胸部外科 68巻9号 (2015年8月)

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肺悪性腫瘍に対する定位放射線治療(SRT)後に局所再発を来たし、肺切除術を施行した14例を対象に、SRTの選択理由、SRT後再発までの期間、手術時腫瘍径、手術、術後合併症および予後について検討した。その結果、SRTが選択された理由は患者希望が7例で、高齢3例・低肺機能3例・併存症1例の計7例が呼吸器内科医の判断で手術よりもSRTが好ましいとして選択された。SRT前の腫瘍径は13~48(中央値22)mmで、手術前腫瘍径は20~55(中央値33)mmと増大していた。SRTから手術までの期間は8~69(中央値12.2)ヵ月であった。全例で安全に手術を施行でき、術式は肺葉切除5例、区域切除8例、部分切除1例で、SRT関連の術後合併症は認めなかった。根治性については、完全切除13例、不完全切除1例であった。術後観察期間は10~81(中央値29)ヵ月で、死亡は2例でいずれも肺炎による他癌死であった。以上、SRT後局所再発肺悪性腫瘍に対する肺切除は安全で予後も良好であると考えられた。

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脳死ドナーからの肺摘出手術47例を対象に、担当医師からのアンケート方式で摘出手術時の問題点を調査し、更にブタを用いた多臓器摘出シミュレーションの有用性についても調査した。その結果、実際に経験した問題点は"手技に関わる問題"が圧倒的に多く、特に肺動脈へのカニュレーションや肺保存液で灌流を行う際に生じる不具合が多かった。次いで多くの回答があったのは"最終評価での臓器評価の難しさ"であり、"他チームとのコミュニケーションの問題"、"心臓切離線の問題(良好な心臓切離線が得られない、或いは困難であった)"、が続いた。一方、ブタを用いた多臓器摘出シミュレーションについては、「実践的な手技・知識を習得するのに大変有効である」、「モニター映像により参加者すべてが術野での情報を容易に共有できる」、「他チームと十分に論議できる時間と環境があり、コミュニケーション、トレーニングの場として有用である」の回答が多かった。

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77歳男。全身倦怠感を主訴とした。約6年前のCTで前縦隔に8cm大の脂肪濃度の腫瘍を認めていた。5年前時点で腫瘍に変化はなく経過観察とし、食道癌に対する胸部食道全摘出と胃管再建術を優先させた。1年前のCTで腫瘍内に4cm大の筋肉濃度の領域が出現し、翌年には同領域が25cm大に増大し、頭側縁と尾側縁に脂肪濃度を認め、縦隔側は脂肪腫と連続していた。縦隔原発高分化型脂肪肉腫から発生した脱分化型脂肪肉腫と診断し、開胸下腫瘍摘出術を施行した。術後、手術創感染から縦隔炎を併発し、食道癌手術で後縦隔経路胃管再建を行っており、大網を使用できないため胸骨開放術を施行した。胸骨開放管理を継続し縦隔炎は完治し、創は自然閉鎖した。胸骨開放術後67日に独歩退院し、術後9ヵ月の現在まで再発は認めていない。

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心臓血管手術後の出血に対しリコンビナント活性型第VII因子製剤(A)を単回投与した8例を対象に、出血量や血液学的検査値について検討した。出血量はA投与後2時間の値を評価した。血液学的検査はプロトロンビン時間国際評準化(PT-INR)、活性化部分トロンボプラスチン(APTT)、フィブリン分解産物(FDP)、Dダイマー、フィブリノゲン、ヘモグロビン、血小板で、A投与後2時間に測定した値を用いた。また、A投与後48時間にわたり血液学的検査を行い、凝固能の評価を行った。投与前後2時間における輸血量も検討した。その結果、有効な止血を7例で認めた。出血量、PT-INR、APTT、EDP、DダイマーはA投与後に有意に改善した。生存退院できたのは5例(62.5%)で、死亡は3例あったが重大な血栓塞栓症による死亡はなかった。以上、Aは有用な止血薬であると考えられた。

まい・てくにっく

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86歳女。大動脈弁閉鎖不全に対するモザイク生体弁を用いた大動脈弁置換術から2週後に、高熱、呼吸困難、乏尿、頻脈が出現した。正中創上方から膿汁を排出し、膿と血液からMRSAが検出され、敗血症の診断でdaptomycinの点滴静注を行い治癒したが、弁置換術後41日に再度呼吸困難が出現した。CTで大動脈前方から右房の前方に交通する血腫内に大動脈-右房瘻の形成を認め、開胸手術を行った。血腫を除去したところ、初回手術の脱血管挿入部に一致して右房の孔を認め、バルーンカテーテルを挿入・閉塞した。次いで、上行大動脈を遮断後、心拍動とともに大動脈の孔を認め、バルーンカテーテル挿入し、心筋保護液を注入し心停止を得た。大動脈の孔は、初回手術の心筋保護液注入部に一致していた。右房・大動脈の孔ともに瘻孔閉鎖術を行った。術後経過は良好であったが、CRPが1~5mg/dlを推移した。術後25日に脳幹出血を生じ、心エコー検査で人工弁周囲に感染所見は認めなかったが、緑膿菌による肺炎を併発して瘻孔閉鎖術後114日に死亡した。瘻孔形成の原因は、前回手術で心筋保護液注入用のカニューレを術中留置していた場所から生じた敗血症に伴い、徐々に出血が染み出して増大した仮性動脈瘤と考えられた。

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57歳男。呼吸苦が出現し、拡張型心筋症および冠状動脈狭搾の診断で内科治療を開始したものの通院が途切れ、約1年後に労作時胸部圧迫感が出現し再受診された。内科治療を再開するも症状改善なく、左前下行枝(LAD)の狭窄病変の進行を認め、LDAへの冠動脈バイパス手術(CABG)、完全左脚ブロックを呈する低心機能に対し両室ペーシング(CRT)を行うこととした。入院時、NYHA分類IV度で、左室駆出率は15%以下と著明に低下し、QRS幅が174msと延長していた。術前の冠状動脈造影では新たな右冠状動脈病変を考慮すると3枝病変(#6・#7・#11・#12・#4PD)であったが、低心機能であり手術時間を短縮させる目的でLADのみのCABGを選択した。残存病変については経過次第でカテーテルによる追加治療が可能と判断した。CABGとCRTの同時手術を施行し、術後心不全症状および運動耐容能の著明な改善、左室径および容積の減少、心収縮能の改善を認めた。また、BNP、NT-proBNPの改善も認めた。

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73歳女。約1年前からの労作時呼吸困難を主訴とした。超音波検査で重度の大動脈弁狭窄症を認め、心臓カテーテル検査では冠状動脈造影で右冠状動脈後下行枝と左回旋枝#15に75%狭窄を認めた。開胸下に冠状動脈バイパス術(大伏在静脈(SVG)-#4PD)、SVG-後側壁枝とウシ心嚢膜弁を用いた大動脈弁置換術を施行した。術直後のX線で肺動脈カテーテル(PAC)先端は右肺動脈内の適切な位置に挿入されていたが、翌日にはPACの先端がより進入していた。その後、突然激しい咳嗽とともに喀血を生じ、肺出血を認め、肺出血は治まったものの縦隔のドレーンからのエアリークおよび右肺虚脱を認め、右気胸を生じた。第8病日に右下葉S7に生じた気瘻を縫合閉鎖し、第14病日に人工呼吸器を離脱した。第21病日のCTで右肺動脈のA4に14mm大の仮性肺動脈瘤を認め、第23病日にコイルを用いた経カテーテル的動脈塞栓術を施行し、7日後の造影CTで仮性瘤の塞栓を認めた。また、冠状動脈造影でバイパスグラフトの開存を確認した。術後49日に軽快退院し、術後1年の造影CTで仮性肺動脈瘤に血流の再開通や増大は認めなかった。

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34歳女。検診で左胸部異常影を指摘された。胸部X線で左下肺野に第3弓の高さに腫瘤影を認め、CTでは左肺下葉S9+10中枢側に38×29mm大の類円形腫瘍を認めた。造影効果のある軟部濃度の腫瘍で、辺縁は明瞭であった。臓側胸膜からは離れており、肺内に孤立する腫瘤影であった。鑑別疾患目的に胸腔鏡下肺生検を施行した。腫瘍は下葉S6c~S10a領域に存在し、部分切除は困難と判断して左肺下葉切除を施行した。病理組織所見では紡錘形細胞が束状に走行する像を認め、細胞が密に配列し、herringbone patternを示す部分や、細胞が疎に網目状配列を示す部分などが混在していた。腫瘤内には小血管も豊富にみられた。免疫組織学的には紡錘形細胞は血管内皮細胞と同様のCD34陽性であった。以上より、限局性線維性腫瘍と診断した。術後13日に軽快退院し、現在外来通院中である。

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65歳男。1ヵ月以上続く咳嗽を主訴とした。単純X線で気管支の左側への偏位を認め、CTでは食道・上大静脈(SVC)に接し、気管を右背側より圧排する50mm大のコブ状の腫瘍を認めた。中心部の造影効果は乏しく、壊死性変化が疑われた。縦隔腫瘍と診断して手術を施行し、手術所見では腫瘍の気管内への浸潤はなく、周囲組織に癒着していた。右上葉の癒着が強く、腫瘍と癒着した肺の部分切除を行った。奇静脈との癒着も認め、奇静脈を切断した。食道・右主気管支・SVCから腫瘍を剥離し摘出した。病理組織所見では核異型のある腫瘍細胞と紡錘細胞が混在しており、免疫組織化学染色ではEMA、calretinin、HBME-1、D2-40、cytokeratin5/6、p58が陽性を示した。以上より、二相性の悪性胸膜中皮腫と診断した。術後はびまん性胸膜悪性中皮腫に準じて腫瘍摘出部位に放射線を局所照射し、補助化学療法(CDDP+PEM)を4コース施行した。術後7ヵ月の現在まで再発は認めていない。

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79歳女。発熱を主訴とした。胸部CTで左肺下葉背側に液体と気腔を内部に有する8cm大の嚢胞性病変を認め、左胸腔内には隔壁化された胸水と気胸を認めた。左胸腔ドレーンを挿入し、暗赤色の血性排液を1200ml認めた。細胞診はclass 1で、喀痰・胸水培養は陰性であった。排液は減少し、発熱等の症状も消失し抗生物質での加療を継続したが、入院11日目に再度発熱と喀血が出現した。保存的治療は難しいと判断し、開胸手術を施行することとした。手術所見で左肺と胸壁は全面癒着しており剥離困難で、病変周囲の癒着は非常に強固で、剥離過程で病変の一部を損傷したため、嚢胞のみの切除は困難と判断した。病変内部には膿ではなく凝血塊が充満していた。壁側胸膜と横隔膜の一部を病変に付ける形で剥離し、左肺下葉切除術を行った。病理診断は、肺内気管支原性嚢胞内の出血に伴う血気胸および気道出血であった。術後経過は良好で、第14病日に退院した。

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77歳男。約1年前に大工仕事中に金属製の絶縁ステープルを咥えていた際、突然むせたことがあった。今回、前医で胸部異常陰影を指摘され紹介となった。X線で右肺門部に金属異物を認め、CTではステープルの脚部が気管支膜様部に刺入していた。気管支鏡検査では下幹入口部に絶縁ステープルの脚と思われる突起物を認め、その周囲には肉芽組織が著明に増生し、末梢側の下葉気管支をpin hole状に閉塞していた。同部の肉芽形成のため、ステープルの可動性は全くなく、かつ視野が不良であることから、気管支鏡下での摘出は困難と判断して開胸手術を施行した。肉芽組織は線維化をきたしておらず、吸引器を用いて容易に除去可能で、肺切除等を行うことなく膜様部に刺入したステープルを鉗子で摘出した。ステープルは大きさ17×12mm、コの字型の金属製であり、ビニールによる絶縁部以外は黒錆化していた。術後2日に胸腔ドレーンを抜去し、術後10日に軽快退院した。

胸部外科医に必要な最新の病理診断(第12回)

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53歳女。4年前からの労作時息切れを主訴とした。X線では心胸郭比52%で、心エコーでは大動脈閉鎖不全症(二尖弁)と中等度大動脈弁逆流を認めた。CTでは右鎖骨下動脈が大動脈縮窄部直後より起始しており、食道と気管の後方を走行していた。大動脈閉鎖不全症(二尖弁)および右鎖骨下動脈起始異常を伴う大動脈縮窄症と診断し、開胸下に一期的に大動脈弁置換術および上行-下行大動脈バイパス術を施行した。グラフトは、右房前方を回り、心臓下面と横隔膜の間を通って心臓後方の下行大動脈へと配置した。術後両下肢および右鎖骨下動脈への良好な血流が得られ、低下していた足関節上腕血圧比は改善し、左右差を認めた上肢血圧も改善した。第13病日に合併症なく退院となった。

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69歳女。10年前より僧帽弁閉鎖不全症(MR)を指摘されており、3ヵ月前から労作時呼吸苦が増悪した。心胸郭比52.3%で、心エコーで中等度の大動脈弁閉鎖不全およびMR、高度の三尖弁閉鎖不全を認めた。以上より、大動脈弁置換術、僧帽弁形成術および三尖弁形成術を予定した。術前3D-CTより送血部位、大動脈遮断部位などを検討し、胸骨下端から第2肋間右縁までの胸骨下部部分切開で手術が可能と判断し、低侵襲心臓手術を行った。僧帽弁は弁尖逸脱を認め、人工腱索を縫着した後にCG Future Bandを縫着した。次に、大動脈を斜切開しTrifecta弁による大動脈弁置換術を行った。三尖弁にはTailor Bandを縫着した。手術時間6時間15分、人工心肺時間258分、体外循環時間208分、無輸血で手術を終了した。術当日に人工呼吸器を離脱し、翌日にはICUから退室し、術後心エコーで弁逆流はなく、心機能も良好で、術後11日に退院した。

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77歳男。失神発作を主訴とした。約2年前、大動脈弁閉鎖不全症に対しブタ膜生体弁を用いた大動脈弁置換術を受けていた。心胸郭比54%で、経胸壁心エコーで高度な大動脈弁狭窄を認め、機械弁を用いた弁置換術を施行した。手術所見では生体弁の弁尖3枚ともに黄褐色付着物により肥厚しており、人工弁輪にも同様の付着物が取り巻いていた。病理組織所見では弁尖3枚とも弁膜および付着部に線維性肥厚とパンヌスの形成を認めた。全体に血栓付着を認めたが、炎症細胞の浸潤や石灰化はなかった。術後経過は良好であった。

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94歳女。突然に胸痛が出現し、X線で左大量胸水、縦隔偏位を、CTで出血を疑う左大量胸水、左胸腔内に第6肋間から胸壁に沿って連続する造影剤の漏出像を認めた。精査中に意識レベルと血圧の低下を来たしショック状態となり、造影CT所見より肋間動脈からの出血による緊張性血胸と診断して緊急手術を施行した。輸血により血圧が維持できたため、鏡視下で手術を開始した。胸腔内より約3lの新鮮血液と凝血塊を吸引し、胸腔内を観察したところ、下行大動脈(横隔膜より約5cm頭側)から血液が噴出していたため、大動脈破裂と判断して緊急開胸した。蛇行した下行大動脈の胸壁に接する部分に約1mmの破裂孔を認め、動脈壁には全体的に動脈硬化による石灰化を認めたが、大動脈瘤の所見は認めなかった。破裂孔周囲は動脈硬化性変化が比較的軽度であり、破裂孔も小さかったため、直接縫合閉鎖した。術後2日より食事摂取とリハビリテーションを開始し、術後20日に退院となった。術後11ヵ月の現在、再発は認めていない。

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79歳女。咳、胸背部痛を主訴とした。CTで右中葉に7.6×4.3cmの腫瘤影を認め、上肺静脈への浸潤とリンパ節腫大も認めた。気管支鏡では中葉気管支の閉塞と中下葉分岐の肥厚鈍化を認め、生検では低分化扁平上皮の診断であった。cT3N2M0、臨床病期IIIA期の原発性肺癌と診断して開胸術を施行し、手術所見で中葉は萎縮し、上下葉間に存在していた。腫瘍は上肺静脈周囲で心嚢浸潤が疑われた。リンパ節郭清後、右肺を摘出した。中葉~下葉に6.5cm大の腫瘍を認め、病理組織像では腺癌と扁平上皮癌の二つの組織型が境界明瞭に存在し、両者の隣接部分でadenocarcinoma in situが存在するため、衝突癌と診断した。また、リンパ節#11iに腫瘍の浸潤を認めた(pT2bN1M0、病理病期IIB)。Cycleave法で上皮成長因子受容体の遺伝子変異を検索したところ、扁平上皮癌、腺癌ともにL858R点突然変異を認めた。第15病日に軽快退院し、術後4ヵ月の現在まで再発は認めていない。

基本情報

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胸部外科
68巻9号 (2015年8月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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