臨床雑誌整形外科 76巻1号 (2025年1月発行)

←前の号

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

論説

大腿骨転子部骨折の側面解剖型整復で注意すべき骨折型と対処法山田　郁史 , 松原　全宏 , 田中　栄 , 藤田　裕 , 大寳　英矢 , 正野　喜一 , 小島　英郎 , 河野　正明 76巻1号 , 2025年1月 , pp.1-4

PDF(3070KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　Intramedullary hip nail（IHN）やsliding hip screw（SHS）による大腿骨転子部骨折術後，過度のテレスコープはラグスクリューのカットアウトにいたる危険徴候であるといわれている^1）．代表例は整復型でいうところの側面髄内型（以下，髄内型）である．一方で，側面解剖型（以下，解剖型）はこれらが抑制され成績良好であるため，手術目標の一つとなっている^2）．

　しかし，解剖型は一律ではなくテレスコープ距離が長い型と短い型があり，われわれは術式や後療法の選択に考慮を要すると考えたので報告する．

経験と考察

再発例からみた腰椎疲労骨折画像の解釈小林　良充 , 尾藤　晴彦 , 船越　雄誠 , 滝　正徳 , 塩崎　太郎 , 大嶋　教勢 , 浮田　大貴 , 阿部　真行 , 杉山　雅洋 , 中西　潤 76巻1号 , 2025年1月 , pp.5-11

PDF(887KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　成長期腰椎疲労骨折の画像所見で，MRIの信号変化は片側にあり，CTで左右両側の椎弓に骨折があることがある．信号変化のない椎弓の骨折が偽関節型ならば，信号変化のある骨折はこの骨折より後に生じたと考える．しかし両側とも不全骨折の場合は，その解釈に戸惑う．このような画像所見は臨床でよくみるが，この点に関して言及している報告はない．

　筆者らは，腰椎疲労骨折の広義の再発（recurrence）を，初診時骨折と異なる高位の腰椎や同じ腰椎の異なる部位に新たな骨折が発生する再発と，骨癒合しかかった骨折の狭義の再発・再骨折（refracture）に分類し，再発例の約3割に初診の時点ですでに骨癒合後の骨折の痕跡や偽関節化した骨折を認め，その多くに腰痛歴がなかったことなどを報告した^1）．また信号変化を伴う腰椎疲労骨折が偶然発見されることがあり，無症状で運動を続けながら骨折が骨癒合もしくは偽関節となる可能性を示唆した^2）．

　本稿では，前述した画像所見を理解する一助になると考え，再発例を椎体高位別に検討した．

抜釘例と抜釘時トラブル症例島　稔樹 , 深澤　高広 , 大内　聖士 76巻1号 , 2025年1月 , pp.13-16

PDF(1549KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　整形外傷術後の骨内異物除去術（抜釘術）にはインプラントによる刺激症状の消失や関節可動域の改善といったメリットがある一方で，抜釘時のトラブルや感染，再骨折などのデメリットがあることが知られている．また，抜釘術の必要性やその時期については明確なコンセンサスは得られていない．

　本稿では，当院における抜釘例および抜釘時のトラブルについて検討したので報告する．

Anterolateral supineアプローチ人工股関節全置換術におけるイメージガイド下単独と拡張現実（AR）ナビゲーション併用におけるカップ設置精度の比較村上　剛史 , 松田　匡弘 , 徳永　真巳 , 松田　秀策 , 井浦　国生 , 吉本　隆昌 76巻1号 , 2025年1月 , pp.17-20

PDF(466KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　人工股関節全置換術（total hip arthroplasty：THA）において適切なインプラント設置は，良好な臨床成績と再置換率の低下につながると考えられている．不適切なカップ設置はインピンジメントの原因となり，脱臼，破損，メタローシス，早期の弛みなどの合併症の原因になりうる^1）．外方開角（radiographic inclination：RI）が45°～50°以上になると辺縁荷重に伴う摩耗の増強や破損率が増加し^2），35°以下になると可動域が減少すると報告されている^3）．立位で骨盤後傾する症例ではedge-loadingのリスクが高まることからも40°で推奨されることが一般的である^4）．Combined anteversionや脊椎矢状面アライメント，カップの被覆率や腸腰筋インピンジメント予防の観点からも，前方開角（radiographic anteversion：RA）の目標設置角度は患者個別に調整が必要といえる^5）．そのため臼蓋や大腿骨前捻などの骨形態や脊椎骨盤矢状面傾斜変化などに応じて，適切な角度でインプラントを設置することは重要である．

　仰臥位前側方（anterolateral supine：ALS）アプローチによるTHAは，仰臥位のため骨盤の傾きが少なくイメージも利用できるため，術中にアライメントを確認することも容易である．

　本研究では，ALSによるTHAにおいてイメージガイド下単独群とイメージとAugmented Reality Hip Navigationシステム（AR Hip）［ジンマー・バイオメット社］併用群におけるカップ設置角度の比較・検討を行った．

膝痛による健康問題を有する労働者における理学所見と労働生産性の特性岩崎　翼 76巻1号 , 2025年1月 , pp.21-26

PDF(383KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　変形性膝関節症（osteoarthritis：OA）は疼痛と可動域制限による機能障害から生活の質（QOL）の低下が報告されている^1）．OAは労働生産年齢とされる65歳未満での罹患率が報告され^2），65歳未満のOAを有する労働者では労働生産性の低下を引き起こすとされる^2～5）．しかし整形外科未受診者における膝痛と労働生産性の関係は明らかではない．

　労働生産性の評価として欠勤率が一般的であるが^3,4），近年，プレゼンティーズムによる評価が報告されている^6,7）．プレゼンティーズムは出勤しているものの，疾病などの健康問題により労働能力が低下している状態と定義され，その評価の有用性が指摘されている^8）．

　本研究では，整形外科未受診の労働者を対象とし，膝痛による健康問題が与える影響を明らかにすることを目的とした．すなわち研究1として質問紙を用いた膝機能評価と労働生産性の状況を明らかにすること，研究2として理学所見の特性について明らかにすることとした．

骨粗鬆症外来における患者指導用動画の有用性 -――患者が効率よく理解しやすい指導をめざして森下　美保 , 遠藤　純子 , 青柳　典子 , 荒川　祥子 , 中道　清広 , 岩本　潤 76巻1号 , 2025年1月 , pp.27-31

PDF(506KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　わが国では，急速な高齢化に伴い骨粗鬆症患者が年々増加しており，その数は1,580万人と推計されている^1）．骨折・転倒は要介護の要因となること（2022年国民生活調査），骨粗鬆症に関連する骨折（椎体・大腿骨近位部）は死亡率を高める（骨卒中）ことが知られている^2）．しかし，転倒して骨折することで要介護になるリスクが高い骨粗鬆症は，生命にかかわる疾患ではないと考える人が多く，治療率や治療継続率が低いことが問題となっている^3）．

　骨粗鬆症患者に接する機会の多い整形外科診療所において，骨粗鬆症の治療率を向上するためには，外来で骨折リスクの高いと思われる患者に検査をすすめること，治療継続率を向上するためには，患者に治療の必要性を啓発することが必要である．しかし，個々の患者への説明に時間がかかることが多く，簡潔でかつ有効な説明が求められる^4）．

　当施設（附属の診療所：宇沢整形外科）では，看護スタッフ5（看護師 4，メディカルアシスタント 1）名が外来業務に携わっている．一般整形外科外来に加えて，週2日，骨粗鬆症専門外来も行われており，50～90歳代の多くの閉経後女性や高齢者が治療されている^5）．骨粗鬆症専門外来における看護師の役割として，骨粗鬆症の病態を理解したうえでの，患者に対する生活指導や薬物療法継続の支援があげられる．われわれは，煩雑な診療の中でも効率よく，高齢患者が理解できる骨粗鬆症の指導・支援を確立するために，企業からの冊子と骨粗鬆症連携手帳をもとに患者指導用動画と治療経過表を作成した．渉猟しえた範囲では，骨粗鬆症診療における患者指導用動画の有用性について検討した先行研究は見当たらない．

　本研究の目的は，指導用動画と治療経過表を使用することでより効率よく，高齢患者にも理解しやすい指導・支援につながるか否かを検討することである．

誌説

医師と「批判的思考」堀内　圭輔 76巻1号 , 2025年1月 , pp.12-12

PDF(150KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　米国の整形外科専攻医の研修には，最低60日間の研究期間を確保することが義務づけられているようです．日本の専攻医研修にはない，興味深い試みだと思います．しかし，これに対して真っ向から反対する誌説が2022年の『Clinical Orthopaedics and Related Research』に掲載され（Leopold SS. Editorial：Should Orthopaedic Residents Be Required To Do research, or Would Critical Reading Programs Be a Better Use of Their Time? 2022；480：1025-7），反響を呼びました．その誌説では，専攻医のプログラムから「研究」のカリキュラムを撤廃し，論文やデータを批判的に読み，正確に評価できるようになるための研修を組み込むべきだと主張しています．すなわち2ヵ月間の研究に従事するよりも，その時間をcritical appraisal（ここでは「批判的思考」と意訳します）の教育に充てるほうが，専攻医の教育により重要であるということです．

私論

魔法のインプラント白井　寿治 76巻1号 , 2025年1月 , pp.32-32

PDF(151KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　私の専門は骨・軟部腫瘍です．治療の発展に伴い骨肉腫が治癒する症例も増えてきました．しかし，術後の感染で切断に至ってしまう症例も存在します．せっかく腫瘍に打ち勝っても感染に敗北するのは残念で仕方がありません．そこで私たちは，抗菌インプラントの研究に長年携わってきました．なんとか術後感染を減らしたい，そして切断に至らなくてすむようにしたい，その思い一筋で頑張ってきました．

臨床室

6回の手術で仙骨から上位胸椎まで固定延長した1例小島　利協 , 武村　憲治 , 柏崎　裕一 , 河合　孝誠 , 大藤　勇樹 76巻1号 , 2025年1月 , pp.33-38

PDF(3304KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　同一病院で長期にわたり脊椎固定手術を行っていると，隣接椎間障害や続発骨折などにより固定延長術を行う機会が多くなる．患者が高齢化し骨粗鬆症性椎体骨折（OVF）を起こすようになると，短期間で固定延長術を繰り返すこともある．

　本稿では，6回の手術で仙骨から上位胸椎まで固定延長した患者の手術歴を振り返り，固定延長術の適応と手術方法について考察した．

Group B Streptococciを起因菌とするきわめてまれな骨盤内骨格筋に発生した化膿性筋炎の1例岡田　和也 , 細川　高史 , 高橋　佑 , 須藤　執道 , 筑田　博隆 76巻1号 , 2025年1月 , pp.39-42

PDF(3536KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　化膿性筋炎はアジア，アフリカなどの熱帯地方で好発している炎症性疾患であるが，近年温帯地方からの症例報告が増加している^1）．わが国もまれではあるが遭遇する頻度が増えつつある．

　化膿性筋炎の起因菌としては黄色ブドウ球菌（Staphylococcus aureus）が約70％を占め，次いでA群溶血性連鎖球菌（group A Streptococcus）が多いと報告されている^1）．

陳旧性アキレス腱断裂に対する超音波ガイド下のAchilles Midsubstance SpeedBridge法による再建術の1例曽和　智子 , 北野　岳史 , 角谷　正文 , 南　貴雄 , 𠮷田　宗人 76巻1号 , 2025年1月 , pp.43-46

PDF(1107KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　陳旧性アキレス腱断裂に対する治療は諸家により数多く報告されている．しかし，その再建方法や治療成績はさまざまである．

　本稿では，瘢痕組織を利用して縫縮するdirect repair methodと専用デバイス（図1）を用いた小切開法で，強固な内固定が可能なAchilles Midsubstance SpeedBridge法を用いて超音波ガイド下に再建した陳旧性アキレス腱断裂の1例を報告する．

お知らせ

第36回日本整形外科超音波学会（JASOU2025） 76巻1号 , 2025年1月 , pp.38-38

PDF(185KB)

販売していません

文献概要を表示

会　　期　2025年7月11日（金）～12日（土）

連載　整形外科医療・機器開発秘話

自家培養軟骨ジャックへ至る道内尾　祐司 76巻1号 , 2025年1月 , pp.47-50

PDF(1742KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　1994年，Brittbergらが発表した自家軟骨細胞培養移植術（autologous chondrocyte implantation：ACI）は修復困難な膝関節軟骨欠損に対する再生医療としての新機軸をもたらした^1）．本法はまず関節鏡視下に大腿骨非荷重部の軟骨を採取し，生体外で酵素処理して自家軟骨細胞を単離し，培養フラスコ内で2～3週間培養・増殖させた後，二期的に関節切開し軟骨欠損部に培養細胞を注入して自家骨膜で被覆する方法である．本法は第一世代のACI，あるいはperiosteal ACI（pACI）と呼ばれる．これに対して1995年に越智光夫先生は単離した自家軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルに包埋して三次元培養後移植し，自家骨膜で被覆するアテロコラーゲンゲル包埋自家軟骨細胞培養移植術を考案された^2）．本法はmatrixとともに軟骨細胞を移植するため，matrix-associated ACI（MACI）であり，第三世代のACIといえ，periosteal MACI（pMACI）である．

　島根医科大学での臨床成績の発表後^3），本法はジャパン・ティッシュエンジニアリング（J-TEC）社に技術移転され，前向き多施設研究が行われた^4）．その良好な術後成績から2012年に自家培養軟骨ジャックは独立行政法人医薬品医療機器総合機構（PMDA）の承認を得て，2013年に4cm²以上の外傷性軟骨欠損症あるいは離断性骨軟骨炎による軟骨欠損に対して保険収載された．本稿では自家培養軟骨ジャックに至る道のりとその展望を述べる．

連載　What’s new by subspecialty

What’s New in Orthopaedic Rehabilitation -――運動器リハビリテーションの最新知識芳賀　信彦 76巻1号 , 2025年1月 , pp.51-54

PDF(421KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　運動器疾患に対する保存療法の中で，運動療法は重要な位置を占める．また，手術療法に際してもリハビリテーション治療が行われる機会は多い．これらは運動器リハビリテーションと総称することができ，運動療法に加え，物理療法や装具療法を含む．本稿では運動器リハビリテーションの進歩とトピックを紹介する．

連載　X線診断Q&A

X線診断Q&A 植松　卓哉 76巻1号 , 2025年1月 , pp.55-56

PDF(2828KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Question

　症　例．82歳，女．

　主　訴：右股関節痛．

　既往歴：他院で両側人工膝関節全置換術（TKA），左人工股関節全置換術（THA）を行った．

　現病歴：自転車乗車中に転倒し受傷した．他院で右大腿骨転子部骨折の診断を受けて受傷4日後に髄内釘（AFFiXUS Hip Fracture Nail：Zimmer Biomet社）を使用し，骨折観血的整復固定術（ORIF）を行った．術後1週で全荷重歩行を開始し，術後4週で自宅退院した．退院後に新たな外傷エピソードはなかったが，術後3ヵ月の外来受診時に疼痛増悪を訴えて再入院した．

　身体所見：受傷前の歩行レベルは独歩可能であったが，再入院時はT字杖歩行であった．

　単純X線所見：再入院時の両股関節正面と左股関節側面の単純X線像を図1に示す．

連載　卒後研修講座

病態の理解に基づく骨粗鬆症の治療戦略宮本　健史 76巻1号 , 2025年1月 , pp.57-60

PDF(451KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　骨粗鬆症は加齢に伴う退行性変化で，高齢になると程度の差こそあれ，多かれ少なかれ骨密度の低下は起こるものと認識されているというよりは，むしろそうした認識すらないまま体内では知らない間に骨粗鬆症が進行しているというほうが正しいかもしれない．ある程度の高齢になると骨粗鬆症にも気をつけないといけないとは思うものの，白髪やしわのように外からみえない，痛みやしびれのような症状もないということもあり，気をつける動機づけに乏しいのが骨粗鬆症の実態である．骨粗鬆症があると，通常では骨折にはならないような転倒などの簡単な外傷で，大腿骨近位部骨折などの重篤な脆弱性骨折を発症することに留意する必要があるが，骨粗鬆症が大腿骨近位部骨折の原因となっていることを切実に認識することも，骨折の手術療法を実施している当該ドクターでさえも十分とはいえないのが現実である．

　本稿では，骨粗鬆症がどのようなメカニズムで発症するのかを概説することで，より骨粗鬆症を身近なものとしてとらえるきっかけになればと思っている．

連載　専門医のための症例問題トレーニング

手関節・手疾患（外傷を含む）佐竹　寛史 76巻1号 , 2025年1月 , pp.62-67

PDF(3207KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　症　例．2歳，男児．

　主　訴：右母指の伸展障害．

　家族歴：両親，兄弟ともに同様の障害はない．

　既往歴：特記すべきことはない．

　現病歴：在胎40週，自然分娩で第3子として出生した．生下時体重は3,090gであった．生下時は気づかれなかったが，半年前から右母指が伸展しづらくなっていることに母親が気づき，伸展障害がはっきりしてきたので当科を受診した．

　身体所見：右母指は屈曲しており，指節間（IP）関節に伸展障害が確認された（図1a）．他動的に伸展すると伸展は可能であった（図1b）．

連載　最新原著レビュー

3Dデプスセンサと人工知能による側弯症検出システムの開発と着衣の有無による精度検証石川　蓉子 76巻1号 , 2025年1月 , pp.69-73

PDF(694KB)

有料閲覧

文献概要を表示

【要　旨】

　目　的：われわれの開発した3Dデプスセンサにより背表面を撮影し，側弯角を自動予測するシステムの予測精度向上のために作成した人工知能を用いたアルゴリズムに対する，独立した対象群を用いた外部検証を実施することである．また着衣有無や撮影体位による予測精度を検証することである．

　対象および方法：側弯症疑いで受診をした患者100例を対象に体位と着衣の組み合わせの4つのパターンでそれぞれ撮影を行い，導出された予測Cobb角と実際のX線Cobb角との相関を検証した．

　結　果：予測Cobb角とX線Cobb角の相関係数は着衣なしの前屈位パターン，および着衣ありの前屈位パターンでそれぞれ0.87，0.86となり，立位パターンより高かった．また平均絶対誤差も前屈撮影パターンで5°以下であった．前屈撮影パターンにおける着衣の有無で平均絶対誤差に有意差はなかった（p＝0.99）．Cobb角10°以上を予測した場合の精度は着衣なしの前屈位パターンで0.92ともっとも高かった．

　結　論：Cobb角予測のための深層学習アルゴリズムは外部検証でも高い相関係数と精度が示された．また前屈位撮影では着衣の有無で相関係数や誤差に差がなく，着衣ありでの検診が可能になることが示唆された．

松代膝検診における膝のアライメントとknee phenotypeの23～28年間の縦断的変化富山　泰行 , 望月　友晴 , 古賀　寛 , 大森　豪 , 古賀　良生 , 谷藤　理 , 西野　勝敏 , 遠藤　和男 , 遠藤　直人 , 川島　寛之 76巻1号 , 2025年1月 , pp.75-81

PDF(887KB)

有料閲覧

文献概要を表示

【要　旨】

　目　的：本研究の目的は，松代膝検診の縦断調査データを用いて，大腿骨および脛骨の皮質骨厚（CBT）と膝関節形態［膝関節の冠状面アライメント（大腿脛骨角：FTA）および関節面傾斜角］の約25年間にわたる経時的変化を明らかにすることである．

　対象および方法：対象は，23～28年間追跡が可能であり，かつベースライン時のX線像において健常膝と評価された女性235例，285膝［Kellgren-Lawrence分類（KL）grade 0または1］とした．最終経過観察時のX線像に基づき，対象膝をnon-OA群（52膝，KL grade 0または1），early-OA群（131膝，KL grade 2），advanced-OA群（102膝，KL grade 3または4）の3群に分類した．これらの群において，大腿骨および脛骨のCBT，FTA，大腿骨関節面傾斜角（FCA），脛骨関節面傾斜角（TPA）などの膝関節形態の経時的変化を縦断的に評価した．

　結　果：膝OA群（early-OA群およびadvanced-OA群）では，FTA（p＜0.001）に加え，FCAおよびTPAにおいて有意な内反変化が認められた（p＜0.05）．さらに，全群においてCBTの低下および内外側CBT比の増加が観察された（p＜0.001）．特にknee phenotypeにおいてFTAおよびTPAの内反変化が顕著であった．

　結　論：本研究により，膝OA群において皮質骨厚，FTA，関節面傾斜角，knee phenotypeの経時的変化が明らかとなった．また，ベースライン時におけるFTAおよびTPAは，日常診療において膝OAの発症予測に有用である可能性が示唆された．

変形性膝関節症における膝蓋下脂肪体の超音波弾性と膝前方痛との関連佐竹　哲典 , 泉　仁 , 阿漕　孝治 , 池内　昌彦 76巻1号 , 2025年1月 , pp.82-84

PDF(249KB)

有料閲覧

文献概要を表示

【要　旨】

　目　的：変形性膝関節症（膝OA）患者における，膝前方痛と膝蓋下脂肪体の弾性との関係を明らかにすることである．

　対象および方法：膝OA患者97例を対象とした．膝蓋下脂肪体の弾性は超音波エラストグラフィを用いてせん断波速度で評価した．膝前方痛の有無で2群に分け，年齢，性別，Kellgren-Lawrence（KL）グレード，Hoffaスコア，effusion synovitisスコア，bone marrow lesionスコア，膝蓋下脂肪体体積/体重，せん断波速度について単変量，ロジスティック回帰分析を行った．

　結　果：単変量解析では，せん断波速度に有意差があった．ロジスティック回帰分析では，せん断波速度が唯一の有意な説明変数となり，膝前方痛のある膝OA患者では，膝蓋下脂肪体のせん断波速度が速かった．

　結　論：膝前方痛を伴う膝OA患者では，放射線学的病期にかかわらず膝蓋下脂肪体は硬くなっていた．超音波エラストグラフィによる膝蓋下脂肪体の弾性評価は，疼痛源となっている膝蓋下脂肪体の評価に有用である．

脊椎固定術におけるバンコマイシン含有フィブリン糊の術野散布による術後感染予防効果東　貴行 , 小林　直実 , 井出　学 , 内野　洋介 , 井上　徹彦 , 稲葉　裕 76巻1号 , 2025年1月 , pp.85-88

PDF(1115KB)

有料閲覧

文献概要を表示

【要　旨】

　目　的：脊椎固定術において，バンコマイシン（VCM）含有フィブリン糊を使用した患者と使用しなかった患者で術後感染率を比較し，術後感染予防効果を調査することである．

　対象および方法：脊椎変性疾患，脊椎外傷，脊椎腫瘍に対して脊椎後方固定術を施行した患者264例を対象とした．VCM含有フィブリン糊を術野散布した群としなかった群に分けて比較した．傾向スコアを基にした逆確率重み付け法（IPTW）を用いた二項ロジスティック回帰モデルを用いて比較し，術後感染に影響する因子を同定するために多変量ロジスティック回帰分析を行った．

　結　果：VCM含有フィブリン糊の術野散布を受けた群は134例，受けなかった群は130例であった．術後感染の割合はVCM含有フィブリン糊を受けた群のほうが低かった（2.2％ vs. 8.5％）．多変量ロジスティック回帰分析では，VCM含有フィブリン糊の術野散布は術後感染を低下させる有意な因子であった．

　結　論：脊椎固定術においてVCM含有フィブリン糊の術野散布は，術後感染を有意に抑えることができていた．

大腿骨頭壊死における圧潰停止は骨頭前後の壊死範囲と関連する大澤　郁介 , 関　泰輔 , 竹上　靖彦 , 今釜　史郎 76巻1号 , 2025年1月 , pp.89-93

PDF(766KB)

有料閲覧

文献概要を表示

【要　旨】

　目　的：圧潰をきたした大腿骨頭壊死（ONFH）が自然経過において圧潰停止し，長期的に手術療法を回避できることは少なくない．われわれはONFHにおける骨頭の壊死範囲と圧潰停止の関連について調査した．

　対象および方法：2010～2019年に当科に初回受診した片側症状かつ圧潰が3mm未満のONFH 74例を対象とした．性別は男性52例，女性22例で平均年齢は46.1歳，平均観察期間は58.7ヵ月，厚生労働省特発性大腿骨頭壊死症調査研究班診断基準（JIC type分類）［B/C1/C2］は3例/34例/37例であった．圧潰停止を得られた症例をstable群，圧潰進行した症例をprogression群とし，MRI T1強調画像におけるmediolateral（ML）およびanteroposterior（AP）necrotic lesionsを評価した．Receiver operating characteristic curve（ROC）曲線を用いて圧潰停止が得られる壊死領域のカットオフ値を割り出し，3mm以上の圧潰進行をエンドポイントとした生存率を評価した．

　結　果：圧潰停止は29例（39％）に認めた．MLおよびAP necrotic lesionsはstable群（71.7±27.8％および58.9±15.6％）に対してprogression群（83.4±8.1％および78.2±14.2％）でいずれも有意差があった（p＜0.01）．ROC曲線の結果はML necrotic lesionsのarea under the curve（AUC）は0.673でカットオフ値は76.5（感度76，特異度58）％に対してAP necrotic lesionsではAUCは0.811でカットオフ値は62.1（感度87，特異度71）％で有意差があった（p＜0.01）．3mm以上の圧潰進行をエンドポイントとした5年生存率はAP necrotic lesions＜62.1％では77.8％に対して，AP necrotic lesions≧62.1％では5.4％で有意差があった（p＜0.01）．

　結　論：一度圧潰をきたしたONFHにおいても，AP necrotic lesionsが62.1％未満の症例では自然経過による圧潰停止が期待できる．

書評

『仙腸関節の痛み（改訂第2版）――見逃される腰痛』兼氏　歩 76巻1号 , 2025年1月 , pp.61-61

PDF(232KB)

販売していません

文献概要を表示

　本書は，村上栄一先生によって執筆された著書で，仙腸関節の痛みだけでなく仙腸関節障害に関する基礎から臨床まで網羅しています．改訂第2版では，初版の基本的な部分を踏襲しながら，新たな知見を盛り込んだ仙腸関節障害のバイブル的な書籍となっています．腰痛の一因として見過ごされがちな仙腸関節に焦点を当て，正確な診断と治療方法について詳しく述べられています．また，医療関係者や専門家に向けて，仙腸関節の痛みについて理解を深め，その診断と治療のためのガイドとして役立つ内容が詰まっています．

整形トピックス

メチシリン耐性ブドウ球菌および緑膿菌の迅速検出を目的とした遺伝子検査キット開発 -――手術部位感染の迅速診断と同時に抗菌薬を選別できる世界最速検査への挑戦植田　成実 76巻1号 , 2025年1月 , pp.68-68

PDF(176KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　整形外科骨軟部組織感染症の原因菌はブドウ球菌が多く^1,2），人工関節周囲感染などのインプラント周囲感染から検出される細菌は，Staphylococcus aureusや，表皮ブドウ球菌などのcoagulase-negative staphylococci（CNS）^2）が半数以上を占める．

Vocabulary

mTOR 劉　正夫 , 由留部　崇 76巻1号 , 2025年1月 , pp.74-74

PDF(170KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　Mammalian target of rapamycin（mTOR）は元来酵母でラパマイシン標的蛋白質として発見され，後に哺乳類でも相同体が同定された，細胞内シグナル伝達に関与する蛋白質キナーゼ（セリン・スレオニンキナーゼ）の一種である．

学会を聞く

第52回日本関節病学会久保　充彦 76巻1号 , 2025年1月 , pp.94-95

PDF(2033KB)

有料閲覧

文献概要を表示

1．はじめに

　2024年7月19日（金）～20日（土）に，東京都のシェーンバッハ・サボーで第52回日本関節病学会が開催された．本学会は1973年に「リウマチ外科研究会」として設立され，1981年には「日本リウマチ・関節外科学会」，さらに2007年に「日本関節病学会」と名称が変更された．設立当初はリウマチに関する演題が多かったようであるが，近年では変形性関節症や再生医療など，幅広い分野の発表が行われている．各部位ごとに専門的な討論が行われる学会は数多くあるが，関節疾患を包括的に議論できる場は少なく，本学会はそのような点で非常に貴重な存在である．

　2024年の本学会では，東京大学整形外科教授の田中栄先生が会長を務められた．テーマは「創」であり，「創造」，すなわち「イノベーションを起こす」という意味に加え，「新たな医療を構築する」という意志が込められていた．新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響がほぼなくなり，本学会は完全な現地開催となった（図1）．

喫茶ロビー

私の釣魚大全（パート2）岩本　幸英 76巻1号 , 2025年1月 , pp.96-96

PDF(1055KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　「喫茶ロビー」には趣味の話も載せてよいというので，私は9年前の2016年1月号に「私の釣魚大全（岩本編）」と題する記事を掲載させていただいた．本来，『私の釣魚大全』（文春文庫）は，ウォルトンの名著『釣魚大全』をもじった作家・開高健による釣りの本である．私はそれをさらにもじって「私の釣魚大全（岩本編）」と題し，過去の釣りの成功例として八重山諸島のビーチで人生最大の獲物（120cm，30kgのヒラアジ）を釣り上げた話，失敗例として知床の渓流で獲物（北極イワナ）をすべてカラスにさらわれた話を紹介した次第である．その記事を読まれた故・山内裕雄先生（順天堂大学名誉教授）がたいそう面白かったと褒めてくださり，釣り好きのご友人（とはいってもご高名な医師）をご紹介いただいた．私たちはたちまち意気投合し，話がとんとん拍子にすすみ，その年の7月にはその方のアラスカ釣行（サーモン釣り）に同行させていただいた．あれから8年，最近私は玄界灘で「落とし込み釣り」という船からの大物釣りを楽しんでいる．今回はこの二つの釣りについて紹介する．

------------

目次 76巻1号 , 2025年1月

PDF(347KB)

フリーアクセス

Information 76巻1号 , 2025年1月 , pp.4-4

PDF(203KB)

販売していません

Information 76巻1号 , 2025年1月 , pp.26-26

PDF(261KB)

販売していません

『別冊整形外科』No. 88「成人股関節疾患の診断と治療」要旨募集 76巻1号 , 2025年1月 , pp.97-97

PDF(256KB)

販売していません

学会告知板 76巻1号 , 2025年1月 , pp.98-98

PDF(154KB)

フリーアクセス

寄稿のさだめ 76巻1号 , 2025年1月 , pp.99-99

PDF(226KB)

販売していません

編集後記 76巻1号 , 2025年1月 , pp.100-100

PDF(414KB)

フリーアクセス

基本情報

臨床雑誌整形外科
76巻1号
(2025年1月発行)

電子版ISSN：2432-9444 印刷版ISSN：0030-5901 南江堂

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
12月9日～12月15日
)

第1位変形性関節症重症度による化膿性膝関節炎の難治性予測野上真紀子,下条竜一,峯隼人,川口善治臨床雑誌整形外科 72巻 10号 pp. 1041-1043 (2021年9月1日) 南江堂
第2位肩甲帯・肩・肘関節疾患川野健一臨床雑誌整形外科 75巻 13号 pp. 1352-1355 (2024年12月1日) 南江堂
第3位尾骨骨折変形癒合に対して尾骨切除術を施行した1例山崎敦詞,河村健二,矢島弘嗣,村田景一,水谷泰士臨床雑誌整形外科 65巻 7号 pp. 643-645 (2014年7月1日) 南江堂
第4位脛骨プラトー骨折に対する治療戦略前原孝臨床雑誌整形外科 73巻 2号 pp. 161-172 (2022年2月1日) 南江堂
第5位糖尿病の周術期管理江戸直樹臨床雑誌整形外科 73巻 11号 pp. 1177-1180 (2022年10月1日) 南江堂
第6位仕事，趣味，そして遊び赤木將男臨床雑誌整形外科 75巻 13号 pp. 1378-1378 (2024年12月1日) 南江堂
第7位人工膝関節全置換術後の自主トレーニングが身体機能および身体満足度に与える影響山口哲,柳田好範,池上嘉浩,神保勘太,関矢仁臨床雑誌整形外科 71巻 8号 pp. 858-860 (2020年7月1日) 南江堂
第8位慢性腎不全患者のシャント肢手術における駆血帯使用佐竹寛史,本間龍介,丸山真博,長沼靖,花香直美,高木理彰臨床雑誌整形外科 67巻 7号 pp. 652-653 (2016年7月1日) 南江堂
第9位 Thompson法による母指手根中手関節形成術の治療成績　modified Kapandjiスコアによる可動域評価を中心に細見僚,安田匡孝,新谷康介,山田祐太郎,大橋弘嗣,安藤佳幸,釜野雅行臨床雑誌整形外科 64巻 5号 pp. 413-416 (2013年5月1日) 南江堂
第10位鎖骨近位端骨折の1例鵜木栄樹,千葉光穂,蝦名寿仁臨床雑誌整形外科 52巻 4号 pp. 407-409 (2001年4月1日) 南江堂

投稿規定

年間購読申込

臨床雑誌整形外科 76巻1号 (2025年1月発行)

論説

経験と考察

誌説

私論

臨床室

お知らせ

連載 整形外科医療・機器開発秘話

連載 What’s new by subspecialty

連載 X線診断Q&A

連載 卒後研修講座

連載 専門医のための症例問題トレーニング

連載 最新原著レビュー

書評

整形トピックス

Vocabulary

学会を聞く

喫茶ロビー

------------

基本情報

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング( 12月9日～12月15日)

連載　整形外科医療・機器開発秘話

連載　What’s new by subspecialty

連載　X線診断Q&A

連載　卒後研修講座

連載　専門医のための症例問題トレーニング

連載　最新原著レビュー

文献閲覧数ランキング(
12月9日～12月15日
)