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社会の動向
pp.18
発行日 1953年2月1日
Published Date 1953/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200271
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秩父宮殿下の御逝去をめぐつて,ジヤーナリズムがかなり活溌な動き方をしているのがめだつ。結核に対する長い鬪病生活が科学的に見て,待医の人達の意見によく従つて理想的なものであつたことは語られているが,一方高貴な方であるための思い切つた療法がとられなかつたことも医師の立場から苦しげに告白されている。肺癌の手術をされた英国皇帝の先例の場合もあることであり,医学が科学であるならば,最も正しい治療法を冷厳な科学の命ずうまゝに行うべきであり,克服すべき相手が結核菌であれば,その宿り主の人間的考慮はさまで問題にならないであろう。
御逝去によつて病体の局所解剖が行われたが,その決定にいたるまでにも新聞紙の伝えるところでは種々の問題があつたようである。結核予防会総裁である妃殿下の御意志をそこに見る者もある。いずれにしても今度のことは従来の慣習からすればショツキングな事例であつた。大きな教訓である。私達はこの大きな教訓を今日に生かして行かなければならない。妃殿下との恋愛結婚から始まつてあらゆる意味で最も民衆に近い共感を持たれていた秩父宮殿下を偲ぶことが結核対策問題に明るい灯をかゝげるようにと。
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