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特集 高齢者へのICT支援
日めくりカレンダーアプリを用いた,認知症のある人と家族・支援者のエンパワメント
Empowerment of people with dementia and their families or caregivers through the use of a daily calendar app
西浦 裕子
1
Yuko Nishiura
1
1名古屋大学大学院
pp.992-996
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590090992
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Key Questions
Q1:認知症のある人へのICTの活用とは?
Q2:日めくりカレンダーアプリの開発経緯とその有効性とは?
Q3:認知機能を支援する福祉機器をより多くの人へ届けるには?
はじめに
本邦では,世界的にみても急速に少子高齢化が進んでおり,2050年には1人の高齢者を約1人で支える「肩車型」の構造になるものと想定されている1).このような社会状況にあって,誰もが互いに人格と個性を尊重し合い,理解し合いながら共に生きていく共生社会を実現することが求められている2).高齢者も,住み慣れた地域でできる限り自立した生活を送ることが重要であると考えられ,その一助として,福祉機器や情報通信技術(information and communication technology:ICT)の活用が有用であることが報告されている3,4).
軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)や認知症初期では,時間に関する機能が低下することが多い.特に,日付,曜日や時刻がわからなくなる時間の見当識障害は認知症の初期段階から認められ5),予定が立てられない,予定通りに行動できない等,スケジュール管理に困難を抱える者が多い6〜8).紙面のカレンダーでは日付を特定できない,新聞の日付欄は小さくて読みづらい等,既存の媒体を活用するのが難しいケースもある.
筆者は約12年間,このような困難を抱える方を支援するための福祉機器である電子カレンダー,および日めくりカレンダーアプリの開発研究に携わってきた.本稿では,開発までのプロセスを概観し,アプリの実践的な活用および効果について紹介する.

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