お産の俗信
胎毒下し
日野 壽一
1
1東大
pp.39-40,41
発行日 1953年2月1日
Published Date 1953/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200281
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昔から日本及び支那だけに,新生児に「胎毒下し」と称するものを飲ませる慣習がある。終戦後文部省迷信調査協議会が全国学校網を通じて迷信調査を実施したとき,その質問項目の一つに「赤ん比が生れたとき胎毒下しを飲ませますか」というのがあつた。これに対する回答数5,511の中,飲ませるというものが45.8%,飲ませないというものが54.0%,分らないと答えたものが0.2%であつた。飲ませる・飲ませないの割合に都市・農村・漁付ほぼ同率である。
「もし飲ませるならどんなものを飲ませますか」の問に対し,ただ単に「胎毒下し」というだけで内容不明のもの15.3%,売薬・薬草・医薬として薬品名を挙げないもの10%を除いて、一番多いのが蕗の根の16.8%,次が五香の13.4%(いずれも近畿,中国,四国,九州に多い),それからマクリの10.0%(東北,関東,中部に多い)の順になつている。そして砂糖の4.7%,甘草の4.1%という甘味質に対して,センプリの4.0%,ダラニスケの2.1%という苦味質がこれに続いているのもちよつと面白い。残り19.4%はヨモギ,茶,ホウズキの根,牛黄,奇応丸,ドクダミ,サフラン,熊の胆,犀角,母乳,雪の下,実母散,虫下し,マクニン,中将湯,ふりだし,セメンエン,くれない,はこべ,牛角,救命丸等で占められている。
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