臨牀透析 29巻9号 (2013年8月)

透析スタッフに必要な腎移植医療の知識2013

最近の腎移植の現状 八木澤 隆
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新しい免疫抑制薬の臨床応用や合併症に対する治療法の進歩によって腎移植の成績は向上し,わが国においても症例数は増加しつつある,2010年には年間1,484例,2011年は1,601例,2012年には1,605例の腎移植が施行されている.実施例の85~90%は生体腎移植であり,献腎移植は年間200例程度を推移している.移植の適応は拡大され,ABO血液型不適合移植,夫婦間移植,先行的移植の割合は増え,また60歳以上の高齢者の移植例も増えている.長期成績のいっそうの向上と献腎移植の推進が課題である.

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理想的な腎移植患者の条件は多々あるが,移植医療に関する自己学習と自己管理が積極的にできる患者が理想像である.またこの基本姿勢は,腎移植を受ける前段階から重要であり,さらに,周術期や移植後の長期管理にも必須となる.そして,それぞれの段階で,必要な医学的知識は異なり,他者依存的な姿勢では十分な自己学習や自己管理はできない.また,社会的活動,医療者とのよい関係保持ができることも理想的な腎移植患者像である.理想的な患者像への努力は,腎移植の長期成功への鍵でもある.

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近年,腎移植実施件数は増加傾向を示し,腎移植は一般的な腎代替療法として普及してきている.今後,腎不全に携わる医師は移植医療に関わる機会が多くなることから,透析療法のみならず移植診療に対して理解が求められる.移植前には最適な移植の導入時期や先行的腎移植の是非について検討し,移植腎機能廃絶後には透析管理を支障なく行う必要がある.個々の患者に合わせた包括的腎不全医療を提供するため,生涯にわたる腎不全に対し長期的な計画に基づいて腎代替療法を選択し,透析または移植の継続性を保つことが望まれる.

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慢性拒絶反応(chronic rejection;CR)は,免疫学的機序のものと非免疫学的なものとがあるが,両者を含んだものが,広義のCRとされている.非免疫学的慢性拒絶反応とは移植免疫の関与しない慢性腎機能障害である.狭義の慢性拒絶反応である慢性活動性抗体関連型拒絶反応(CAAMR)では,高血圧を伴ってくることが多い.診断には腎生検を行うことと,抗HLA抗体を評価することが必要である.移植後長期にわたる腎機能低下進行にはさまざまな因子が関わっている.とくに免疫学的慢性拒絶反応の病態解明と診断基準確立により正確な診断ができるようになってきた.免疫学的解析法の進歩,病理学的診断基準整備,非免疫学的臓器障害の診断に関する進歩などにより今後も解明されていくと思われる.

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免疫抑制薬の開発,進歩により腎移植の成績は飛躍的に向上した.カルシニューリンインヒビター(CNI)は現代の免疫抑制療法の中心的薬剤として,その強力な免疫抑制作用により短期成績向上に大きく寄与した一方で,維持期においては慢性腎毒性に加え,高血圧,耐糖能障害,脂質異常などにより心血管合併症のリスクを増大させ,長期成績に影響を及ぼすことがわかってきた.CNIを減量する免疫抑制プロトコールの開発やCNIに代わる新規免疫抑制薬の臨床試験が進められている.

腎移植と感染症 原田 浩
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腎移植後は免疫抑制薬により,種々の外来微生物の感染が成立しやすい.既感染微生物による日和見感染も特徴の一つである.背景疾患や手術侵襲も考慮する必要がある.起因微生物として,一般的なもの以外に肺炎球菌,ニューモシスチス・イロベチーは有名である.さらにウイルスではヘルペスウイルス科のサイトメガロウイルスは臓器障害を引き起こし,水痘・帯状疱疹ウイルスは重症例では脳炎から致死的となる.エプスタイン・バーウイルスは移植後リンパ球増殖症を引き起こす.また腎症により移植腎機能に影響を与えるBKウイルスにも留意する必要がある.移植後の感染症の発症の抑制には,可能ならワクチン接種や適正な免疫抑制薬の調整が鍵を握る.

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腎移植患者においても,生活習慣病のさまざまな要因と密接に関連しているメタボリック症候群は,大きな問題となっている.腎移植後に合併するメタボリック症候群は,移植腎機能の悪化や,心血管病を引き起こす可能性がある.腎移植後,生活の質の改善がみられるが,投与されるステロイド剤によって,内臓脂肪が蓄積しやすくなる.さらにカルシニューリン阻害薬はステロイド剤とともに,メタボリック症候群のその他の要因,すなわち高血圧,脂質代謝異常,耐糖能異常などに悪影響を与える.メタボリック症候群を防ぐ目的で,最近はステロイド剤を減量・中止するレジメンが行われている.腎移植患者の,薬物療法を含めた管理や治療方針については,2011年に日本臨床腎移植学会が提案した『腎移植後内科・小児科系合併症の診療ガイドライン』に詳述されている.

糖尿病と腎移植 酒井 謙
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移植腎が生着し社会復帰している患者数は腹膜透析総数を超える.腎移植総数のうちの10%が原疾患糖尿病からの移植であり,この場合,その代謝環境は移植後も持続する.したがって移植前の心血管系リスクの評価とともに,移植後の心血管事故に十分留意する必要がある.とはいえ,移植後の生活の質および生存率は糖尿病においても,移植待機で透析を継続するより良い.また臓器移植法案の成立後,1型糖尿病における膵腎同時移植が増加している.腎移植も膵腎同時移植も,透析期における全身の血管障害を背負っての再出発であり,移植後血糖管理は重要であるが,移植医療は,もはや糖尿病性腎症の普遍的な治療法となっている.

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新規透析導入患者の高齢化を迎えるわが国では,高齢者に対する腎移植について真剣に考えなければならない.当科でも,高齢者に対する腎移植の割合は年々増加しており,生着率(death censored graft survival)は,若年レシピエントと比較しても有意差はなかった.しかし,高齢者レシピエントは移植腎が生着したまま,他の要因で死亡する症例(death with functioning graft)が多かった.高齢者からの腎提供も安全に行われており,夫婦間の移植も増加している.高齢者に対する腎移植レシピエントもしくは,ドナーに関する適応,成績を含め文献を加えて考察した.

小児腎移植の現況 服部 元史
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小児末期腎不全診療(とくに腎移植)の現況について概説する.近年の慢性腎不全診療の進歩は目覚ましく,小児患者の長期生存が可能となっている.腎移植は適応が拡大されつつあり(ABO血液型不適合症例や原発性過蓚酸尿症に対する肝・腎複合移植など),また最近の安定した成績を背景として先行的腎移植が積極的に実践されている.現在の治療目標は,自立した社会人に育てることにあり,保存期腎不全の時期から,子どもたちの生涯にわたる腎不全治療計画を立てることが肝要である.また,小児末期腎不全診療は長期間かつ多方面にわたるため,さまざまな職種の医療従事者との密接な連携が必要不可欠である.

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生体腎移植施行に当たってはドナーの安全性が最優先されねばならない.当施設では1970年より生体腎提供の条件を,(1)自発的な提供の意思があること,(2)活動性の感染症,悪性腫瘍などがないこと,(3)コントロール不良な高血圧,糖尿病,代謝異常などがないこと,(4)腎に関する条件として,尿蛋白陰性,CCrが80mL/min以上,両腎の機能に大きな差がない,解剖学的な著しい異常がないものとして生体腎移植を行ってきた.今回の検討において長期予後においても一般人口と比して劣るものではなく,これまでのドナー選択,手術手技,術中術後管理に大きな問題はなかったと考えられる.しかし,今後も臓器不足や生活習慣病の増加に伴い生体腎ドナーも糖尿病,高血圧などを合併したマージナルドナーが増加拡大していく可能性も考えられる.この点で腎臓内科医の協力の下に年に1~2回の外来フォローを含めた長期の定期的フォローが必要である.

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腎移植件数は年々増加傾向にあり,先行的腎移植を受ける患者も増えている.そのため,末期腎不全の患者が,透析(血液透析・腹膜透析)か腎移植を選択するとき,患者やその家族が正しい情報を十分理解したうえで治療選択が行えるよう意思決定支援が必要である.また,移植が増加する一方で,透析再導入となる患者がいる現実もある.より長く移植腎機能を保つために,移植前から移植後の生活を考えた患者教育も重要である.患者の治療選択時,透析再導入時には,身近な存在であるレシピエント移植コーディネーターと透析スタッフが患者に寄り添い,その人らしい意思決定が行えるよう連携していく必要がある.

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透析導入期の腎性貧血治療における持続性エリスロポエチン受容体活性化剤(C.E.R.A.)の有用性について検討した。C.E.R.A.を投与した82例例を対象とした。57例は遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)の先行投与を受けていた。C.E.R.A.群はrHuEPO群と比べ、透析導入期の一時的なHbの低下は認めなかった。透析導入時のHbはC.E.R.A.群は9.6±0.5g/dLで、rHuEPO群は8.2±0.7g/dLまで低下した。透析導入時を含め導入の前後1ヵ月のHbの値は、両群間に有意差を認めた。C.E.R.A.投与量は透析導人期に増加傾向を認めたが、透析導入後の投与量は大きな変化はなく、4週に1回の投与でHbは安定した経過をたどった。

基本情報

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臨牀透析
29巻9号 (2013年8月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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