で取り組まなければいけないものとはとらえていなかったと推察する。また、確実にできるとは限らないが、臨地実習での経験に期待を寄せて、結局、経験できずに卒業することもあったと思う。したがって、最初に提示された「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」は技術教育を意識することにはつながったものの、確実な技術習得にどれだけ貢献できたかは明確ではないと考える。
そこで、本会は新たに示された「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」の13項目71種類について、演習でどの程度実施できているか、その「実施率」を調べた。結果、技術習得の前に、実施すら十分できていない技術の種類があることがわかった。なぜ実施できていないのか、実施しているところはどのように工夫しているか、についてさらに調査し、全員が演習で実施できるようにいくつかの提案をしたいと取り組みを行った。本稿では、その経過と今後の課題について報告する。
本会の取り組みが技術教育に悩む学校・養成所の参考になれば、と願うものである。
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