臨牀透析 29巻8号 (2013年7月)

透析患者の栄養障害とNSTの可能性

透析患者の栄養障害とは? 熊谷 裕通
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透析患者では,食事摂取量の低下,透析による栄養素の喪失,肝や筋における蛋白合成の低下,異化の亢進などさまざまな理由により栄養障害をきたす.これらの成因には透析患者の体内で生じる軽度な炎症が深く関わっており,栄養障害が長期間持続すると,筋肉や脂肪の減少が生じ消耗状態となる.透析患者の栄養障害の病態は,消耗性クワシオルコルという病態と類似している.近年,透析患者の栄養障害を蛋白質・エネルギー消耗状態として,その診断基準が定められた.この診断基準には,従来から広く用いられてきた血液検査値,肥満度,体重減少,食事摂取量に加え,体脂肪率や筋肉量など体組成に関する項目が取り入れられた.

MIA症候群とは? 本田 浩一 , 秋澤 忠男
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透析患者では慢性炎症や栄養障害,動脈硬化の因子により形成される特徴的な病態が出現する.この病態はMIA症候群と呼ばれ,透析患者の死亡率上昇に直結する重要な合併症である.MIA症候群の根幹には慢性炎症が位置するため,慢性炎症の遷延や進展に関与する機序を適切に捉えることが病態の理解のうえで重要である.とくに酸化ストレスとカルボニルストレス,炎症性因子と抗炎症性因子などが複雑に関連しながら慢性炎症を助長させ,さらに摂食や体蛋白合成に関わる因子が栄養障害の進展に影響する.MIA症候群の適切な理解が透析患者の予後向上のうえで重要である.

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サルコペニアは筋肉量の減少および筋力の低下を特徴とし,ADL(日常生活動作)の悪化やQOL(生活の質)の低下,死亡リスクを伴う症候群である.The European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)では,サルコペニアを加齢による一次的なものと廃用や疾患による二次的なものに大別している.筋肉量は,筋肉合成と筋肉異化のバランスによって調節されているが,慢性腎臓病(CKD)患者では筋肉合成が低下し異化が亢進している.さらに骨格筋萎縮と関連する筋肉内のミオスタチン遺伝子発現が増加していることが報告されている.また,大腿部を含む四肢の筋肉量の低下は患者の生命予後にも悪影響を及ぼすことも報告されている.

Nutrition Support Teamについて 市川 和子
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平成22年の診療報酬改定にて新設されて以来,NST(nutrition support team)という言葉が,今や日常的に用いられるようになり,あらゆる治療のもっとも基本的なものとなってきつつある.栄養状態の良否により,治療効果を大きく左右することが周知されてきたからである.とくに急性期における意義は高く術後などの回復に大きく関わっている.一方,透析など慢性疾患においても早期からの栄養介入が生命予後にも関与していることから注目を浴びてきつつある.栄養療法から栄養治療への移行期であるのかもしれない.

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神戸大学医学部附属病院では,栄養状態のみならず,電解質異常も重要であるとの観点から,NEST(Nutrition & Electrolyte Support Team)として活動を行っている.8職種がそれぞれの専門知識を持ち寄り,1回につき20~25名程度の回診を行っている.回診前後にはミーティングを行い,NESTとしての提案内容を検討している.回診日は週1回のため,回診以外の曜日にNEST専従管理栄養士による病棟訪問を行っている.また,転院する患者に対しては,患者情報提供書を作成し,転院後の栄養管理の参考としていただいている.必要栄養量の設定は適切であるか,現在の食事内容,投与内容が適切であるかを常に確認しながら,栄養管理を進めていくことが重要となる.

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当院の栄養管理は,病棟管理栄養士の配置によるNCM(nutrition care management:栄養管理サービス)の導入を経て2002年10月より全科型のNST(nutrition support team)が発足し現在に至っている.NSTへの介入は,NCMによる栄養不良の抽出や医師・スタッフによる提案,口腔ケア・摂食・嚥下評価依頼により決定する.活動は,ランチタイムミーティングと病棟回診を中心に行い,各スタッフが記載したNSTラウンドコメディカルコメントと回診で得た情報を基にNSTからの提案を電子カルテに記載する.また地域連携にNST患者の転院後の栄養サマリー配信やNST研修生との情報交換も実施している.

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透析患者の慢性的な栄養障害は生命予後に大きく関与している.とくに高齢者や糖尿病患者,長期透析患者は栄養障害を伴うことが多い.栄養障害の原因は,食事摂取量の不足,異化亢進,合併症,慢性炎症などがあり死亡率と強い相関がある.栄養状態悪化を早期に発見し早期治療をすることがQOLや生命予後の改善につながる.当院では,入院患者を対象にNST(nutrition support team)活動を開始したが,入院時のみの栄養評価・指導では,透析患者の栄養改善は困難であると考え,通院透析患者もNSTの対象とした.メンバーは,医師,管理栄養士,薬剤師,病棟看護師に加えて透析室看護師とした.そして,入院・通院透析患者の一貫した栄養評価・指導を行っている.

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当院は消化器科,糖尿病科,腎臓科に特化した小規模急性期病院である.NST(nutrition support team)は2002年東北地方で最初に立ち上げ,職員全員がメンバーで活動を行っている.腎臓科は,NST立ち上げ以前から透析治療に栄養療法は組み込まれるべきものであるという考えのもと,チーム医療を行っている.透析室の栄養管理は栄養スクリーニング,栄養アセスメント,ケアプランの実施と見直しからなる,PDCA(plan,do,check,action)マネジメントサイクルを導入している.現在NSTの活動はないが,回診,カンファランスのなかで栄養に関する問題や改善点の報告を行い,各職種も把握できる体制になっており,診療のなかに浸透している.

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NST(nutrition support team)活動はおもに,病院において入院患者に対するものであった.糖尿病合併や高齢者,長期透析患者の増加など栄養障害を有する透析患者が増加しているわが国の現状から,透析クリニックにおいてもNST活動のニーズが高まることが容易に予想される.しかし,無床クリニックではNST加算が算定できないことや,資源に制限のある透析クリニックにおいて,NST活動の実践は困難であるのが現状かもしれない.そのため,透析クリニックにおけるNST活動の報告は乏しい.透析患者が質の高い透析ライフを送るためにも,透析クリニックにおいてもNST活動の普及が今後の重要な課題と考えられる.

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高齢化社会が進み,高齢透析患者数は年々増加している.社会環境の変化により独居高齢者数は増加し,介護施設の必要性が大きく迫られているが,透析患者が入居可能な介護施設は少ない.高齢者特有の身体状況の変化や精神状態,生活環境の変化に加え,透析患者は食事制限や水分制限などが必要であるため低栄養に陥りやすく,栄養管理を含めた介護支援は非常に重要である.本稿では,当施設の病院と特別養護老人ホーム間での栄養管理サポート体制について述べる.

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腹膜透析は患者自身による末期腎不全の在宅治療・自己治療である.患者の高齢化が進み,独居や活動レベルの低下,治療食の準備が困難など,生活上の問題は多岐にわたる.日々の食事療法も自身で判断して行うことが多く,腎不全による栄養障害に加え,経腹膜的糖質吸収や蛋白漏出,カリウムの除去など本治療法に特異的な栄養障害を伴いやすい.栄養サポートを適切に行うためには,即時的な栄養評価を継続して実施し,医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士など多職種にわたって情報を共有することが望ましい.本稿では,情報共有化のために,多項目の栄養指標を一つにまとめたシートを運用し,その有用性を検討したので報告する.

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透析患者は,筋力低下や骨代謝異常などにより骨折しやすく,脳血管障害は死因の第4位を占める重要な合併症である.骨折も脳血管障害も病状が安定し始めた回復期に集中的なリハビリを行うことが,ADLやQOLの向上にもっとも効果的であるが,これまで透析患者は,さまざまな理由から回復期リハビリテーション(回リハ)病棟への受け入れが難しいといった現状があった.しかし,平成24年度診療報酬改定により,人工腎臓の手技料が当病棟の包括範囲から外れ,当院は透析患者中心の回リハ病棟を開設した.NST(nutrition support team)は,リハビリ効率向上のために栄養管理は重要と考え,栄養面から透析患者のリハビリを支援するために回リハ栄養カンファレンスを実施し,積極的介入を行っている.

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褥瘡発生の要因の一つに,低栄養が挙げられている.発症後も栄養状態の改善が必要とされている.褥瘡における栄養サポートチーム(NST)の目的は,褥瘡を発生させないこと,発生した場合は重症化させないことである.褥瘡予防の段階からNSTの介入が必要である.医師,看護師,薬剤師,管理栄養士が情報交換し,それぞれの専門性により患者の栄養状態,基礎疾患をアセスメントし,栄養療法,基礎疾患の管理をする.透析患者の栄養アセスメントは血清アルブミンのみならず,体重減少率,BMI(body mass index),ドライウエイトの変化,喫食率などさまざまな評価を用いて行う.褥瘡発生予防,治癒に必要な栄養量を補給することで尿素窒素,血清リン値,血清カリウム値などが上昇することがあり,検査データの評価が必要となる.つまり,NSTの重要性が大きくなってくる.

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下肢壊疽を有する透析患者に対しては,十分なエネルギー・たんぱく質を摂取し,除脂肪体重を維持しなければ,創傷治癒は難しい.さらに,アルギニン,グルタミン,HMB投与が創傷治癒には有効である.当院では,フットカンファレンスで取り上げられた症例が自動的にNST(nutrition support team)介入となるシステムを構築している.NSTが介入した下肢壊疽のある透析患者を後方視的に死亡群と生存群で比較すると,死亡群はNST介入終了時でCRPが高値であり,感染のコントロールが困難であった可能性が示唆された.

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スタッフ数の限られる透析施設において,NST(nutrition support team)活動で看護師の果たす役割は大きく,すべての患者から栄養リスクのある患者を抽出することが求められる.スクリーニング法として高齢者栄養リスク指標(GNRI)が有用だが,GNRIはエネルギーやたんぱく質摂取量と相関しないため,抽出された患者は食事摂取量について評価する必要がある.管理栄養士は喫食状況および病態に応じて,経腸栄養剤を処方する.もし栄養相談や経口摂取がうまくいかない場合には,薬剤師は透析中高カロリー輸液(IDPN)を提案する.臨床工学技士は,栄養障害患者に対する適切な透析量,ダイアライザ,透析液について提案する.こうした多職種の介入により,栄養リスクのある透析患者を早期発見し,protein-energy wastingの予防が可能となる.今後は,透析患者に対するNST活動のエビデンスが確立されることを期待したい.

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40歳代女。多発性嚢胞腎(ADPKD)にて紹介され、食事療法、降圧治療、腎性貧血に対して赤血球造血刺激因子製剤(ESA)投与を行っていた。腎機能の悪化に伴いバスキュラーアクセス(VA)造設手術を予定していたが、予定前に右背部側腹部痛の出現、疼痛と発熱の持続、胸部X線で右胸水貯留と無気肺、重篤な貧血を認め、腎嚢胞出血が疑われ緊急入院となった。超音波検査では、肝・腎は多数の嚢胞で腫大し、造影CTでは肝嚢胞の感染による胸水貯留の可能性を疑ったが、明らかな腎嚢胞出血は確認できなかった。輸血と広域抗菌薬(メロペネム)投与を開始したが、右胸水が急激に増加し第5病日に胸部圧迫感と呼吸苦が出現し、意識レベルも低下し、尿毒症性脳症が疑われた。第6病日の右胸腔穿刺では濁った膿瘍胸水が排液され肺膿瘍と診断し、第7病日より血液透析を導入した。FDG-PET/CTを行ったところ、肝右葉の横隔膜の辺縁部、右葉尾側の嚢胞辺縁部に強い集積を認め、右葉肝嚢胞感染から横隔膜を介して波及した肺膿瘍と診断した。メロペネムとシプロキサンの併用と胸腔持続ドレナージにて改善し、2週間後にドレーンを抜去した。その後、発熱、CRP値は改善した。

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56歳女。約9年前に慢性腎不全およびC型肝炎を指摘され、約8年前より血液透析導入し、週3回の維持透析中であった。HCV抗体陽性、HCVはセロタイプ2型、HCV-RNA量4.5logIU/mLであり、PEG-IFN療法目的に入院とした。甲状腺機能異常や間質性肺炎、眼底出血や網膜症に問題なく、肝硬変や肝癌の発症も見られないことを確認し、PEG-IFNα-2a単独療法を開始した。投与量は週1回90μgで透析終了時に皮下注射を2回行ったが、明らかな副作用や合併症もなく全身状態は安定し、PEG-IFNα-2a投与開始5週時点でHCV-RNAは陰性化し。以後も陰性を保ち、持続ウイルス学的陰性に至った。好中球数、血小板を指標に投与量を調整しながら治療を継続し治療開始後、約5ヵ月に24回目の投与でインターフェロン(IFN)療法を終了した。肝線維化評価としてAPRIを用いたが、治療終了後は明らかに低下が認められた。

基本情報

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臨牀透析
29巻8号 (2013年7月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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