臨牀透析 33巻6号 (2017年6月)

特集 創造する透析医療―新たなmodalityへの期待と課題

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オンラインHDF の臨床効果としては,① 除去効率増加による効果,② 透析低血圧防止,③ 生命予後改善,④ 透析関連不定愁訴改善が報告されている.とくに透析低血圧防止,生命予後改善に関してはエビデンスが示されているが,その発現機序に関しては未だ不明確であり,その効果自体にも疑問が生ずる.今後の詳細な研究を待ちたい.

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日本の慢性透析患者は32 万人を超えたが,しかし,在宅血液透析患者の割合は1 %にも満たない.在宅透析により患者の生命予後やQOL の改善が期待されている.

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オーバーナイト透析とは患者の睡眠時間を利用した長時間透析療法で,患者にとっては,自由な時間が増えること,死亡リスクの低下,合併症の改善など,理想的な血液浄化療法の一つともいえるだろう.しかしオーバーナイト透析に対しての本邦の診療報酬が変わらないなか,それを提供するには施設側の負担が大きすぎて普及しない現実がある.そこで週3 回通常透析のうちの1 回のみをオーバーナイト透析に変えるだけなら,医療側負担を最小限に抑えつつ,より多くの施設でオーバーナイト透析が提供できるのではないかと考えている.さらには2 日空きの最大透析間隔をつくらないという大きな魅力がある.

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透析低血圧症の予防や末梢循環障害の是正 維持透析患者では,過度の除水に伴い透析中にしばしば血圧が低下する.実際に血圧が低下した場合,種々の処置が施されるが補液はその有効な手段の一つである.計画的な補液による透析低血圧症の予防や末梢循環障害の是正を目的にintermittentinfusion hemodiafi ltration(I―HDF;間歇補充型血液濾過透析)は考案された.I―HDFは,補液時にヘモダイアフィルタを介して清浄化された透析液の一部を逆濾過によって血液側へ移動させることを特徴とし,近年広く用いられている.

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末期腎不全に対する最初の腎代替療法(renal replacement therapy;RRT)として血液透析(hemodialysis;HD)でなく腹膜透析(peritonealdialysis;PD)を選択する,いわゆるPD ファーストは残存腎機能が保たれ,不均衡症状が少なく,在宅医療であり社会復帰が容易であるなどの利点から推奨されている.しかし腹膜機能が経年的に劣化し,また残存腎機能も低下するため,長期間のPD 単独治療継続は困難である.PD+HD 併用療法はPD 単独では透析不足や体液貯留傾向を是正できないときに行われる,わが国特有の治療法である.併用療法の臨床的有用性と課題について評価した.

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本邦の維持透析患者数は増加を続け,2015 年には32 万人を超え,平均年齢も67.9 歳と高齢化している.透析患者では,腎性貧血,尿毒症性低栄養,骨格筋減少・筋力低下,骨格筋機能異常,運動耐容能の低下,易疲労感,活動量減少,QOL の低下などが認められ,透析患者の運動耐容能は心不全患者やCOPD 患者と同程度まで低下している.一方,近年では透析患者の運動の効果について多数報告されている.よって,本稿ではどのような運動療法をいつ行うのが有効か,運動適応基準とリスクも含めて解説する.

【用語解説】腎臓リハビリテーション

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最近,透析導入患者の高齢化,糖尿病での導入患者の増加,長期透析患者の増加により穿刺困難患者が増加してきている.その対策としてアクセス穿刺に超音波モニタ(以下,エコー)が用いられるようになり,その有用性が報告されている.エコーを用いた穿刺(以下,エコー穿刺)の特徴は,血管や周囲組織,穿刺針の状態を実際に見ながら穿刺が可能な点にある.エコー穿刺の適応は,穿刺困難血管,安全性を考慮した穿刺が必要なとき,血管壁損傷回避目的などである.

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中性化イコデキストリン透析液登場の背景:腹膜透析療法にかかわる者にとり,2014 年に上市された中性イコデキストリン透析液は,本邦の腎代替療法における腹膜透析療法が果たす役割の向上を期待させる明るい事象でした.ブドウ糖に代わる浸透圧物質として添加されているイコデキストリンは,8〜12 時間の長時間の腹腔内貯留下でも浸透圧を維持することから,限外濾過不全による体液過剰の症例においてその有効性を十分に発揮しています.しかし,2003 年から本邦で発売されているイコデキストリン透析液は酸性液であるため,腹膜中皮細胞や腹腔内のマクロファージや好中球の機能への影響が少なく,また腹膜透析患者の組織障害が低減されることが報告されている中性化が長く望まれていました.これらの背景をうけて従来のイコデキストリン透析液の後発医薬品として本透析液は発売されたわけです.

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本邦の慢性透析患者数は三十数万人といわれる.そのうち97 %は血液透析で管理されているが,一方では患者の高齢化と合併症により心血管系の荒廃は著しく,体外循環・除水を要する血液透析ではきわめて循環動態が不安定となる.血液透析中の大きな問題は透析低血圧であり,ドライウエイトの調整や薬物投与などによって対応するが,治療中の管理・対処は透析スタッフにとっての大きな負担となっているのも事実である.このような背景から透析治療中のショック・発作性低血圧の予知が可能な生体モニタリング技術の開発が期待されており,その一法として,われわれはレーザー血流計の可能性について検討してきた.本稿では,ショックモニタとしてのレーザー血流計の原理とその臨床的有用性について述べる.

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連続溶質除去量モニタは,透析液排液中に含まれる尿素様溶質の濃度をリアルタイム計測することにより,生体内における溶質除去動態を単に把握するだけでなく,除去性能低下を引き起こす脱血不良やアクセス再循環といったトラブル検知が可能となる.連続溶質除去量モニタのアイデア自体は古く20 年ほど前からあり,その有用性についてもよく知られてはいたが,技術的要因により実用化までには至らなかった.それ以降目覚ましく進歩した科学技術により,近年ようやく実用化され普及が進みつつある.新たなモニタの活用法として,生体にとって有用な蛋白質であるアルブミンの漏出量モニタとしての可能性も示されている.連続溶質除去量モニタは,施設透析はもちろん在宅透析においても,患者個々の病態に合った適正な透析を安全かつ効率的に施行できる次世代透析に必要不可欠なモニタリング技術である.

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「全自動透析装置」という呼称は,現在のところ,正式な名称として定義されていない.現段階では,運転補助機能付き透析装置という名称が望ましいと考える.透析医療事故においては,いわゆる「全自動透析装置」の機能が事故防止に役立つものと期待できる.このことは,安全で安心な医療に大きく寄与するものと考える.自動化された装置は,人の作業量を少なくする.そのぶん患者への十分な観察とケアに時間を注ぎ,質の高い透析医療の実践を心がけることを忘れてはいけない.

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透析医療の現場は時代とともに複雑化してきており,それゆえにエラーを引き起こしやすい.多くの事故再発防止策が考案され現場で実践されているが,透析医療に関連したエラーは残念ながら減少していない.

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慢性透析患者の2007年のHCV抗体陽性率は9.8%と高率である.透析患者においても,HCV非感染患者と比較して,HCV感染患者の生命予後は低率であり,肝硬変や肝癌の発症率が高い.HCV感染透析患者の生命予後改善や透析施設での有病率や新規感染率の低下のため,抗ウイルス療法の施行は重要である.

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腎代替療法(renal replacement therapy;RRT)とは,血液透析,腹膜透析および腎移植の三つの末期腎不全治療法のことを指す.在宅血液透析を含め,約30年間をかけてすべてのRRTを経験した一症例が,一般的にいわれているこれらの治療法の利点と“実感”との乖離について主観的な立場から述べた.末期腎不全患者の残存腎機能をいかに長く保たせるかが,患者の“実感”に大きく影響する.結論として,一般的に知られている透析療法の利点と本症例の実感との大きな乖離はないが,間歇的治療から持続的治療に移行することによって,“good well―being”を感じるということは明らかな事実である.

【用語解説】HDP

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日本の透析システムはCDDS(central dialysis fl uid delivery system)が用いられており,世界的には特殊な方法である.この方法を海外へ普及することは難しいと予想されるが,水処理システム,水質管理方法は世界共通であり,トップレベルの日本式は十分に海外でも採用される.とくにASEANでは確実に透析患者が増加するため,積極的なアプローチを展開すべきである.水質管理には十分な教育が不可欠だが,NPO法人等を活用し,施設をリタイアした熟練技術を有する臨床工学技士を派遣すれば,ASEAN諸国の透析用水清浄化が短時間で可能となる.

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私は,1979 年の医学部卒業後に消化器専門の病院で初期研修を行いました.約2 年間に及ぶ集中研修により消化器系疾患については「ある程度」習熟できましたが,その一方で,腎臓病関係,とりわけ「透析医療の現場」は理解不能かつ不思議な分野でした.たとえば,透析中に血圧が突然低下し,嘔吐や四肢硬直などさまざまなアクシデントが起こり,時には意識レベルまで低下する場合があります.「このまま心臓が止まるのでは?」と慌てふためく私をよそに,周りのスタッフたちは至って冷静であり,「いつもなんですよ」と言いながら生理食塩水をせっせとポンピング注入しています.その患者さんが透析終了後にまるで「何事もなかった」かのように歩いて帰宅する姿には心底驚かされたものです.考えてみれば,急激な除水によって生じた症状がその是正によって回復するのは当たり前かもしれません.しかし,他の分野ではこのような現象はめったに起きません.透析医療は「医学の常識破り」の部分を併せ持つ「きわめて不自然な治療」と言えそうです.

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はじめに 可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome;PRES)は,おもに後頭葉白質を中心とした可逆性の皮質下血管性浮腫をきたす疾患群である.明確な診断基準はなく,頭痛,痙攣,視覚異常,神経障害などの臨床症状と,特徴的な頭部MRI 画像所見を有する.今回われわれは,PRES を呈した維持透析患者の一例を経験したので報告する.

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近年,イオン輸送体をtarget とする薬物が上市され,その有用性が喧伝されている.小腸のクロライドチャネル(ClC―2)に作用する便秘症治療薬ルビプロストン(アミティーザ®),糖尿病に対するナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2 阻害薬〔イプラグリフロジン(スーグラ®)〕ほかが日常診療に頻用されている.

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はじめに 超高齢社会を迎え,高齢者の日常生活を維持し健康寿命を延ばすための「フレイル予防」に大きな関心が集まっている.フレイルとは,身体面(サルコペニア,ロコモティブシンドローム)のみならず,心理面(認知機能低下,抑うつ症状)や社会面(独居,老老介護,貧困)など,多方面の脆弱性を含めた概念である.本人や医療者がフレイルに関心をもち,いち早く気づいて介入できれば,身体面を中心に改善することが期待される.

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症 例:86 歳,女性主 訴:全身倦怠感,食欲低下既往歴:78 歳;胆囊摘出術(胆石),82 歳;両側眼内レンズ挿入術(両側白内障),83 歳;良性発作性頭位めまい症,発作性心房細動家族歴:なし生活歴:喫煙・飲酒歴はない現病歴:73 歳から2 型糖尿病を他院で指摘されて,内服加療を開始した.83 歳からインスリンを導入した.合併した高血圧症の管理を目的に82 歳時に当院を受診した.その際sCre 4.3 mg/dL,eGFR 8.1 とCKD stage G5 であり,糖尿病性腎症に対して外来で管理されていたが,某年3 月,85 歳時にうっ血性心不全を契機に血液透析を導入され,以降は週3 回の維持透析を受けていた.透析を導入して7 カ月後,10 月中旬の定期採血で,Hb が以前の10〜11 g/dL 台から9.4 g/dL に低下し,フェリチン28.5 ng/mL,鉄/総鉄結合能105/261,網赤血球は23.1 ‰であった.ダルベポエチンアルファ(DA)の投与量を30 μg から40 μg に増量したが,鉄欠乏も合併していると考えて補充療法を開始した.この頃から全身倦怠感,食欲低下が出現した.11 月上旬の定期採血でHb8.8 g/dL,中旬には8.2 g/dL,平均赤血球容積(MCV)96.8 fL で正球性正色素性貧血が進行した.

腎不全とともに生きる患者および家族へのナラティブ・アプローチ

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Ⅰ.事例紹介 A さん,30 歳代,女性.右低形成腎.幼少期に左腎盂尿管移行部狭窄症に対し2度の手術を受ける.20 歳代で,第1 子出産.3 年後に第2 子を妊娠するが流産.30歳代で,左腎盂腫瘍と診断され左腎尿管全摘除術施行,同時に腹膜透析カテーテルを挿入している.

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目次

投稿規定

次号予告

編集後記

基本情報

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臨牀透析
33巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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