助産婦雑誌 3巻2号 (1953年2月)

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目的:産褥感染予防のため

 産褥感染いわゆる産褥熱は産褥合併症中最も多くみられまた最も危険なものであつて,化学療法の著しく進歩した今日でも,妊娠中毒症,出血についで妊産婦死亡原因の第3位を占めており,たとえ死を免がれても生涯にわたつて病苦を残すことも決して稀ではない,しかしその発病をみると既に性器内にあつた病菌が母体の抵抗力の減退に乗じて跳梁する場合もあるが多くは外部から性器内に輸入された病菌の活躍によるもので従つて産褥感染の予防には産科処置にさいしての無菌法の厳守が重要で特に手指の消毒は肝要である。

今月の言葉

奉仕と報酬
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 助産婦の仕事は,他の利益本位の職業と異なり,己れをすてて妊産婦,乳幼兒のために奉仕することである。ここに私らの誇りもあり,又苦労の甲斐もあるといえる。この仕事の使命からみればもともと,医師,助産婦に対しては,自己の生活などを考慮せずに安心してその仕事に沒頭できるように,充分に生活が保証せられねばならない。しかし,現実はこのような理想とはおよそかけはなれ何ら他の職業と異るところがない。したがつて仕事の使命と,現実の生活保持との間に,いろいろと矛盾を生ずることになる。

 しかも現在の助産婦報酬制度は甚だ旧いものではなかろうか。

講座

子癇の予防と処置 奏 淸三郞
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Ⅰ はしがき

 子癇は分娩の略1%に於て見られ,その実数は相当多数であり,その母体死亡率は治療法の相当進んだ今日でも,尚10-20%である上に,一命をとり止めても継発症として,5-6%に於て数カ月間の精神病や失語症になり,最も不快なるは平均20%(16-60%)に於て高血圧症ないし慢性腎炎に移行して数カ年の安静加療を要する事が多く,更に次回分娩時には2-10%に於て子癇の再発を見るという誠におそるべき疾患である事は衆知の通りである。即ち妊産婦母体死亡率の最も多い疾患であるばかりではなく,胎兒も30-50%平均40%も死亡する疾患であるために原因究明に,又治療に多くの研究がなされつつある。

早期破水 久保 博
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 破水即ち卵胞破裂は分娩第1期の終りに於て子宮口が殆んど或は全く開大する頃起るのが正常であります。従つて早期破水とは正常時期より早く卵胞の破れる場合を云うのであつて尚嚴格に定義すれば之を二つに細別することが出来ます。即ち陣痛が規則的に開始し分娩第1期に入る以前に破水する場合を前期破水と云い,陣痛は開始し分娩第1期ではあるが子宮口の開大が5糎以下で胎兒の先進部も未だ骨盤上口に嵌入せぬ時期に破水するものを狹義に於ける早期破水と云います。然し臨床上は之等を区別せず広く両者を総称して早期破水といつており,その頻度は全分娩の約10%と云われております。

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 吾々が妊産婦を監理して其分娩までの責任をとる場合に妊娠中から分娩時の異常を予測出来る場合には早くに家族にも其大略を説明して了解して貰う事が出来るし又それに対する適当な処置を準備して医師としての万全を盡す事が出来る。例えば妊娠腎炎,狹骨盤,胎位異常,腦水腫等は之に属する異常で,前置胎盤,常位胎盤早期剥離,早期破水等は前記の分娩異常とはやゝ違つて後述する部類のものに近くなるがそれでも通常は分娩当初に著明な症状を示すので之等に対する処置は比較的順当に施行する事が出来る。

 次に妊娠中から監理して居ても予測し得ない分娩異常が色々あるがその内兒頭回旋異常,遅滯破水,胎盤の低置附着,疲労性陣痛微弱等は分娩の推移に従つて出現するものであるから分娩監視を怠らなければ時期を逸せず適切な処置を行う事が出来るが,胎兒附属物の物理的異常や母体の特異体質は分娩終了後か或は既に母体が危険にさらされるに及んで始めて気付かれる異常であつて吾々には最も取扱いにくいものである。

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 40才を越えると若返り法のつもりでやたらに卵胞ホルモンを注射する婦人がある。どんな良薬でも用い方がよくなければ益がないばかりでなく,かえつて有害になることを忘れてはならない。

寒い時の皮膚衞生 安田 利顯
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 皮膚は絶えず外界の剌戟を受けている。勿論皮膚にはこれらに打勝つて,健康を保とうとする自然の力がある。といつても,これには限界があつて,過度の剌戟であれば皮膚に色々の変化が起ることは当然である。この中で日光の影響が最も大きいと考えられているが,寒さも決して油断は出来ない。そしてこの寒さに抵抗する皮膚の力をたすけて,皮膚を保護してやる全ての手段を「寒い時の皮膚の衛生」と呼ぶことが出来る。従つて,これには体の外部からの保護と,内部から皮膚の抵抗を増す2つの方法がある。これらについて記す前に先ず,寒さが皮膚にどういう影響を及ぼすかを記すこととする。

講座 補修講座・1

女性の生理 岩田 正道
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女性の一生涯を観察すると,これをかなりはつきりと区別できる次の5時期,即ち1乳,幼,小兒期2思春期3性成熟期4更年期5老年期

 に区分することが出来る。かく5時期に区分しうるのは,女性生活に最も緊密に関連し,云わば生活現象の根幹とも云うべき卵巣内分泌機能の存否に基くのであつて,男性ではかような区分を認め難く,殊に更年期と見做すべき時代がないとされている。尤も近頃米国では男性にも更年期と認むべき時代があるが,女性の如くその年代が略一定していない上,この際の身心変化が女性のそれの如く判然としないのだと説く者がある。多くの臨床観察はこの説を一應首肯しうるかと考えられないこともないが,果してこれ等の不定変化を女性の更年期と同じと見てよいかは今後の研究に俟つほかなく,さしあたりは男性には更年期と称すべき時代が認められないとしておく。

医学の話題

月經の出血 杉 靖三郞
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月経の出血が子宮内腹の変化によるととほよく御存じでしよう。しかし最近になつてそれとは関係なく子宮の出血が起ることがわかつて来ました

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 昭和5・6年の不況時代の事,奇妙にガス自殺とゆうことがはやつた。当時アパートなどには10銭白銅貨を入れると,それだけの分量のガスがでる裝置がしてあつたので自殺志願者は10銭だけのこして自殺を決行したとゆう。中には,目張りをしないのでガスが全部外にもれてしまい死にそこなつて,一文なしでは死ぬにも死ねなかつたとゆう笑えない悲劇さえある。

 それではガスの何が毒なのか。それがCOなのである。一酸化炭素(CO)は家庭用ガスの中にかなり混つているし自動車の排気ガスの中にも多い。それより火のある所には必ずあるといつてよい位どこにもある無色無臭の気体だ。これが呼吸によつて肺の中に入り血液にまぢつて血液中のヘモグロビンとむすびつく。ヘモグロビンは組織に酸素を運ぶ大切な貨車なのだがCOがむすびついて了うので酸素が組織におくられない。そこで組織が呼吸出来なくなつて死んで了うのである。

腦下垂体移植 黒田 和夫
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 円形脱毛症,小兒症,発育不全或は精力減退等をはじめとし,普通一般には美容上一種の若返り法として,腦下垂体の移植が,最近各方面でさかんに行われているようである。

 しかし,この療法は決して新しいものではなく,すでに20年も前に歐州ではこれに関する報告があり,それがここ1,2年来皮膚科方面で手をつけだしてから,再び各科の関心をあつめるようになつて,今日の如き流行をみるようになつた訳である。

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 抗ヒスタミンという物質に拮抗的に作用する藥劑で,アレルギー性疾患と呼ばれる一群のものに主として使用されている。アレルギー性疾患がどのようにして起るかということについては,やや議論があるが,生体内で抗原抗体反應というある反應が起り,その結果ヒスタミンまたはそれに類似の物質が人体組織に遊離することにより発生すると大多数の学者により意見の一致を見ている。従つて抗ヒスタミン劑はアレルギー性疾患に使用するのが本筋で,それに属する喘息,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,濕疹,皮膚炎(かぶれ)などに有効である。しかし藥劑の性質上症状を一時おさえたり,発病を或程度予防することは出来ても,根本からその病気を治すものではないので,投藥を中止すると再発する傾向がある。

 抗ヒスタミン剤には現在まで多数のものがあり,中でもアメリカのベナドリール,ピリベンザミンがよく知られている。一般に内服の形で使用され,種類により用量は多少異るが,最も使われているベナドリール(邦製品ではレスタミン,ベナポン,ベナなど)では,通常成人1回量30-50mgを1日3-4回投与し,小兒に於ては年令に應じて適宜減量する。夜間に症状が著しい時は就寢時にのみ服用することがある。内服できない時とか効果を早く得ない場合は皮下注射(成人1回量30mg位)を行う。

お産の俗信

胎毒下し 日野 壽一
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 昔から日本及び支那だけに,新生児に「胎毒下し」と称するものを飲ませる慣習がある。終戦後文部省迷信調査協議会が全国学校網を通じて迷信調査を実施したとき,その質問項目の一つに「赤ん比が生れたとき胎毒下しを飲ませますか」というのがあつた。これに対する回答数5,511の中,飲ませるというものが45.8%,飲ませないというものが54.0%,分らないと答えたものが0.2%であつた。飲ませる・飲ませないの割合に都市・農村・漁付ほぼ同率である。

 「もし飲ませるならどんなものを飲ませますか」の問に対し,ただ単に「胎毒下し」というだけで内容不明のもの15.3%,売薬・薬草・医薬として薬品名を挙げないもの10%を除いて、一番多いのが蕗の根の16.8%,次が五香の13.4%(いずれも近畿,中国,四国,九州に多い),それからマクリの10.0%(東北,関東,中部に多い)の順になつている。そして砂糖の4.7%,甘草の4.1%という甘味質に対して,センプリの4.0%,ダラニスケの2.1%という苦味質がこれに続いているのもちよつと面白い。残り19.4%はヨモギ,茶,ホウズキの根,牛黄,奇応丸,ドクダミ,サフラン,熊の胆,犀角,母乳,雪の下,実母散,虫下し,マクニン,中将湯,ふりだし,セメンエン,くれない,はこべ,牛角,救命丸等で占められている。

随筆

北海道の助産婦 竹村 マヤ
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 零下30度40度と降だる寒さと戰う北海道の助産婦。特に夜更けの雪の中を,迎えの馬橇に身をゆだねて,蒼白き月光の下に浮き出された助産婦の姿は雄々しくもあり,又神のごとき心地がする。天塩の国の名寄と云う町からほど近いところに,美深(アイヌ語でピウカといい,小石磧の意である)と云う村があつて,此所に開業して居られる高野しづかさんが,ある時染々とこんなことを仰しやつた。『零下30度,40度と云えば,息も凍るかと思うばかりであるが,この凛烈たる寒気の中を,迎えの橇に乘つてしやんしやんと,鈴の音も冴えかえる小夜更けに,二里三里と人里離れた山道を,月光を浴びながら,産家に行く心地は何とも云えぬ莊嚴なもので,丁度自分が夢の国か,お伽の国のお姫様のような心地がして,助産婦なればこそと感謝の念がわいて,眞に幸福な自分を見出す』と。私はこれを聽くと直ちに次の樣な短歌を差上げたのであつた。

貴女の経済学・2

住宅金融公庫の話 Q
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 戦後7年を経た今日,衣食は何とか事足りても住宅難は相変らずで,今日なお300万戸以上不足していると云われています。これが終戦直後は420万戸不足と推定され,住宅建設の実情も昭和23年を最頂として衰えてきており,民間の住宅建設能力だけでは到底住宅難の打開は望めないというところから,政府が,住宅建設に銀行なぞが融資してくれない資金を低利で長期間にわたつて貸付け,住宅建設を促進するという政策が行われるようになりました。住宅金融公庫は,こうして25年6月5日に生まれ,政府の資金を住宅建設者に融資しまた回收する役割を果しています。公庫の申込の受付,資金の貸付回收などは,銀行をはじめとする全国約500の金融機関に委託され,住宅の建設工事審査などは全国の都道府県に委託されています。

 公庫の資金を借りるためには,既に住宅に困つていること,同居家族またはこれに類する世帯員が一人以上あること,住宅建設に必要な金額から公庫の貸付金を差引いたいわゆる頭金の用意あること土地の見込あること,月收が当初月の元利償還金の7倍以上あること,確実な保証人があることなどを条件とします。その他,住宅組合法によつて作られた住宅組合や住宅を建設して賃貸する会社その他の法人にも貸付けています。

映画案内

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 原作は川端康成の芸術祭受賞作品である。監督の吉村公三郎は,「暴力」から今度は「千羽鶴」というバラエティーに富んだ雰囲気を醸し出さなければならない。なお且つ芸術的なという,いとも厄介な作品ととり組んだわけである。

 まず最初のカットが古村監督には珍しい,北鎌倉というよごれた駅名を写し,そして次に,近代的な電車が写される。各所に野心的なカメラの使用が見られるが,その連関性がとぼしい。

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社会の動向
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 秩父宮殿下の御逝去をめぐつて,ジヤーナリズムがかなり活溌な動き方をしているのがめだつ。結核に対する長い鬪病生活が科学的に見て,待医の人達の意見によく従つて理想的なものであつたことは語られているが,一方高貴な方であるための思い切つた療法がとられなかつたことも医師の立場から苦しげに告白されている。肺癌の手術をされた英国皇帝の先例の場合もあることであり,医学が科学であるならば,最も正しい治療法を冷厳な科学の命ずうまゝに行うべきであり,克服すべき相手が結核菌であれば,その宿り主の人間的考慮はさまで問題にならないであろう。

 御逝去によつて病体の局所解剖が行われたが,その決定にいたるまでにも新聞紙の伝えるところでは種々の問題があつたようである。結核予防会総裁である妃殿下の御意志をそこに見る者もある。いずれにしても今度のことは従来の慣習からすればショツキングな事例であつた。大きな教訓である。私達はこの大きな教訓を今日に生かして行かなければならない。妃殿下との恋愛結婚から始まつてあらゆる意味で最も民衆に近い共感を持たれていた秩父宮殿下を偲ぶことが結核対策問題に明るい灯をかゝげるようにと。

2月のお花 長谷川 紅蓉
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 2月の小品ものとして銀の芽をふいている赤芽柳と可愛らしいチユーリツプを選んでみました。外は寒い風が吹いていましても,一輪の温室花のかもし出す雰囲気に心あたゝまる気持が致しましよろ。

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 美くしい,"白衣の天使"という表現が,其のまゝ当てはまるような,まだ若い,清楚な感じのする婦長である。

 其の婦長が,時々,小さな塵取りと板片とを持つて,病院の門を出て来る。

趣味を語る 菅谷 いし , 編集部
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踊りは「若返り法」です……と私はいつも言います。ダンスは相手が要りますし,全身の運動にはなりませんが,踊りは1人で出来る上に,全身を動かしますから体が柔かく動き,私達みたいに大切な仕事をもつている人にはとてもよいと思うのです。それに踊つている時は全く"無私"の境地に入りますから禪にも通ずるところがあるのではないでしようか。仕事が忙しいので普段はあまり練習も出来ませんが,最近は時々引ばり出されたりするので,レコードに合わせて想い出しています。お婆さんになつても腰が曲らないように一種の保健法だと思つて踊つています。(東東都在住)

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 サンガー夫人は1913年10月に,ニュー・ヨークを発つてグラスゴーに行つた。フランスでは家族制限に関して,一種の民間伝承が行われていると聞いたからであつた。彼女はそれを調査研究して来ようと思つたのである。何故ならば,彼女の求めていたものは理論ではなくて実際であり,貧しい人達のための簡単な避妊法だつたからである。だが,グラスゴーでは失望した。そして,パリに行つた。が,パリもまた決して彼女は満足させはしなかつた。そして,もはやじつとしていることができなくなつて,その年の12月31日に子供をつれてニュー・ヨークへ帰つてきた。しかし,このとき,彼女の夫は,絵の勉強をしたいからという理由でパリにとどまつた。彼女は夫の自由意思を尊重して,夫と別れて戻つてきたのであつたが,この別れが,夫との最後の別れになつたのである。

 彼女は雑誌の創刊を計画し,ニュー・ヨークに着くと同時にその準備に沒頭した。そして,その雑誌に"ウーマン・レベル"(婦人の抗争)という名をつけた。

今月の料理 近藤 とし子
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からだが温まつて誰にもよろこばれる雰囲気のあるお料理を御試し下さい

初級英会話 阿部 正直
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Good morning! お早うございます。

Good moming! What a cold morning!

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 大部横道にそれたが,さて本筋に戻つて,そのエナに関して景行記2年3月には「大碓皇子,小碓尊,一日同胞而(オナジエンニシテ)雙生」とあり,一卵性雙胎児であられた事が記録されている。また日本紀略四には一品宮内親王が胞衣不下薨とあつて,エナの異例も記録に残つている。この処分法であるが,之れは我が国には奇妙な風習として,明治の初め頃まで残つて居た。ところでこの点に就て民俗に関する文献を調べて見たが,一向之れを特に研究したものは見当らない。

 貞丈雑記によると京都,朝廷では御胞衣を稲荷山,賀茂山,吉田山の3カ所へ納めさせられたそうである。実際吉田山には,今もなお明治天皇の御胞衣を御納めしてある聖域が残つている。古代に於てエナを能く洗つて白絹で包み,鶴亀などの絵の描いてある塗物の木箱の6本足のエナをヲケの中に納め,更にエナツボに容れて男児のは小刀(エナガタナ)女児のは糸、針をも入れて地下2尺位のところに埋めたという。我々の幼時でも,エナはエナツボに入れて十文字に棕櫚繩で括つて,恵方の神社又は自宅に広い土地があれば,自邸内一定の場所へ埋めてもらつたと覚えている。「伊勢家秘書誕生の記」には「胞衣を納める時は,引目射たる人に,陰陽頭をそえて,二人吉方に納める也,帰樣にはどつと笑つて帰えるものなり」とまる。

産痛と助産婦 勝島 喜美
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 分娩には疼痛はつきものである,この疼痛に対して助産婦はどの樣にしたらよいかと云う事を考えてみたい。

 古くから日本婦人は産痛に対して隨分我慢して来た。この思想は儒教の教えや又女大学から来ているのであろう。即ち女のたしなみを保つために必要以上に苦しみに耐えて来たのである。これに反し歐米では産痛に対しては早くから産婦に苦痛を与えないで分娩させる方法を講じて来ている。無痛分娩といわれるのがこれである。無痛分娩について有名なのは,丁度今から100年前の1853年にヴイクトリア女王が第7皇子分娩の際にクロロフオルムを使用して分娩された事で,これは女下麻醉と云つて余りにも有名である。我国に於ては今度の終戰後,殊に米国医学の紹介により,笑気麻醉,腰椎麻醉,サドル麻醉等による無痛分娩が次から次と紹介されて居り,私達はこれを身近く見聞して,女王麻醉以後ますます産痛に対しての研究が盛に行われて来ている事を強く感じるのである。この樣な現状に於て特に注目すべきことは歐米の一部の人が藥品,器具を用いずにしかも出来るだけ産痛を軽減してナチユラルバース(自然分娩)の方向に進もうとしている気運である。このナチユラルバース(自然分娩)とは吾々日本人がいまゝでやつて来た方法と大差がないようである。この樣な産痛に対しての考えなり処置なりについての東西の変遷に吾々は興味が感ぜられると共に,何か考えさせられるのである。

基本情報

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助産婦雑誌
3巻2号 (1953年2月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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