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Key Questions
Q1:北欧では,どのようなビジョンに基づいて超高齢社会に向けたデジタル化を推進しているか?
Q2:北欧では,高齢者の生活を支えるために先端技術をどのように取り入れているか?
Q3:高齢者の自立生活を支える先端技術の今後の課題とは何か?
はじめに
高齢化の進展は21世紀を象徴する世界的な傾向である.多くの国々において,平均寿命の延伸と出生率の低下に対応するために医療・介護システムや社会保障制度の再編が推進されている.この変化は,高齢者の自立生活,健康,社会参加の可能性と課題を提示しており,さまざまな試行錯誤が試みられている.
超高齢社会先進国の日本では,医療と介護における持続可能な体制の改革を目指して,僅少な労働力による質の高いケアの実現に重点を置いている.急増する介護サービス需要に対応する手段の一つとして,介護テクノロジーの活用が注目されている.日本では,これまで主に介護施設を対象に介護ロボット,ICT,管理システム等の開発が推進されてきたが,在宅介護におけるデジタル化と介護テクノロジーの開発・導入はいまだ十分ではない.
北欧諸国——デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンにおいても,日本と同様に急速な高齢化の下にあり,高齢者の生活を支える持続性ある政策が求められている(表).北欧諸国は日本と共通した社会問題,すなわち労働力不足,農村での交通,介護需要の高騰に直面している.北欧諸国は高齢者の健康で活力ある生活を支えるための一連の戦略を採用している.この戦略はすべての人の福祉,平等,そして人間中心という共通の価値観に基づいている1).北欧のアプローチの基本的特徴は,デジタル技術によって福祉にイノベーションを達成し,自立生活を支え,“エイジング・イン・プレイス”を支えることにある.
すべての北欧諸国に共通して,福祉サービスと介護に関する制度には市町村が責務を有しており,高齢者介護を受ける権利はすべての市民に保障されており,北欧の高齢化政策は自立と参加の原則に深く根ざしている2).自治体は可能な限りの期間,地域における在宅生活を継続するための適切なデジタル機器と専門職による支援を行ってきた.これには,自律,安全,QOLを促進する機器・環境ならびにサービスモデルが含まれる.これらの目標は“モノとカネ”の観点のみならず,自己選択と地域社会への帰属,年代間の連帯に基づいた北欧の社会的価値観を反映している.
本稿では,超高齢社会に向けた課題を解決するための取り組みの一つとして,北欧諸国における超高齢社会に向けたデジタル化およびIT支援を紹介する.

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