OPINION
「 不自然な治療」から「自然な治療」へ
佐藤 博
1
1東北大学大学院薬学研究科臨床薬学分野
pp.593-594
発行日 2017年6月10日
Published Date 2017/6/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000000071
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私は,1979 年の医学部卒業後に消化器専門の病院で初期研修を行いました.約2 年間に及ぶ集中研修により消化器系疾患については「ある程度」習熟できましたが,その一方で,腎臓病関係,とりわけ「透析医療の現場」は理解不能かつ不思議な分野でした.たとえば,透析中に血圧が突然低下し,嘔吐や四肢硬直などさまざまなアクシデントが起こり,時には意識レベルまで低下する場合があります.「このまま心臓が止まるのでは?」と慌てふためく私をよそに,周りのスタッフたちは至って冷静であり,「いつもなんですよ」と言いながら生理食塩水をせっせとポンピング注入しています.その患者さんが透析終了後にまるで「何事もなかった」かのように歩いて帰宅する姿には心底驚かされたものです.考えてみれば,急激な除水によって生じた症状がその是正によって回復するのは当たり前かもしれません.しかし,他の分野ではこのような現象はめったに起きません.透析医療は「医学の常識破り」の部分を併せ持つ「きわめて不自然な治療」と言えそうです.
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