特別寄稿
両性具有者の女性と出会って
安積 遊歩
1
1コウ・カウンセリングの会
pp.930-934
発行日 1996年11月25日
Published Date 1996/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903439
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はじめに
手足に障害を持って生まれると,生まれた瞬間に,親や医療関係者からかわいそうに,という眼差しを受けることになります。常に障害のない人のからだが“正しく,望むべき”基準である社会は,その生まれたばかりの子が持つ障害の程度に応じて,すぐ治療が開始されます。例えば先天性四肢障害児の場合は,指が多ければ指を切り取り,つながっていればつながっているところにメスを入れ,指が足りなければ手術で指が造り出せるものなら,指を造ろうと試みられます。そして治療過程には,この治療が必要なのだろうかとか,どんな意味があるのだろうかとか,この子にとってこの手術はどのような心的外傷になってしまうのだろうか,というような疑問や質問は,ほとんど差し挟まれません。
私も40年前,多分に湾曲した大腿骨を持って生まれたとき,医者たちによって,そこを真っすぐにするための手術の時期を推し量られたのだと思います。就学年齢の6歳のとき,その時期が来たとみなされた私は,足を真っすぐにしたいかどうかと,丁寧に聞かれることもなく,全身麻酔の大手術に追い込まれました。そのために小学校の入学も1年遅れました。もっとも,もしも丁寧に誠実に聞かれたとしても,折れ曲がっていては醜いし,人と違っていてはいけないのだ,という思いに,6歳にしてすでに,すっかり絡め取られていた私は,手術の恐怖さえも超えて,それを受け入れたと思います。
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