医学の話題
一酸化炭素(CO)中毒とは
山本 幹夫
1
1順天堂大学公衆衞生学
pp.36-37
発行日 1953年2月1日
Published Date 1953/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200278
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昭和5・6年の不況時代の事,奇妙にガス自殺とゆうことがはやつた。当時アパートなどには10銭白銅貨を入れると,それだけの分量のガスがでる裝置がしてあつたので自殺志願者は10銭だけのこして自殺を決行したとゆう。中には,目張りをしないのでガスが全部外にもれてしまい死にそこなつて,一文なしでは死ぬにも死ねなかつたとゆう笑えない悲劇さえある。
それではガスの何が毒なのか。それがCOなのである。一酸化炭素(CO)は家庭用ガスの中にかなり混つているし自動車の排気ガスの中にも多い。それより火のある所には必ずあるといつてよい位どこにもある無色無臭の気体だ。これが呼吸によつて肺の中に入り血液にまぢつて血液中のヘモグロビンとむすびつく。ヘモグロビンは組織に酸素を運ぶ大切な貨車なのだがCOがむすびついて了うので酸素が組織におくられない。そこで組織が呼吸出来なくなつて死んで了うのである。
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