連載 NとEとLGBTQ・11
地域社会に生きるLGBTQ家族に必要な支援
藤井 ひろみ
1
1神戸市看護大学
pp.157
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201184
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LGBTQの社会保障制度が整備されている米国では、LGBTQフレンドリーな街として知られるサンフランシスコ市などでも、都心部の地価高騰、家賃沸騰により、若者やLGBTQ、特に子どもをもつレズビアン・ファミリーなどが郊外に転出する傾向がみられます。米国ではLGBTも生殖補助医療や養子縁組によって子をもつことができ、実子も養子も含めた次世代の育成の任を負っています。そこで郊外の市は活力ある人口を流入させようと、LGBTQ政策を充実させています。一方都心部は地価高騰前に自宅を購入・相続した人や富裕層が多くなり、地域は高齢化しています。長年差別と闘い権利獲得に貢献してきた世代が、住み慣れた街で尊厳ある最後をどう迎えるかが、LGBTQコミュニティの課題になっているように見えます。少子高齢社会では、子育てや高齢者のサポートに関する公助・共助・自助のバランスが重要であり、このことはSOGIの多様な人にとっても同様です。
しかし日本では、LGBTQの生活を保障する制度がないうえに、SOGI(性的指向・性自認)の多様性はまだ「生活の話」として地域社会のテーマになることも少なく、共助の基盤は整っていません。LGBTQ家族にとって、いざというときの備えは自助しかない現状です。世界的潮流と比べると、たとえば同性パートナー関係を保障する政策がまったくないのは、先進国では日本、ロシア、中国のみです。2018年は同性パートナーシップ認証を自治体に求める一斉請願が多くの自治体に対して起こりました。日本のLGBTQ家族の課題解決には、政治が動かなければどうしようもない局面に来ている、といってもよいでしょう1)。
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