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産痛と助産婦
勝島 喜美
pp.58-61
発行日 1953年2月1日
Published Date 1953/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200290
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分娩には疼痛はつきものである,この疼痛に対して助産婦はどの樣にしたらよいかと云う事を考えてみたい。
古くから日本婦人は産痛に対して隨分我慢して来た。この思想は儒教の教えや又女大学から来ているのであろう。即ち女のたしなみを保つために必要以上に苦しみに耐えて来たのである。これに反し歐米では産痛に対しては早くから産婦に苦痛を与えないで分娩させる方法を講じて来ている。無痛分娩といわれるのがこれである。無痛分娩について有名なのは,丁度今から100年前の1853年にヴイクトリア女王が第7皇子分娩の際にクロロフオルムを使用して分娩された事で,これは女下麻醉と云つて余りにも有名である。我国に於ては今度の終戰後,殊に米国医学の紹介により,笑気麻醉,腰椎麻醉,サドル麻醉等による無痛分娩が次から次と紹介されて居り,私達はこれを身近く見聞して,女王麻醉以後ますます産痛に対しての研究が盛に行われて来ている事を強く感じるのである。この樣な現状に於て特に注目すべきことは歐米の一部の人が藥品,器具を用いずにしかも出来るだけ産痛を軽減してナチユラルバース(自然分娩)の方向に進もうとしている気運である。このナチユラルバース(自然分娩)とは吾々日本人がいまゝでやつて来た方法と大差がないようである。この樣な産痛に対しての考えなり処置なりについての東西の変遷に吾々は興味が感ぜられると共に,何か考えさせられるのである。
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