medicina 58巻5号 (2021年4月)

特集 その考えはもう古い!—最新・感染症診療

岡本 耕
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 2020年末,日本の感染症学のバイブルともいうべき青木 眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』の第4版が出版された.初版が出版されたのが2000年であったので,そこから約20年が経過したことになる.私を含め多くのレジデント(そして元レジデント)がこの本を手に臨床感染症を学んできたこの20年の間,臨床感染症の教育に触れる機会は飛躍的に増え,日本の感染症診療の裾野は大きく広がった.「発熱・CRPや白血球上昇に対して抗菌薬を使わない」「問題の臓器・解剖と原因微生物を検討する」といった感染症診療の基本原則は,感染症診療にあたる医師の共通言語となった.一方,例えば抗菌薬の治療期間など慣習的に行われていたプラクティスを見直すきっかけとなるような知見も増えており,感染症診療も日々進化している.

 2020年は,新型コロナウイルス感染症の登場とその世界的な流行によって,世界の風景と私たちの日常生活が一変した年でもあった.ただし,これまでもさまざまな新興感染症や再興感染症があり,新型コロナウイルス感染症についてもその流れの中で捉えると少し見かたも変わるかもしれない.また,新型コロナウイルス以外の感染症に日々遭遇することにも変わりはなく,それぞれの感染症について知識をアップデートしていく必要があることにも変わりはない.

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●今月の特集執筆陣による出題です.感染症診療に関する理解度をチェックしてみましょう!

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日本の感染症診療のバイブルともいえる『レジデントのための感染症診療マニュアル』は発行から20年ほど経ち,初版で学んだ自分の研修医時代とはかなり違う常識が広がってきているように感じます.そこで,著者である青木先生,青木先生のもとで学ばれ日本感染症教育研究会(IDATEN)の代表世話人を務めてられている上原先生のお2人に,どういった変化を感じておられるのか,また,感染症の教育がどう変化し,今後さらに改善・成長の余地があるのかを伺えればと思います.(岡本)

感染症検査の今

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Point

◎グラム染色検査は,検体の種類を問わず迅速安価に行える点で遺伝子検査より優位性がある.

◎たった9タイプのグラム染色像を覚えることで,遺伝子検査に匹敵する情報が得られる.

◎グラム染色検査のピットフォールは,テクニカルエラーと本質的なものに分けられる.

◎進化を続けるグラム染色検査は,遺伝子検査とともに活用することで相乗効果を期待できる.

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Point

◎薬剤感受性検査の結果は,ブレイクポイントと呼ばれる基準をもとに判定され,用いられている基準により,抗菌薬の投与量が変わることがある.

◎最小発育阻止濃度(MIC)はあくまでもin vitroでの抗菌活性を示し,その数値の大小で抗菌薬を選択しない.

◎薬剤感受性検査結果が感性であっても臨床的に無効なことがあるため,抗菌薬の選択には,耐性が生じる機序の把握が重要である.

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Point

◎一般に,迅速診断キットは感度よりも特異度が高く,微生物検査室の通常検査では培養困難な微生物の診断において威力を発揮する.

◎一方で,迅速診断検査では,状況によっては偽陽性も起こり得ることに注意する.

◎検査前確率で診断的中率が左右されることを忘れてはならない.

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Point

◎抗菌薬の前投与,1セットのみの採取,少ない採血量は血液培養の感度を下げる.

◎感染性心内膜炎などの血管内感染症や黄色ブドウ球菌菌血症,カンジダ真菌血症では血液培養の再検が必須である.

◎血液培養で検出された微生物をコンタミネーションと判定する絶対的な指標はない.結果の解釈には病態のアセスメントが不可欠である.

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Point

◎CRPはあくまで「補助診断的に」使う.

◎CRPは「何も教えてくれない」わけではない.

◎検査をオーダーする前には必ず予想し,予想が外れた場合は必ずアクションを見直す.

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Point

◎黄色ブドウ球菌菌血症の感染性心内膜炎(IE)合併例では塞栓症や心不全を生じるリスクが高く,IEが疑われる場合には積極的に心エコー図検査を施行する.

◎経食道心エコー図検査(TEE)はガイドラインでは推奨されているが,半侵襲的な検査であり必ずしも全例に施行できるわけではない.

◎心エコー図検査の限界を知り,修正Duke診断基準以外の所見の検索など,他のモダリティを併用することが重要である.

診断・治療の最新の考え方 〈治療薬・治療法再考〉

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Point

◎経口スイッチは,カテーテル関連の合併症のリスク軽減や,患者の行動制限からの解放,入院期間の短縮といったメリットがある.

◎一方,スイッチのタイミングや選択した経口抗菌薬によっては期待した効果が得られないことがあり,また退院後の服薬管理の問題もある.

◎経口スイッチは今後ますます重要な治療選択であり,そのメリットとデメリットや限界を知っておくことが求められる.

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Point

◎細菌性肺炎の抗菌薬投与は5〜7日前後が目安である.

◎合併症の少ない急性腎盂腎炎では,キノロン系では5〜7日,その他の抗菌薬では10〜14日前後の治療が勧められる.

◎急性前立腺炎では,キノロン系抗菌薬では最低2週間,βラクタム系抗菌薬では2〜4週間の治療が勧められる.

◎いずれの場合も重症度や経過をみながら治療期間が短縮可能か慎重に検討する必要がある.

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Point

◎薬剤耐性や入院期間,治療コストや副作用の問題などから,抗菌薬の投与期間を見直す動きがみられている.

◎黄色ブドウ球菌による菌血症では,複雑性か否かで治療期間が大きく異なる.

◎骨髄炎は,抗菌薬投与中止後に再燃することがあり,4〜6週間の標準的治療後も慎重にフォローする必要がある.

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Point

◎抗菌薬の臓器移行性は,脂溶性かどうか,分子量,血中蛋白結合率,臓器内のpHなどにより変化する.

◎脳脊髄液(CFS)への抗菌薬の移行性は不明な点が多く,既存のエビデンスから慎重に判断することが重要である.

◎眼内への抗菌薬の移行性は不良であり,内因性眼内炎は抗菌薬の全身投与のみならず,硝子体内への抗菌薬投与が必須である.

◎前立腺の毛細血管は有窓部がないため抗菌薬の移行が制限される.また,急性前立腺炎と慢性前立腺炎ではpHが異なるため,病態により抗菌薬の移行性が変化する.

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Point

◎水系曝露,医療曝露が想定される背景では,原因微生物の1つとして緑膿菌を考える.

◎緑膿菌カバーの要否は,患者背景,感染巣,重症度を十分評価し,可能な限り培養提出検体のグラム染色所見を確認する.

◎自施設のアンチバイオグラムを踏まえ,緑膿菌を含む想定される原因微生物を過不足なくカバーする(経験的治療).

◎耐性緑膿菌の発生リスクを考慮し,想定する臓器・感受性・既知のアレルギーと臓器障害などの観点で問題がなければ,抗緑膿菌作用をもつペニシリン系,セファロスポリン系抗菌薬の使用から検討する(最適治療).

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Point

◎黄色ブドウ球菌は病原性が強く,播種性感染症のリスクが高い.

◎広域抗菌薬を経験的に開始する際は,終了するための条件を念頭に置く.

◎経験的に開始した場合は,臨床経過や培養検査結果などをもとに,抗MRSA薬の継続の必要性について日々検討する.

◎第一選択はバンコマイシン(VCM)であるが,副作用などの問題がある場合は他剤への変更も考慮する.

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Point

◎ペニシリンG(PCG),アンピシリン(ABPC)は肺炎球菌や溶連菌などのグラム陽性球菌,梅毒などに有効な抗菌薬である.

◎時間依存性に作用するため,頻回投与により高いMIC(最小発育阻止濃度)を維持することが重要である.

◎細菌性咽頭炎,肺炎など,一部の病態ではempiric therapyに使用できる.

◎A群β溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎ではペニシリンGが第一選択である.

Enterococcus faecalisによる感染性心内膜炎にはABPCが第一選択である.

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Point

◎多数あるフルオロキノロンのうち,レボフロキサシン(LVFX),シプロフロキサシン(CPFX),モキシフロキサシン(MFLX)の3剤をおさえておくとよい.

◎フルオロキノロンは決して副作用のない薬ではないため,漫然とした使用は避ける.

◎結核の合併が否定できない市中肺炎に対しては可能な限りフルオロキノロン以外の抗菌薬を用いることが勧められる.

◎尿路感染症などに対して,経験的治療を行う前には必ず培養検体を採取する.

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Point

◎広域セファロスポリンを含めたβ-ラクタム系抗菌薬を分解するβラクタマーゼにESBL,AmpCがある.

◎ESBLはEscherichia coli, Klebsiella spp., Proteus mirabilisの一部から産生される.

Enterobacter cloacae, EnterobacterKlebsiellaaerogenes, Citrobacter freundii, Serratia marcescensなどが染色体にampC遺伝子を有し,一部がAmpCを過剰産生する.

◎ESBL産生菌およびAmpC産生菌の感染症で,重症例を含めて最も確実性が高い治療薬はカルバペネムである.

◎carbapenem sparing treatmentとしてESBL産生菌でセファマイシン,AmpC産生菌でセフェピム(CFPM)がそれぞれ考慮される.

診断・治療の最新の考え方 〈疾患へのアプローチ〉

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Point

◎症状は寄生虫が移行・寄生する臓器に依存する.

◎臓器症状,画像上の異常所見に加え,末梢血好酸球増多が認められる場合には寄生虫感染症も考慮する.

◎ヒトに病害を起こす寄生虫は多数あり,常に寄生虫症に遭遇する可能性があるということを念頭に置いておく.

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Point

◎真菌感染症へのアプローチの第一歩は,発症の高リスク群(好中球減少および細胞性免疫不全)の特定である.

◎確定診断においては,無菌検体からの培養検査および病理組織学的検査による真菌の同定が重要である.

◎実臨床上,確定診断に至らないケースも多く,臨床症状・画像所見・バイオマーカーなどから総合的に判断し,臨床診断せざるを得ないことも多い.

◎各検査項目には感度・特異度の両面において限界があることを理解し,検査の組み合わせにより診断に迫ることが重要である.

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Point

◎指定感染症の多くは動物由来であり,近年の新興感染症の3/4は動物由来とも言われている.

◎動物由来感染症においても,①病原体,②宿主,③臓器,からのアプローチが重要である.

◎ペット由来感染症は積極的に疑い問診することが必要である.

忘れられない感染症ミミック—得られた教訓

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 感染症はclinical syndromeという,病原体が引き起こす臨床像が診断にとって最も重要である.数多くのcommon diseaseを経験すると,個々の臨床医の頭には疾患のゲシュタルトと呼べる臨床像が形成される.やがてcommon disease rare presentationを経験することで,さらにそのゲシュタルトが確固としたものとなってゆく.しかし,感染症の扱う領域は多臓器に及び,さらに多くの病原体の理解の必要があるため,膨大な知識を要求され,実際にマスターというレベルにはなかなか至れないのが感染症診療の深みであろう.個人的には,臨床症状が2週間以上続くものであれば,感染症かどうかは少なくともある程度はわかるようになったつもりでいるが,それでも強く感染症の病状だと疑い続けて,結果異なったという2症例をここに提示したい.

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Case 1

糖尿病を指摘されるも特に通院歴のない72歳女性

 3日前から倦怠感を自覚し,前日は食欲もなく飲水程度だった.前医を受診し第三世代の経口セファロスポリン系抗菌薬を処方されるも症状の改善は乏しかった.来院当日,発熱あり体動困難となったために救急要請をした.救急隊現着時のバイタルサインは体温39.2℃,血圧94/62 mmHg,脈拍118回/分,SpO2 88%(room air),呼吸数20/分だった.敗血症が疑われて,救急救命センターへ搬送となった.身体所見にて肋骨脊柱角の叩打痛が陽性で,尿グラム染色では白血球に貪食された腸内細菌様のグラム陰性桿菌を認めた.また,静脈血での血液ガス分析結果はpH 7.146,糖589 mg/dLだった.以上より,腎盂腎炎による糖尿病性ケトアシドーシスを合併した敗血症として対応をするもバイタルサインは安定せず,逆にショックとなり,ショック状態が遷延した(表1).

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 感染症か?非感染症か?のジレンマは,臨床現場ではコモンというか,そもそもそれが本質であって特殊な場面ではない.少しアドバンストな考え方になるかもしれないが,感染症医だから非感染症を否定しようとか,感染症を診断する前に非感染性疾患を否定しようとかいう思考からは脱するべきである.なぜなら,“感染かどうか”という「2極的な」場面は現実的にはなく(それは仮想にすぎない),常に両者は曖昧で行ったりきたりするものだし,ごちゃ混ぜ・グラデーションのイメージなのである.何かを「否定する」ということなど,そもそもできないと考えておきたい.

 本稿では,必ずしも「感染症ミミック」とは言えないケースも含まれていることをご了解いただきたい.「感染症も念頭に置かれた印象的な3つのケース」とご理解いただけたら幸いである.

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感染症ミミックとなる症例とは

感染症サイドから考える

 感染症の診断は,多くの場合「障害されている臓器から(病原)微生物を同定し,患者の臨床像がその(病原)微生物によるものと判断して矛盾がない」ときに下される.これには,同定の手段が培養である場合,尿中抗原やPCRを含む核酸増幅法による場合などがある.また,「(病原)微生物の証明が困難であるため,感染を起こした生体側の特異的反応を測量することによって診断する」場合もある.例えばEpstein-Barrウイルスを含めたウイルスの抗体検査,ペア血清,一部の結核,あるいは梅毒の血清反応もこのカテゴリーに入る.

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 多くの感染症は抗菌薬をはじめとした治療法が確立されており,適切な診断がされている限りは患者の重篤度に関係なく医師は自信を持って対応することができる.しかし,時として本稿で紹介するような「感染症のようでそうでないもの=ミミック」に遭遇すると診療者側も心地よくない日々を過ごすこととなる.

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 新しい情報が加速度をつけて増加するなか,感染症に限らず,生涯学習の方法は近年注目されてきた.どのような一次資料をどのように読めばいいか? というEBM学習の時代から,それをまとめた有益な二次資料とその使い方の時代があった.しかし,いわゆる書籍のような二次資料では作られたときにはもはや古さを感じてしまう時代にすぐになり,迅速にアップデートされる二次資料であるまさにその名の通りUpToDate® などのネットによる二次資料教材が世に出て,それを教育ツールとして使うことが当たり前という流れとなった.さらに,それが日本語でも気軽に使えることがやはり日本人にとって大切であることから,日本におけるUpToDate® をうたうものが出てきて現在に至る.

 このように,情報量が加速するのに合わせて,その対応も進化してきているが,いま,この生涯学習という考え方も新しいフェーズに入ってきていると感じる.それがネットでの独自の検索やSNSからの情報収集となる.これは一時期あった,一次資料に対するEBMの批判的吟味と似たスキルをコアに持つが,さらに時代は進化し,膨大な一次資料を処理するのも至難の業ではない世の中になった.ハゲタカジャーナルという言い方があるように,そのようなところの一次資料がよくなく,メジャージャーナルがよいという1つのセレクションが以前はよくかかっていた.いわゆるインパクトファクターが高い雑誌がよいであろうというセレクション方法は,いまも大きく間違っているとは言い難い.しかし,「インパクトファクターよりもハイインパクトな研究を」と近年言われるように,現在必ずしもそうとは言えない.

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 神戸大学病院ではパンデミック後,学生は自宅待機,病院実習ができない状態だった.それもようやく緩和され,学生たちはさまざまな制限付きで実習に参加,したのも束の間,COVID-19の院内感染が発生してしまい,学生は再び自宅にて蟄居,現在に至っている.

 大学病院での感染症のカンファレンスは医学生,初期研修医,後期研修医(フェロー),アテンディング(指導医)の集う臨床的,かつ教育的カンファだ.われわれは基本的に毎日行う.ベッドサイドに一緒に行くのは新患と「見ないとわからない,あるいはやばい」ケースに限定している.密にならないためでもあり,効率をよくして生産性を上げるためでもある.行列的教授回診はもはや過去のものだと考えている.

5 Days:感染症教育を1週間で 伊東 完
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 古武術の世界に“相心”という剣技がある.自分と相手が同じ戦略を元に,螺旋の足さばきで斬り結ぶ.この美しい剣技は,互いの気の流れが同調していなければ決して成立することのない,洗練された武士の嗜みである.教育も同様,教える側と教えられる側の意気の投合が理想的である.そのためには,まず教える側が「教え育む」という意識を捨て1),共に学ぶつもりで講義に臨むとよい.

 教えられる側が楽しく学ぶには,教える側も楽しむ必要がある.教える側は,知識だけでなく知識に対する独自の解釈をもち,その解釈が誤っていないことを,知識をアップデートしながら絶えず確認し続けていかねばならない2).畢竟,1つの知識を伝えるには10の背景知識が必要になる.ただし,自身のもつ“10の知識”を一度に伝えてもいけない.この加減,つまりは相手への思いやりが,講義での意気投合には不可欠である.

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 当科における主な業務の1つが,感染症(疑いも含む)診療について他科から相談を受ける院内コンサルトである.そのなかで最も多い相談内容が,いわゆる院内発熱の熱源精査である.患者が発熱しており,何かしら異常が起きていることだけは明らかだが,その原因がわからない.診断や方針策定に困った主治医から,毎日のように相談の電話を受けている.相談を受けたわれわれは,まずカルテ診を行い,症例の背景情報を大まかに把握してから病室に向かい,患者本人から話を聞き,身体診察を行う.ベッドサイドで詳細な情報を得たら,チームでカンファレンスをして,最終的な見解・推奨を主治医に伝える,という流れでコンサルタント業務を行っている.

 院内発熱は市中の発熱診療と比べると原因が限られている.肺炎や尿路感染症といった感染症のほかに,「7D」といったゴロ合わせで挙げられるような見逃されやすい疾患〔薬剤熱,デバイス関連の感染,深部静脈血栓症,Clostridium difficile(CD)腸炎,褥瘡,偽痛風,胆囊炎〕も存在する1).加えて,基礎疾患に伴う原因〔例えば開腹手術後の患者であれば,当然手術部位感染(SSI)や腹腔内膿瘍を考えるだろう〕の鑑別が,院内発熱の対応における基本であるし,当科をローテーションしている初期研修医には,研修終了までに上記の鑑別を踏まえた院内発熱のマネジメントが1人でできるようになることを1つの目標として教育を行っている.

付録

よく用いられる抗菌薬の略語

連載 読んだら,ちょいあて! POCUSのススメ・1【新連載】

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 今回より新連載として,“あてて,見るだけ”のお手軽超音波の各種手法を,超音波の教育団体であるポイントオブケア超音波(POCUS)研究会およびABCD sonographyのメンバーを中心にリレー形式で解説していきます.さて,あなたが初期研修医と夜間当直をしていると,お花見で酔って転倒し,「左胸が痛い」という高齢男性がやってきましたよ.

 

*本論文中、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年3月31日まで公開)。

連載 フレーズにピンときたら,このパターン! 鑑別診断に使えるカード・16

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総論

 platypnea(扁平呼吸)が「坐位で増強する呼吸苦」を,orthodeoxiaが低酸素血症を意味することからplatypnea orthodeoxia syndrome(POS)は「臥位で改善し坐位で悪化する呼吸苦に低酸素血症を伴う状態」を指します.姿勢変化の病歴が目立たず胸部画像で異常を呈しない場合,原因不明の低酸素血症や呼吸苦の原因になります.また後述のようにシャントが原因のことが多く,その場合酸素投与を行っても酸素化の改善が乏しいのが特徴です.

 POSの機序としては心内シャントと心外シャント,換気血流比不均衡があります.坐位になることにより右→左シャント量や換気血流比不均等が増加し低酸素血症が起こります.坐位への姿勢変化がどのようにPOSにつながるかについては各疾患の項で述べます.

連載 ここが知りたい! 欲張り神経病巣診断・1【新連載】

総論(前編) 難波 雄亮
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 どんな疾患を診断するときも共通の考え方があります.それは「一元的に症状を説明できる疾患を考える」ことです.そして診断につなげるために重要な要素が,病歴聴取と診察になります.神経疾患を診断する場合,私の師匠である福武敏夫先生(亀田総合病院神経内科部長)が常々話されるように,神経診察の占める割合は病歴聴取80〜90%・神経診察10〜20%と言われています.病歴聴取と神経診察で予想される疾患を,血液検査・生理検査・画像検査を実施し絞りこんでいきます.

 神経診察はやみくもに実施するのではなく,「狙いを定めて」診断をつけるために実施します.私達神経内科医もすべての神経診察を実施するのではなく,特定の診察手技を中心に実施しています.慣れるまでは網羅的に実施するのが良いでしょう.ただ,おおざっぱに実施することも重要ですので,そのテクニックを記載していきます.コツさえつかめば,一般内科の先生も上手く診断にたどり着くことが可能です!

連載 目でみるトレーニング

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 本書の第3版が出たときも書評を書かせていただいたが(2015年),力を込めすぎついつい長文になってしまった(https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/84707#tab4).今回は「800〜1400字で」,と編集部から注文がついている.宴席でスピーチが長すぎるおじさんがあらかじめくぎを刺されている様相だが,その「宴席」もいずれ死語になるやもしれぬ今日このごろだ.

 というわけで,今回は短く書かせていただく.

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 COVID-19の波が世界を押し流している.まさしく「パンデミック」の風景であるが,このパンデミックは各社会が内包する脆弱性を片端から明らかにしつつある.わが国の診療現場においても,少なからぬ数の「システムエラー」が明白になったが,その1つに「日常診療において『発熱患者』に対してどのようにワークアップすればよいのか,きちんと理解して診療している医師は決して多くない」という不都合な事実がある.卒前の医学教育において,疾患ごと・臓器ごとの縦割りの教育(そのメリットがいくぶんかは存在することは,旧世代の医学教育を受けた者としては,一応留保をつけておきたいところではあるが)を受け,卒後の臨床現場では多くはon-the-job trainingのかたちで,教える側の医師の専門性に大きく偏った教育が施される現状であれば,今後もしばらくは慣性的に現状が維持されるのではないかと悲観せざるを得ない.

 そのような状況で出版された『不明熱・不明炎症レジデントマニュアル』は,「遷延する発熱=不明熱」ならびに「不明炎症」という,非常にありふれていながらぞんざいな扱いを受けてきた症候に対して,多くの分野の専門家が寄稿する形でまとめられた1冊であり,まさにwith COVID-19の一著としてふさわしい内容である.編集者の國松淳和先生はすでに類似テーマで『外来で診る不明熱—Dr. Kの発熱カレンダーでよくわかる不明熱のミカタ』(中山書店,2017),『「これって自己炎症性疾患?」と思ったら—疑い,捉え,実践する』(金芳堂,2018)などのスマッシュヒットを飛ばしておられるが,今回のレジデントマニュアルは過去の単著よりもやや基本的なレベルに読者対象を絞っており,「レジデント」が踏まえておくべき内容として適切と思われる.一方で,「コアな國松ファン」にとっては,やや食い足りない感じも否めないが,そういう読者に向けては國松節全開の10章「とにかく全然わからないとき」,付章「こっそり読みたい『不明熱マニュアル外伝』」が準備されている.ただし,付章については「コアな國松ファン」は立ち入り禁止の札が立っているので,そういう意味でも「こっそり読みたい」.

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medicina
58巻5号 (2021年4月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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