胸部外科 66巻2号 (2013年2月)

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原発性肺癌手術例206例を対象に低用量未分画heparin(LDUH)投与を行い、術後の肺血栓塞栓症(PTE)予防効果と安全性の長期成績を評価した。その結果、1)LDUH投与量は1日5000単位が36例、10000単位が170例で、投与期間は平均4.6日、術後のドレーン留置期間は平均5.4日であった。尚、この期間における症候性PTEやDVTの発症ほか、心筋梗塞などの経験はなかった。2)術後合併症についてLDUHの中止・減量規定を導入する前(前期2004~2007年)と後(後期2008~2011年)で検討したところ、前期4年では腹腔内出血2例、皮下血腫3例を経験したが、後期では皮下血腫と血痰の遷延が各1例と、出血関連の合併症が減少していた。

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46歳男性。発熱を主訴に精査にて大動脈弁位PVEおよび弁輪部膿瘍と診断された。治療として凍結保存同種大動脈弁を用いた大動脈基部置換術が予定されたが、入院時より補液、抗生物質の投与を開始するも、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した。そのため第4病日目よりthrombomodulin-α(rTM)が導入され、第6病日にDICおよび臨床症状の改善が得られた。以後、rTMの投与を終了し、第8病日目に手術を施行、術後の経過は良好で、目下、術後1年6ヵ月経過で再燃はみられていない。

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ポートアクセス心臓手術12例ほか、左肺全摘術後に縦隔が高度に偏位した症例の僧帽弁置換術(MVR)1例の計13例に対し、MDCT三次元構築像の体表面投影(IOS)による手術支援を行った。その結果、ポートアクセス心臓手術の全例で、良好な視野展開下に小切開手術を完遂し、手術死亡や病院死亡、また術後合併症もみられなかった。尚、高度の縦隔偏位を呈する肺全摘術後のMVRはIOSの結果をもとに視野展開を工夫し、胸骨正中切開下に問題なく施行可能であった。

まい・てくにっく

両側肺動脈絞扼術 金子 幸裕

両側肺動脈絞扼術 宮本 隆司

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50歳男性。両下腿浮腫および呼吸困難を主訴とした。他院にて頻脈性心房細動による心不全として内科的治療中であったが、心エコーにて左心室の血栓を認め、手術目的で著者らの施設へ紹介となった。胸部X線、心電図、心エコーにより心房細動、中等度の僧帽弁閉鎖不全ほか、心不全を伴う孤立性左室心筋緻密化障害と診断された。以後、左室内に可動性に富んだ球状血栓を認めたため、僧帽弁輪縫縮術、maze手術と同時に、経僧帽弁的に内視鏡を用いて左室内血栓摘出が行われた。更に術後は4日目にワーファリンを再開した。その結果、患者は経過良好にて術後33日目に独歩退院となった。

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52歳男性。呼吸困難、発熱、関節痛を主訴に近医を受診、胸部単純X線にて左上肺野の巨大肺嚢胞を指摘され、精査・加療目的で著者らの施設へ紹介となった。胸部単純X線をはじめCT、骨シンチグラムほか、FDG-PET、IVUS所見より、肺性肥大性骨関節症を伴った左肺上葉原発性肺癌の胸部下行大動脈浸潤と診断された。以後、胸部下行大動脈へ浸潤した原発性肺癌に対し大動脈ステントグラフト内挿術に引き続き、左肺上葉切除術が施行された。その結果、術後合併症はなく、術後の経過は良好であった。尚、患者は術後3年1ヵ月目に他病死した。

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著者らは遠位弓部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿入術時の脳梗塞予防として左鎖骨下動脈(LSCA)バルーンテクニックを考案し34例に併用した。その結果、全例でステントグラフト留置に成功した。LSCAにコイル塞栓を併用したものは25例(73.5%)であった。術後、左椎骨動脈領域のみならず、すべての領域で脳梗塞を認めた症例はなく、また造影剤を満たしたバルーンは、デバイス留置時のマーカーとして有効に機能した。尚、コイル塞栓例ではコイルの骨密度留置が可能で、LSCAに起因するII型エンドリークはみられなかった。

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75歳男性。6年前に腹部大動脈瘤を指摘され内科的治療中であったが、食思不振が出現したため心臓血管外科へ紹介となった。CT所見よりCrawford分類IV型の胸腹部大動脈瘤と診断、以後、本症例が食思不振による低栄養と呼吸機能低下のハイリスク例であったため、開胸操作を加えず横隔膜と肋間筋を温存し、下行大動脈から腸骨動脈まで人工血管置換術が行われた。その結果、術後経過は良好で、患者は術後6日目には人工呼吸器の抜管となり、術後49日目には独歩退院となった。

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61歳男性。突然、一過性の左半身麻痺と意識障害を発症し近医を受診、CTにてStanford A型急性大動脈解離(AAD)を指摘され、著者らの施設へ救急搬送となった。搬送時、右上肢の疼痛と冷感が認められたが、脳神経学的異常所見はなかった。そこで、AADに対し緊急手術を行い、大動脈修復後に順行性送血へ切り替えたが、頸動脈血流は回復しなかった。以後、腕頭動脈を剥離したところ、依然、偽腔が高度に拡張していることが判明したため、右頸動脈からの直接送血に変更した。その結果、経過は良好で、患者は術後16日目に軽快退院なった。

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著者らが経験した胸部食道癌術後乳び胸8例(男性6例、女性2例、平均年齢65歳)について検討した。その結果、手術終了から乳び出現までの期間は平均2.8日で、全例が経腸栄養開始後に認められた。治療内容は全例に経腸栄養の中止、中心静脈栄養管理などの保存的治療を行い、うち4例にはoctreotideを使用した。手術治療は4例に行い、開胸下が2例、胸腔鏡下が2例であった。手術治療群と非手術治療群に分け、経口摂取開始までの期間と術後在院日数を比較したところ、手術治療群ではそれぞれ平均16.7日、平均44.3日であったのに対し、非手術治療群では平均35日、平均56日であり、手術治療群で早期経口摂取開始、早期退院が可能であった。

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68歳男性。血痰を主訴とした。胸部CTで左S3に胸膜陥入を伴う不整形陰影ほか、気管支鏡検査にて肺腺癌を認め、胸腔鏡補助下に左上葉切除およびリンパ節郭清が行われた。最終病理診断はIIA期の混合型腺癌で、術後は第3病日目にドレーンを抜去し順調に経過していたが、第5病日目より腎梗塞と急性下肢動脈閉塞を合併した。以後、下肢動脈閉塞に対し緊急血栓除去術を行い、あわせて術後は腎梗塞に対する保存的治療を兼ねheparinとwarfarinによる抗凝固療法を開始した。その結果、除去術後は血栓や塞栓症の再発を認めず、患者は肺癌術後第20病日目に軽快退院となった。

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62歳女性。検診にて胸部異常陰影を指摘され、精査加療目的で近医より著者らの施設へ紹介となった。入院時、胸部CTでは右肺下葉に約3cm大の境界明瞭な分葉状の腫瘤が認められ、PETでは右肺下葉腫瘤部にFDG集積がみられた。以上より、本症例は肺悪性腫瘍を疑い、右肺下葉切除術を施行したところ、病理組織学的に肺類上皮血管内皮腫(多発)と診断された。目下、術後1年10ヵ月経過で再発は認められていない。

画像診断Q&A 宮崎 拓郎 , 永安 武

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46歳女性。幼少時にホモ型家族性高コレステロール血症と診断、26歳時よりLDLアフェレーシスを導入され、42歳時に大動脈弁逆流(AR)III度および大動脈弁狭窄、胸腹部動脈瘤を認めたためニ期的に手術を行う方針とした。以後、第1回手術として45歳時に大動脈弁置換術を施行したが、左主幹部のプラーク破綻による完全閉塞を認め、右大伏在静脈を用いて緊急的に冠状動脈バイパス術を追加した。術後の経過は良好であったが、初回手術の1年後より嚥下困難が出現し、CTにて拡大した胸腹部大動脈瘤による食道胃移行部の圧排が認められた。そこで、第2回手術として胸腹部大動脈弁置換術を施行した結果、術後は合併症なく、経過良好にて第21病日目にリハビリテーション目的で転院となった。

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59歳男性。突然、前胸部痛および呼吸困難が出現し、著者らの施設へ救急搬送となった。心電図にて広範囲急性前壁心筋梗塞を認め入院となり、あわせて緊急冠状動脈造影検査にて左前下行枝seg.6の閉塞が確認され、同部に経皮的冠状動脈形成術が行われた。術後、血流は回復したものの、血圧は改善せず、左室造影にて心室中隔穿孔と左室破裂が認められた。そこで、血性心嚢水をドレナージしたところ、一時的に血圧が回復したが、再度血圧低下を来し、心停止となった。そのため経皮的心肺補助装置で蘇生を行なった後、大動脈内バルーンパンピングを挿入し、手術を開始、胸骨正中切開でアプローチすると、blowout型左室自由壁破裂と心室中隔穿孔が観察された。以後、破裂孔から心尖部に向かって左室の切開を行ない、中隔の穿孔部を含めて梗塞領域をexclusionし、次いで左室切開線を帯状フェルトで補強しながら、左室自由壁破裂部も同時に閉鎖した。その結果、術後1ヵ月の心エコーでは遺残短絡はなく、左室リモデリング予防でβ遮断薬を導入、患者は術後65日目に軽快退院となった。

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63歳女性。大動脈弁閉鎖不全症に対する大動脈弁置換術後、3年目より意識消失発作を繰り返すようになった。精査の結果、完全房室ブロックと診断され、DDIペースメーカー植込み術が施行された。だが術後、胸部CTで上行大動脈から右房全面、上行大動脈右側後方の吻合部仮性瘤が発見され、植込み術6時間後にBentall変法による大動脈基部置換術が行われた。その結果、術後は房室ブロックが残存しペースメーカ調律となったが、患者は第33病日目に退院となった。

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77歳男性。発熱、背部痛、呼吸困難を主訴に、大動脈弁閉鎖不全症(AR)の増悪に伴ううっ血性心不全と診断のもと、保存的治療にて心不全症状の改善を得た後、ARの手術目的で心臓血管外科へ入院となった。所見では炎症反応の上昇がみられたが、抗生剤の投与にて陰性化した。経食道心エコーにて無冠尖瘤穿孔によるARと診断後、大動脈弁置換術が行われた結果、病理組織学的には感染性心内膜炎に伴う無冠尖瘤穿孔によるARとであった。以後、経過は良好で患者は術後第16病日目に独歩退院となったが、退院後1ヵ月間は抗生物質の投与が継続された。

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77歳男性。細気管支肺胞上皮癌(BAC)部分切除後5年目に胸部CTにて切除断端の肥厚が認められた。その後も肥厚は更に厚くなり、術後6年目の気管支鏡検査にて右B3aの腺癌と診断され、胸腔鏡下に右肺上葉切除および縦隔リンパ節郭清が行われた。その結果、病理組織学的にBAC部分切除後の切除断端近傍に発生した第2肺癌であった。尚、術後経過は良好で、患者は第9病日目に軽快退院となった。

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47歳男性。検診の胸部X線にて異常陰影を指摘され、他院にて良性腫瘍として経過観察されていたが、胸部陰影の改善は認められず、7ヵ月後、気管支鏡検査にてMALTリンパ腫を疑い、著者らの施設へ紹介となった。確定診断および治療目的で胸腔鏡下右中葉切除術を施行したところ、病理組織学的に肺MALTリンパ腫の診断に至った。以後、免疫組織化学染色にてCD20陽性が確認されたため、術後補助療法としてrituximab単剤毎週投与を4コース行った結果、術後9ヵ月現在、再発はみられていない。

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64歳女性。既往歴として28歳時に出産時の出血多量による子宮全摘、49歳時に両下肢静脈瘤に対する手術があった。今回、前胸部痛を主訴に受診、胸部X線およびCTにて血胸と診断され、緊急手術が行われた。手術所見では血胸の原因は右内胸動脈からの出血が腹腔内に流入したためと考えられた。また一方、皮膚、皮下組織、胸膜などのあらゆる組織が脆弱であり、既往歴から結合組織異常を示す基礎疾患の存在が疑われた。以後、皮膚生検より得られた培養線維芽細胞をもとにIII型/I型コラーゲン比の低下および遺伝子解析にてCOL3A1のc.2411にGGC(Gly)→GTC(Val)となるヘテロ接合にミスセンス変異が認められた。以上より、本症例は血管型Ehlers-Danlos症候群と診断されたが、退院2ヵ月後に消化管穿孔を発症し、緊急手術を行なったところ、明らかな穿孔部位は確認されなかった。現在、腹部手術後8ヵ月経過で新たな合併症はみられていない。

基本情報

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胸部外科
66巻2号 (2013年2月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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